スマホ片手に異世界ライフ! ~神様のアプリで無敵冒険者~

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第1章

Dランク

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ギルドのカウンター前。
受付の青年が、いつもの調子で声をかけてくる。

「お、ガアラさん、リィナさん。ふたりとも、Dランク試験受けられますよ。条件、しっかり満たしてます」

「へぇ、そろそろか」

「私も受けられるんだ?」

リィナが少し意外そうな顔をしたが、すぐに軽く頷いた。

「じゃあ、申し込んどいて。あたしも受ける」

「当然。俺も受けるよ」

青年が笑いながらメモを取る。

「了解、じゃあ明日。昼から訓練場で模擬戦。相手はギルドの試験担当職員。木剣での実技だから、気楽にね」

「……気楽って言われると逆に緊張するんだが」

「え、そう? あんたは鈍そうに見えて意外と慎重だよね」

「おい、褒めてんのかそれ」

 



 

翌日。ギルド裏の訓練場。
模擬戦を見る冒険者がちらほら集まっている。

試験官として立っていたのは、肩幅の広い中年男性。
短く刈った髪に無精髭、木剣を軽く振りながらふたりを見る。

「俺がグレッグ。元Bランク。今はこうして模擬戦担当してる。ま、軽く手合わせって感じだ。殺し合いはなし」

「よろしく」

「お願いします」

「木剣、使い慣れてるか? まあこっちが折っても責任取らねえけどな」

冗談交じりに笑うグレッグに、リィナが淡々と返す。

「そっちが怪我しなきゃいいけど」

「ほう……頼もしいな。じゃ、まずはそっちのガキ――ガアラからいこうか」

「はいはい、どうも“ガキ”で悪いな」

ガアラが苦笑しつつ前へ出る。

 

合図とともに、模擬戦が始まる。

グレッグの踏み込みは鋭い。
けれどガアラは動じず、木剣を受け流しながら反撃の構えに移る。

「っ……お前、落ち着いてるな」

ガアラは素早く足を踏み出し、手首を狙った斬撃を返す。

グレッグがそれを受け止め、にやっと笑った。

「……よし、合格。充分動けてる。文句なし」

 

続いてリィナが前に出る。

「準備いいか?」

「うん。いつでも」

合図と同時に、リィナが低く構えたまま突っ込む。
その速さに、グレッグの目がわずかに見開かれる。

「っと……!」

振り下ろした木剣を軽くかわし、リィナの短い突きがグレッグの胴にあたる。

「……終わり。合格」

木剣を下ろしたグレッグが笑いながら言った。

「正直びっくりした。二人とも、普通にDランク以上の動きだ。よく鍛えてるな」

 



 

試験後、ギルドから銀色の新しいランクバッジが支給された。
胸元につけると、なんだか少しだけ気分が違う。

「Dランクか。ちょっとは“冒険者”って感じがしてきたな」

「まあ、Eよりはマシだね。……次から、依頼の幅も増えるし」

「稼げるってことだな?」

「そうとも言う」

ふたりは並んでギルドをあとにした。
まだまだ未熟。でも、確かに一歩を踏み出した感覚があった。


---

ギルドの掲示板。
Dランクに昇格したばかりのガアラとリィナは、依頼票を並べる上段に目を向けていた。

「……この辺、ようやくマシな報酬って感じ」

「金額もだけど、敵も一段階強くなってるな」

目を止めたのは、ひときわ泥くさい一枚の依頼。

【スケイルトードの討伐依頼】
対象:北西の沼地に出没する魔物(1体につき銀貨1枚+魔石換金)
備考:小型だが跳躍力と粘着舌に注意。鱗は硬め。

「スケイルトード、だったっけ? カエルっぽい魔物か」

「うん。鱗で覆われてて斬りにくいけど、動きは単純。腹と関節が弱点」

「試しがてら、行ってみるか。何体狩れるか次第で稼げそうだ」

 



 

