青春ラブコメと無関係な世界

涼雪 涼

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城桜七乃はデートに憧れる

取嶺結汰は油断する

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 ベートーヴェンが作曲した"運命"の最初の伴奏は、人の運命の扉を叩く音らしい。

 では何故、運命の扉を叩くのか。

 これは持論なのだが、ある運命に入る時唐突に入られても準備が出来ていないのだ。手順を飛ばし、次の展開へ行こうものならば、運命が主人を突き放すだろう。理由は単純明快だ。その間に辛い試練があるのにも関わらず、苦痛や辛さから逃げ楽に生きようとしているのだから。

 例えば、しっかり働いているのに給料が少なく、逆にサボりほうけてる奴が給料をがっぽり稼いでいたらどうだろう?

 俺ならそいつを殴っている。こちとら金のために必死になって働いてんのにあいつら遊びほうけてんだぜ?

 まぁ言ってしまえばフラグか伏線を立てるか貼るかして次のステップへって感じだ。

 で、そのステップを俺は飛ばしてしまったらしい。

「お願いじゃ!」

 俺の足元で土下座している城桜。冷たい眼差しで俺を見る周囲の生徒達。

 ことの発端は数十分前に遡る。

 昼休み。俺は例のごとく河鷺のイジメに使われていた場所へ向かった。

 丁度体育館の渡り廊下に差し掛かったところで、大勢の足音が聞こえた。

 不味いと俺の本能は告げる。咄嗟に渡り廊下の塀に身を潜める。

 瞬間、

「待ってくださいー!」

「せめてお弁当だけでも!」

 そんな甲高い声の中から聞き覚えのある声が悲鳴を上げていた。

「じゃから儂は女なんぞに興味は無いと言っておろうが!」

 城桜七乃。

「それでも私達は城桜様!愛していますぅ!」

 ぞわり。この表現がしっくりくる。女同士で愛してるとか、二次元ならまだしもリアルは流石に気持ち悪かった。

 俺は城桜に手を合わせ、そそくさとその場を後にした。ナーンマイダナンマイダ御座しますってやってる場合じゃないな。

 いつもの定位置にいつもの菓子パン。

 幽かにガソリンの匂いが混じった風が俺の頬を撫でていき、小うるさい車の音が耳で残響する。

 ああ、こんな静かなでのどかな時間が続けば

「助けてくれんかのう….」

 まだ最後まで言ってないよね?言ってないよね!?

「何?」

 俺の隣によっこいしょと座ってくる城桜。

 その城桜をチラと睨む。

「そんな目で見るでない。儂とて追いかけられたくて追いかけられているのではない」

「いや、全然楽しそうだっただろ」

「意地悪じゃのぅ。お主は」

 かんらからと笑う。やはりこいつは笑っている方が可愛い、いや美しいの方が似合うだろう。

 こいつは妖艶な何かを内に秘めている感じがある。不気味というより珍妙という感じか。

「毎度毎度、モテる女は大変だな」

 「ああいうのは辞めてもらいたいもんじゃがの。まるで聞く耳を持たん」

「へぇ。お前も悩む事あるんだな」

「儂も人間じゃ。悩みの一つや二つあるもんじゃ」

 嫌味言ったつもりなのに流された。…これが大人の対応か。

「で、何を助けろって?」

「あの女軍団に、女より男に興味があるということを証明したいのじゃ」

 女より男に興味があるということを証明したい?

「というわけでじゃ」

 こほんと城桜は咳払いをする。

「儂と」

 随分と躊躇うなと思い城桜を横目で見る。心なしか顔が赤くなっている。

 そして固く閉じた口を重々しく開き、驚きの言葉を口にしたのだった。

「わ、儂と、デートをしてくれんか?」
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