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第1章
剣の真価
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翌朝。
ガアラは腰に下げた赤い柄の黒い剣を手に、街の鍛冶屋通りを歩いていた。
向かっているのは、昨日買ったレムド工房ではない。
そこは良い武器を扱う店ではあったが、修理や研ぎに関しては少々荒っぽいと聞いた。
(せっかく買ったんだ。手入れは専門の鍛冶屋に任せたい)
そう考えたガアラは、冒険者たちの噂で聞いていた修繕専門の鍛冶屋《ヨルドの炉》を目指すことにした。
通りの奥、煙突から黒煙を上げる年季の入った建物。
その看板には、錆びた剣と磨かれた剣が交差した紋が彫られていた。
扉を開けると、熱気と鉄の匂いが鼻を突く。
中には丸太のような腕をした男――頑固そうな職人がひとり、黙々と鉄を打っていた。
ガアラが近づいて声をかけると、男は槌を止めて目を上げた。
「……あんた、武器の修理か?」
「ああ。この剣を、どうにか使えるようにしてほしい」
そう言って、ガアラは赤い柄の剣を台の上に置いた。
男――鍛冶師ヨルドは無言で鞘を抜き、刃を睨むように見つめる。
「こりゃ……ひでぇな」
と、すぐにうなった。
「錆びてるだけじゃない。芯まで水気を吸ってやがる。
放っときゃ次に一振りしただけで折れるかもしれん。こいつを“戦える剣”にするには、研ぎ直しと焼き戻し、それに柄の締め直しがいるな」
ガアラは真剣な顔で頷いた。
「……頼めるか?」
ヨルドは短く唸り、作業台の隅に剣を置いて腕を組んだ。
「3日あれば仕上げてやる。だが安くねぇぞ。銀貨3枚分の仕事だ」
ガアラは即答しかけて、財布を探った……そして、小さく呻いた。
(……昨日、全部払ったばかりだ)
「すまない。今は手持ちがない。3日後、支払いと引き換えで引き取りに来る。約束は守る。だから預かってもらえないか?」
ヨルドはしばらく無言だったが、やがて腕を組みながら低く笑った。
「……いい目してる。剣を雑に扱う奴の顔じゃねぇ。わかった。3日後に金と引き換えで渡す。逃げたら……次に来た冒険者に売ってやるだけだ」
ガアラは深く頭を下げた。
「……本当に、ありがとうございます」
ヨルドは無造作に布をかぶせ、剣を棚へ運びながら言った。
「良い鉄だ。眠ってただけだな。使い手が目覚まさなきゃ、何の意味もないが……さて、お前はどうだ?」
◆
工房を出ると、朝の陽射しがまぶしかった。
門のそばで待っていたリィナが、ガアラを見て軽く手を振る。
「終わった? ちゃんと預かってもらえた?」
「ああ。三日後に金を払って、引き換えだ」
「ふふ、やること増えたわね。じゃあ、稼がないとね」
「三日で銀貨三枚……それなりに動く必要があるな」
リィナがくすっと笑いながら言った。
「じゃあ今日から稼ぎモードよ、相棒さん」
ガアラも笑みを返した。
こうして、剣が鍛え直される三日間――
彼らの、静かで忙しい稼ぎの日々が始まる。
---
陽が昇ると同時に、ガアラとリィナは街を出た。
剣はまだ鍛冶屋に預けたまま。代わりにガアラの腰には、古びた片手剣が吊るされていた。切れ味は鈍いが、当面の稼ぎには十分だった。
「じゃあ、3日間で銀貨3枚。できればそれ以上稼ぎたいわね」
リィナが軽快に弓を構えながら言う。
「無茶はするなよ。今回は装備が控えめだからな」
「そっちこそね。例の剣、ちゃんと戻ってくるといいけど」
初日はゴブリン、スライム、時折現れる野犬型の魔物を中心に討伐した。体力の消耗を抑えつつ、効率重視で数をこなす。リィナの正確な弓と、ガアラの剣捌きは息が合ってきており、以前のように手こずることは少なかった。
