スマホ片手に異世界ライフ! ~神様のアプリで無敵冒険者~

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第1章

真実はどこに

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「……君が異世界の出身であるか否か、それを今ここで問うことに大きな意味はないのかもしれない」

アルトリアスは、地図の上に手をかざした。王都を中心とした大陸の等高線が、淡く魔力を帯びて浮かび上がる。

「だが、この“地図にない脅威”と戦うには、従来の王国の秩序では限界がある。君のような存在……境界を越えて現れた者の視点が必要だ。
今夜の襲撃は、ただの始まりだと私は見ている」

ガアラは、王太子の背中を黙って見つめていた。

「……“封印の柱”について、少しだけ話しておこう。君が知るべきことかもしれない」

アルトリアスの指が、地図の南端――“禁域”と記された小さな点に触れる。

「この国には3本の封印柱がある。王国建国よりはるか昔、天より降った“門”を封じるために建てられたと記録されている。
その柱の魔力が、最近、明確に脈動を始めた。封印が揺らぎ、まるで……“向こう側”がこちらを覗いているような感覚すらある」

「向こう側……?」

リィナが小さく聞き返す。

「私たちが“異界”と呼ぶ場所だ。いや……“元の世界”と呼ぶべきかもしれない。
過去の記録では、何人かの異世界の者がこの地に現れ、同じように世界を救ったり、乱したりしたとある。
――君は、その“再来”に思えてならない」

ガアラは拳を握る。

スマホが静かに震えた。

> 【システム通知:ワームホール反応に関する断片情報取得】
【封印柱No.3(南部領地・禁域)にて、座標反応が過去最大値を記録】



ガアラは画面を閉じ、言った。

「……なら、俺にできることがあるなら、やらせてくれ。もう、見てるだけってのは性に合わねぇんだ」

アルトリアスはふっと口元を緩めた。

「その覚悟、嬉しい。君がこの国にとって“導き手”となるか、それとも“嵐”となるかは……まだわからない。
だが、いずれ君は“柱”の前に立つことになるだろう」

カリアが、低く呟く。

「……その柱の向こうに、何があるのか……」

王太子は頷いた。

「“異形”がこちらに侵入してきたということは――逆もまた、可能ということだ。
我々の世界が、“侵略される”側ではなく、今度は“侵略する側”になるかもしれない」

重く、深い沈黙が落ちた。

王城の高窓から、朝の光が差し込む。

新しい一日が始まる――それは、世界の境界が崩れ始めた“運命の朝”だった。


王城を出た頃には、陽はすっかり登りきっていた。

だがその光は、どこか重苦しく、空気の中に残る戦いの残滓と、世界の“境界”が揺れ始めたことを静かに告げていた。

「……封印の柱、か」

ガアラは、王城の石畳を踏みしめながら呟いた。

「行くんだろうな、あの場所に」

リィナが、すでに決まっている未来を口にする。

「当然。向こうが“こっち”を覗いてるってんなら――こっちも向こうを見に行かなきゃ筋が通らない」

カリアは腕を組み、わずかに視線をそらす。

「……まさか、本当に“別の世界”が関係してるなんて思ってなかった」

「でも、あたしは信じてたよ。あんたのスマホとか、魔法にない感覚。あれは、絶対ここの常識じゃない」

カリアの言葉に、ガアラは静かに頷いた。

 


その夜、王都郊外の宿に戻ったガアラたちは、王太子直属の密使から封印柱に関する“特別通行証”を受け取った。

そこには、こう記されていた。

> 【南部禁域 封印柱第3座標帯・観測認可証】
許可者:アルトリアス王太子
対象:ガアラ一行(認識番号:不明)
目的:柱の状態監視および異常魔力波の調査



「これで、王国の誰にも止められずに“柱”まで行けるな」

「ええ。でも、あそこは“封印領”……立ち入った者の多くが、まともには帰ってこなかったって記録もある」

ルークが、過去の記録書を閉じながら言う。

「でも、やるしかない。あそこに“真実”がある」

 

 翌朝 ― 封印柱・第3柱への旅立ち

まだ陽の昇りきらぬ早朝。ガアラたちは南部へ続く街道へ馬車で向かっていた。

街を抜けた瞬間、空気の“密度”が変わったような錯覚を覚える。

まるで、世界の“内と外”を超えたような、静かで冷たい空間。

「このあたりから……魔力の流れが変わってる」

エリシアが風に揺れる草の匂いをかぎながら言った。

「前に感じた“スケルトン騎士”のあの空気に似てる……」

ガアラは小さく拳を握る。

(あの時の“試される感覚”……もう一度来るのか)

