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友情編
第19話「キモくても、面倒臭くても、それでも私は誰かの手を取る。なぜって、それが私たちだから」
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私は汗を流しながら校門前にたどり着いた。
息があがる。ほんのちょっと走るだけで疲れがどっと湧き出てくる。こんなことなら運動してれば良かったと、謎の後悔が湧き上がってくる。私はきょろきょろと周囲を見渡して、由希の存在を探した。
「――詩子!」
と。そんな私の耳に、由希の声が聞こえた。私はハッと声のした方を向いて、「由希!」とアイツの名前を呼んだ。
由希は校門前で、少しだけ息を乱して立っていた。私は慌てて由希の前に行き、そして、膝に手をついて大きく肩で息をした。
「はぁ、はぁ、ちょ、っと待って……息、しんどい……」
「あ、ああ……」
由希はそんな私を見てそうと受け答えた。
しばらくして、ようやく呼吸も落ち着いた所で。私は由希と向き直り、そして、「由希……」と彼女の名を呼んだ。
だけど、その先でなんて言えばいいかがわからなかった。色々言いたいことはあったのだけれど、とにもかくにも、うるさいくらいに思考がぐるぐと巡り巡って。
しかし、しばらくして。由希は私に向かって、大きく頭を下げた。
「――ご、ごめん、詩子!」
私は由希の言葉に些かの驚きを思ってしまった。
「その、あの、本当、色々大変な時期だったって言うのに……なんていうか、私の勝手な感情で、アンタのこと避けるようになって……とにかく、色々、本当にごめん! 私が悪かった、だからとにかく、ごめん!」
由希は大層な想いを込め私にそうと言った。私は「あっ……」と呟いてから、由希の言葉に、思い切り良く言い返した。
「そんな、そんなことないよ! アンタが謝る道理なんて、全く無い!
それよりも……さ、最低なのは、私の方だよ! その、あんなことで、何も言えなくなって……。もっと思いっきり、大声で言い返してやれば良かったって、今も後悔してるし。それに、その、なんていうか……あ、アンタのその、事情知って、私……」
「……わかってる。食堂で、アンタが叫んでるの聞いたから」
「あっ……き、聞いてた、の? あ、いや、その、ごめんっ! アレは別に、アンタが悪いとか、そういう意味じゃ……」
「わかってる。色々思うことがあって、私のために色々考えてくれてたってこと。わかってたんだ。アンタはそういう人間だって、アンタはそれでも私を嫌ったりしないって。でも、あんなの無視すりゃ良かったのに、私が勝手に怖がって……」
由希の声が震える。私はそれに胸がきゅっと締まるような苦しさに襲われて、衝動的にアイツに勢い良く抱き着いた。
由希がビクリと体を震わせて、「うあっ!?」と声をあげた。由希が離れようとするが、私はそれでも無理矢理奴を掴み、放さなかった。
「どうだっていいよ。他人に言えない秘密を抱えていたら、そんなの、誰だって怖くなるよ。私だって、しょうもない秘密だったけど、みんなにバレそうになって、凄く怖かったから。
そんなことより、私はアンタが、まだ私と友達を……親友をやりたいって思ってくれていることの方がよっぽど重要だった。だって、私にとって由希は、こんなに大切なんだもん」
「あっ……詩子、お前……」
「あ、い、一応言っておくけど、その、私はあくまで、友達としてって意味だから! なんて言うか、アンタに対してそう言う気持ちはまだ無いっていうか……」
「うっ……ま、まあ、そりゃそうだよな」
私は由希の返事を聞くと、彼女を抱く手をゆっくり放して、手を取り目を合わせた。
由希は少し顔を赤らめて私から視線を逸らす。私は色々な複雑な感情を抱いてから、自分の中でそれを咀嚼して、ゆっくりと息を吸ってから言葉を紡ぐ。
