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鉱山都市ロイハイゲン編
60 嗤うバンシー
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「う、ん…ん?」
目が覚める。周りにはマグとリヴィアンが倒れている。あれ?なんで俺達こんなところで寝てんだ?そんな暇ないはず…。ーーーーーーーあ。
「ば、バンシー!」
周囲を見回すが誰一人としていない。あるのは流れているゴミや死体のみ。
「ん…。どうしたの?あれ私なんで寝てるのかしら」
「う、ん。はっ、バンシーは!?」
リヴィアンはともかく、マグはバッチリ覚えていたらしく周囲を素早く見回す。しかし何も無いことを悟ったのか、ため息をつく。
「一体なんだったのでしょうか」
「さあな。でも、ここに長居は無用ってことだ。急ぐぞ」
ちょうどその時だ。劈くような悲鳴みたいな声が奥から聞こえる。
「バンシー…か?」
俺の素朴な質問にマグもリヴィアンも頷く。
「バンシーの鳴き声は啜り泣くのではなく叫ぶのよ」
その説明にマグが補足をつけるように説明する。
「さらにいうとバンシーはケルト人やゲール系の家族のところにしか現れないはずです。なぜ私たちのところに?」
うーん、訳が分からんぞ?取り敢えず
「進むか。止まっててもあれだしな」
それに賛同するようにマグたちも頷く。
○ ○ ○
暫く歩くと大きな広間に出る。道が複数に分かれている。ここが分岐点だ。相も変わらず下水に混じり子供の死体が流れている。
「全く、何十人の死体を見なきゃなんねぇの?胸糞悪いぜ、流石によぉ」
「わかるわぁ。ほぉんと嫉妬の魔王は最低よねぇ」
「だよな。さっさと一発あいつの顔面にぶち込んでって、は?」
俺の話の相槌を打っているのはマグでもリヴィアンでもない。聞いたことのない声。その声はどこか透明で悲しい響きだ。
「ト、トリスト…。後ろ後ろ…」
リヴィアンがちょいちょいと俺の後ろを指さす。リヴィアンとマグは俺より数メートル離れた場所にいる。とすると、アレしかいない。恐る恐る後ろを振り向く。
「こんにちはぁ」
「き、きゃあぁぁぁぁ!?」
やっばい、恥ずかしい!女みたいな悲鳴になってしまった!
「おっとぉ。気絶しちゃいやよぉ?さっきみたいなやり取りは一回だけで十分だからねぇ」
目の前には浮遊している少女がいた。いるにはいるのだが、彼女の後ろの背景が丸見えだ。
「んふふ。愉しいわぁ。もう退屈で仕方なかったのぉ」
紅く燃えるような目。黒く長い髪。緑色の服には真紅の血がべっとりとついていてそれを隠すかのように灰色のマントを着ている。酷くやつれた顔は、生前の辛さを物語っている。
「あたしはねぇ、バンシーであってバンシーではないのよぉ」
何言ってるのか分からない。それ以上に、マグとリヴィアンはいつになったらこっちに来てくれるの?
「私達は暫く見守っているので頑張ってください」
「ちょっ、酷くない!?そりゃないよ!」
「ねぇねぇ、あたしと遊ぼぉよぉ。ねぇ?いいでしょぉ」
撫でるような猫なで声。まるで誘っているかのようだ。そ、そんなエロいことなんて考えてなんかいないんだからねッ!
「んふふ!何して遊ぶぅ?」
「な、ナニがあるんですか?」
つい好奇心で聞いてしまう。後に俺はこの選択したことを後悔することになる。と、いうかすぐ後だ。
「そうねぇ、例えばぁ、生き死体と追いかけっこなんてどうかしらぁ」
にいっと不気味に笑うバンシー。次の瞬間、流されているだけの子供の死体達が動き出した。
"ァア、アア、ァ"
声にならない声を上げて俺に向かって歩いて来る。だがのろい。
「はっはぁ!ゾンビなんて雑魚キャラ俺には朝飯前、の?」
俺は慢心していた。ゾンビは往々にして歩くもので走る事はないと、そう思っていたのだ。ふと、あるゲームを思い出す。難易度が上がるとともに走るゾンビがポップするというゲームを。
「はっ、はっは…」
目の前にいるゾンビは正しくそれ。しっかりと走って来るゾンビ。
「うあぁぁぁぁ!」
俺も回れ右して走り出す。えっ、ちょっ、マジで!?聞いてないんですけどぉ!!リヴィアン達も危険を察知したのか俺より先を走っている。ほんと最近俺の扱い悪化してね?
生き死体。そのままのとおり、仮死状態で意識のないまま動く人間の総称。大体はウイルスなどで感染して等が多いが、実際は霊が死体に取り憑いたもので浄化すればなんとかなるのだが…。
「んふふふっ!愉しい、愉しい愉しい♪あぁ、嫉妬の魔王の言うことがこんなに簡単に叶うなんてぇ!素晴らしいわぁ!」
嫉妬の魔王!?え、まさかここも読まれてるのか!?
