ハッタリと適当で世界を救う ~泣きそうだけど最後まで貫く~

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第2章

賢者様、ついに"神の代弁者"として祭り上げられる!? 逃げられない宗教戦争!!

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(詰んだ……!! これは完全に詰んだぞ!!!)

 俺は王宮の広間で呆然と立ち尽くしていた。

 ついさっきまで「神の試練をどう乗り切るか?」と頭をフル回転させていたはずなのに、気づけば俺は"神の代弁者"にされていた。

「賢者様が神に認められた!!」

「まさか、本当に神々の意志を伝えるお方だったとは……!!!」

「おおおお!! これからは賢者様の言葉こそが、神の意思なのだ!!!」

(ちょっと待て!!! 俺はそんなこと一言も言ってないぞ!!!)


---


「……これは、思った以上に面倒なことになりましたね」

「お前の"時間稼ぎ作戦"のせいだぞ!!! なんか結局とんでもない方向に話が進んでるじゃねぇか!!!」

「私の作戦は成功しましたよ? 賢者様は"試練を受けずに済んだ"わけですから」

「受けずに済んだけど、代わりに"神の代弁者"とかいうヤバいポジションになっちゃったじゃねぇかぁぁぁ!!!」

 ソフィアはクスッと微笑んだ。

「まぁ……賢者様の"偉業"は、すでに王国中に広まっておりますし、いずれこうなる運命だったのかもしれません」

「運命って何!? お前、そんな悟った顔しないでくれ!!!」


---


 俺が嘆いている間にも、王宮内ではすでに"新たな問題"が発生していた。

「神の代弁者が現れたということは、これまでの教義はどうなるのだ!??」

「我々はこれから、"賢者様の言葉"を信仰すべきでは?」

「いや、これまでの教会の教えと矛盾する点があるのではないか!?」

(うわぁぁぁ……!!! なんか"新旧宗教の対立"みたいになりそうな雰囲気になってきたぞ……!!!)

 どうやら、俺の"神の代弁者"認定によって、既存の宗教と新たに誕生した"賢者信仰"がぶつかり合い始めたらしい。


 既存の教会のトップである高位神官たちは、俺に直接詰め寄ってきた。

「賢者様!! もしや、神々は"新たな教義"を求めておられるのでしょうか!??」

「そ、そんなことは言ってない……!!!」

「しかし、神の眷属が降臨し、神々が賢者様を認められたのは事実!!」

「この王国の宗教のあり方を、どう導けば良いのか、ぜひご高説を……!!!」

(知らねぇぇぇぇぇ!!! 俺は宗教家じゃないぃぃぃ!!!)

 このままだと、俺が新たな宗教を作るハメになる未来しか見えない。

(よし、こうなったら……!!)



 俺は大きく咳払いをしてから、いかにもそれっぽい雰囲気を出しながら話し始めた。

「ふむ……」

「「「……!!」」」

(よし、みんな"賢者様のお言葉を待つぞ"みたいな顔をしてるな!!)

「宗教とは……人々の心を導くものである」

「「「おおお……!!!」」」

「神々の意思を問うのではなく、"人々がどう生きるべきか"を考えることが重要だ」

「「「素晴らしいお言葉です!!!」」」

(おお、なんかそれっぽいぞ!!! 俺、すげぇそれっぽいこと言ってる!!!)

「故に、"教えを変える必要はない"」

「「「……!」」」

「すでに神々は、"人々の信仰を受け入れておられる"。故に、私の存在があろうとも、"今ある教えが間違いではない"ということだ」

「「「おおおおお!!!!!」」」

「つまり、我々は……これまでの教えに加え、新たな知恵を蓄えることで、より良き未来を作り出すのだ」

「「「賢者様ぁぁぁ!!!」」」

(よし!!! なんか適当に言ったけど、神官たちはめっちゃ納得してる!!!)



 こうして、俺は**「新しい教えを作るわけではなく、既存の宗教に"知識"を付け加えるだけ」**という方向性を示し、"賢者信仰"と"既存の宗教"の対立をうまく回避した。

(よっしゃぁぁぁ!!! 俺、マジでハッタリだけで乗り切ってる!!!)

 しかし――

「では、賢者様。"神の代弁者"として、王国全土に"新たな知恵を授けていただけませんか?」」

「えっ……?」

(おいおいおい!!! なんか次のフェーズに入っちゃったぞ!!!??)

 どうやら、俺はこれから「神の代弁者」として、王国中に"知恵を授ける巡礼"をしなければならないらしい。

(待て待て!!! 俺はただの一般人なんだから!!! そんな難しいこと考えられねぇよ!!!)

 こうして――

俺は宗教戦争を回避することには成功したが、今度は"賢者の巡礼"とかいう新たな面倒ごとに巻き込まれることに。

王国全土に「賢者様の知恵を広める旅」に出ることが決定。

しかし、巡礼の先々では「神の代弁者とは何か?」を問う"試練"が待ち受けているらしい……。


(俺、逃げられるのか!? いや、無理じゃね!?!?)

