愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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友情編

第18話「この世で最も恥ずべき阿呆は成長できないこと」

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「姫川さん」


 大学の図書館で、私は例の松田の取り巻き2人に絡まれた。

 珍しくやる気を出して調べ物をしようとした折に、なんたる面倒事だ。私はぐでりと肩を落として、「なに?」とため息を吐いた。

 すると。目の前の2人は、あろうことか、私に向かって深々と頭を下げた。


「ごめんなさい!」


 2人して声を揃えたものだから、私は目を点にしてしまった。意味もわからず呆然とした後、私は悩ましく色々と考え、そして「へ?」と素っ頓狂な声を出した。


「いや、その……アイツ……松田のこと。なんていうか、いくらなんでも色々とヤバいって思ってさ」

「う、うん。それで、流石に謝らないといけないなって思って……」


 2人はやんよやんよと私に言う。私はしばらく黙した後に、「どゆこと?」とまた間抜けな声を出した。


「いや、だからさ。その、アンタと、天音さんのことで」

「あ、いや……じゃなくて。ど、どういう風の吹き回し? だってあんたら、アイツ側でしょ?」

「いや、そうだけどそうじゃないって言うか。ぶっちゃけ私らもあんまりアイツのこと好きくないって言うか。ねえだって、アイツ見てたでしょ? いくらなんでも自己中過ぎんのよ。場の雰囲気悪くするわけにいかないし、付き合いとかで仲良くしてるけどさ……」


 私は片割れの、髪を団子状に結んだ女子の言葉に愕然とした。

 ――アイツ、嫌われてたのか。いや、まあ、そりゃああんな性格で嫌われない方がむしろおかしいとは思うけど。私は「へ、へぇ」と納得して上擦った声を漏らした。


「いや、そんなのはどうでもいいんだけど。それより、なんていうか、私らさ、アンタの言葉で、すっごい色々考えさせられたって言うか……」

「う、うん。それで、やっぱり、謝った方がいいって思って。いや、だって、姫川さんが何してるかとか、本当どうでもいいし。あいや、どうでもいいって、そういうことじゃないんだけど」


 どういうことだ。私はわかるようでわからない話の内容にとりあえず頷きを返していた。


「とにかく、天音さんのこと、悪く言ったの、流石にまずいって。私だって玲菜れいなのことバカにされたらムカつくし……」

「と、突然何言ってんのよ、優花里ゆかり。恥ずかしいじゃん」


 どうやら、団子頭の方は玲菜と言って、もう片方の短髪女の方は優花里というらしい。私はよくもわからず進んでいく会話にちょっとだけ辟易していた。


「それに、その、ぶっちゃけ確かに、天音さんのことはなんかアレだって思ってたけどさ。でも、それ言っちゃうのは良くないじゃん」

「そ、そう。差別って言うか。最近その辺うるさいし」

「言うのと思うのじゃ大違いだよ。もう松田はその辺思いっきりライン超えてたって言うか。だからまずいって」

「ちょ、ちょい待ち! わかった、わかったから一旦整理させて!」


 私は慌てて2人の応酬を止める。声を出してしまって、ここが図書館であることを思い出し口を手で塞いでしまう。流石にまずい、周りから白い目で見られる。


「……とりあえず、別のとこ行こ。そこで話さないと、ここじゃ邪魔になるし……」


 私が言うと、2人は「うん」と頷いてくれた。聞き分けがいいな。

 そうして私たちはとりあえず廊下の人目がつかない場所に行って、先の話の続きをした。


「……ようは、いくらなんでもあれはライン超えだから、謝らないといけないと思った。だから私のところに来た、って」

「う、うん。……ほ、本当は最初からそうしたかったんだけど。アイツちょっと言い返すとすぐ不機嫌になるし」


 うわぁ、コッテコテじゃねぇか。私は松田が予想通りのヤバい奴でむしろ肩を落としてしまった。


「……でもさ、ハッキリ言うけど。謝るんなら、私じゃなくて由希にしてよ。だって、バカにされたのは私じゃなくてアイツだし」

「ご、ごめん、そうだよね。……でもその、天音さん怖いし……」


 そりゃあそうか。私は2人の言葉に思わず納得してしまった。

 ナンパ師をど根性大根にしてしまう女だ。その辺のサーベルタイガーなら目の前にしたら裸足で逃げ出す。力にて劣る我々女子からしたら、あんなのは前にするだけで心臓発作ものだ。誇張表現だけど。


