スマホ片手に異世界ライフ! ~神様のアプリで無敵冒険者~

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第1章

贖罪

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ギズマ――スキンヘッド三兄弟の長兄が、ゆっくりと膝をついた。
その後ろに、弟のゴロスとピートも続いて腰を下ろす。三人とも、顔に張り詰めた緊張と後悔が滲んでいた。

「……全部話すよ」

ギズマが、重い口を開く。

「数ヶ月前……あの“仮面の男”たちが接触してきた。最初は、ちょっとした情報を流すだけで金をくれた。……街の見張りの数とか、ギルドの出入りくらいだった」

「ふざけんな……!」

ジャグが低く唸ったが、ガアラが手で制する。

ギズマは続ける。

「でも、途中から“条件”が変わった。……情報だけじゃなく、協力しろってな。妹――“ティナ”を人質に取られてたんだ。俺たちに逆らえば、指一本ずつ送るって」

「妹……?」

カリアが驚きに眉を寄せる。

「……街の外れに住んでる。俺たちは、あいつらに逆らえなかった。仮面の男たちが次に狙う街、異形をけしかけるタイミング――全部、俺たちに運ばせた。……知らなかったんだ。あんな、あんな大惨事になるなんて……!」

ギズマの声が震え、俯いた顔が歯を食いしばっていた。

「今になって思えば、全部計算されてた。俺たちは“使い捨ての手駒”だったんだ……」

弟のピートが、ぽつりと呟く。

「金は、全部投げた。妹を返してくれれば、もうそれでよかったんだ。でも……返してくれなかった」

ガアラは静かに目を伏せ、言葉を探した。

「それでも、行動の責任はある。街の人たちは、命を落とした。……でも、今からでも止められるかもしれない。全部話してくれ。仮面の男たちのこと、知ってること、全部」

ギズマはゆっくりと頷いた。

「……わかった。ティナを、取り戻せるのなら――俺たちは、なんでも話す」

 

場に、ようやく重たい沈黙が降りた。

ジャグは怒りを抑えきれないまま、壁に背を預けて座り込む。

「……今度裏切ったら、本当に斬るからな。覚えとけ」

そう呟いて、ようやく剣を納めた。

それが、贖罪のはじまりだった。


翌朝、まだ街が動き出す前。
ガアラたちはスキンヘッド三兄弟を連れ、王都騎士団の本部へと向かった。

重たい足取りで歩く三兄弟の前を、ガアラは静かに歩く。
ギズマの表情には、諦めと覚悟が入り混じっていた。

 

騎士団本部――。

厳めしい石造りの建物の前で、門番の騎士に事情を伝えると、すぐに団長へ通される手筈が整った。

「ギルド推薦により、重要参考人として拘束。異形との関与について、徹底した尋問と調査を」

団長の重々しい言葉に、ギズマはただ小さく頷いた。
「……頼む。妹だけは、無事でいてくれ」と、誰にも聞こえぬよう呟きながら。

 

用件を終えた後、騎士団本部の前でジャグがガアラの横に立つ。

「……助けたつもりはねぇよ。アイツらが反省したって、死んだ奴は戻らねぇ」

「それでも、救える命があるなら、まだ遅くはない」

ガアラの言葉に、ジャグはふんと鼻を鳴らした。

「……お前と会ってから、やたら考えることが増えた。次は、剣だけで済ませられるといいな」

それは、別れの言葉だった。

「また会おう、ジャグ」

「その時は、もうちょいマシな顔で出迎えろよ」

短く笑い、ジャグは振り返らずに去っていった。

 

その夕方、ガアラたちは王都の自宅へと戻った。

「……ただいま」

扉を開けると、家政婦のフェリアがいつものように静かに迎えてくれた。

カリアが靴を脱ぎながら言う。

「……今日も、いろいろありすぎたわね」

「うん。でも、少しずつ進んでる」

リィナがリビングの椅子に座り、肩の荷を下ろしたように息をついた。

ガアラも、ソファに腰を下ろし、スマホを一度だけ見た。
通知は――今は、なかった。

「……今日は、ゆっくりしようぜ」

その言葉に、二人は笑って頷いた。

夜の帳が静かに降り、戦いの喧騒を癒やすような、穏やかな時間が流れ始めた。


翌朝、ガアラはリビングでフェリアと向き合っていた。
カリアとリィナは少し離れた場所で様子を見守っている。

フェリアは静かに言葉を紡いだ。

「……申し訳ありません、ガアラ様。私の両親は、このグラースの街におります。高齢で、今さら他の街へ移るのも難しくて……」

その表情には、いつものような穏やかさと、ほんの少しの寂しさがあった。

「無理は言えない。……これまでありがとう、フェリア。お前がいたから、助かった場面は何度もあった」

「もったいないお言葉です。こちらこそ……ずっと、皆様と一緒にいられたこと、本当に誇りに思います」

小さく頭を下げるフェリアに、カリアもリィナもそれぞれ歩み寄って抱きしめた。

「寂しくなるわね……でも、フェリアらしいわ」

「元気でな。たまには手紙でもくれ」

「はい、もちろんです」

 


