スマホ片手に異世界ライフ! ~神様のアプリで無敵冒険者~

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第1章

苦戦ゴブリン討伐

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陽が高くなる頃、ガアラは森の中にいた。

手には、錆びた片手剣“レッドラスト”。
ギルドに報告もせず、常駐依頼の「ゴブリン討伐」の証明を得るため、自主的な探索に踏み出していた。

(正面からの戦い、試すなら今だ)

そして、彼は見つけた。

 

森の奥、倒木の陰にしゃがみ込んでいたゴブリン。
赤い目を光らせ、粗末な棍棒を手に、こちらに気づいた瞬間――吠えた。

 

「来るか……!」

ゴブリンが駆け出す。ガアラは剣を構え、距離を詰める。

一閃。振り下ろされた棍棒を体を捻って避ける。
すかさず反撃。剣を横に払う――が、手応えは鈍い。

(硬い……!)

それでも二撃目、三撃目と攻め続ける。
ゴブリンの動きは早い。棍棒の一撃が肩をかすめ、鈍痛が走る。

 

剣を逆手に握り直し、思い切り振り下ろす。

ガン!

鈍い音。何かが砕けるような感触とともに――

 

 バキィッ!

刃の半ばから、“レッドラスト”が真っ二つに折れた。

 

「っ……!」

思わず後ろへ跳び退る。手には折れた柄だけが残る。

ゴブリンが吠える。勝ち誇ったように棍棒を振り回しながら、間合いを詰めてきた。

 

(クソ……! でもまだだ)

ガアラはポケットの中でスマホを起動。すでに選択していた魔法が、胸の奥に熱を走らせる。

右手をかざし――叫ぶ。

 

「ファイアボールッ!」

火球が発射され、ゴブリンの胴体に直撃。
爆音と熱風。ゴブリンの身体が吹き飛び、倒れた。

 

静寂。

木漏れ日が揺れる森の中に、我亜羅の荒い息だけが残った。

 

足元に転がった折れた刃を拾い上げる。

赤錆に、黒焦げ、そしてひび割れ。
もはや使い物にならない。

 

「……マジかよ」

深いため息が漏れた。

(たった一戦で、折れるか……)

その隣には、倒したゴブリンの体。
胸を裂いて、魔石を抜き取る。

重く、冷たい。

「……あぁ。せめて金にはなってくれよ」

 



 

ギルドに戻り、受付へ魔石を差し出す。

「ゴブリンの魔石ですね。はい、銅貨80枚になります」

たった80枚。
魔物を相手に命を懸けた対価。

財布の中でジャラジャラと鳴るその音が、妙に軽く響いた。

 

その足で向かったのは、あの露店の武器屋。

「……剣が、折れました。処分品でもいい、もう一本ください」

無言で頷いた店主が出してきたのは、錆は少なめで、歪みのない一本。

装飾はない。ただの片手剣。

「80枚でいい」

ガアラは黙って銅貨を差し出し、それを受け取った。

 

剣を手に取った瞬間、ぼそっと呟く。

「“レッドラスト2”だな……」

名前をつけた理由は、自分でもよくわからない。
ただ、そう呼ばなきゃやってられない気がした。

 

財布は空っぽ。
剣は安物。
剣は、また折れるかもしれない。

 

それでも。

ガアラは剣を腰に差し、黙って歩き出した。

明日も、戦うために。


---
剣を折って再購入した翌朝から、ガアラは再び倉庫街で荷運びを続けた。

 

「おう、今日も来たか」

ラモンは相変わらず明るく、重い荷をひょいと持ち上げながら言う。

「最近、鍛え直してんのか?」

「まぁ……前回、ちょっと“折れた”んで」

「ほぉ。また面白ぇ話が聞けそうだな。まぁ聞かねぇけどな!」

 

笑い合いながら荷を運ぶ。

だがガアラの本心は違った。

(ゴブリンで“食っていく”には、どれだけ倒せばいい? 剣はどのくらいもつ? 魔石だけじゃなく、装備品で報酬が増えるって話もある)

昼の休憩、パンをかじりながらラモンに話を振ってみた。

 