「……まあ、後から謝っときなさいよ。……で、話しは終わり?」

「あっ……えっと、まあ、大事なのは……」

「……じゃあもういいよね? ぶっちゃけさ、私、あんたらの顔みたくないし。……謝ってくれたから、とりあえず忘れてはあげるけど」

「あっ、待って。その、どうしてももう一個、聞きたいことがあって……」


 なんだよ一体。私はため息を吐いて、「なに?」と2人に尋ねた。すると、優花里の方がこっちを見て、オドオドとした感じで答えた。


「……け、結局……姫川さんって、あいつらと、どうなの?」

「……はあああぁ……。あのさぁ、もういい加減にしてよ。だから、言ってるじゃん。由希も河野も、友達だって」

「いや、ごめん、そう言う意味じゃなくて。だって気になったって言うか。からかいたいわけじゃなくてさ……。
 ……その、私らさ、姫川さんの言葉、本当にかっこいいなって思って。すっごい現実に向き合ってるなって。だから、姫川さんがあいつらのこと、どう思ってるのか、どうしても聞きたくって……」


 私は照れたように言う優花里にきょとんとする。やけにしおらしくって、やりにく言ったらありゃしない。


「……そういうことなら、まあ。
 ……私にとって、あいつら、か……」


 私はしばし、どうアイツらを表現しようかを考えた。

 別に、無理にエモく言う必要は無い。格好付けた言葉はいつだって、私たちから真理を遠ざける。

 私にとって、あいつらはなんなのか。しばらく悩んでから、私はようやく、なんとか自分の中でしっくりとくる表現を見つけて、


「……私が、私らしくいるために必要な奴ら……って言うか……」


 気が付けば、私はそう言葉を繋いでいた。

 2人が私を呆然と見る。私は少し恥ずかしくなって、顔を背けて2人に悪態をついた。


「な、なんなのよ一体。なんかあるんなら、言えよ、別に……」

「いや。なんか、それで大体、どういうことかわかったって言うか……」

「うん。友達とか、恋人とか、そんなモンじゃないんだなって」


 2人は私によくわからない感想を言った。他方で含まれているニュアンスが妙に肯定的だったため、「は、はぁ?」と恥ずかしさでまたツンケンドンな態度を取ってしまった。


「……凄いね、姫川さん。……あ、そだ、よかったらLI○E交換しない?」

「あ、私も! なんか、思ったより悪い奴じゃないし、仲良くしてみたくなったし」


 2人はそう言って唐突にスマホを取り出した。私は突然の陽キャムーブに「ドヒャアアア」と妙な声を出してしまった。


「ドヒャアアアって、ウケる」

「いや、うけ、ウケるとかそんな、どうでもいいってか! えっ、あいや、マジで? だって、私だよ?」

「姫川さんだから聞きたいんだよ。それに、誤解だったってわかったし。少なくとも、松田の奴よりかはよっぽどいいよ」


 比較対象アレかよ。……ま、まあいいや。

 私は「……あ、ま、うん」と変な声を出してから、同じくスマホを取り出し2人とLI○Eを交換した。


「コレで友達だね」

「……と、友達って、LI○Eの有無で決まるの?」

「別にそういうわけじゃないけど、そういうことにしておけば楽じゃない? なんていうか、いい区切りだし。それに、あんましハードル高いとつまんないよ?」


 私は目の前の女子の一言になにか、ハッとさせられた気がした。

 ……案外、何も考えてなさそうで、人間色々考えてるもんなんだな。私はパリピ陽キャ女への偏見を見直すことにした。

 と。そのタイミングで、突然私のスマートフォンがブルブルと震え出した。

 私は「ん?」と思い、スマホを見てみる。と、河野から何やら連絡が入っていた。


『そっちに天音さんが向かったから』
『仲直りするチャンスだよ。行ってあげて』


 私は河野の連絡に目を見開いた。

 ぬおお、マジか。このタイミングでか。私は大慌てでスマホをしまうと、2人の陽キャ女に「ごめん、私用事出来た!」と言って手を振った。2人は「うん、じゃあね!」と朗らかな感じで、私に手を振り返してくれた。


 ――由希。私はアイツのことを思い出しながら、急いで校門前に向かった。
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