「……由希。なんていうか……アンタの気持ちは、その、わかってはいるから。確かに、知っちゃった以上、これまで通り……っていう風には、ならない……と思う。でも、そういうのも含めて、ちょっとずつ、ちょっとずつ付き合い方を考えていけばいいって、私は思うから」
「……詩子……」
「……うまくは言えないのだけど。そう言うことを、しっかりと、ちょっとずつやっていくのが、人間関係って奴だと思うの。私はそれを、アンタと河野から、教えてもらったの。
だから、由希。また私と一緒に歩こう。私にとってアンタらは、必要な存在だから」
私はそう言って由希に手を差し出した。由希はしばし私の手を見つめてから、「うん」と言って私の手を取り、そしてもう一度、今度は噛み締めるようにゆっくりと、「うん……!」と答えた。
私たちはしばらく、互いの手を握り合った。しかししばらくすると、周囲からのざわざわとした気を感じ取れるようになり、私はハッと辺りを見回した。
なんか、周りで色々な人がこっちを見ていた。
あまり好ましい雰囲気ではない。私はあまりの気恥ずかしさに、心の中で『ギョエー!』と悲鳴をあげた。
「ゆ、由希! とりあえず、どっか行こ! ここだとなんか恥ずい!」
「あっ、う、うん、わかった!」
そうして私は由希と手を繋ぎながら、大急ぎで校門を出た。
◇ ◇ ◇ ◇
その後の私たちは、他愛もない話をした。
内容で特に多かったのは、やはりと言うべきか、吉田とのその後についてだ。
少なくとも、ここ最近で私がアイツを見かけたことはない。少なくともつけられているだとか、家に何か不気味な手紙が届いたとか、怪奇現象だとかは起きていない。河野が言った通り、ストーカー化まではしなかったのだろうかと言うのが、今の私の認識だ(とは言え未だ怖いから河野には家にいてもらっているわけだが)。
その他には、大学でのことや、河野の事も聞かれた。家で何をしていたかだとか、そう言うどうでもいいことを。
色々と話しながら、私は由希を部屋に呼んだが。彼女は私の部屋を見て驚いていた。
当然だろう。河野が部屋に泊まるようになり数日経ったが、その間に休みがあったこともあり、私の部屋はアイツの手で大改造を施されていた。おかげで部屋は見違えるように綺麗になったし、何よりも収納スペースを広げるために用意した百均道具がそこら辺にあって、ちょっとした秘密基地のようにもなっていた。由希は部屋の様相を見て、「アイツ、何気にすげーんだな」と呆れたように褒めていた。
そしていくらか話しをして、由希にまた泊まり込むよう頼んで、私たちは就寝することになった。
綺麗になった部屋で友達と寝るのは、凄く気分が良かった。
◇ ◇ ◇ ◇
天音さんを送り出してすぐぐらいの時間。僕は公園から出て、暇つぶしに近場の本屋で漫画やら小説やらを漁っていた。
まあ、あの調子ならうまくいくだろうと、僕はその後の結果は報告があるまで探らないことにした。とりあえず、2人の間を取り持つことが出来たのは幸いだった。
そんなことを考えながら、めぼしい本を買って出入口に来た時。
「あっ……」
僕の横で、聞いたことのある声が聞こえた。
そこには、なんとあの吉田航平がいた。僕はびっくりしてしまって、「あっ」と同じく声を漏らした。
「…………」
吉田は何も言わず、僕の横を素通りした。僕は彼が少し気になってしまって、「ふむ」と、本屋の出入口で彼を待つことにした。
10分ほどして、吉田は普通に本屋から出てきた。きら○系の漫画を持って。僕は吉田に、「やあ」と話しかけた。
吉田はビクリと身体を震わせ、「ぬおおっ!?」と変な声を出した。
「驚かなくてもいいじゃないか」
「おっ、おど、驚くよ、そりゃあ。て、ていうかお前、なん、なんでここに?」
「本を買いに来ただけ。……あ、その漫画僕も持ってる。面白いよね」
「えっ、そ、そうなの……っていや、えっ、な、なに、突然? こ、この前のこと、文句言いに来たのか? でも、あれはお前らが……」