2日目は、やや遠出してオークの縄張りに踏み込んだ。危険はあったが、その分報酬は高い。
「この辺り、オークが増えてるって噂だったけど……いた」
茂みをかき分ける音と共に、二体のオークが現れた。
「挟み込む!」
リィナの矢が先制で1体を牽制、ガアラは剛力の力を込めた一太刀で真正面から切り込む。重量のある棍棒が唸りを上げるが、ギリギリで弾いて滑り込むように斬撃を叩き込んだ。
「よし、1体!」
二体目は少し手こずったが、リィナの支援と連携で撃破。剣術の技も体に馴染みつつあり、動きに迷いが無くなってきていた。
夕方には魔石と証明部位が袋いっぱいになっていた。
「……明日で仕上がるのよね、剣」
「それまでに、もう一段階強くなっておきたい」
3日目。朝から快晴。空は高く澄み渡り、草の匂いが風に運ばれてくる。
この日は前2日よりもさらに討伐に集中した。休憩を最小限にし、同じエリアを周回するように巡る。
ゴブリンはもはや苦戦相手ではない。集団相手にも慌てず、ガアラの剣が踊る。
「筋力が上がってきてるの、実感ある?」
「うん。以前の剣なら今頃折れてたと思う」
夕暮れ時。宿に戻る途中、街の外れでふと立ち止まる。
「そろそろ、ステータス確認しておくか」
ガアラはポケットからスマホを取り出し、操作する。
【ステータスオープン】
淡い光と共に、半透明の画面が空中に浮かび上がる。
―――――――――――――――
■ステータス レベル:7
HP:460 MP:120
筋力:90(剛力Lv3補正含む) 魔力:40 敏捷:78 器用さ:52 知力:42 運:37
■スキル
・HP回復量増加Lv5
・剛力Lv3
・剣術Lv3
・隠密Lv1
―――――――――――――――
リィナが横から覗き込んで小さく笑う。
「……やっぱり、強くなってるじゃない。前とは動きも違うし」
「実感はある。でも、まだ足りない」
「真面目だなあ。……でも、それがあんたらしいかも」
ガアラはスマホを閉じ、遠くの空を見上げた。
(明日、剣が戻ってくる。俺が選ばされた、この世界の“相棒”……)
そしてまた、次の戦いが始まるのだと、自然に思えた。
翌朝、ヨルドの鍛冶工房にはまだ陽が差し込んでいなかった。だが、炉の奥では既に火が焚かれ、重い槌音が響いていた。
扉を開けると、ヨルドはちらりとこちらを見た。
「来たか。……約束通り、仕上がってるぜ」
そう言って奥から取り出されたのは、すっかり錆を落とされ、鈍く黒光りする刃を持った剣だった。柄の朱色も鮮やかに蘇っている。
「こいつ、鍛え直してみてわかったが……不思議なもんだ。何度研いでも、芯に妙な“魔気の通路”みたいなものがある。普通じゃねぇ」
ガアラは黙って剣を受け取った。
手に持った瞬間、確かに感じる。“手に馴染む”。
重さも、柄の角度も、まるで最初から自分の剣だったかのように自然だった。
「……ありがとう。必ず活かしてみせる」
ヨルドはにやりと笑って、銀貨3枚を確認した。
「言ったな。その剣、ようやく眠りから目覚めたって顔してるぜ」
ガアラは剣を腰に下げ、歩き出す。
(……これから、こいつと生きていくことになる)
それはまだ“名剣”とは呼ばれていない。けれど、彼の中で少しずつ、何かが確かに始まっていた。
朝、東の森。
静かな空気の中、ふたりの足音が土を踏む。
「……その剣、使えるようになった?」
隣を歩くリィナが問いかける。
視線は前を向いたままだが、声にはわずかな関心がこもっている。
「ああ。昨日受け取ってから、ずっと手元で馴染ませてた」
ガアラは腰の剣――黒い刀身に赤い柄の“あの剣”に軽く触れる。
まだ名前はない。けれど、手に吸い付くような感触は悪くない。