 俺の嘆きの声が、王宮の天井にむなしく響き渡った――。


---

(なんでこうなった……!!!)

 俺は王宮の広間で、王や貴族、神官たちに囲まれながら**「巡礼の旅」**について説明を受けていた。

「"神の代弁者"として、賢者様には王国全土を巡り、民に知恵を授けていただきたい」

「賢者様のお言葉を求める者はすでに多く、国中に広まることでより多くの人々を導くことになるでしょう」

「王国の安定のためにも、この巡礼は重要な意味を持ちます」

(安定って、俺にとっては安定じゃなくて大混乱なんだけど!!)

 俺はちらりとソフィアを見るが、彼女は腕を組んで静かに聞いている。

(おい、止めてくれよ……!!)

 そう願うも、ソフィアは小さくため息をついた後、俺に向かって静かに言った。

「……ここまで来たら、逃げられませんね」

「俺もそう思う……!!!」


王国各地を巡り、"賢者様の知恵"を伝える(=適当にごまかす)

賢者様が直接訪れることで、「神の代弁者」が実在することを示す

王国の民に希望を与える(そんな大それたこと考えてない!!)

巡礼を通じて、国の安定を促す(※利用されてる感がすごい)



---


「巡礼とか言ってるけど、実際は王国中の問題を押し付けられる流れじゃね!?」

「各地を回るってことは、また厄介な奴らに絡まれる未来が見えるんだけど!?」

「こんなの、俺が行く必要ある!? せめて文書で教えればよくない!?」



---


「では、巡礼の計画を進めます!」

 神官たちは大喜びで準備を進め始める。

「賢者様の巡礼隊には、騎士団の護衛をつけましょう」

「もちろん、貴族や商人たちも同行し、王国の繁栄を示します」

「巡礼の様子を記録し、"賢者様の言葉"を各地に広めましょう!!」

(うわあああ!! なんかめちゃくちゃ本格的な巡礼になりそうな流れ!!!)

 俺の意志とは関係なく、着々と巡礼の準備が整っていく。

 俺はソフィアの方を振り返る。

「なあ、なんとかならんのか、これ……」

 ソフィアは冷静に言った。

「……少なくとも"巡礼そのものを止める"のは不可能でしょう」

「だよなぁ……」

「ただし、巡礼中に"問題を起こさなければ"、すぐに終わる可能性もあります」

(問題を起こさなければ……)

(……いやいや!!! 今までの俺の経験上、絶対に問題が起こるに決まってる!!!)



 そんなことを考えていると、王宮の扉が開き、一人の貴族が入ってきた。

「失礼いたします!!」

 見るからに高貴な雰囲気を漂わせた貴族。

「お初にお目にかかります、侯爵クラヴィスと申します」

(……絶対面倒くさいやつじゃん)

「賢者様の巡礼が王国の歴史において重要な意味を持つことを考えると、ぜひとも私の家が"巡礼のスポンサー"となるべきかと考えまして」

(スポンサー!? そんなのいるのか!?)

「賢者様が訪れる場所の宿や食事、道中の安全など、すべて我が家が手配いたしましょう」

(うーん……それって、めちゃくちゃ助かるんだけど……)

 俺はソフィアを見る。

「……悪い話ではないですね」

(だよなぁ……)

「ただし」

(ただし……!?)

「クラヴィス侯爵が"巡礼の先々で、賢者様を利用しようとしないか"は気をつける必要があります」

(うわぁ……絶対そんな感じのヤツだよなぁ……!!)


--

 巡礼の準備が進む中、俺たちの元に"ある報告"が届いた。

「賢者様、問題が発生しました!!!」

「な、なんだ!?」

「巡礼の最初の目的地である村に、"異端審問官"がやってきているとの情報が!!」

(異端審問官!? それって、つまり……)

「彼らは"新たな教えが広まること"を危険視し、賢者様の巡礼を邪魔しようとしているようです!!」

(うわあああ!! もう面倒ごとが始まってるぅぅぅ!!!)

 異端審問官といえば、異教徒を取り締まる教会の組織。

(つまり、"賢者様信仰"が既存の教えと違うと判断されれば……俺は異端扱いで逮捕される可能性があるってことか!?)

「これは……早めに対応しなければなりませんね」

 ソフィアが静かに言う。

「異端審問官が"賢者様をどう扱うか"、それを確認しない限り、巡礼がスムーズに進むとは言えません」

「ちょっと待て!!! 俺、最初の目的地に着く前から、すでに詰んでないか!?!?」

 巡礼に出発する前から、問題は山積み。

 俺は頭を抱えながら、ソフィアに泣きついた。

「なぁ、もうここで逃げようぜ……」

「……それは不可能ですね」

(知ってたぁぁぁぁぁ!!!!)
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