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#018 『罪状』
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20代半ばの鳶職、袴田くんの趣味は 数人の仲間と連れ立っていわくのある廃墟を巡る〝肝試し〟だったそうだが、最近、それをやめようかと思っているという。
「だって、実際、何も無いんスもん。がっかりばっかですって」
最初は悪友らと、噂のある幽霊屋敷の中を徘徊するだけで面白かったらしいが、一向にお化けも出ないし祟りも呪いもない。正直、飽きてきたという。
「ムチャクチャなことやれば、霊も怒って何かやってくるかなーとは思って、いろいろやったんですわ。スプレーで悪戯書きしたりとか、おしっこしたりとか。あ、レイプ殺人があったっていう現場で、オナニーして赤黒い染みの付いた壁にぶっかけたこともあったけど」
・・・そんなことしたの?と私が問うと、
やりましたよ。もう大ウケ。 袴田くんはニヤニヤと言ってのける。
「でも、何もないんです。たぶん霊感のない俺らには、霊は祟りようもないんでしょうよ。でも、霊だけに無敵っていうのもなー。誰にも威張れないし。だからもう、廃墟巡りも卒業の季節かな~って。何かいろいろだるくなってきたし」
本当に何もなかったのか、と聞くと、「うーん」と唸って遠くを見るような目になった廃墟荒らし・袴田くん。やがて「あっ」と何かを思い出した顔になり、
「そう言えば、スマホがヘンになった時があったな」
※ ※ ※ ※
今から半年ほど前。
朝早くに起床した袴田くんが、「よし仕事行くべぇか」と忘れないようにスマホを手に取った瞬間、不意にそれがヴヴヴヴヴ、とバイブした。
あら?マナーモードにでもしてたっけ?と思いつつ画面を見てみると、そこにビッシリと文字が表示されている。
2014年 8月6日 ○○町 ××丁目□□
2014年 9月1日 ◇◇町 **丁目◎◎
・・・・・・・・・・・・といった具合。
どうやら、何かの住所だなぁと感じた瞬間、彼は閃く。
「あっ、なっつかし-。これ、俺らが回った廃墟のリストか」
住所の後には、「いたずら書き」「暴言」「器物損壊」などと、彼らが行った悪行が余すところなく記述されていた。
袴田くんは、ひとり爆笑したという。
何だこれ、メール?仲間の誰かが、今までの廃墟巡りの記録でもまとめて送ってくれたのか。うっわ、マジ暇。マジ引く。几帳面すぎだっつの。
一番最後まで取りあえず目を通してみたが、ラストの一文を読んだ瞬間、スマホは待ち受け画面に戻ってしまった。
ン?と思ってメールを呼び出してみるが、さきほどの文章が入ったメールは、誰からも送信されていない。
ヘンなの。これって怪奇現象?ショボ!と笑い飛ばし、仕事に向かった。
後で確認してみたが、誰もそんなメールは送ってなどいない、と言い張った。
※ ※ ※ ※
「袴田くん的には、それは怪奇現象とかではないの?」
「あー、怖くなかったんで。ノーカンしてました。忘れてました。でも良かったスね松岡さん。これで書くネタになりましたよ。へへっ」
前述の〝罪状リスト〟の一番最後には、何か難しい文字が一言、記されていたという。
だが、「読めなかったし興味も無かったんで」字面すら忘れてしまったそうだ。
「まぁこんなわけで。昼メシ、ありあとした。じゃ、ここらへんで――」
と、ファミレスのテーブルから立ち上がろうとして・・・
袴田くんは、大きくグラリ、とよろけた。
「あっ!」と思わず私が身体を支えようとすると、「ありゃっ、大丈夫、大丈夫」と彼はへらへら、笑って体勢を整える。
「最近、どうも貧血気味なんですよ・・・さっきも言ったけど、身体重いし、スゲーだるいし。仕事がキツイからかな? ひとつは こんな調子だから、廃墟巡りをやめようって思い立ったんですけどね・・・」
聞けば、彼の廃墟巡りの仲間も同じ症状を呈しているという。
おい、それはやっぱり祟られてるんじゃないか、と私が言うと、
「いやいやいや、無い無い無い」
だって、怖いことなんか 何も起こってないんですから――
――彼がふらふらと店を出て行った後、私はテーブルに運ばれてきたカルボナーラを口に運びながら、ぼんやりと 今回の怪談提供者のことなどを思い出していた。
何と言っても初対面、特徴的な袴田くんのボサボサ銀髪に私は度肝を抜かれたものだ。
しかし直ぐに、「ああ。最近映画化された あの有名漫画の主人公の真似でもしてるのか」と合点して 互いに軽く挨拶を交わしたものだが・・・
