雑食読書日記 

水戸 淳

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海外文学

『セロトニン』 著:ミシェル・ウエルベック

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『セロトニン』
著:ミシェル・ウエルベック
発行:河出書房新社

名前が知的そうでSF感があったのであらすじを読まずに買ってしまった。すぐ後悔した。

元農業食糧省の契約社員の元エリート、フロラン=クロード・ラブルストは昔、日本人の恋人、ユズと同棲していたが、ある日、ユズが乱交パーティに行っているのでは疑い、彼女のパソコンを盗み見る。するとそこには乱交の映像だけではなく、犬と獣姦している映像を見て、フロランは自分が獣と同程度だと思われているんだとショックを受け、ユズを殺そうとする。しかし、たまたまやっていたドキュメント番組『蒸発者』を見て、自分も仕事を辞め、人間関係を全て絶つ『蒸発者』になる事にする。そんな経緯で『蒸発者』となってフロランがホテルに泊まりながら抗うつ剤を飲み、昔付き合っていた女とどんなセックスをしたか回想し、恨み節を吐く話。

かなりの量とドギツイ性的描写があり、主人公がゲイと女を見下すクズ野郎なので、読む人を選ぶ本だと思った。
未来への喪失感と絶望感を綿密に書いているので読んでいると自分の未来がお先まっくらではないかと感じてしまう恐ろしい本。
特に心に来たのが、フロランが宿泊先で火災報知器を壊してまでタバコを吸っていても満足感を得られず、ただ喪失感が薄くなるだけだったシーンを読んで、自分もいつか努力してもずっと満足感を得られない人生がくるのではないかとおもってしまってかなり気分が鬱になった。

とにかく読むと気分が鬱になる劇薬な小説なので読むときは注意した方がいい。
たやすく他人に勧められる本ではない。
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