遠く、灰色に霞む丘の向こうに、“それ”は見え始めていた。

空へ突き立つような黒い柱。
地平線すら歪ませるような、魔力のうねり。

封印の柱――“異世界への口”。

そこが、彼らを待っていた。


---

丘を越えた瞬間、世界が変わった。

空は鈍い灰色。草木はわずかに黒ずみ、風の音がまるで“呻き声”のように聞こえる。

封印柱――それは巨大な黒曜石のような構造物で、地面から天へと突き立っていた。

柱の表面には、禍々しいまでに緻密な魔法陣と古代文字が幾重にも走っている。淡い光が脈打つように動き、まるで“呼吸”しているかのようだった。

「……これが、“封印柱”……」

カリアが、息をのむ。

「この魔力の密度……人間の領域じゃないわ。まるで“向こう側”の気配が……」

リィナが剣の柄に自然と手を置いた。

「注意。柱の周囲に、魔力の波が……ねじれてる」

エリシアが警告する。

その時だった。

――キィィィィィ……

耳鳴りにも似た音とともに、柱の根元にうごめく“何か”が現れた。

もやのように揺らめく影。

だが次の瞬間、それは“かたち”を持った。

禍々しい黒い殻と、金属のような光を帯びた腕。 瞳の代わりに、柱と同じ“脈動する紋章”が浮かび上がっている。

「……異形っ!」

ルークが叫ぶと同時に、ガアラが前へと躍り出る。

「来るぞ!」

 



影のような異形は一体だけではなかった。 柱の周囲の“地の裂け目”から、続々と這い出してくる。

「数は……五体以上!全員、警戒して!!」

カリアが叫ぶと同時に、魔法陣を展開。

「【エア・バースト】!!」

風の衝撃波が一体を吹き飛ばすが、奴らはひるまない。 逆に、動きが加速し――

「くっ……速い!」

リィナが一体の腕を受け止めるが、剣が軋むほどの衝撃。

「この……ッ!」

ガアラは【魔力纏い】を発動し、切り返す。

刃が異形の腹を裂く。 だが、手応えは“空気”を切ったような虚しさ。

(効いてない……!?)

その時、スマホのARが起動した。

> 【魔力構成解析中】 
【この異形は“こちらの世界”の法則では存在しない】
【弱点構造:首元/魔力核 - 可視化】



「弱点は、首の後ろだ!」

「了解!!」

 



戦いは熾烈を極めた。

だが、ガアラたちは確実に追い詰めていった。

ルークの魔力感知が敵の動きを先読みし、エリシアの結界術が攻撃を緩和。 カリアの風魔法が隙を作り、リィナが一撃を叩き込み、最後にガアラが魔力纏いと【魔刃】で切り裂く。

そして――

「魔刃、全力で行く!」

柱から浮かび上がる異形に向かって、ガアラが剣を構える。

魔力を全て収束し、視界に浮かぶARの【首元の構造解析】に照準を合わせる。

「くらえ――ッ!」

青白い斬撃が、闇を引き裂いた。

――ズバァアアアッ!!!

爆発的な光と衝撃。 柱の周囲の大地が、重く揺れる。

そして、異形たちは次々に“霧”となって崩れ去った。

 



しばらくして。

静けさが戻った柱の根元に、ルークが近づき、魔力測定具を掲げた。

「……これは……」

「どうした?」

「転送座標が……柱から外部に向かって“伸びてる”。 しかも、断続的に“開閉”してる……」

「それって……」

「誰かが、“この世界”から“向こう”へ行ってるか、あるいは“向こう”から来てる」

ガアラのスマホが、低く震えた。

> 【異世界ゲート構造:部分解析成功】 
【出口候補地点:異世界=日本・関東圏、推定】
 この柱は、“扉”だ



ガアラは画面を閉じ、ゆっくりと深呼吸をした。

(繋がってる……この世界と、俺の世界が)

やがて、静かな夕日が柱の黒い面を照らし始めた。

だが――誰もその美しさを口には出さなかった。

それは、まさに“終わり”と“始まり”の境界に立った証だった。


---
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