スキル放出と神様落ちた。~異世界で始まる神様とチート旅。

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第1章

日常へ。

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牙影熊と赤熱狼との激戦を制した俺たちは、
森の奥へと残された“異様な魔力反応”を追っていた。

 

「おるな……まだ、近くに」
ミタマが鋭い視線を森の奥に向ける。

「この魔力の残滓、“人間のもの”じゃ」

 

「……この感触、間違いない。誰かが“見てた”んだ」

俺は《放出・感知波》で追跡する。

「でも……足跡も気配も、ここで消えてる」

 

「転移か、あるいは“気配を断つ術”か。
 どちらにせよ、わしらの手には負えぬのう」

 

「チッ……今回は逃げ切られたってことか」
ディアスが歯噛みする。

「おとなしく引き下がるのは癪ですが、
 これ以上深入りするのは得策ではありませんね」

 

「……ああ。今回はこれで切り上げよう。
 戦果は上々だったし、変に深入りして返り討ちにされたら元も子もない」

 

ミタマがうなずく。

「帰るかのう、ソウマ。……少しばかり、疲れたわい」

 

* * *

 

街へ戻った俺たちは、ギルドで正式な報告を行った。

 

「……上位魔物三体の同時出現に加え、
 “何者かによる監視の痕跡”……ですか」

受付係の女性が眉をひそめながら、メモを取っていく。

 

「原因の特定には至りませんでしたが、
 極めて異例の事態であることは間違いありません。
 上位部署へ正式に報告いたします。ご協力、感謝します」

 

「ま、俺たちは見事に片付けて帰ってきたってわけだ」
ディアスが軽く笑う。

 

「ふむ。“調査班が全滅”とかいう展開にならなかったのは、
 ひとえにこのわしの存在あってのことじゃな」

「“のじゃ口神様”ってあだ名がギルド内で広まってるらしいぞ、ミタマ」

「なんじゃと!?」

 

ギルド受付嬢が思わず笑う。

 

「今回の戦果、しっかり記録させていただきます。
 ソウマさんは特に、補助スキルの応用能力が高いと評価されていますよ」

 

「マジか……やっててよかった放出スキル」

 

* * *

 

数時間後――

 

「ふぃー……疲れたぁ」
俺は、街の広場近くのベンチに腰を下ろす。

 

「ん? パン屋で“焼きそばパンもどき”が売っておるぞ」

「絶対買う!!」

 

ミタマと二人、パン片手にのんびりとした夕暮れを味わう。

 

その時――

 

「……ソウマくん」

背後から声がして、振り返ると、ディアスがいた。

 

「今後も何かあったら、僕を呼んでくれて構いません。
 ほら、せっかく楽しい“仲間”ができたのでね」

 

「……お前、何気に良いヤツなのか?」

「……さあ、どうでしょう?」

 

金色の夕陽が、石畳を照らしていた。

俺は、異世界での“今日”という日常を、少しだけ好きになれそうだった。



「ふう……今日の依頼もなんとか終わったな」

 

街の掲示板に貼られていた軽めの依頼――
『倉庫の魔物(ネズミ型)退治』を片付けたソウマたちは、ギルドのカウンター前にいた。

 

「お疲れさまでしたー」
受付嬢が笑顔で頭を下げる。

「それと……今日みたいな日は、きっとお腹空いてますよね?」

 

「えっ、なんで分かるんです?」

「顔に書いてありますよ。“空腹!”って」

 

「それで……どこか、安くて美味いメシ屋、知らない?」

 

「ありますよ、ちょっと路地裏ですけど――
 “《赤獅子亭》”ってお店。量も多いし、味も保証します!」

 

「《赤獅子亭》……なんか強そうな名前だな」

「実際、店主さんが元冒険者でめっちゃ強いらしいですよ。
 昔は“紅の重斧(くれないのおもおの)”って呼ばれてたとか」

 

「なにそれ強そう。行くっきゃねぇ!」

「おお! わしも肉が食いたいぞ、肉が!!」

 

* * *

 

《赤獅子亭》は、ギルドの裏通りから石畳を抜けた先、
古びたレンガ造りの建物の一階にあった。

中に入ると、香ばしい肉とスパイスの香りが胃袋を刺激する。

 

「いらっしゃい――っと、おう、冒険者か」

 

カウンターの奥から現れたのは、無骨な腕組みの大男。
鋭い眼光、赤毛の短髪、がっしりした体躯。
それでいて、どこか笑顔が人懐っこい。

 

「俺がこの店の主、《ガルド》だ。メシ目当てなら任せとけ」

 