北西の沼地。
ぬかるんだ地面に足を取られながら、ふたりは慎重に進んでいた。

「……見つけた。左に2体、奥にも気配がある」

「じゃ、まずは手前から。うまく誘き出せ」

ガアラが石を投げ、水面に波紋を立てる。
バシャッと水音が響き、スケイルトードが跳び出してきた。

「来た」

舌が伸びるが、ガアラがそれを弾いて距離を詰める。
リィナが脇から滑り込み、短剣で関節を突いた。

「硬っ……でもいける!」

ガアラの剣が脇腹に斬り込み、一体目が沈む。

「すぐ、次」

もう一体が跳びかかる。
リィナが回避して足を狙い、ガアラが真正面から斬撃を浴びせた。

「二体目、討伐」

汗を拭く間もなく、奥の茂みからもう二体が現れる。

「来る。……連戦、いける?」

「体力的には平気。集中しよう」

三体目は動きが速く、舌の勢いも強い。
リィナが一瞬バランスを崩したところをガアラがすかさず割って入り、木の根元に押し込んで切り伏せる。

四体目は慎重に距離を保っていたが、二人でじわじわ包囲する形に。
一瞬の隙を突き、リィナの短剣が目を狙い、ガアラの剣が喉を貫く。

「……終わり。四体、討伐」

「数は多かったけど、連携は悪くなかったな」

「動きも見えてた。斬り方も、慣れてきたでしょ」

「うん。剣、ちゃんと馴染んできた気がする」

 



 

ギルドへ戻ると、受付の青年がふたりの姿に目を丸くした。

「お帰りなさい! えっ、四体!? すごいな……えーっと、1体銀貨1枚だから、基本報酬で銀貨4枚。魔石換金が銀貨1枚分相当……合計で銀貨5枚です」

「ありがと。問題なくこなせたよ」

ガアラは静かに銀貨を受け取り、リィナと半分ずつ分ける。

「銀貨2枚ずつ、残りは食費にでも回そっか」

「そうだな。今日はよく動いた」

ふたりは歩きながら、どこか満足げな表情を浮かべていた。

Dランク初依頼にして、確かな成果。
次に進む準備は、もうできている。


---

スケイルトードの討伐を終えたその夜。
街の灯りが落ち着く頃、ガアラはいつもの宿のベッドに体を沈めていた。

「ふぅ……やっぱ、四体はそれなりに疲れるな」

軽く体を伸ばし、荷物をまとめ直す。
剣も鞘に収め、スマホをテーブルに置いたとき――

 

ピン……

突然、画面が明るく点灯し、通知が表示された。

> 【新アプリ通知】
新たなアプリを入手できます。
ダウンロードを開始しますか?
※所要時間:約6時間



「……おっ、来たか」

ガアラは迷わず「YES」をタップする。
画面に“DL中”の表示が現れ、プログレスバーがゆっくりと伸びていく。

 

> 【インストール予定アプリ】
・地図アプリ(詳細な地形・施設・位置情報)
・気配察知アプリ(敵/味方の位置を感知)
※両アプリは連動機能に対応。地図上にリアルタイムで敵味方の位置が表示されます。



「……マジか。これ、めっちゃ便利じゃん」

頭の中で即座に使い道が浮かんでくる。
視界が悪い森やダンジョン。後方に回り込む敵、リィナの位置把握……戦闘でも索敵でも圧倒的に有利だ。

「気配察知って……魔法とかスキルじゃないんだな。アプリでやっちゃうって、どんな理屈だよ……」

スマホは今日も無言のまま光を放っていた。

 



 

夜は静かだった。

時折、街の路地を歩く人の声が遠くに聞こえる程度で、部屋の中には微かに木製ベッドの軋む音と、スマホの低い動作音だけが響いていた。

ガアラは毛布を引き上げながら、最後にスマホへ目をやる。

「地図アプリに気配探知……。次の依頼、もっとやれることが増えそうだな」

そう呟くと、静かに目を閉じた。

明日――
世界の見え方が、また一段階変わる気がしていた。


---
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