「じゃあ、ちょうどいい。ここら、オークが一体で出ること多いし」
「試し切りにはうってつけだな」
「うん。でも、深追いはナシ。まずは感触だけ」
ふたりは短く頷き合い、森の奥へと足を進めた。
◆
それは、不意に現れた。
「……いた。前方、オーク1体。棍棒持ち」
リィナが低く、淡々と告げる。
魔力が彼女の体を包み、身体強化の気配が立ち上がる。
「私が先に動く。引きつけるから、合わせて」
「了解」
その瞬間、リィナが地を蹴る。音もなく一気に加速し、オークの懐に踏み込んだ。
「ッ!」
棍棒が振り下ろされる前に、リィナの拳がオークの脇腹を叩く。
巨体がぐらりと揺れ、わずかな隙が生まれる。
「今!」
ガアラは剣を抜き、斜めに一閃。
黒い刃が唸りを上げて、オークの肩口を斬り裂いた。
「――っ!」
反撃の棍棒が振るわれる。
だがリィナがすぐに足を払って動きを止め、続けて言う。
「もう一撃、いける!」
「任せろ」
ガアラは構えを変え、腰を落としたまま踏み込む。
剣を逆手に持ち替え、下から斬り上げる。
重い手応え。
腹を断たれたオークが、呻きと共に膝をつき、そのまま地に伏した。
静寂。
ガアラは息を整えながら剣を拭い、呟く。
「……悪くない。剣、素直に動く」
「見ててわかった。振りにブレなかった」
リィナは魔石を回収しながら、ちらりと視線を向ける。
「軽く扱ってたわりに、深く斬れてたよ。……相性、いいかもね」
「そうだといいんだけどな。初撃で入りが浅かったら不安だったけど……剣も体も、悪くなかった」
「……うん。無理してないのが良かったと思う」
ふたりは静かにうなずき合う。
派手さはないが、確かな“手応え”はそこにあった。
「もう一体くらいやる?」
「……いや。今日はこれで十分だ。無理して壊しても意味ない」
「わかった。戻ろっか」
森を抜ける帰り道、ふたりの足取りは軽かった。
剣の初陣は、上々の結果だった。
---
ガアラは腰に下げた赤い柄の黒い剣を手に、街の鍛冶屋通りを歩いていた。
向かっているのは、昨日買ったレムド工房ではない。
そこは良い武器を扱う店ではあったが、修理や研ぎに関しては少々荒っぽいと聞いた。
(せっかく買ったんだ。手入れは専門の鍛冶屋に任せたい)
そう考えたガアラは、冒険者たちの噂で聞いていた修繕専門の鍛冶屋《ヨルドの炉》を目指すことにした。
通りの奥、煙突から黒煙を上げる年季の入った建物。
その看板には、錆びた剣と磨かれた剣が交差した紋が彫られていた。
扉を開けると、熱気と鉄の匂いが鼻を突く。
中には丸太のような腕をした男――頑固そうな職人がひとり、黙々と鉄を打っていた。
ガアラが近づいて声をかけると、男は槌を止めて目を上げた。
「……あんた、武器の修理か?」
「ああ。この剣を、どうにか使えるようにしてほしい」
そう言って、ガアラは赤い柄の剣を台の上に置いた。
男――鍛冶師ヨルドは無言で鞘を抜き、刃を睨むように見つめる。
「こりゃ……ひでぇな」
と、すぐにうなった。
「錆びてるだけじゃない。芯まで水気を吸ってやがる。
放っときゃ次に一振りしただけで折れるかもしれん。こいつを“戦える剣”にするには、研ぎ直しと焼き戻し、それに柄の締め直しがいるな」
ガアラは真剣な顔で頷いた。
「……頼めるか?」
ヨルドは短く唸り、作業台の隅に剣を置いて腕を組んだ。
「3日あれば仕上げてやる。だが安くねぇぞ。銀貨3枚分の仕事だ」
ガアラは即答しかけて、財布を探った……そして、小さく呻いた。
(……昨日、全部払ったばかりだ)
「すまない。今は手持ちがない。3日後、支払いと引き換えで引き取りに来る。約束は守る。だから預かってもらえないか?」
ヨルドはしばらく無言だったが、やがて腕を組みながら低く笑った。