「んふっ。疑問かしらぁ?そうねぇ、あたしは嫉妬の魔王の精鋭部隊の最底辺ってとこかしらねぇ。まぁ強いことには変わりはないけどぉ」
こいつが一人目。えっと、あ、そうだ。
「くそっ!あと何人の精鋭部隊がいんだよ!」
「それは簡単よぉ。アガリアレプトとあたしを足して四人ねぇ」
へぇ、四人か。ええー、四人もいるのん?面倒くさっ、RPGゲームじゃないんだからさぁ。
「さぁ鬼ごっこよぉ」
ニタニタと笑うバンシーは不気味さを一層増しながら逃げる俺達を空中から見ていた。
目が覚める。周りにはマグとリヴィアンが倒れている。あれ?なんで俺達こんなところで寝てんだ?そんな暇ないはず…。ーーーーーーーあ。
「ば、バンシー!」
周囲を見回すが誰一人としていない。あるのは流れているゴミや死体のみ。
「ん…。どうしたの?あれ私なんで寝てるのかしら」
「う、ん。はっ、バンシーは!?」
リヴィアンはともかく、マグはバッチリ覚えていたらしく周囲を素早く見回す。しかし何も無いことを悟ったのか、ため息をつく。
「一体なんだったのでしょうか」
「さあな。でも、ここに長居は無用ってことだ。急ぐぞ」
ちょうどその時だ。劈くような悲鳴みたいな声が奥から聞こえる。
「バンシー…か?」
俺の素朴な質問にマグもリヴィアンも頷く。
「バンシーの鳴き声は啜り泣くのではなく叫ぶのよ」
その説明にマグが補足をつけるように説明する。
「さらにいうとバンシーはケルト人やゲール系の家族のところにしか現れないはずです。なぜ私たちのところに?」
うーん、訳が分からんぞ?取り敢えず
「進むか。止まっててもあれだしな」
それに賛同するようにマグたちも頷く。
○ ○ ○
暫く歩くと大きな広間に出る。道が複数に分かれている。ここが分岐点だ。相も変わらず下水に混じり子供の死体が流れている。
「全く、何十人の死体を見なきゃなんねぇの?胸糞悪いぜ、流石によぉ」
「わかるわぁ。ほぉんと嫉妬の魔王は最低よねぇ」
「だよな。さっさと一発あいつの顔面にぶち込んでって、は?」
俺の話の相槌を打っているのはマグでもリヴィアンでもない。聞いたことのない声。その声はどこか透明で悲しい響きだ。
「ト、トリスト…。後ろ後ろ…」
リヴィアンがちょいちょいと俺の後ろを指さす。リヴィアンとマグは俺より数メートル離れた場所にいる。とすると、アレしかいない。恐る恐る後ろを振り向く。
「こんにちはぁ」
「き、きゃあぁぁぁぁ!?」
やっばい、恥ずかしい!女みたいな悲鳴になってしまった!
「おっとぉ。気絶しちゃいやよぉ?さっきみたいなやり取りは一回だけで十分だからねぇ」
目の前には浮遊している少女がいた。いるにはいるのだが、彼女の後ろの背景が丸見えだ。
「んふふ。愉しいわぁ。もう退屈で仕方なかったのぉ」
紅く燃えるような目。黒く長い髪。緑色の服には真紅の血がべっとりとついていてそれを隠すかのように灰色のマントを着ている。酷くやつれた顔は、生前の辛さを物語っている。
「あたしはねぇ、バンシーであってバンシーではないのよぉ」
何言ってるのか分からない。それ以上に、マグとリヴィアンはいつになったらこっちに来てくれるの?
「私達は暫く見守っているので頑張ってください」
「ちょっ、酷くない!?そりゃないよ!」
「ねぇねぇ、あたしと遊ぼぉよぉ。ねぇ?いいでしょぉ」
撫でるような猫なで声。まるで誘っているかのようだ。そ、そんなエロいことなんて考えてなんかいないんだからねッ!
「んふふ!何して遊ぶぅ?」
「な、ナニがあるんですか?」
つい好奇心で聞いてしまう。後に俺はこの選択したことを後悔することになる。と、いうかすぐ後だ。
「そうねぇ、例えばぁ、生き死体と追いかけっこなんてどうかしらぁ」
にいっと不気味に笑うバンシー。次の瞬間、流されているだけの子供の死体達が動き出した。
"ァア、アア、ァ"
声にならない声を上げて俺に向かって歩いて来る。だがのろい。
「はっはぁ!ゾンビなんて雑魚キャラ俺には朝飯前、の?」
俺は慢心していた。ゾンビは往々にして歩くもので走る事はないと、そう思っていたのだ。ふと、あるゲームを思い出す。難易度が上がるとともに走るゾンビがポップするというゲームを。
「はっ、はっは…」
目の前にいるゾンビは正しくそれ。しっかりと走って来るゾンビ。
「うあぁぁぁぁ!」
俺も回れ右して走り出す。えっ、ちょっ、マジで!?聞いてないんですけどぉ!!リヴィアン達も危険を察知したのか俺より先を走っている。ほんと最近俺の扱い悪化してね?
生き死体。そのままのとおり、仮死状態で意識のないまま動く人間の総称。大体はウイルスなどで感染して等が多いが、実際は霊が死体に取り憑いたもので浄化すればなんとかなるのだが…。
「んふふふっ!愉しい、愉しい愉しい♪あぁ、嫉妬の魔王の言うことがこんなに簡単に叶うなんてぇ!素晴らしいわぁ!」
嫉妬の魔王!?え、まさかここも読まれてるのか!?
「んふっ。疑問かしらぁ?そうねぇ、あたしは嫉妬の魔王の精鋭部隊の最底辺ってとこかしらねぇ。まぁ強いことには変わりはないけどぉ」
こいつが一人目。えっと、あ、そうだ。
「くそっ!あと何人の精鋭部隊がいんだよ!」
「それは簡単よぉ。アガリアレプトとあたしを足して四人ねぇ」
へぇ、四人か。ええー、四人もいるのん?面倒くさっ、RPGゲームじゃないんだからさぁ。
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