ハッタリと適当で世界を救う ~泣きそうだけど最後まで貫く~

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第2章

賢者様、異端審問官と対峙!? 逃げられない信仰の戦い!!!

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(どうしてこうなったぁぁぁぁ!!)

 巡礼に出発する前から、俺はすでに詰んでいた。

 理由は簡単。巡礼の最初の目的地である村に、"異端審問官"がすでに到着しているという報告が入ったからだ。

「異端審問官ってことは、つまり……」

「はい、"賢者様の信仰が正しいかどうかを裁く"ために来たのだと思われます」

 ソフィアは静かに答えた。

「異端と判断されれば、賢者様は"処刑対象"になる可能性もありますね」

「おいおいおいおいおい!!! 俺、ただの一般人なんだけど!!!?」

「ええ、だからこそ慎重に対処する必要があります」

「慎重にって……俺、なにすればいいの!?」

 俺は絶望的な気持ちでソフィアを見るが、彼女は冷静に言った。

「"話を逸らす"のが最善でしょう」

「……話を逸らす?」

「はい。"宗教論争"には持ち込まず、もっと現実的な問題に話をシフトするのです」

「なるほど……!!」

(よし、なんとか誤魔化せるかもしれない!!)


---

 俺たちは騎士団と共に村に到着した。

 そして、そこには黒い法衣をまとった三人の男が待ち構えていた。

(うわぁ……もう見た目からしてヤバい人たちだ……)

 中央の男が俺をじっと見つめ、口を開く。

「……貴殿が"賢者"か」

「え、ええ、まぁ……」

「私は異端審問官、マルクス。賢者よ、貴殿の教えが"真なる神の意志"と合致しているかを確認するために参った」

「……そ、そうですか」

(つまり、俺が"異端"かどうかを判断するってことか……!!)

「では、いくつか問う」

(うわぁぁぁ!!! 始まっちゃったぁぁぁぁ!!!)


---


「第一の問い。"神の存在"について、貴殿はどう考える?」

(うわぁぁぁ!! いきなりストレートに来たぁぁぁ!!!)

(こんなの"いません"とか言ったら、一発アウトじゃねぇか!!!)

 俺は一瞬でソフィアとアイコンタクトを取る。

 ソフィアは無言で小さく頷いた。

(……わかった!! "話を逸らす"方向でいく!!!)

「神とは……"信じる者がいる限り、そこに存在するもの"です」

「「「!!!」」」

(おおお!? なんかそれっぽいこと言えたぞ!!)

「それはつまり、"神の実在を否定するものではない"と?」

「そうです。"神は人々の心の中にあり、それぞれの信仰の形によって示される"のです」

「……ふむ」

(どうだ!? これなら異端認定はされないんじゃないか!?)


---

「では、第二の問い。"人は神に従うべきか、それとも自らの知恵を信じるべきか?"」

(くそぉぉぉ!! これも答え方次第ではヤバいやつだぁぁぁ!!)

 俺は再び頭をフル回転させ、答える。

「人は、"神の教えを胸に、自らの知恵をもって生きるべき"です」

「「「!!!」」」

(よし!!! これなら神の意志を否定せず、それでいて"知恵を持つことを否定しない"から、なんとか乗り切れるはず!!!)

 審問官マルクスは、少しだけ表情を和らげた。

「貴殿の言葉には、一定の理がある」

(セーフ!!!)


---


「では、最後の問い。"神が望まれる"世界とは、どのようなものか?」

(えええええ!!! それ、俺に聞くの!!!???)

(だって俺、神様じゃないし!!! そんなの知るわけないじゃん!!!)

 俺は一瞬だけ思考停止するが――

 考えれば考えるほど、俺の中に答えが出てこない。

(……いや、無理だろこれ)

 そして――

「いや、無理だろ」

 つい、口に出してしまった。

「「「……!??」」」

 審問官たちは目を丸くし、村人たちも「えっ?」という顔で俺を見る。

(やっべ……!!! これ、完全にやらかしたやつじゃね!?)

 俺は冷や汗をダラダラ流しながら、すぐにフォローを入れる。

「……いや、つまりですね?」

「……?」

「"神が望まれる世界"を決めつけること自体が、神への冒涜ではないでしょうか?」

「「「!!!」」」

(うおおおおお!!! なんかそれっぽい理屈になったぁぁぁ!!!)

「神はおそらく、"人々がどう生きるか"を試しておられるのです。我々が勝手に"神の理想"を語るのは、おこがましい話ではないでしょうか?」

「……なるほど」

(助かったぁぁぁぁ!!!)



「賢者よ……」

「は、はい!!」

「貴殿の言葉には、"神への敬意"が感じられる」

(よし!!! どうにか異端認定は回避できた!!!)

