青春ラブコメと無関係な世界

涼雪 涼

文字の大きさ
6 / 19
河鷺昂莉はイジメの対象

春の群青は相変わらず思春期を惑わせる

しおりを挟む
 ある文豪は言った。

 どうせ生きているからには、苦しいのは当たり前だと思え。

と。

 その通りだ。生きているのだから苦しさもある。辛いことだってある。死にたいと思う時も投げ出したいと思う時も、人間には必ずあるものだ。

 だが、反対意見だってある。

 確かに人は苦しんでその先を見ようと必死になる。けど、苦しんでその先を見る必要が本当にあるのか?

 いいではないか。楽しても。

 いいではないか。周囲の様子を窺って同じようにしなくても。

 理想は他人に押し付けるべきではない。理想は押し付けてはいけない。押し付けてもいいのは意見だけだ。

 俺は、河鷺を助けたい。

何から?イジメ?それとも憐れみの目から?無理だ。お前じゃ。

 無理なら、俺が…。

 お前が何になるんだ?

 俺が、悪になるだけだ。

 城桜と話したその日の夜。俺はベットの上で考えていた。明日から、河鷺はイジメられることはなくなるだろう。どころか、いじめ団とも本当の友人になっている。

 よく分からない人が多いと思うので1から説明させていただく。


 俺はあのあと、放課後にイジメ団を呼び出した。もちろん場所は最初俺がイジメを目撃した場所だ。

方法はまぁ、読書の諸君の想像力で補ってくれ。正当法ではないのは確かだ。

 本当に来るかは賭けだったが、そんな心配は杞憂に終わった。

「なんすか?あたしら今からスタバに行こうと思ってたんだけど」

 うわぁ。近くで見るとケバくて今どきのギャルって感じ。日焼けサロンで焼きました感が半端なく伝わってくる。

 しかも、わざわざ行き先まで言うとか!聞いてねぇし!しかも!スタバとか!オシャレな場所言ってますよアピールとか!マジパネェッス!

 軽く咳払いをして俺は話し始める。

「なぁお前らがイジメてる奴の事なんだがな」

「チッ。あの女、先輩にちくるとかないわー」

 顔を盛大に歪めて呟く。ここで重要なのは河鷺の名前を出さないこと。そして、河鷺の意思では無いことを示すこと。

「ああ、その事だけどな。イジメてる奴から頼まれて呼び出した訳じゃないんだ」

「てゆーか、あんた誰?あいつの何?」

 ふ。名乗れと言われては仕方ない。…イヤね?ここでこんな事言われるとかっこよく名乗りたいじゃん?かっこよく決めたじゃん?だから今こそ言ってやろう!

「俺はな、生徒会しっ」

「生徒会執行部の参謀役じゃよ」

 俺の後ろから城桜が出てくる。

 ちょっと待って?俺のかっこよく名乗るシーンは?俺のいいところは!?なし?なしなの?なしなのか!?

「ーーーっ!?しっしっ城、さ、桜、先、輩…!?」

 イジメ団たちが目を丸くして城桜を見る。コイツそんな有名なのか?

「お主はよくもまぁここまでやりおる。手紙内容は確か、『イジメの件で話がある。イジメていた馬鹿どもを連れて、昼休みにイジメていた場所に来い。来なければ教育委員会に訴える』じゃったかのう?」

 イジメ団は未だに顔面蒼白で震えている。コイツの何が怖いの?只の変態じゃないか。

 対して城桜はかんらからと笑っている。

「諦めろと言ったじゃろう。お主は分別もない子供か?」

「生憎だが俺は子供だ。それに、ここまで駆けつけたお前も子供だ」

「ふんっ。ぬかしおる」

 イジメ団のリーダーがようやく口を開く。

「何でここに城桜先輩が…」

「汝らが儂のコウをイジメていると聞いてのう。じゃが儂は手を引いておった。それがコウの罪なのじゃから。しかし、汝らはやり過ぎた。この男に見つかり、この男が行動してしもうた。儂は動かねばならんよ」

「なぁ」

 唇を固く結んでいるリーダーなに確認を取る。

「お前らは、あいつを利用道具としか思ってなかったのか?」

 すると、驚きの返事が返ってきた。

「そんなこと、そんなことないに決まってんじゃん!あいつのことそんな風に思う訳ない!」

と、リーダーと取り巻きが泣く。

 「?」

 おかしい。俺が聞いた話だと取り巻きが悪いはず。俺が見る限り、こいつらはマジ泣きしている。

 まぁそれは後で考えよう。

「なら、今すぐにでも河鷺に謝ってこい」

「あの娘があたしらをゆるしてくれるはずが」

「いいや許すね。あいつはあいつで非があった。だからお前らがイジメても抵抗もしなかったんだ」

「そう、だったんだ…」

「ああ、後もう一つ」

 ここだ。こいつらが河鷺と完璧に溝を埋め立て、仲良くなる為の土台。

「河鷺が生徒会執行部に入れられたのはな、全て俺の計画だ。俺が生徒会長をそそのかして河鷺を生徒会執行部へ加入させたんだ。お前らが互いに仲のいい奴らを、なぁんにも悪いことをしてない友人をイジメてる姿は最高に見物だった。楽しませっ」

 最後のセリフを言えなかった。頬を張られたのだ。誰に?ちなみに河鷺の友人(もういじめることはないので)ではない。

 なら城桜?それも違う。なんせ下の方から叩かれたから。

 俺の頬を張った手の元を見下ろす。そこには涙を流した河鷺がそこにいた。

「サイテーです!これ以上傷つけないでください!」

 その一言を残し、友人達を連れてどこかへ行ってしまった。恐らくスタバ。

「おうおう。また派手に叩かれたのう?」

 かんらからとまたも笑う城桜。

「正直に言って、マジで痛い」

 赤く腫れた頬をさすり、夕焼け色に染まった空を見上げた。

 痛いのは頬かはたまた心か。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話

そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん! 好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。 ほのぼのラブコメというか日常系小説 オチなどはなく、ただひたすらにまったりします 挿絵や文章にもAIを使用しております。 苦手な方はご注意ください。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...