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友情編
閑話2 きっかけ
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河野が泊まるようになって、最初の休日。奴は「よし」と言うと、やけに気合いの入った様子で私の部屋を一望した。
「さて、じゃあ、掃除に取り掛かろう」
「お、お~!」
私は河野の気合いに身を任せるつもりでそうと返事をした。
掃除をするに当たり、いるものといらないものとは既に分けて置いてある。昨日河野に言われて、1時間ほどかけて必死に分別したのだ(ぶっちゃけ面倒臭かった)。
しかし、部屋の見た目というのは物を整理するだけで大きく変わる物だ。散乱した衣服をたたみ、クローゼットへ入れるだけでまず足の踏み場が出来たし、その辺にまとめてどん! どん! どん! と置きっぱなしにしていた大量のプリントはさながらバベルの塔のように積み上がった。ペットボトルや空き缶などを片付けると机の上には2人位が向かい合って勉強できるような広いスペースが確保されたし、化粧品を片付けると失くしたと思っていた口紅などが出てきて妙に損をした気分にもなった。
そんなこんなで、今や私の部屋はリン○フィットア○ベンチャーができそうなくらいには広くなった。もうこれでいいんじゃね?
「ダメだよ。物を片付けるだけじゃ、部屋は綺麗にならない。床を拭くとかもそうなのだけれど、部屋の掃除で1番重要なのは、物が二度と散乱しないようにすることだと僕は思うよ」
河野に先の旨を伝えると、そんな言葉が返ってきたので、私は仕方なく彼の言うことを聞くことにした。ん~、部屋の掃除って面倒臭い。
「でも、二度と物を散乱させないって無理じゃない? 私ハッキリ言うけど自信ないわよ?」
「ん、その辺はぶっちゃけわかっている」
「あんたって何気に辛辣よね」
「いや、そういう意味じゃなくて、大概誰でも部屋は散らかすよってことだよ。言うて、僕も一人暮らしを始めるまでは自室が散乱しているタイプだったし」
私は河野の言葉に少し驚いた。
はえ~、こいつしっかりしているように見えて案外そうでもないんだな。意外だ。
いや、待てよ。コイツと私の散らかってるの定義が違うのかもしれない。私の大丈夫がコイツにとっての散らかってる、だって十二分にありえるわけで。
「君は比較的僕と同じくらいだったし、散らかり方を見た感じまあなんとかなりそうな感じもしたから大丈夫だよ」
「……私と同じくらいってヤバくない?」
「僕もそう思う。でも、だって、面倒臭いじゃん。片付けって」
コイツ案外ズボラなんだな。私は河野の評価を確定させた。
「さて、と。そういうわけで、部屋の掃除、もといこの部屋をできるだけ物で溢れさせないようにする大改革が始まるけれど」
「ちなみに、どうやってそんなことすんの? 意識の問題でなんとかできるほど私はキチッとしてないけれど」
「それについては、答えは簡単だ。如何に片付けのハードルを下げるか、というのが重要なポイントだよ」
……? よくわからないな。私は河野の解説をもうしばらく聞くことにした。
「例えば、どうしてペットボトルが部屋に溢れると思う?