 マルクスは俺をじっと見つめたあと、深く頷いた。

「貴殿を異端とする証拠はない。我々としては、"神の代弁者"として認めることとする」

「おおおおお!!!!」

(あれ!? 俺、また神の代弁者扱いされてね!?)

 村人たちも歓声を上げ、巡礼の初っ端から俺は**"異端認定回避成功"**という意味不明な勝利を収めたのだった。

---

(どうにか異端認定は回避した……!!)

 俺は村人たちの歓声を浴びながら、安堵のため息をついた。

 異端審問官たちにガチガチに詰められるも、なんとか適当に誤魔化しつつ、それっぽいことを言って乗り切ることができた。

 これで無事に巡礼を進められる……と、思ったのも束の間――

「賢者様!! どうか我々に"さらなる知恵"をお授けください!!!」

「賢者様!! 私たちはどう生きるべきなのか!!!」

(あああああ!!! もう終わったと思ったのに、まだ続くのかよぉぉぉ!!!)


---


「賢者様のお言葉を胸に、我々は新たな道を歩みたいのです!!」

「賢者様!! 我々の村に何をすればいいのか、ぜひご助言を!!!」

(……いや、知らねぇよ!!! 俺、ただの一般人なんだから!!!)

 俺は必死に頭を回転させ、適当なことを言おうとする。

(うーん……"村の発展"ってことなら、やっぱり現実的な知識を使うのが一番だよな……)

 俺は咳払いをして、それっぽく語り始めた。

「……人々が豊かに暮らすためには、"働く場"が必要である」

「「「おおお!!!」」」

(よし、雰囲気作りは成功だ)

「そこで、農業だけに頼らず、"新たな産業"を生み出すことが重要だ」

「「「新たな産業……?」」」

(よし、いい流れだ!!)

「例えば……"養蜂"はどうだ?」

「「「養蜂!??」」」

「蜜を採取し、蜂蜜を商品として売ることができる。また、農作物の受粉にも役立ち、農業と組み合わせることで収益を上げることが可能だ」

「おおおお!!!」

(いいぞいいぞ!! なんかそれっぽいこと言えてる!!)

 俺はさらに続けた。

「そして、交易路を確保し、他の村や街へ商品を運ぶ"商業ネットワーク"を構築することで、より安定した経済が生まれる」

「「「賢者様ぁぁぁ!!!」」」

(よし!! これはいける!!)


 俺の話を聞いていた村の商人たちが、目を輝かせながら声を上げた。

「確かに……村の特産品を作ることで、交易が活発になれば、村の発展にも繋がる!!」

「養蜂か……そういえば、近くの森には花が多く咲いている。確かに、蜂蜜は作れるかもしれない!!」

「賢者様!! ぜひ、我々に具体的な"方法"を教えていただけませんか!!?」

(えっ……方法……???)

(いや、俺も詳しいことは知らんのだけど……!?)

 俺は一瞬言葉に詰まるが、すかさずソフィアが助け舟を出した。

「……賢者様が全てを教えるのではなく、"どう学ぶべきか"を伝えるのが重要では?」

(おお、さすがソフィア!!!)

 俺は堂々と頷いた。

「うむ。"知恵は与えられるものではなく、学ぶものだ"」

「「「おおおお!!!」」」

(よし!! またなんかそれっぽいこと言えた!!!)



 こうして、俺が適当に言ったアイデアを基に、村人たちは**「養蜂を始めること」「商業ネットワークを考えること」**を本気で実行し始めた。

(あれ……? これ、もしかして普通にいいことしてるんじゃね?)

 しかし――

「……ふむ、やはり賢者様は"深い洞察"をお持ちだ」

「……?」

 気づけば、異端審問官のマルクスがじっと俺を見つめていた。

(なんだよ、また何か言われるのか!?)

 マルクスはゆっくりと歩み寄り、低く静かな声で言った。

「"神の代弁者"の名は、王国だけにとどまらぬ……」

「えっ?」

「貴殿の巡礼が進めば、"他国"も貴殿の影響力を警戒し始めるだろう」

(……え、他国??)

「"神の意志を語る者"が現れたとあれば、他国の宗教勢力や支配者たちも注視せざるを得ない」

(うわぁ……そういう方向で警戒されるのかぁ……)

 しかし、マルクスはニヤリと笑うと、ポンと俺の肩を叩いた。

「安心せよ。"我々は神の意志に従うのみ"。賢者よ、貴殿の巡礼の行く末……見守らせてもらおう」

(お前、絶対何か企んでるよなぁぁぁ!!!)

 こうして――

巡礼の最初の村で、"養蜂"と"商業ネットワーク"の話を提案し、村の発展に貢献した。

異端審問官マルクスは、俺に興味を持ち、巡礼を見守ることに……。

さらに、"他国の目"が俺に向き始めているという新たな問題も発生……!!!


(俺、無事に巡礼を終えられるのか!?)

 俺の不安はますます膨らむばかりだった――。
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