「……いい目してる。剣を雑に扱う奴の顔じゃねぇ。わかった。3日後に金と引き換えで渡す。逃げたら……次に来た冒険者に売ってやるだけだ」
ガアラは深く頭を下げた。
「……本当に、ありがとうございます」
ヨルドは無造作に布をかぶせ、剣を棚へ運びながら言った。
「良い鉄だ。眠ってただけだな。使い手が目覚まさなきゃ、何の意味もないが……さて、お前はどうだ?」
◆
工房を出ると、朝の陽射しがまぶしかった。
門のそばで待っていたリィナが、ガアラを見て軽く手を振る。
「終わった? ちゃんと預かってもらえた?」
「ああ。三日後に金を払って、引き換えだ」
「ふふ、やること増えたわね。じゃあ、稼がないとね」
「三日で銀貨三枚……それなりに動く必要があるな」
リィナがくすっと笑いながら言った。
「じゃあ今日から稼ぎモードよ、相棒さん」
ガアラも笑みを返した。
こうして、剣が鍛え直される三日間――
彼らの、静かで忙しい稼ぎの日々が始まる。
---
陽が昇ると同時に、ガアラとリィナは街を出た。
剣はまだ鍛冶屋に預けたまま。代わりにガアラの腰には、古びた片手剣が吊るされていた。切れ味は鈍いが、当面の稼ぎには十分だった。
「じゃあ、3日間で銀貨3枚。できればそれ以上稼ぎたいわね」
リィナが軽快に弓を構えながら言う。
「無茶はするなよ。今回は装備が控えめだからな」
「そっちこそね。例の剣、ちゃんと戻ってくるといいけど」
初日はゴブリン、スライム、時折現れる野犬型の魔物を中心に討伐した。体力の消耗を抑えつつ、効率重視で数をこなす。リィナの正確な弓と、ガアラの剣捌きは息が合ってきており、以前のように手こずることは少なかった。
2日目は、やや遠出してオークの縄張りに踏み込んだ。危険はあったが、その分報酬は高い。
「この辺り、オークが増えてるって噂だったけど……いた」
茂みをかき分ける音と共に、二体のオークが現れた。
「挟み込む!」
リィナの矢が先制で1体を牽制、ガアラは剛力の力を込めた一太刀で真正面から切り込む。重量のある棍棒が唸りを上げるが、ギリギリで弾いて滑り込むように斬撃を叩き込んだ。
「よし、1体!」
二体目は少し手こずったが、リィナの支援と連携で撃破。剣術の技も体に馴染みつつあり、動きに迷いが無くなってきていた。
夕方には魔石と証明部位が袋いっぱいになっていた。
「……明日で仕上がるのよね、剣」
「それまでに、もう一段階強くなっておきたい」
3日目。朝から快晴。空は高く澄み渡り、草の匂いが風に運ばれてくる。
この日は前2日よりもさらに討伐に集中した。休憩を最小限にし、同じエリアを周回するように巡る。
ゴブリンはもはや苦戦相手ではない。集団相手にも慌てず、ガアラの剣が踊る。
「筋力が上がってきてるの、実感ある?」
「うん。以前の剣なら今頃折れてたと思う」
夕暮れ時。宿に戻る途中、街の外れでふと立ち止まる。
「そろそろ、ステータス確認しておくか」
ガアラはポケットからスマホを取り出し、操作する。
【ステータスオープン】
淡い光と共に、半透明の画面が空中に浮かび上がる。
―――――――――――――――
■ステータス レベル:7
HP:460 MP:120
筋力:90(剛力Lv3補正含む) 魔力:40 敏捷:78 器用さ:52 知力:42 運:37
■スキル
・HP回復量増加Lv5
・剛力Lv3
・剣術Lv3
・隠密Lv1
―――――――――――――――
リィナが横から覗き込んで小さく笑う。
「……やっぱり、強くなってるじゃない。前とは動きも違うし」
「実感はある。でも、まだ足りない」
「真面目だなあ。……でも、それがあんたらしいかも」
ガアラはスマホを閉じ、遠くの空を見上げた。