「ラモンさん、ゴブリン討伐では魔石以外にも“装備品”を売ったりしてるんですか?」

「お、興味出てきたか。あるある。……武器とか。
ただし、状態が悪いと減額される。焼けたり潰れたりしてるとアウトだ」

「……厳しいですね」

「そうだな。あと、ゴブリンは意外と装備してる布鎧とかを売るのも手だな」

 

(なるほど、なるべく形を残す方向で戦うのが“食っていく”ポイントか)

 

2日目の夜。
ガアラはギルドの受付でも情報を集めてみた。

 

「討伐のことで聞きたいんですが、みんなどうやってゴブリンで稼いでいますか?」

受付の青年が笑顔で答える。

「ゴブリンなら、魔石で銅貨80枚前後。
武器や装備を売ればさらに+数十枚ってところですね」

「……1体で、最大150くらい?」

「うまくやれば、です。回復薬や装備の消耗も考えれば、効率はあまり良くないですけどね」

「けど、毎日1体倒せば……生きていけるか」

「ええ。実際そうしてる人、少なくないですよ」

 

翌日。

3日目の荷運びの合間、近くで木箱を積んでいた中堅冒険者風の男がガアラに声をかけてきた。

 

「お前、剣買ったろ。錆びたやつから変えたな?」

「え? ああ……」

「俺も昔そうだった。なまくら使って、ゴブリンに刀身砕かれた」

「やっぱ、あるんですね……」

「あるある。だから言っとく。1日1体で満足してると、すぐ詰むぞ。3体倒してようやく余裕。
ただし、装備と体力がもつならな」

 

(……3体。そうか。1体じゃ“生活できる”だけ。強くなるには、もっと狩らなきゃならない)

その夜、ガアラは宿の窓辺で剣を拭きながら、心を固めていた。

 

「明日からは、“稼ぐため”じゃなく、“戦うため”に動く」

“ゴブリンで食っていく”のではなく、
“ゴブリンを越えていく”ために。


---

「今日は剣だけで、いく」

いつものようにギルドで常駐依頼を確認だけ済ませ、ガアラは森に入った。

(MPは回復してるけど、もうムダ撃ちはしない。火球は切り札だ)

今の自分には《剛力LV1》がある。
筋力ステータスは明らかに常人以上。剣の重さも、相手の体重も、恐れる必要はない。

 

1体目――草の茂みに隠れていた小柄なゴブリン。

気づいた瞬間、棍棒を振り上げて突っ込んでくる。

(正面から、力勝負だ!)

ガアラはレッドラスト2を振り抜く。
剣と棍棒が正面でぶつかる――

ゴッ!

衝突音とともに、棍棒の方が大きく撓んだ。

(押し勝った!)

そのまま刃を引き下ろし、ゴブリンの肩から胸を切り裂く。悲鳴とともに倒れる敵。

「……よし、1体」

魔石を抜き取り、装備は捨てた。どうせ20や30にしかならない。

 

2体目は少し背の高い個体。剣を構え、踏み込み――一撃!

腕を斬る。ゴブリンがのけぞるが、反撃してくる。

ガアラは後ろに下がらず、足を踏み込んで強引に剣を押し込む。

(いける!)

斬撃ではなく、力任せの突き。

刃が鎖骨を貫き、骨を砕いて体を崩す。

「2体目」

息は切れてきたが、MPは温存できている。

 

3体目――問題児。盾を持ち、革の胴鎧。
慎重に間合いを取り、こちらを牽制してくる。

(こいつだけは、魔法を使うしかないか……)

そう思ったが――

(いや……使わず倒す。盾をどう崩すかだ)

相手が構えた瞬間、地面の小石を蹴り飛ばす。
ゴブリンが目を細め、思わず盾を上げる。

その隙に回り込み、後ろから足元へ低い一撃。

盾が間に合わず、膝裏に命中。バランスを崩した瞬間に剣を突き立てる。

倒れるゴブリン。荒い息。

「……3体目」

最後まで魔法を使わず倒し切った。

HPは少し減っているが、体は動く。
MPは温存。今後の連戦も想定できる。

 

ギルドに戻り、魔石3つを提出。

「魔石3個、状態良好。報酬は銅貨240枚です」

それだけ。だが確かな“成果”。

剣一本、筋力頼りの戦いでも――ここまでやれる。

ガアラは宿へ帰り、静かに剣を磨きながら、思う。

(……まだいける)


---
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