愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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友情編

第4話「女ってのは面倒くさい生き物なんです、とか知ったようにほざいてる奴が一番めんどくさい」②

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 由希と分かれ、部屋のベッドで横になり。私は天井を見つめて、じっと考えていた。

 否。答えは既に見えている。考えていたのではなく、怖くて震えていた……と言った方が適切だ。私はぱちぱちとまばたきをしながらようやくそう結論付けた。

 そう。私のもやもやを解決する手段は簡単で、そしてただ1つしかない。それは、河野真白に私の作品の、これからの概要を話すことだ。
 この作品はこういう物語で、今後はこういう展開をして、そしてこういうテーマを描きたいのだ、と。
 そんなことはとっくにわかっていたのだけど。私は息を大きく吸い込み、そして、力強く吐いた。


「迷っていても仕方ない。1回、話をしてみよう」


 私はスマホを手に取り、LI〇Eを開いた。そして河野のアカウントをタップして、チャット画面を開く。
 画面の右上へと視線を移し、電話のマークを見る。しばらく眺めて、心臓が少し高鳴り、ごくりと息をのむ。そして鈍る覚悟を携え、私は「どうにでもなれ!」と河野に電話をかけた。

 音が鳴る。特徴的な音楽が響く1秒1秒の間に、電話を切ろうかと悩む。と、着信音が一瞬ぷつりと切れ、『どうしたの、姫川?』という声が私の耳に入ってきた。


「あ、河野」

『うん、僕だけど』

「いやそんなもん知っとるわ。いあ、ていうか、その。なんだ。えっと……ご飯行かない?」

『……? え、僕と? なんで?』

「いやその、なんだ。親睦を深めたいって言うか」

『いいのかい? 女子が僕とご飯を食べに行くって言うのはかなりリスキーだと思うけど?』

「アンタ意外とひねくれてるわね」

『客観的事実だ』

「悲しくなるからやめましょう。んで、どうするの?」

『君はどうしたい?』

「私から誘ってるんだけど?」

『……僕は、良いよ』

「決まり。んじゃあ行こう」

『どこ行くの?』

「あー……ラーメン好き?」

『ん、普通に大好きだよ』

「ちょっと行きたいラーメン屋あったんだけど、行かない?」

『ん、オケ。行く』


 河野がうなずき電話を切る。私は話し終えてから、大きくため息をついた。


「……すっげーまどろっこしいことしてるわね、私」


◇ ◇ ◇ ◇


 河野と初めて出会ったコンビニで待ち合わせて、私はコイツと一緒に目的のラーメン屋に向かっていた。


「そう言えばアンタってラーメン何味が好きなの?」

「僕はしょうゆかな」

「へえ! それはよかった。今から行くのしょうゆ味だから。重めの」

「それは嬉しい」

「あら、重たいのイケるんだ? 意外」

「線が細いからってあっさりしか好まないってわけじゃない。痩せたのは大学入ってからだしね」

「え、マジ? どうやって痩せたの? ちょっとコツ教えて」

「え? ……1食を実質200円以下に抑えるように自炊していたら」

「この話はなかったことに。てかそれ月の食費ヤバくないの? 2万くらいしかないじゃん」

「先月は15000円くらいだったな」

「もっと食え。私くらいに太ってみせろ」

「ノーコメントで」

「気を使うな! 悲しくなるから! ……ねえ、やっぱり痩せた方がいいかな?」

「え? ……うーん、君はせいぜいぽっちゃり程度だからいいんじゃない? 僕はそれくらいの方が好きだけど」

「ひえっ」

「ごめん」

「ジョーダンよ。私から振っといて私から引くって失礼すぎんだろ」


 私はけらけらと笑った。コイツ結構言葉を真に受けるからちょっとからかいがいがあるんだよな(腹囲を気にしていないわけではないのだが)。

 そんなこんなで、私たちはラーメン屋『ごまふあざらし』へとやってきた。濃厚なとんこつしょうゆのラーメン屋で、スープに絡む太麺をもっちもちと食べるとガツンとしたにんにくと油が食欲を増進させる、女子にとっては悪魔のような店だ。私は好きなので度々行くのだが。


「謎なネーミングセンスだ」

「それはわかる。さ、入ってたべよーぜー」


 私は店からかおるむせかえるようなラーメン臭に我慢ができずとっとと店舗のドアを開けた。中に入り、店員からの「いらっしゃっせー!」という体育会系的挨拶を受け、ちょっとぬるぬるとしている地面を歩き空いている席へと座る。


「姫川的にはここのおすすめってなに?」

「チャーシュー麺味玉付き」

「シンプルに重たいな」

「背油マシマシ麺硬めが最高よ。今日の私はお財布事情とダイエット事情的に控えるけど」


 河野にそんなことを言っていると、元気の良い店員がやってきてお冷を渡す。店員は「ご注文、なににしますか?」と丁寧な口調とナイスガイな笑顔で尋ねてきた。私はメニューを机におっぴろげ(向きは河野に合わせている)、指で欲しいメニューを指しながら受け答える。


「醤油ラーメンの大盛背油にんにくマシマシ麺硬めで」

「控えるとは一体」

「うるへ。河野はなににすんの?」

「僕は……醤油の普通盛りで。背油とニンニクはマシマシ、麺は普通で」

「ありがとうございました!」


 ナイスガイ店員は油の浮いた爽やかな笑顔で厨房へと帰っていった。大変だろうにあんなナイススマイルを出せるなんて、お疲れ様だ。


「うーん、姫川はむしろ痩せているって解釈したほうがいいのかな、コレ」

「お失礼なお言葉がお聞こえになりましたが?」

「ごめん」

「別にいいよ。てかアンタだって、背油にんにくマシマシまで行ったんなら麺硬めにすればよかったのに」

「僕はそんなに重たくできない」

「修行が足らぬわ」

「なんの修行だ!?」

「ラーメン道は一日にしてならず。まずはこの辺一帯のラーメン店を網羅しないと」

「君もしかしてラーメンオタクか?」

「この辺の麵屋は大概食したわ。まあ言ってもたまにしかいかないけど。2週に1回くらい?」

「結構な頻度だな」

「女の子はみんな油の乗ったスープが好きなのよ」

「みんなって、そんなことはないだろう」

「栄養も食らう。脂肪も食らう」

「すまないが、ダイエットを意識するのならもう少し抑えた方がいいと思う」

「禁欲の果てにたどり着く境地など高が知れたもの」

「君は地上最強の男でも夢見たことがあるのか?」

「あ、わかってくれた? 女子だとこのネタわかる人すっくないのよ」

「まあね。まあ、現実の地上最強は女性がやってるわけだが」

「朝のニュース番組だと普通に女の子なのキュンキュンくるよね」

「わかる。イメージとのギャップが萌える」


 ――やべぇ。なんか変な話から作品の話に持っていこうとしたのだけど、全くその兆候が見えねえ。私は楽しく話しながら、しかし焦りを感じていた。

 はやる気持ちは抑えが効かないもの。しかしどうしても、今の状況で話をするのは難しい。私は結局、こんな感じでどうでもいいことをずっと言い続けて、店を出るまで、自分の作品の話はしなかった。
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