「お願いします!! 肉を! とにかく肉を!!」

「わしは酒も頼むぞ! ふふふ……異世界の酒というやつ、味見してみたいのじゃ」

「やめとけ、顔に出るタイプだろお前!」

 

料理が運ばれてくる。

《赤獅子プレート》:分厚いグリル肉と炊き込み麦飯、スパイス煮込みの野菜添え

《ギルドセット》:日替わり煮込み+パン+薄切りロース+卵スープ


 

「う、うめえぇ……!」

「む、この味は……香草の魔力か!? うむ、良きかな」

 

笑うガルドが皿をふいている。

「気に入ったか。うちは冒険者の腹を満たすための店だ」

 

「ガルドさん、さっき受付嬢から聞いたんですけど……元冒険者なんですか?」

 

「ああ。昔は“紅の重斧”なんて呼ばれてた。今じゃただの料理人だがな」

「やっぱ強かったんですね……」

「まあな。今でもよ、腕相撲なら街じゃ負けたことねえ。お前もいつか挑戦しな?」

「うわぁ、絶対負けるぅ!」

 

笑い合いながら、食事は進む。

 

「そういや、俺……この街の名前、ちゃんと聞いてなかったな」

 

「ここは《グランフィス》って都市だ。
 そしてこの土地を治めるのが《フェルゼ王国》。お前さんたち、旅の最中か?」

 

「ま、そんな感じです。異世界観光中ってとこですね」

「……ん? 今なんて?」

「なんでもないっす!!」

 

ガルドが豪快に笑う。

「よし、気に入った! また来な! 飯と話ならいくらでも出してやる!」

 

 

腹も心も満たされた夜。
ソウマたちは、《赤獅子亭》の明かりを背に、ほのかに笑いながら宿へと帰っていった。

 

次に待ち受ける“何か”に気づかぬまま――
今は、ただこの世界に、少しずつ馴染んでいく。


「……うわ、なんかすごい人だな」

 

グランフィスの中央通りに広がる露天市。
週に一度の“市の日”ということで、ソウマとミタマは人混みの中を歩いていた。

 

「いろいろな物があるのう……じゃが、わしはこの辺の“文化”までは詳しくないからのう。
 だが、“鑑定”で価値の有無くらいは見抜けるぞ」

 

「それ十分すぎるぐらい頼りになるけどね……」

 

* * *

 

場末の骨董屋の露店――
古びた装飾品や機械部品、用途不明の金属の欠片などが所狭しと並べられていた。

 

「ふむ……これは壊れておる……これもただの飾り……」

ミタマが一つずつ手に取りながら、青白く光る目で《鑑定》を使っていく。

 

「おっ……これは“生きとる”のう」

 

彼の指先が止まったのは、小さな金属製の箱。
取っ手の部分に装飾があるが、外見はほこりまみれでパッとしない。

 

「これ、中の細工がまだ動いておる。“隠し収納機構”付きじゃ。
 作動精度もかなり良い……どうやら“本物”のようじゃな」

 

「でもそれ、何かのブランドとか? 作られた時代とかは?」

「そこまでは分からぬ。わしは“神”じゃが、この世界の雑学は専門外じゃからな。
 使えるか否か、それが重要なのじゃ」

 

店主は軽く鼻を鳴らした。

「そいつ? 開かねぇし意味もわかんねぇし。銀貨1枚でいいや」

 

「――買います」(ソウマ)

 

* * *

 

街中の工芸ギルド。
そこでは古物や職人技術の品を扱う専門家が査定を行っている。

 

ギルド員が箱を見て、目を見開いた。

 

「これは……! “旧エルディア式”の隠し細工箱……!
 機構が生きてるのは非常に珍しい。保存状態も悪くない。
 この刻印、年代からしても少なくとも150年以上前のものですね」

 

「詳しいことは……専門家に聞け、ってやつだな」

「その通りじゃ。わしは“価値がある”と見抜いただけじゃぞ」

 

ギルド員が言った。

「買取希望でしたら、金貨1枚半でいかがです?」

 

ソウマの目が一気に開く。

「1……1枚半……!?」

 

ミタマが腕を組んでどや顔になる。

「ふふ、見る目の差というやつじゃな」

 

「ミタマ、ほんと頼りになる……マジ神だわ」

「そのとおりじゃ。もっと崇めてよいぞ?」

 

思いがけない掘り出し物と、思わぬ収入。
異世界での日常に、ちょっとした“成功体験”が刻まれた瞬間だった。
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