ハッタリと適当で世界を救う～泣きそうだけど最後まで貫く～

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第1章

賢者様、隣国との交渉を乗り切れ（食糧問題編）

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「賢者様！！ぜひ、隣国との交渉をお願いします！！！」

　俺は、王国の重臣たちに囲まれ、冷や汗をダラダラ流していた。

（おいおいおいおい……今度は外交！？俺が！？俺、ただのフリーターだったんだけど！？）

　これまで、俺は適当に**「魔法の流れ理論」や「剣気理論」**をでっち上げた結果、
　なぜか勇者が勝手に習得してしまい、俺は王国の"大賢者"として崇められることになってしまった。

　そして今度は、国家レベルの交渉。

（マジで、俺がやっていいやつじゃねぇだろ……！！）

　しかし、もう逃げられない。
　ここで「俺、交渉とかできません！」なんて言ったら、**「賢者様は外交も見通しておられる！」**とか言われて、
　ますます話がややこしくなるのは目に見えている。

（くそっ……！！！こうなったら、また適当に乗り切るしかねぇ！！！）

　王宮の謁見の間。
　俺は、国王ヴァルガスや重臣たちとともに、隣国ゼルヴァ帝国の外交団と対峙していた。

　相手は、貴族風の男と、数名の護衛たち。
　そして、彼らの表情は――。

（……なんか、めっちゃ疲れてる？）

　帝国の外交官、グラディウス伯爵は、開口一番、こう言った。

「単刀直入に申し上げます。我がゼルヴァ帝国は、深刻な食糧難に直面しております」

（……え？食糧難？）

「貴国には、食料の輸出を求めたい」

（理論とかじゃなくて、普通に"食い物くれ"ってことか！？）

　俺は、ホッとした。
　いつものような訳のわからない理論を求められているわけじゃない。
　つまり、適当に変なことを言って「また勝手に成功しちゃった！！」って展開にはならないはず！！

（よし、これは普通に考えればいいだけ……！！！）

　しかし――隣国の食糧難、か。
　ただ輸出するだけなら簡単だけど、問題はそれで本当に大丈夫なのかってことだ。

「……そちらの食糧難の原因は？」

　俺は、できる限り賢者っぽく、ゆっくりとした口調で尋ねた。

（よし、まずは情報を引き出すんだ……！！）

　グラディウス伯爵は、少し困ったように言う。

「近年の異常気象により、帝国の農地は干ばつと洪水の被害を受けました」
「さらに、我が国は軍事大国であり、兵站の維持が重要です。しかし、食糧不足が進めば、戦力低下は避けられません」

（なるほどな……要するに、国としてガチでヤバい状況ってことか）

　しかし、王国側の重臣たちは、すぐに反論する。

「食糧の輸出は慎重に考えなければなりません」
「我々の国力にも限りがあり、無闇に他国を支援するのは危険です」

（うーん、どっちも正論だな……）

　そこで、俺は少し考えた。

（待てよ……もしここで適当な理屈を作って、上手く交渉をまとめれば……？）

　俺は、"賢者らしい"沈黙をしばらく続けた後――。

「……食糧の輸出は可能だ」

　そう告げた。

「！！！」

　ゼルヴァ帝国の使者は驚き、王国側の重臣たちはザワつく。

「しかし、条件がある」

「条件……？」

「一時的な食糧支援では、また同じ問題が起こる。継続的な解決策が必要だ」

「……！！」

（俺、めっちゃ賢者っぽいこと言ってるんじゃね！？）

　王国側の重臣たちも、納得したように頷く。

「そこで、こう提案しよう」

「① 食糧の輸出を段階的に行う」
「② その間に、ゼルヴァ帝国側で"農業改革"を進める」
「③ 王国から"農業技術者"を派遣し、持続可能な食糧生産を支援する」
「④ その代わり、ゼルヴァ帝国から"工業技術"を提供してもらう」

　この提案に、グラディウス伯爵が目を見開いた。

「……なるほど」

「一時的な援助ではなく、互いに利益のある"持続的な関係"を築く」

「……！」

（おおっ！？俺、今めちゃくちゃ"賢者"っぽいこと言ってる！！）

　そして――。

「素晴らしい提案だ。我々としても、それは大いに助かる」

　グラディウス伯爵が深く頷いたことで――

王国とゼルヴァ帝国の交渉は、無事に成功してしまった。

「素晴らしい！！さすが賢者よ！！！」

（いや、俺、適当に考えただけなんだけど！！）

　国王ヴァルガスが、大満足の笑顔で俺の肩を叩く。

「これで、王国と帝国は新たな関係を築ける！！」
「そなたの知恵には、改めて感謝する！！」

　重臣たちも、満場一致で俺を褒め称える。

（ま、また俺の評価が上がっちまった……！！！）

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ソフィアと反省会（もう無理かもしれない）

「……おい、ソフィア」

「はい？」

「俺、今、めっちゃ外交成功させちまったよな……？」

「ええ。"賢者様の交渉力"は、国中に知れ渡るでしょうね」

「いや、それはやめてほしいんだけど！！？」

　俺は頭を抱える。

（もう、逃げられねぇ……）

「では、賢者様。"次の交渉"はどうします？」

「……！！！」

（まだ続くのかよぉぉぉ！！！）

　俺の胃は、もう限界を超えていた。

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