小さなベイビー、大きな野望

春子

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珈琲

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色町の住む人向けに開かれている店もあり、マダムの領域にあるカフェ゙ポーラ"は、住人たちの憩いの場となっている。
そこの女店主は、若いながらも、カフェの経営をこなし、マダムからの信頼も厚い。
拘り抜いた木目調の家具と落ち着く空間の店内に、香り高い珈琲の香りが漂う。
おちついた店内に響く声。
「ジュディ。リーサ、決めたよ。オレンジジュース。」
リーサは、力強くいう。カウンター席に座り、メニューとにらめっこしていた。
「オレンジね。マッキーたちは?」
「俺、ホットミルク。」
「んー。ココア。」
「珈琲。」
双子とネフェルが、注文をいう。わかったわと用意する。ジュディは、金髪でくるんと巻き毛。白い肌で、青の瞳。赤い口紅と、甘い香水。
正直な話、゙中"で働いてる人かと思うほど、綺麗で色っぽい。かなりモテるが、誰にも靡かない。
常識的であり、リーサが騙されて色町の中にいるときには、裏から手を回して、ハルベルに教えた。
耳につけてるイヤリングは、大きな飾りで、白い貝殻のようなモチーフ。
「ネフィ。マッキーたちをここに連れてくれるなんて、フィルさんたちに叱られるわ。」
「大丈夫だよ。ここは、まだ敷地内じゃないんだから。」
「おい。ネフィ。テメー。リーサを使ってるだけだろ。悪癖を改めろ。バカ。」
 「お前が一番腹黒ってことは、バレてんだからな。」
双子はリーサを連れていこうとしたネフェルに、俺らも行くと強引についてきた。
「我が弟から酷い言われよう。」
「自業自得だ。」
「困った子ね。」
てきぱきと飲み物を用意し、配膳する。ポーラのオレンジジュースは果汁100%でグラスの縁に、半月のオレンジが刺さってる。
「はい。リーサ、こぼさないようにね。」
「うん!」
甘酸っぱい味でうまい!
ネフェルは淹れたてのホット珈琲に砂糖を入れる。
「ネフィ。ミルクは?」
「今日はミルクいらない気分。」
「強がってまあ。」
「マッキー?」
リーサがミルクのポーションを忘れてると聞いたら、今日はいらないようだ。
マッキーが言ったことばに、ネフェルが視線でいなす。
おおこわとマッキーは、ホットミルクを啜る。
「ジュディ。今度家に遊び来てよ。この前ね。ピクニックしたの。おばちゃんがね。お弁当を作ってくれてね。玉子サンドで美味しかった!」
「楽しかったのね。折角だけれど、お店があるから。気持ちは嬉しいわ。ありがとう。」
「マダムにお願いしようか?ジュディを休ませてって。」
「マダムたちに近づいたらダメだと教わったでしょ?」
四天王に安易に近寄るべきではない。ここは、四天王が統べる土地。
「でもさ。」
「お仕事は好きなのよ。気晴らしにもなるから。」
「リーサはお家が一番すき。」
ニコニコ。
「マニュキュア、変えたの?綺麗だね。」
「ありがとう。明るめのマニュキュアが欲しかったのよ。頂き物だけれど、気に入ったわ。」
「このオレンジジュースの色みたい!」
「ふふ。お揃いね。」
綺麗に整えられた爪には、オレンジ色のマニュキュアが綺麗に塗られていた。
「ままは、赤いマニュキュアだよ。」
「そうね。素敵だわ。良く似合ってる。ツェリさんは、女性の憧れよ。」
「ジュディも綺麗だよ。」
間髪入れず、ネフェルが誉める。ジュディは、にっこり。
双子は賢明に口を挟まない。
「これはオマケ。食べてちょうだい。」
出されたのは、ホットケーキだ。リーサはやったあと、食べる。ネフェルは、残念そうに珈琲を飲む。

「さあ、日が暮れる前に帰りなさい。気をつけて。」
「バイバイ。」
「また来るから。」
「ほどほどになさい。」
出口まで、見送りに来てくれたジュディ。


「まま。ジュディは、ネフィのこと、すきなのかな?」
ジュディは、もう立派な大人。かたや、ネフィはまだ少年に毛が生えた子供。恋愛対象になるわけないのだが、リーサにはわからないだろう。
「ジュディがネフィをすきだといったの?」
「ううん。でもネフィはジュディがすきだよ!」
「…そうね。…とりあえず、成り行きを待ちなさい。女は時に待つことも必要だわ。」
「??」
あのネフェルがジュディを好きなのは、割りと見てれば、わかる。ネフェルが隠してないこともあるが、前途多難だろう。叔母としては、応援したい気持ちではある。
「あ!まま、あのね!明日ね!!ミスターの番組でね!!」
恋愛より、遊びがまだ興味が先たつ娘に、慈愛の眼差しを向けた。

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