「そこはまあどうでもいいかな。…………あー、その、なんだろう。……少し、話しがしたくてさ」
僕はできるだけ平静を装って言う。吉田は意味がわからないと言う風に表情を変えて、「……な、なんでだよ……」と言いながら、なんだかんだ僕に付き合ってくれた。
息があがる。ほんのちょっと走るだけで疲れがどっと湧き出てくる。こんなことなら運動してれば良かったと、謎の後悔が湧き上がってくる。私はきょろきょろと周囲を見渡して、由希の存在を探した。
「――詩子!」
と。そんな私の耳に、由希の声が聞こえた。私はハッと声のした方を向いて、「由希!」とアイツの名前を呼んだ。
由希は校門前で、少しだけ息を乱して立っていた。私は慌てて由希の前に行き、そして、膝に手をついて大きく肩で息をした。
「はぁ、はぁ、ちょ、っと待って……息、しんどい……」
「あ、ああ……」
由希はそんな私を見てそうと受け答えた。
しばらくして、ようやく呼吸も落ち着いた所で。私は由希と向き直り、そして、「由希……」と彼女の名を呼んだ。
だけど、その先でなんて言えばいいかがわからなかった。色々言いたいことはあったのだけれど、とにもかくにも、うるさいくらいに思考がぐるぐと巡り巡って。
しかし、しばらくして。由希は私に向かって、大きく頭を下げた。
「――ご、ごめん、詩子!」
私は由希の言葉に些かの驚きを思ってしまった。
「その、あの、本当、色々大変な時期だったって言うのに……なんていうか、私の勝手な感情で、アンタのこと避けるようになって……とにかく、色々、本当にごめん! 私が悪かった、だからとにかく、ごめん!」
由希は大層な想いを込め私にそうと言った。私は「あっ……」と呟いてから、由希の言葉に、思い切り良く言い返した。
「そんな、そんなことないよ! アンタが謝る道理なんて、全く無い!
それよりも……さ、最低なのは、私の方だよ! その、あんなことで、何も言えなくなって……。もっと思いっきり、大声で言い返してやれば良かったって、今も後悔してるし。それに、その、なんていうか……あ、アンタのその、事情知って、私……」
「……わかってる。食堂で、アンタが叫んでるの聞いたから」
「あっ……き、聞いてた、の? あ、いや、その、ごめんっ! アレは別に、アンタが悪いとか、そういう意味じゃ……」
「わかってる。色々思うことがあって、私のために色々考えてくれてたってこと。わかってたんだ。アンタはそういう人間だって、アンタはそれでも私を嫌ったりしないって。でも、あんなの無視すりゃ良かったのに、私が勝手に怖がって……」
由希の声が震える。私はそれに胸がきゅっと締まるような苦しさに襲われて、衝動的にアイツに勢い良く抱き着いた。
由希がビクリと体を震わせて、「うあっ!?」と声をあげた。由希が離れようとするが、私はそれでも無理矢理奴を掴み、放さなかった。
「どうだっていいよ。他人に言えない秘密を抱えていたら、そんなの、誰だって怖くなるよ。私だって、しょうもない秘密だったけど、みんなにバレそうになって、凄く怖かったから。
そんなことより、私はアンタが、まだ私と友達を……親友をやりたいって思ってくれていることの方がよっぽど重要だった。だって、私にとって由希は、こんなに大切なんだもん」
「あっ……詩子、お前……」
「あ、い、一応言っておくけど、その、私はあくまで、友達としてって意味だから! なんて言うか、アンタに対してそう言う気持ちはまだ無いっていうか……」
「うっ……ま、まあ、そりゃそうだよな」
私は由希の返事を聞くと、彼女を抱く手をゆっくり放して、手を取り目を合わせた。
由希は少し顔を赤らめて私から視線を逸らす。私は色々な複雑な感情を抱いてから、自分の中でそれを咀嚼して、ゆっくりと息を吸ってから言葉を紡ぐ。
「……由希。なんていうか……アンタの気持ちは、その、わかってはいるから。確かに、知っちゃった以上、これまで通り……っていう風には、ならない……と思う。でも、そういうのも含めて、ちょっとずつ、ちょっとずつ付き合い方を考えていけばいいって、私は思うから」