(明日、剣が戻ってくる。俺が選ばされた、この世界の“相棒”……)
そしてまた、次の戦いが始まるのだと、自然に思えた。
翌朝、ヨルドの鍛冶工房にはまだ陽が差し込んでいなかった。だが、炉の奥では既に火が焚かれ、重い槌音が響いていた。
扉を開けると、ヨルドはちらりとこちらを見た。
「来たか。……約束通り、仕上がってるぜ」
そう言って奥から取り出されたのは、すっかり錆を落とされ、鈍く黒光りする刃を持った剣だった。柄の朱色も鮮やかに蘇っている。
「こいつ、鍛え直してみてわかったが……不思議なもんだ。何度研いでも、芯に妙な“魔気の通路”みたいなものがある。普通じゃねぇ」
ガアラは黙って剣を受け取った。
手に持った瞬間、確かに感じる。“手に馴染む”。
重さも、柄の角度も、まるで最初から自分の剣だったかのように自然だった。
「……ありがとう。必ず活かしてみせる」
ヨルドはにやりと笑って、銀貨3枚を確認した。
「言ったな。その剣、ようやく眠りから目覚めたって顔してるぜ」
ガアラは剣を腰に下げ、歩き出す。
(……これから、こいつと生きていくことになる)
それはまだ“名剣”とは呼ばれていない。けれど、彼の中で少しずつ、何かが確かに始まっていた。
朝、東の森。
静かな空気の中、ふたりの足音が土を踏む。
「……その剣、使えるようになった?」
隣を歩くリィナが問いかける。
視線は前を向いたままだが、声にはわずかな関心がこもっている。
「ああ。昨日受け取ってから、ずっと手元で馴染ませてた」
ガアラは腰の剣――黒い刀身に赤い柄の“あの剣”に軽く触れる。
まだ名前はない。けれど、手に吸い付くような感触は悪くない。
「じゃあ、ちょうどいい。ここら、オークが一体で出ること多いし」
「試し切りにはうってつけだな」
「うん。でも、深追いはナシ。まずは感触だけ」
ふたりは短く頷き合い、森の奥へと足を進めた。
◆
それは、不意に現れた。
「……いた。前方、オーク1体。棍棒持ち」
リィナが低く、淡々と告げる。
魔力が彼女の体を包み、身体強化の気配が立ち上がる。
「私が先に動く。引きつけるから、合わせて」
「了解」
その瞬間、リィナが地を蹴る。音もなく一気に加速し、オークの懐に踏み込んだ。
「ッ!」
棍棒が振り下ろされる前に、リィナの拳がオークの脇腹を叩く。
巨体がぐらりと揺れ、わずかな隙が生まれる。
「今!」
ガアラは剣を抜き、斜めに一閃。
黒い刃が唸りを上げて、オークの肩口を斬り裂いた。
「――っ!」
反撃の棍棒が振るわれる。
だがリィナがすぐに足を払って動きを止め、続けて言う。
「もう一撃、いける!」
「任せろ」
ガアラは構えを変え、腰を落としたまま踏み込む。
剣を逆手に持ち替え、下から斬り上げる。
重い手応え。
腹を断たれたオークが、呻きと共に膝をつき、そのまま地に伏した。
静寂。
ガアラは息を整えながら剣を拭い、呟く。
「……悪くない。剣、素直に動く」
「見ててわかった。振りにブレなかった」
リィナは魔石を回収しながら、ちらりと視線を向ける。
「軽く扱ってたわりに、深く斬れてたよ。……相性、いいかもね」
「そうだといいんだけどな。初撃で入りが浅かったら不安だったけど……剣も体も、悪くなかった」
「……うん。無理してないのが良かったと思う」
ふたりは静かにうなずき合う。
派手さはないが、確かな“手応え”はそこにあった。
「もう一体くらいやる?」
「……いや。今日はこれで十分だ。無理して壊しても意味ない」
「わかった。戻ろっか」
森を抜ける帰り道、ふたりの足取りは軽かった。
剣の初陣は、上々の結果だった。
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