きっと答えはこうなんじゃないかな。捨てるのが面倒臭い」
「あー、そうね。だって、ラベル剥がして、キャップ分けて、ボトル洗って……って、鬱陶しくってさ」
「うん。ペットボトルを捨てられないのは、普通の燃えるゴミと違って捨て方にいくつかの手順が必要だからだ。それが精神的にしんどいから溢れちゃうんだ。じゃあ、例えば洗わずに捨てて良いってなったら、割と簡単に捨てられると思わない?」
「あー……確かに」
「そんな感じで、とにかく物を片付けるハードルを低くするためにアイデアを出すのが、片付けのポイントだ。
と、ペットボトルについてつらつら語ったけれど、実はこれについては正直どうしようもないというところがある。というわけで今はペットボトルではなく他の片付けのことについて考えていこう」
河野はそう言うと、部屋のあちらこちらを見ながら、私に色々な質問をしてきた。
例えば、「ここは賃貸だけど、壁に穴は空けられないよね。粘着テープとか使ってもいい?」だとか、「この本棚の上、もう少し拡張できるよ」だとか。私はそれに対して、「賃貸って画鋲程度の穴なら空けていいんだよ?」とか、「別に見た目はこだわんないからさ」だとか、そう言う返事をした。
河野は私の言葉を聴きながらメモを取り、最終的には私の部屋の大改造プログラムが出来てしまっていた。
ザッとまとめると、「部屋中のデッドスペースを活用して物をしまう場所を増やそう作戦」だ。私はそれを聞き、思わず小首を傾げた。
「河野、部屋の片付けに来たんだよね? でも前さ、ツ○○ターで片付け下手な人は収納を増やすって流れて来たけど」
「アレは半分正解で半分間違ってる。片付けなんて言うのはね、別に物を減らさなくちゃいけないわけじゃない。片付けの目的はあくまで、何がどこにあるのかわかりやすくすることと、パッと見綺麗にすること。物を減らせば結果的にそれはできるけど、現実的には物を何でも捨てるのは難しいよ。
そういうわけで、収納を増やして物が散乱するのを防ぐ。君は所謂捨てられないタイプじゃなくて、捨てるのを面倒臭がるタイプだから、そっちの方が効果があるよ」
私は河野に言われて、なるほど、と思わず頷いてしまった。
確かに、私は捨てる時こそ一気に捨てるが、それをするまでの気力が湧かないからゴミが溜まっていくのだ。整理整頓を面倒臭いとも思っているわけで、その辺は『捨てられない』というのとは本質的に違う。
「収納を増やす際、そして収納をする際には幾つかポイントがある。ひとつめが、よく使う物はよく使う場所に置くこと。
例えばスマホの充電コード、iPadや大学の教材などなど、こういうのは君が基本的にいるであろう机周りに置いておくと良い。こうして手の届く範囲に物があると、出すだけじゃなく片付ける際にも楽だ。だから片付け易くなる。
ふたつめが、分類する時は、物の種類ではなく使い方で分類すること。わかりやすく言うなら、服を『パーカー』だとか『靴下』とかで分別するのではなく、『夏に着る物』『冬に着る物』と言った、着る際の季節ですると良い。だから上着とズボンが同じ棚に入っていることもある。こうしておくと、出す時にいちいち別の棚を開けなくて済むので楽だ。
次に、取り出したり片付けたりするのに手間暇がかからないようにすること。物が散乱する最大の原因は、面倒臭がってとりあえず物をそこにポーンと置いてしまうことだ。この面倒臭いは、例えばそもそもで収納スペースの分類が雑過ぎるだとか、片付けるまでの移動距離が長いだとか、そう言う負担が大きいことから発する。特に雑多な物は簡単に片付けられるようにしておくと良い。あとは……」
こんな感じで、河野の説明を聞きながら、私は彼と100円ショップへ行ったりホームセンターへ行ったりしながら部屋を掃除して行った。
そうして、やがて、この部屋は見違えるように綺麗になってしまった。
服をぶち込んでいただけのクローゼットには、百均で買ってきた壁掛け金網を使いいくつかの服(とりわけ着る頻度が高いコートなど)を外に出してそこに引っ掛けた。空いたクローゼットのスペースには要らない物などを置き(これも分別されている)、使わない物らしく暗い場所に封印されることとなった。
他にも石膏でできた壁に金網やパンチボードなどを取り付け棚台を増やしたり、棚の上に百均の小さな棚を置いたりだとかをして、兎にも角にも部屋のあらゆるデッドスペースが埋まり、地面に置くしかなかった様々なものが空中(いや本当の意味での宙では無いのだけど)に置かれることとなった。
「物が溢れて汚いのなら、置ける場所を増やしてそこに物を固定する。これだけで部屋は綺麗になる」
「うそだろ、これ本当に私の部屋か……? 劇的ビフォーアフター? お前実は匠とか呼ばれてたりしないか?」
「部屋を吹き飛ばす所業はしたことがない。とまあそれはさておき、とりあえず、気に入って貰えたようで何よりだ」
河野は少し笑いながらそうと言った。
「いやもうマジで助かった。……ていうかさ、河野。助かったのはそうなんだけど、アンタなんで私の部屋なんか掃除してくれたの?」
「いや、なんというか。前も言ったけど、こういう、スペースをどう有効活用するか、みたいな、アイディアを出すことが好きなんだよ、僕。面白いからやった。それだけ」
「ははぁ、なるほどねぇ」
