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信仰都市ギャンヴェル編

37 狂信者の暴走

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 さて、ニャルラトホテプを違う部屋に軟禁し、尋問が始まったのだが

「分からないってどゆこと?」

 ファナティック司祭は何を聞いても分からない知らないの一点張り。これでは進むものも進まない。

「わからないです、今ここでなぜ尋問されているか。それになぜ嫉妬の魔王が出てくる?分からないですよ」

 よくよくファナティック司祭の目を見ると焦点が定まっていない。

 あの後、民衆はそれぞれの帰路につき解散した。そしてファナティック司祭は先日のってほどではないけど、ニャルを脅した拷問部屋に連れてきた。主な質問は、いつどこで嫉妬の魔王と会っていたのか。いつからニャルラトホテプを信仰していたのか。etc...

「分からない!なんですか!この事態が!今までの質問が!一体、私が何をしたんだよぉ…」

 何だよ。これ。完全に行き詰まっている。おそらくファナティック司祭の記憶をめちゃくちゃにしてるのは嫉妬の魔王だろう。自分のことがバレないように。あいつは用心深い。

「わか、らない。分からない、何だなぜだ神を信用しなければ崇めなければ信仰せねば早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早くくくくくくくくはははははははははははははははやややややややややくくクククーーーーーーーーーーーーッ!」

「んなっ!?全員部屋から出ろ!」

  叫んだあとには遅かった。膨大なマナが部屋を破裂しそうなくらいに満たされていく。マナの原点はファナティック司祭だ。しかもこのマナ、毒素を含んでいる!

「ぐっ…。トリスト!ここは任せます!私は彼女らを外へ避難させます!」

 マグが俺の後ろからそう言って、魔法抵抗マギレジストを俺以外の全員にかける。

「りょーかい!」

 そんなやりとりの最中にもファナティックは白目を剥き早く早くと言っている。一種の麻薬に近くなってるな。手はだらんとして、足取りはおぼつかない。口角からは泡が吹いている。舌を口から出した状態。意識があるかも分からない。

「ちっ!一体何だよ!手間ばっかり増やしやがって!」

「ククククククはははははははははははははははややややややややややクククククククククゥゥゥゥゥゥゥゥ」

 べキッ。

 不快な音がファナティック司祭の体から聞こえる。さらに続けて

 メゴッ、ゴリュ、グチュッ、ヌチ、ミチチ。

 だんだんとファナティックの形が人の形か蛇のような形へと豹変してゆく。部屋から突き出し天井に大穴が空き、月光に照らされる。

 漆黒の体。手も足もなく、それはまるで影のよう。赤い目が一つギョロりと俺を見る。それはまるで全てを塞ぐ

「ヴリトラ…」

 多くの神々を食い殺し、全ての生物を恨みの対象とする伝説の邪神。

"ヴォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーー!!"

 巨大な方向がギャンヴェル全体を震わせた。邪神の生誕である。
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