数日後、ガアラたちは王都へと移る準備を終えた。

荷物を魔道具に詰め、グラースの家を最後に見回す。

「……この家も、しばらくの間だったけど、いろんなことがあったな」

ガアラが静かに呟くと、リィナとカリアもそれぞれ頷いた。

「ま、新しい拠点ができれば、また新しい冒険も始まるってもんよ」

「うん。これからは、王都が私たちの“根っこ”になるのね」

扉を閉めると、フェリアが門の前で見送ってくれていた。

「どうか、ご無事で。そして……またいつか、お会いできますように」

ガアラは、ゆっくりと頷いた。

「また会おう。必ず」

その言葉を最後に、馬車はゆっくりと王都へと向けて走り出した。

新たな拠点、王都での新生活――
それは、さらなる戦いと成長の幕開けでもあった。



王都に到着したその日の午後、ガアラたちは早速“新しい拠点”となる家を探し始めていた。

「さすが王都って感じね。家賃も高そうだわ……」
リィナが不動産案内所の掲示板を眺めながらため息をつく。

「でも、便利な場所がいいな。ギルドと市場には近いほうが安心だし」
カリアは地図を広げながら、候補エリアをチェックしている。

ガアラは手に持った資料を見つめながら、静かに考え込んでいた。
三人で暮らすには、そこそこ広くて、部屋数があり、できれば魔道具の設置が許可されている物件が望ましい。

「この『南門通りの町屋』ってのはどうだ? ギルドから歩いて十分、三部屋と地下倉庫付き」

「うわ、地下倉庫……なんか冒険者っぽいじゃん。いいかも」
カリアが目を輝かせる。

「ここなら人通りも多すぎないし、防衛も考えやすいわね」
リィナも好感触だった。

不動産屋の案内で、実際にその家を見に行く。

──そこは、石造りの二階建て。 古いが、しっかりとした造りで、手入れをすればすぐに使える状態だった。

「うん、悪くない。住むには十分すぎる」
ガアラが納得したように頷く。

「じゃあ……ここを“新しい拠点”にしましょうか」

三人の視線が重なり、自然と笑みがこぼれた。

こうして、ガアラたちは王都に“自分たちの家”を手に入れた。
新しい日常が、ここから始まる――。


翌日。

ガアラたちは朝から王都の商業区へ向かい、家具や生活用品の買い出しに奔走していた。

「ベッド三つに、机と椅子……あと収納棚と、鍋とか調理道具も必要だね」
カリアが紙に走り書きしていたリストを見ながら、忙しく歩く。

「日用品はこっちでまとめ買いしておくわ。ガアラ、運ぶの手伝って」
リィナはすでに数袋抱えていて、涼しい顔で頼んできた。

「こっちは荷物持ちか……まあいいけどよ」
ガアラは苦笑しながら袋を受け取る。

王都の市場は広く、品ぞろえも豊富だ。三人は必要なものを一通りそろえると、新居へと戻った。

 

午後。

新しい家は、すっかり生活感のある空間に変わっていた。

玄関には靴棚とコート掛け。
台所には新品の鍋が並び、二階の各部屋にはそれぞれベッドと収納家具が設置されていた。

「ふぅ……ようやく形になったわね」
リィナが腰に手を当てて、やや満足げにうなずいた。

「うん、もう今日からでも暮らせそう」
カリアがソファに座り込み、ぽふっと息を吐く。

ガアラもリビングの窓辺に腰を下ろし、外の夕焼けに染まる王都の街を見下ろしていた。

「……なんか、やっと一つ区切りがついた気がするな」
彼がぽつりと呟いた言葉に、二人は小さくうなずいた。

「でも、まだ旅の途中。今度は、ここから何を始めるか、ね」

「そうだな。強くなるためにも、情報を集めるためにも――ここは、踏み出すための“城”だ」

そうして、王都の新たな拠点での第一夜は、静かに更けていった。

 
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