ハッタリと適当で世界を救う ~泣きそうだけど最後まで貫く~

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第1章

賢者様、新たな試練(国王からの無茶振り)

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「賢者様、国王陛下がお呼びです」

 俺は、胃痛が限界を迎えそうな表情で、王宮の使者を見つめていた。

(……やべぇ。嫌な予感しかしない)

 つい最近、俺は"魔法の流れ理論"とやらを適当に作り、
 適当なことを言ったら、たまたま成功してしまい、今では王国の魔法学のトップに君臨している。

 つまり、王国の偉い人たちは、俺にクソデカ期待を寄せているわけだ。

(やめろ、俺に期待するなぁぁぁ!!!)

 だが、逃げるわけにはいかない。
 もしも俺がここで「嫌です」と言ったら、王様に怪しまれる。
 そうなったら、バレた瞬間、斬首ルート確定だ。

「……わかった。謁見に向かおう」

 俺は、泣きそうな顔で立ち上がった。


---

王の謁見――賢者様への新たな任務

「よく来た、賢者よ!」

 王ヴァルガスが、満面の笑みで俺を迎える。
 その隣には、王国の重鎮たちがズラリと並んでいた。

(うわぁ……絶対ロクでもない話だ……!!)

 そして、王が言った。

「そなたに、新たな大仕事を頼みたい」

(……ほらきたぁぁぁ!!!)

「賢者よ、そなたには"勇者"の指導をお願いしたい」

「……は?」

(勇者の指導!? ちょっと待て!!!)

 俺は一瞬、言葉を失った。

 今の俺の役職は"大賢者"。
 つまり、王国の知恵袋的なポジションである。
 その俺に、まさかの勇者指導の仕事が舞い込んできた。

(いやいやいや、俺、戦えねぇぞ!?)

 すると、王が説明を続けた。

「この世界には"魔王"が存在する。そして、神託によって"勇者"が選ばれた」

「今まさに、その勇者が王国に到着しようとしているのだ!」

(うわぁ……もう嫌な予感しかしねぇ……!!)

「賢者よ、勇者には"伝説の賢者の知恵"が必要だ」
「ぜひ、そなたが勇者を導いてやってほしい」

(いや、俺、ただのフリーターなんですけど!?!?)

 しかし、ここで断れるわけがない。

 俺はできる限り落ち着いた声で――。

「……承知いたしました」

 そう答えるしかなかった。




 王宮の広間に、俺は座っていた。
 そして、扉が開かれ――。

「賢者様!! 初めまして!!」

 そこにいたのは――。

 見た目は普通の高校生っぽい、金髪のイケメンだった。

(えっ……まさかの日本人!?)

 俺は混乱した。
 この世界で生き残るために、必死でハッタリをかましてきた俺の前に、
 まさかの"本物の勇者"が現れるなんて――。

 勇者は、目を輝かせながら俺に言った。

「賢者様のことは、ずっと噂で聞いていました!!」
「"魔法の流れ理論"を提唱し、戦争を勝利に導き、弟子を育てる大賢者……!」
「俺、その教えを受けられるなんて、本当に光栄です!!!」

(もう詰んだぁぁぁぁ!!!)

 俺は泣きそうになりながら、ソフィアを横目で見た。

(助けてくれぇぇぇ!!!)

 だが、ソフィアは明らかに楽しそうな顔をしていた。

「最後まで貫くんですよね?」

「お前マジで他人事だと思ってるだろ!!!??」




 俺は、王宮の魔法訓練場に連れてこられていた。

 目の前には、勇者リュウガ・アマミヤ。
 どうやら、名前からして本当に日本人らしい。

 そいつが期待に満ちた目で、俺を見つめている。

「では、賢者様!! まずは魔法の流れについて教えてください!!!」

(うわぁ……適当なこと言えないパターンだ……!!!)

 普通の王国の奴らなら、適当に言っても勝手に信じてくれる。
 しかし、リュウガは日本人だ。
 下手に適当なことを言えば、すぐに**「あれ? こいつやばくね?」**と勘づかれる可能性がある。

(どうする!? どうする俺!!?)

 俺は、震える手で杖を持ち――。

「……まずは"魔力の流れ"を感じることから始めるのだ」

「おおお!!!」

(よし、まずはそれっぽく!!)

「魔力とは、己の内にあるエネルギー。"流れ"を意識し、制御することが最も重要なのだ」

「なるほど……!!」

(おっ……? いけるか!?)

「では、実演をお願いします!!!」

(終わったぁぁぁぁ!!!)

 俺、魔法使えねぇのに、"実演"なんてできるわけねぇ!!!

 しかし、ここで「いや無理です」なんて言ったら、完全にバレる。

 俺は、死ぬ気で考え――。

「……ソフィア、お前がやれ」

「はい?」

 俺は超賢者らしい顔をして言った。

「私はもう、その段階にはない。"基礎"は弟子であるお前が教えるべきだろう」

「……」

(頼む!! 察してくれ!!!)

 すると、ソフィアは、うっすら微笑んだ。

「……なるほど、さすが賢者様です」

(よっしゃあああ!!! 俺のパス成功!!)

 ソフィアは杖を構え――完璧な魔法を発動した。

「……!! すごい!!」

「さすが、賢者様の弟子……!!」

(俺何もしてねぇのに、めっちゃ褒められてる!!!)

 そして、リュウガは感動した顔で俺を見つめた。

「やはり、賢者様はすごい……!! 俺も、賢者様のような"流れ"を習得します!!!」

(……よし、なんとか誤魔化せた!!!)

 だが、俺はまだ知らなかった。

 この"勇者リュウガ"が、とんでもないチートスキルを持っていることを――。
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