私は河野の言葉に首をひねりながらまあとりあえず納得はしておいた。
その後、午後の2時となるくらいに手軽にではあるが遅めの昼食を取る次第となった。
とは言え、流石にキッチンに河野を立たせるのは悪い。というわけで、今回ばかりは私が食事を作って渡すこととなった。
そして私は、茶碗に米を、皿に焦げた卵焼きを乗せて河野が待つ机にへと運んだ。机の上には箸やらコップやらが既に置かれていて、今すぐでも食べられるような状態だ。
「ごめん、焦がしちゃった。あと形汚いし」
「これくらいなら別にいいでしょ。ご飯なんて食べられたらいいんだよ」
河野はそうと言いながら、私の作った食事を「ん、美味い」と言って食べた。
「けどまあ、流石にランチプレートは買えなかったね」
「そうね。正直、百均の道具だけでもういっぱいって言うか。意外と金掛かるのね、あそこって」
「便利故にいくらでも物を買えちゃうからね」
「……てかさ、ランチプレートってそんなに楽なん? 確かに、洗い物の数は減らせるだろうけどさ」
「ん、楽かどうかで言えばそっちの方が楽だね。けど、できれば食洗機が欲しかった」
「そんなの買えないわよ! たっかいじゃない!」
「安いものでも3万はするだろうからね。僕は5万ほど使った覚えがある」
「えっ、アンタの家食洗機あるの?」
「バイトでお金を貯めて買ったんだよ。それまでの繋ぎでランチプレートを使ってた」
「はぁ~。すごいな、アンタ。よくもまあそんなことをしようと思ったわ」
「僕は凄く面倒臭がりだからね。とにかく、楽がしたかったんだ。これは片付けの時も同じことが言えるけど、どれだけ家事とか掃除を楽にするかを考えた方がいい。そうすると、自ずと部屋は綺麗になるし、自分の時間も確保できる」
ははぁ。私は大変参考になるアドバイスに妙に感心してしまった。
すごいな、本当。コイツ、やっぱり色々考えてて、頭良いんだ。
しかも良い意味で雑だし、あまり他人に高いハードルを求めない。なんでこいつの前だと素がさらけ出せるか、本当に、よくわかるというか。
もしもこいつが旦那だったら、きっとすげー生きやすい生活ができるのだろうな。私はふと、そんなことを、考えてしまった。
「…………。このあとどうする、河野?」
「ん……どうしようか。正直、何もすることないし、別にどうでもいいと思うけど」
「……スマ○ラしない?」
「いいよ。やろう」
そして私は、河野と一緒に、ワイワイと大騒ぎをしながらゲームで遊んだ。
「さて、じゃあ、掃除に取り掛かろう」
「お、お~!」
私は河野の気合いに身を任せるつもりでそうと返事をした。
掃除をするに当たり、いるものといらないものとは既に分けて置いてある。昨日河野に言われて、1時間ほどかけて必死に分別したのだ(ぶっちゃけ面倒臭かった)。
しかし、部屋の見た目というのは物を整理するだけで大きく変わる物だ。散乱した衣服をたたみ、クローゼットへ入れるだけでまず足の踏み場が出来たし、その辺にまとめてどん! どん! どん! と置きっぱなしにしていた大量のプリントはさながらバベルの塔のように積み上がった。ペットボトルや空き缶などを片付けると机の上には2人位が向かい合って勉強できるような広いスペースが確保されたし、化粧品を片付けると失くしたと思っていた口紅などが出てきて妙に損をした気分にもなった。
そんなこんなで、今や私の部屋はリン○フィットア○ベンチャーができそうなくらいには広くなった。もうこれでいいんじゃね?
「ダメだよ。物を片付けるだけじゃ、部屋は綺麗にならない。床を拭くとかもそうなのだけれど、部屋の掃除で1番重要なのは、物が二度と散乱しないようにすることだと僕は思うよ」
河野に先の旨を伝えると、そんな言葉が返ってきたので、私は仕方なく彼の言うことを聞くことにした。ん~、部屋の掃除って面倒臭い。
「でも、二度と物を散乱させないって無理じゃない? 私ハッキリ言うけど自信ないわよ?」
「ん、その辺はぶっちゃけわかっている」
「あんたって何気に辛辣よね」
「いや、そういう意味じゃなくて、大概誰でも部屋は散らかすよってことだよ。言うて、僕も一人暮らしを始めるまでは自室が散乱しているタイプだったし」
私は河野の言葉に少し驚いた。
はえ~、こいつしっかりしているように見えて案外そうでもないんだな。意外だ。
いや、待てよ。コイツと私の散らかってるの定義が違うのかもしれない。私の大丈夫がコイツにとっての散らかってる、だって十二分にありえるわけで。
「君は比較的僕と同じくらいだったし、散らかり方を見た感じまあなんとかなりそうな感じもしたから大丈夫だよ」
「……私と同じくらいってヤバくない?」
「僕もそう思う。でも、だって、面倒臭いじゃん。片付けって」
コイツ案外ズボラなんだな。私は河野の評価を確定させた。
「さて、と。そういうわけで、部屋の掃除、もといこの部屋をできるだけ物で溢れさせないようにする大改革が始まるけれど」
「ちなみに、どうやってそんなことすんの? 意識の問題でなんとかできるほど私はキチッとしてないけれど」
「それについては、答えは簡単だ。如何に片付けのハードルを下げるか、というのが重要なポイントだよ」
……? よくわからないな。私は河野の解説をもうしばらく聞くことにした。
「例えば、どうしてペットボトルが部屋に溢れると思う?