いや違う。あの頭は、何か超常的な力によって不自然に老化した彼自身の地毛なのかも知れない。
――何となく そんな想像を逞しくしながらパスタを食べ終え、私はお会計の為 さっさと席を立ったのだった。
「だって、実際、何も無いんスもん。がっかりばっかですって」
最初は悪友らと、噂のある幽霊屋敷の中を徘徊するだけで面白かったらしいが、一向にお化けも出ないし祟りも呪いもない。正直、飽きてきたという。
「ムチャクチャなことやれば、霊も怒って何かやってくるかなーとは思って、いろいろやったんですわ。スプレーで悪戯書きしたりとか、おしっこしたりとか。あ、レイプ殺人があったっていう現場で、オナニーして赤黒い染みの付いた壁にぶっかけたこともあったけど」
・・・そんなことしたの?と私が問うと、
やりましたよ。もう大ウケ。 袴田くんはニヤニヤと言ってのける。
「でも、何もないんです。たぶん霊感のない俺らには、霊は祟りようもないんでしょうよ。でも、霊だけに無敵っていうのもなー。誰にも威張れないし。だからもう、廃墟巡りも卒業の季節かな~って。何かいろいろだるくなってきたし」
本当に何もなかったのか、と聞くと、「うーん」と唸って遠くを見るような目になった廃墟荒らし・袴田くん。やがて「あっ」と何かを思い出した顔になり、
「そう言えば、スマホがヘンになった時があったな」
※ ※ ※ ※
今から半年ほど前。
朝早くに起床した袴田くんが、「よし仕事行くべぇか」と忘れないようにスマホを手に取った瞬間、不意にそれがヴヴヴヴヴ、とバイブした。
あら?マナーモードにでもしてたっけ?と思いつつ画面を見てみると、そこにビッシリと文字が表示されている。
2014年 8月6日 ○○町 ××丁目□□
2014年 9月1日 ◇◇町 **丁目◎◎
・・・・・・・・・・・・といった具合。
どうやら、何かの住所だなぁと感じた瞬間、彼は閃く。
「あっ、なっつかし-。これ、俺らが回った廃墟のリストか」
住所の後には、「いたずら書き」「暴言」「器物損壊」などと、彼らが行った悪行が余すところなく記述されていた。
袴田くんは、ひとり爆笑したという。
何だこれ、メール?仲間の誰かが、今までの廃墟巡りの記録でもまとめて送ってくれたのか。うっわ、マジ暇。マジ引く。几帳面すぎだっつの。
一番最後まで取りあえず目を通してみたが、ラストの一文を読んだ瞬間、スマホは待ち受け画面に戻ってしまった。
ン?と思ってメールを呼び出してみるが、さきほどの文章が入ったメールは、誰からも送信されていない。
ヘンなの。これって怪奇現象?ショボ!と笑い飛ばし、仕事に向かった。
後で確認してみたが、誰もそんなメールは送ってなどいない、と言い張った。
※ ※ ※ ※
「袴田くん的には、それは怪奇現象とかではないの?」
「あー、怖くなかったんで。ノーカンしてました。忘れてました。でも良かったスね松岡さん。これで書くネタになりましたよ。へへっ」
前述の〝罪状リスト〟の一番最後には、何か難しい文字が一言、記されていたという。
だが、「読めなかったし興味も無かったんで」字面すら忘れてしまったそうだ。
「まぁこんなわけで。昼メシ、ありあとした。じゃ、ここらへんで――」
と、ファミレスのテーブルから立ち上がろうとして・・・
袴田くんは、大きくグラリ、とよろけた。
「あっ!」と思わず私が身体を支えようとすると、「ありゃっ、大丈夫、大丈夫」と彼はへらへら、笑って体勢を整える。
「最近、どうも貧血気味なんですよ・・・さっきも言ったけど、身体重いし、スゲーだるいし。仕事がキツイからかな? ひとつは こんな調子だから、廃墟巡りをやめようって思い立ったんですけどね・・・」
聞けば、彼の廃墟巡りの仲間も同じ症状を呈しているという。
おい、それはやっぱり祟られてるんじゃないか、と私が言うと、
「いやいやいや、無い無い無い」
だって、怖いことなんか 何も起こってないんですから――
――彼がふらふらと店を出て行った後、私はテーブルに運ばれてきたカルボナーラを口に運びながら、ぼんやりと 今回の怪談提供者のことなどを思い出していた。
何と言っても初対面、特徴的な袴田くんのボサボサ銀髪に私は度肝を抜かれたものだ。
しかし直ぐに、「ああ。最近映画化された あの有名漫画の主人公の真似でもしてるのか」と合点して 互いに軽く挨拶を交わしたものだが・・・
いや違う。あの頭は、何か超常的な力によって不自然に老化した彼自身の地毛なのかも知れない。
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