「……詩子……」
「……うまくは言えないのだけど。そう言うことを、しっかりと、ちょっとずつやっていくのが、人間関係って奴だと思うの。私はそれを、アンタと河野から、教えてもらったの。
だから、由希。また私と一緒に歩こう。私にとってアンタらは、必要な存在だから」
私はそう言って由希に手を差し出した。由希はしばし私の手を見つめてから、「うん」と言って私の手を取り、そしてもう一度、今度は噛み締めるようにゆっくりと、「うん……!」と答えた。
私たちはしばらく、互いの手を握り合った。しかししばらくすると、周囲からのざわざわとした気を感じ取れるようになり、私はハッと辺りを見回した。
なんか、周りで色々な人がこっちを見ていた。
あまり好ましい雰囲気ではない。私はあまりの気恥ずかしさに、心の中で『ギョエー!』と悲鳴をあげた。
「ゆ、由希! とりあえず、どっか行こ! ここだとなんか恥ずい!」
「あっ、う、うん、わかった!」
そうして私は由希と手を繋ぎながら、大急ぎで校門を出た。
◇ ◇ ◇ ◇
その後の私たちは、他愛もない話をした。
内容で特に多かったのは、やはりと言うべきか、吉田とのその後についてだ。
少なくとも、ここ最近で私がアイツを見かけたことはない。少なくともつけられているだとか、家に何か不気味な手紙が届いたとか、怪奇現象だとかは起きていない。河野が言った通り、ストーカー化まではしなかったのだろうかと言うのが、今の私の認識だ(とは言え未だ怖いから河野には家にいてもらっているわけだが)。
その他には、大学でのことや、河野の事も聞かれた。家で何をしていたかだとか、そう言うどうでもいいことを。
色々と話しながら、私は由希を部屋に呼んだが。彼女は私の部屋を見て驚いていた。
当然だろう。河野が部屋に泊まるようになり数日経ったが、その間に休みがあったこともあり、私の部屋はアイツの手で大改造を施されていた。おかげで部屋は見違えるように綺麗になったし、何よりも収納スペースを広げるために用意した百均道具がそこら辺にあって、ちょっとした秘密基地のようにもなっていた。由希は部屋の様相を見て、「アイツ、何気にすげーんだな」と呆れたように褒めていた。
そしていくらか話しをして、由希にまた泊まり込むよう頼んで、私たちは就寝することになった。
綺麗になった部屋で友達と寝るのは、凄く気分が良かった。
◇ ◇ ◇ ◇
天音さんを送り出してすぐぐらいの時間。僕は公園から出て、暇つぶしに近場の本屋で漫画やら小説やらを漁っていた。
まあ、あの調子ならうまくいくだろうと、僕はその後の結果は報告があるまで探らないことにした。とりあえず、2人の間を取り持つことが出来たのは幸いだった。
そんなことを考えながら、めぼしい本を買って出入口に来た時。
「あっ……」
僕の横で、聞いたことのある声が聞こえた。
そこには、なんとあの吉田航平がいた。僕はびっくりしてしまって、「あっ」と同じく声を漏らした。
「…………」
吉田は何も言わず、僕の横を素通りした。僕は彼が少し気になってしまって、「ふむ」と、本屋の出入口で彼を待つことにした。
10分ほどして、吉田は普通に本屋から出てきた。きら○系の漫画を持って。僕は吉田に、「やあ」と話しかけた。
吉田はビクリと身体を震わせ、「ぬおおっ!?」と変な声を出した。
「驚かなくてもいいじゃないか」
「おっ、おど、驚くよ、そりゃあ。て、ていうかお前、なん、なんでここに?」
「本を買いに来ただけ。……あ、その漫画僕も持ってる。面白いよね」
「えっ、そ、そうなの……っていや、えっ、な、なに、突然? こ、この前のこと、文句言いに来たのか? でも、あれはお前らが……」
「そこはまあどうでもいいかな。…………あー、その、なんだろう。……少し、話しがしたくてさ」
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