きっと答えはこうなんじゃないかな。捨てるのが面倒臭い」
「あー、そうね。だって、ラベル剥がして、キャップ分けて、ボトル洗って……って、鬱陶しくってさ」
「うん。ペットボトルを捨てられないのは、普通の燃えるゴミと違って捨て方にいくつかの手順が必要だからだ。それが精神的にしんどいから溢れちゃうんだ。じゃあ、例えば洗わずに捨てて良いってなったら、割と簡単に捨てられると思わない?」
「あー……確かに」
「そんな感じで、とにかく物を片付けるハードルを低くするためにアイデアを出すのが、片付けのポイントだ。
と、ペットボトルについてつらつら語ったけれど、実はこれについては正直どうしようもないというところがある。というわけで今はペットボトルではなく他の片付けのことについて考えていこう」
河野はそう言うと、部屋のあちらこちらを見ながら、私に色々な質問をしてきた。
例えば、「ここは賃貸だけど、壁に穴は空けられないよね。粘着テープとか使ってもいい?」だとか、「この本棚の上、もう少し拡張できるよ」だとか。私はそれに対して、「賃貸って画鋲程度の穴なら空けていいんだよ?」とか、「別に見た目はこだわんないからさ」だとか、そう言う返事をした。
河野は私の言葉を聴きながらメモを取り、最終的には私の部屋の大改造プログラムが出来てしまっていた。
ザッとまとめると、「部屋中のデッドスペースを活用して物をしまう場所を増やそう作戦」だ。私はそれを聞き、思わず小首を傾げた。
「河野、部屋の片付けに来たんだよね? でも前さ、ツ○○ターで片付け下手な人は収納を増やすって流れて来たけど」
「アレは半分正解で半分間違ってる。片付けなんて言うのはね、別に物を減らさなくちゃいけないわけじゃない。片付けの目的はあくまで、何がどこにあるのかわかりやすくすることと、パッと見綺麗にすること。物を減らせば結果的にそれはできるけど、現実的には物を何でも捨てるのは難しいよ。
そういうわけで、収納を増やして物が散乱するのを防ぐ。君は所謂捨てられないタイプじゃなくて、捨てるのを面倒臭がるタイプだから、そっちの方が効果があるよ」
私は河野に言われて、なるほど、と思わず頷いてしまった。
確かに、私は捨てる時こそ一気に捨てるが、それをするまでの気力が湧かないからゴミが溜まっていくのだ。整理整頓を面倒臭いとも思っているわけで、その辺は『捨てられない』というのとは本質的に違う。
「収納を増やす際、そして収納をする際には幾つかポイントがある。ひとつめが、よく使う物はよく使う場所に置くこと。
例えばスマホの充電コード、iPadや大学の教材などなど、こういうのは君が基本的にいるであろう机周りに置いておくと良い。こうして手の届く範囲に物があると、出すだけじゃなく片付ける際にも楽だ。だから片付け易くなる。
ふたつめが、分類する時は、物の種類ではなく使い方で分類すること。わかりやすく言うなら、服を『パーカー』だとか『靴下』とかで分別するのではなく、『夏に着る物』『冬に着る物』と言った、着る際の季節ですると良い。だから上着とズボンが同じ棚に入っていることもある。こうしておくと、出す時にいちいち別の棚を開けなくて済むので楽だ。
次に、取り出したり片付けたりするのに手間暇がかからないようにすること。物が散乱する最大の原因は、面倒臭がってとりあえず物をそこにポーンと置いてしまうことだ。この面倒臭いは、例えばそもそもで収納スペースの分類が雑過ぎるだとか、片付けるまでの移動距離が長いだとか、そう言う負担が大きいことから発する。特に雑多な物は簡単に片付けられるようにしておくと良い。あとは……」
こんな感じで、河野の説明を聞きながら、私は彼と100円ショップへ行ったりホームセンターへ行ったりしながら部屋を掃除して行った。
そうして、やがて、この部屋は見違えるように綺麗になってしまった。
