甘い夢を見ていたい

春子

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頼りになる助っ人《2》

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仕込んだGPSからの情報を頼りに、方向転換。
ジェイに貸して貰ったバイクに跨り、向かう。
ジェイも後ろに乗っており、仲間も連なっている。
道路を絶賛、爆走中。
「わかったぞ。襲撃したのは、ガーターとリッチの部下だ。人質を取りながら、移動した。」
「頼まれてくれない?子猫ちゃんの保護者に、如月っていう一般人がいてね。Sシティホテルに滞在してる。五体満足で返すことになってるから。部下に守らせて迎えに行ってくんない。多分、居場所バレたわ。」
「人遣い、荒いな!終わったら、飯奢れよ!シャオ。いけ。」
シャオと呼ばれた青年は頷き、数名と共に、別れていく。
「しっかり捕まっててよ?飛ばすよ!」 
「ぎぃやあああ!!」
およそ、そんな運転あり得るか?と思うほどのスピード。エンジンが焼き付く。



連れ去られたのが、リッチの所有する大型施設のビルとは。
逃さない気満々じゃねーか。
そりゃあ、警備体制はバッチリだよね。
バイクでは、例え、成功しても、逃げる逃走車が必要だ。なるべく、頑丈な四駆とかね。
「どうする?やっぱり、もっと仲間を増やして…。」
「いい。少人数のがやりやすいし、成功率があがる。まあ、それは、私の場合なんだけどね。…敵から、武器を奪う。あと、あの四駆、奪って、逃走車に使う。」
「すげえいるけど。」
正面には、一般人なら絶対に近寄らない警備員が、警戒網を張っている。
「あの四駆の中に武器が入ってれば、尚更いいんだけどね。仕方ない。まずは、羽虫を排除するか。」
タガーを一本、指にかけ、シュッ。一発で首にぶっ刺さす。
血が飛沫上がる。何だと騒ぐ連中に、連絡を入れようとする奴を真っ先に、後ろに回り込み、首の骨を折る。
「あー…ご愁傷様。俺、ぜってぇ、お前だけは、敵に回したくないわ。」
「ジェイ。これ、武器。無いより、マシだけど、弾入ってる。」
ジェイと話しながら、ビルに集中。
経験値によるものなのか、薬によるものなのか、はたまた、わからないが、過敏に感じ取れる。五感と言うのか、研ぎ澄まされていて、敵の位置もなんとなくわかる。
「ジェイ、後ろにいてね。なるべく、捌くけど、漏れたの、仕留めて。」
「へいへい。」
「ブレーキー役、任せたよ!行くよ!」
ダッ。



中に入ると、どんだけ、いるんだよ。あとさ、人様の顔を見て、恐怖になるの、やめてくれない?
百歩譲って、リッチの部下はそうだろうね。でも、お前ら、ガーターの部下だろうが。そりゃあ、お前らの前では実力見せたことないよ?だって、信頼おけない連中に見せるほど、安くないもん。
ビルが血に染まる。
「何人いるんだよ!うぜえな。」
「一方的な殺戮じゃん。俺いる?」
「…。ジェイ!柱に隠れて!」
ピクッ。マシンガンだ。ガッガッガッ…
終わることない銃の音。
「マシンガン、撃ってきやがった!アイツ。身内関係ないのか。でもいいね。あれ、奪うか!」
「いやいや、フツー、マシンガン、こえーから。」
鳴り止まないその音がピタッと止む。恐らく、仕留めたと勘違いしたんだろう。甘い。
こちらに向かってくる足音。リボールバーに指をかける。
ばっ!
脳天に一発。
発砲する前に、後ろに倒れる。
「次、生まれてくる時は、私みたいなやつに、会わないことね。」
「あーあー。」
マシンガン、ゲット。




ふう。
忍び込んで見たものの、中々、いい趣味をお持ちで。
恐怖で人を縛る時、トラウマをつつくか、新たにトラウマを植え付けるか。
大事なものを壊される恐怖とのせめぎ合い。しかもたくさんのギャラリーの前で。ニヤニヤしてる仮面を被った趣味の悪い連中。あの時を思い出して、吐き気する。
「やめろー!そいつに触るな!…言うことを聞くから!」
「だめ!エディ!!」
「フフ。」 
あーあー。胸クソ悪い展開。
縛られて、拘束されているエディと銃を向けられているナオ。
「その場でジッとしてな!ふたりとも!」
『!!』
バンッ。大振りなシャンデリアがついてる応接間が派手に揺れる。マシンガンを振っばなしている。
ガッガッガ…
シャンデリアが落ちれ、マシンガンと共に響く悲鳴。
「何だ。運がいいね。これで死なないで。今ので死んでた方が良かったんじゃない?」
空間に入る。
ボーディーガードが身を呈して、守ったようだが、身体中に穴が空いてる。そんなに守るような価値はないと思う。
「誰だ…貴様。」
それでも腕は撃たれたようだ。
「はじめまして。ニコラス・リッチ。うちの子猫ちゃん二匹、返してもらうよ。嫌な趣味を持つお前が触って良いようなもんじゃねーよ。あ。ごめんね?お友達、奪っちゃった。、悪趣味極まりないクソ野郎だもんね。あ。女もいるから、アマ?まあいいや。うちのエディもナオもお前らがおもちゃにしていいようなもんじゃねーよ。」
会員制秘密クラブが入ってるこの一角は、趣味の悪い男女がお気に入りの人形を遊ぶ提供場所。
「こんなことして…ダダで済むと…。」
「馬鹿か。お前。お前如きが、誰に口聞いてんだよ。人間が死神に勝てると思う?」
「ーまさか!」
「海から遥々やってきました。こんにちは。お前のかわいい子猫ちゃんの後ろには、死神がいることを忘れるな。ゴールドスタイン、匿ってるのも自殺行為だぞ。…うるさい。援軍が来たな。じゃあね。一先ず、ずらかる。今度はこんな程度で許さねーからな。次は、その首、床に落とす。」
エディとナオを抱える。
「お前が敵に回した相手をよく覚えてろ。」
威圧を飛ばし、殺気を漲らす。
「マリカ。援軍だ!」 
「げっ。」
急いで退出。


「降ろせ。走れる。」
「なら、走って。ナオは、だめだ。気絶してる。」
「一般人がこんな血みどろ見たら、気絶するわ。俺もしたい。」 
「気絶したら、死ぬだけだよ。下まで下がる時間がかかりすぎる。」
「どうする?」
エディが追撃を銃で応戦。
「止まって。マジで気絶しないでよ。」
「えっ!まさか…。」
「そのまさか。」
銃弾を通さない防弾ガラスだが、ぐっと、足に力を込め、派手に叩き落とす。パリン…。
「エディ。ナオをしっかり掴んで。ジェイ。捕まっててよ!」
「やっぱ、こうなるのかよ。」
ポシェットから、軍用のロープを体に巻きつける。
急いで準備。追っ手が迫りくるが、エディが高速で撃ち落としていく。
「まだか?!」
「よしっ。行くよ。」
バッと掴んでくる。
失敗したらみんな、お陀仏。
下に落下。文字通り。 
「わああああ。」
エディがついたボタンを押す。するとガクンと張った糸が伸び、ぶら下がる。
「ナイス。」
「タイミング間違えたら、みんな、お陀仏だぜ。」 
しゅるるると着地。
逃走車の四駆まで駆ける。

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