ハッタリと適当で世界を救う ~泣きそうだけど最後まで貫く~

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第1章

勇者のチートスキルがヤバすぎる件について

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「よし、では俺もやってみます!!」

 勇者リュウガが、興奮した様子で杖を構えた。

(うわぁ……また適当に指導しなきゃいけないのか……)

 俺はすでに胃痛を感じながらも、適当にそれっぽいことを言う。

「……魔力の流れを意識しろ。力を無理に押し出すな。魔法とは、"自然の流れを支配する技"なのだ……」

「なるほど……!!」

(なるほども何も、俺今適当に言っただけなんだけど!!)

 しかし、リュウガは真剣な表情で目を閉じ、魔力を練り始めた。

 すると――。

ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!

「……は?」

 俺の目の前で、とんでもない量の魔力が一瞬で凝縮され始めた。

(えっ、何これ!? 俺、こんな指導してねぇぞ!?)

 ソフィアも僅かに目を見開く。

「……これは……?」

 次の瞬間――。

ドォォォォォン!!!!

 リュウガが放った"魔力の流れを意識した魔法"が、訓練場の壁を粉砕した。

「……」
「……」

 その場が静まり返る。

 そして――。

「す、すげぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 周囲の兵士や魔法使いたちが、一斉に歓声を上げた。

「勇者様が、魔法の流れを完全に理解された……!!」
「たった一度の指導でここまで……!! さすがは賢者様!!!」

(いやいやいやいや!! 俺、何もしてねぇぞ!?!?)

 俺は、茫然とするリュウガに向かって尋ねる。

「……お、おい。お前、なんかおかしいぞ?」

「えっ……?」

 リュウガはキョトンとした顔をしている。

「だって、賢者様の教えがすごく分かりやすかったから……」

(いや、俺、何も教えてねぇから!!!)

 そして、ソフィアが冷静に分析する。

「……どうやら、勇者には"習得力が異常に高い"チートスキルが備わっているようですね」

「……なにぃぃぃぃぃ!?!?」

 リュウガが驚いた顔で自分の手を見つめる。

「そ、そんな……俺、そんなスキル持ってたのか……!?」

「たぶん、"理解力"とか"適応力"みたいなスキルがあるんでしょうね」

(ちょっと待て、それってヤバくないか!?)

「ということは……」

 リュウガが俺をまっすぐ見つめる。

「賢者様の教えを受ければ、俺はどんな魔法でも最短で習得できるってことですね!!!」

「」

(終わったぁぁぁぁぁぁ!!!)

 俺はただ適当に指導してただけなのに、勇者が勝手に超成長するせいで、俺が本当に"大賢者"に見えてしまう。

(やばい……このままでは、俺の嘘がどんどん強化されていく!!!)

 そして――。

「賢者様!! ぜひもっと色々教えてください!!!」

 勇者リュウガは、無邪気な笑顔で俺の手を握った。

(マジで終わった……!!)


勇者のチートスキルがバレた結果、国王の反応がヤバい

 勇者の成長速度が異常だと分かった瞬間――。

「賢者様!! これは奇跡だ!!」

 王ヴァルガスが、テンションMAXで俺の手を掴んできた。

「そなたの指導により、勇者が史上最強の力を手に入れようとしている!!!」

「……い、いや、その、俺はただ……」

「このまま"勇者の最強化計画"を進めるのだ!!!」

(待て待て待て!! 俺、勇者育成の責任者になっちゃったぞ!?!?)

 俺の胃が、今にも爆発しそうだった。


---

ソフィアと反省会(もう無理かもしれない)

「……おい、ソフィア」

「はい?」

「俺、今後ずっと勇者の指導係とかやらなきゃいけないのか?」

「そうなりますね」

「無理無理無理無理!!! 俺、ただのフリーターだぞ!?!?」

 俺が絶望の表情で叫ぶと、ソフィアはクスッと笑った。

「でも、賢者様のおかげで、勇者はどんどん強くなっていますよ」

「いや、それは勇者のチートスキルのせいであって、俺は何も……!!」

「……フフッ」

 ソフィアは、不敵に微笑んだ。

「では、賢者様。"次の指導"は何を教えますか?」

「……」

(やっぱり、もう後戻りできねぇぇぇぇ!!!)
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