服をぶち込んでいただけのクローゼットには、百均で買ってきた壁掛け金網を使いいくつかの服(とりわけ着る頻度が高いコートなど)を外に出してそこに引っ掛けた。空いたクローゼットのスペースには要らない物などを置き(これも分別されている)、使わない物らしく暗い場所に封印されることとなった。
他にも石膏でできた壁に金網やパンチボードなどを取り付け棚台を増やしたり、棚の上に百均の小さな棚を置いたりだとかをして、兎にも角にも部屋のあらゆるデッドスペースが埋まり、地面に置くしかなかった様々なものが空中(いや本当の意味での宙では無いのだけど)に置かれることとなった。
「物が溢れて汚いのなら、置ける場所を増やしてそこに物を固定する。これだけで部屋は綺麗になる」
「うそだろ、これ本当に私の部屋か……? 劇的ビフォーアフター? お前実は匠とか呼ばれてたりしないか?」
「部屋を吹き飛ばす所業はしたことがない。とまあそれはさておき、とりあえず、気に入って貰えたようで何よりだ」
河野は少し笑いながらそうと言った。
「いやもうマジで助かった。……ていうかさ、河野。助かったのはそうなんだけど、アンタなんで私の部屋なんか掃除してくれたの?」
「いや、なんというか。前も言ったけど、こういう、スペースをどう有効活用するか、みたいな、アイディアを出すことが好きなんだよ、僕。面白いからやった。それだけ」
「ははぁ、なるほどねぇ」
私は河野の言葉に首をひねりながらまあとりあえず納得はしておいた。
その後、午後の2時となるくらいに手軽にではあるが遅めの昼食を取る次第となった。
とは言え、流石にキッチンに河野を立たせるのは悪い。というわけで、今回ばかりは私が食事を作って渡すこととなった。
そして私は、茶碗に米を、皿に焦げた卵焼きを乗せて河野が待つ机にへと運んだ。机の上には箸やらコップやらが既に置かれていて、今すぐでも食べられるような状態だ。
「ごめん、焦がしちゃった。あと形汚いし」
「これくらいなら別にいいでしょ。ご飯なんて食べられたらいいんだよ」
河野はそうと言いながら、私の作った食事を「ん、美味い」と言って食べた。
「けどまあ、流石にランチプレートは買えなかったね」
「そうね。正直、百均の道具だけでもういっぱいって言うか。意外と金掛かるのね、あそこって」
「便利故にいくらでも物を買えちゃうからね」
「……てかさ、ランチプレートってそんなに楽なん? 確かに、洗い物の数は減らせるだろうけどさ」
「ん、楽かどうかで言えばそっちの方が楽だね。けど、できれば食洗機が欲しかった」
「そんなの買えないわよ! たっかいじゃない!」
「安いものでも3万はするだろうからね。僕は5万ほど使った覚えがある」
「えっ、アンタの家食洗機あるの?」
「バイトでお金を貯めて買ったんだよ。それまでの繋ぎでランチプレートを使ってた」
「はぁ~。すごいな、アンタ。よくもまあそんなことをしようと思ったわ」
「僕は凄く面倒臭がりだからね。とにかく、楽がしたかったんだ。これは片付けの時も同じことが言えるけど、どれだけ家事とか掃除を楽にするかを考えた方がいい。そうすると、自ずと部屋は綺麗になるし、自分の時間も確保できる」
ははぁ。私は大変参考になるアドバイスに妙に感心してしまった。
すごいな、本当。コイツ、やっぱり色々考えてて、頭良いんだ。
しかも良い意味で雑だし、あまり他人に高いハードルを求めない。なんでこいつの前だと素がさらけ出せるか、本当に、よくわかるというか。
もしもこいつが旦那だったら、きっとすげー生きやすい生活ができるのだろうな。私はふと、そんなことを、考えてしまった。
「…………。このあとどうする、河野?」
「ん……どうしようか。正直、何もすることないし、別にどうでもいいと思うけど」
「……スマ○ラしない?」
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