愛と友情は紙一重!~オタサーの姫と非モテ童貞陰キャオタクがパコパコするまでの物語~

オニオン太郎

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恋愛編

第6話「男女の『友情』は成立しない。①」

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 ある昼食時。私は河野と共に学食にて飯を喰らっていた。

 わいわいがやがや、周囲は騒がしい。とは言え、大学生の飯時なんて言うのは大体こんなものだ。私はスプーンでカレーをすくいながら河野に話しかけた。


「河野ってさ、勉強はしてんの?」

「まあ普段からしているよ。家に帰ってから一時間、週に2~3日繰り返していれば十分だよ」

「うわっ、えらい。私なんて遊びっぱなしなのに」

「だろうと思った。……あれ、でも君単位落としたとかあんまり言わないよね?」

「できる女はちゃっかりしてるもんよ。へっへっへ、詩子ちゃん結構頭良いんだぜ?」

「まあ君が頭良いのは知ってたけど」


 河野がそう言いながらずるずるとうどんを吸った。おおう、なんか、唐突に褒めてくるなお前。


「というか、姫川、過去問とかってどうやって集めてるんだ? こんなこと言うとアレだけど、君、ツテないだろ?」

「由希が取って来てくれんのよ」

「なるほど。……もしアレだったら、僕からもあげようか?」

「お、それは嬉しい。マジでサンクス。……って、アンタはツテあんのね」

「友達からもらえば別に……」

「……そういや、アンタ意外と交友関係広かったわね」

「細かいことを気にしなければ、大概の人とは付き合えるもんだよ。あとは、単純に良い奴が多い」


 さも当然とばかりに河野は言う。コイツ、陰キャの癖になんでかコミュ力はあるんだよな。自分ではコミュ障を自称しているけど。

 ……。……意外とコミュ力があるのなら、私以外の女子とも仲良くなってんのかな。私はふと、そんな考えが頭をよぎった。

 大概、女子に対してコミュ障になる奴は、目の前の女を『女』として見過ぎているからそうなってしまう。別にこれは性的な意味ではなく、つまるところ、性別をどれだけ意識するかと言う問題だ。

 その点河野は、極めて男女の観念が薄い。彼の中でも確かに性別と言う概念は存在しているし、女の私に気を使っているのもよくよく理解できるが、それでもどこか女を女として見ていない節がある。

 性的な目で見ていないと言う意味ではなく、ただ単純に、なんか自然なのだ。そうなってくると、当然、女の子とも普通に話せるというわけで。

 ……いや、でもな。というか、昨日の話を気にしすぎなのよ。私は邪念を払おうと、刺激的な茶色の液体(?)を口に突っ込んだ。

 と、途端。ピコピコと音が鳴り、河野がスっとスマホを取り出した。

 そして河野は、なにやら悩ましげな顔をして、ポチポチと誰かに何かメッセージを送り始めた。


『河野君、最近誰かと連絡取り合ってるよね』


 ――いや、だから、違うって。私はそんなことを思いながら、しかし、つい知らない間に口が動いてしまっていた。


「河野、誰から?」


 私が尋ねると、河野は少しバツが悪そうに、「ん……あー、友達」と受け答えた。


「友達、かぁ。……ハハ、もしかして女?」


 と。途端、河野が体の動きをピタリと止めた。

 そして数秒の間を置き、河野はまたスマホをポチポチとしはじめた。私はその動作に、彼が図星であることを察した。


「へぇ、河野が女友達……珍しいね」

「君がそれを言うのか……」

「いやまあ、確かに。でも、実際そうじゃん」

「ん……まあね」


 河野は私を見ない。私はじっと河野を見つめて、そして、


「……会ってみたいな」


 また言う気もなかった言葉を、パッと出してしまった。


「え? なんで?」

「あ、いや……えっと、だって、ほら。アンタの女友達って、どんな奴かなって思って」

「よくわかんないな……」

「いや、なんでもいいけど」


 私は突き放すように言って、自分の放った言葉の意味を考えた。

 何を言っているんだ、自分は。なんでこんなこと、突然。
 河野が困惑したような顔でこっちを見ている。そりゃあ、そうだ。だって、言った私も困惑しているんだから。

 どうしよう。なんでもないって言ってごまかそうか。
 ……いや、でも。私はそして、河野にもう一度同じ要求をした。


「とかく、よかったら会わせて欲しいんだけど。仲良くなれそうだし」

「……君が他人に興味を持つって、珍しいな。
 まあでも、うん。わかった。ちょっと、聞いてみる」


 河野はそう言ってスマホを操作し始めた。

 しばらく間が空いて。河野はスマホをポケットにしまいながら、「うん」と頷いた。


「良いみたい。今度の土曜日、駅前のマッ○でって」

「土曜日か。……まあ、うん。わかった」


 本当は河野とカラオケに行く予定だったのに。いやでも、まあ、相手にも都合がある。私から持ちかけて予定を伝えなかったのだから、それは私たちが合わせるべきだ。


「……ごめんね、姫川」

「ん、なにが?」

「いや、本当ならカラオケ行く予定だったから」

「……。いや、でも、私から突然出したんだから。それくらい、仕方ないでしょ」


 河野、カラオケ行く予定しっかり覚えていたのか。私はちょっと口の端がむずむずとした。

 そうして私たちは、件の女に、土曜日の昼、会いに行くことになった。


◇ ◇ ◇ ◇


 約束の日。私は某ハンバーガーショップの机に座って、河野と共に件の女友達とかいう奴を待っていた。

 本当に、ただ気になっているだけだ。別に、それ以上の気持ちはない。私は頭の中でそう念じながら、ただひたすらにじっと出入り口の扉を見詰めていた。


「姫川、ちょっと怖いよ」

「別に、普通でしょ」

「いや……まあ、うん。別にいいけど」


 河野は私に言いながら肩を落とした。

 ――と、


「よっほー、河野~」


 突然後ろから、女の声が聞こえた。

 ……反対側の入り口から来やがったか。私は予想が外れて若干イラっとしてしまった。

 ていうか、うわあ。めっちゃかわいいじゃねぇか、この女。私は自分と彼女の差になにか胃がぐるぐるとするような重みを感じた。

 明るく若干巻き気味に下ろされた茶色い髪、血色の良い卵のような白い肌。唇は薄く、しかし明るいピンクの口紅で印象深くなっている。まつ毛も長いし(たぶん付けまつげだ)、そのためか目がぱっちりと開いている印象があって、目に入れただけで視線を意識してしまう。ほのかに塗されたチークがあか抜けた彼女に少し子供のようなかわいらしさを与えている。

 女は化粧でいくらでも化けるとは言うが、これはおそらくそもそも素材が良い。その上で抜群なメイクをしているのだから、もう八方無敵だ。

 ていうか、本当にかわいい。女子力の塊だ。歩くだけでなにか、春の花みたいなのがふわふわと飛んでいくような、そんな雰囲気がある。


「や、やあ、清水」

「あ~、その子が会いたがってたって言う友達? へぇ、河野の友達って言うからもっとオタっぽいのかな~って思ったけど、結構かわいいじゃん。よろしく~」


 そう言って清水は対面の河野の隣に座ってきた。

 なんか、確かに私もそこそこの美人であるっては思ってるけど、お前に言われると嫌味にしか聞こえない。私は心の中で呟きながら、「どうも、よろしく」と小さく言った。


「え~、なんか距離感じるな~。あ、私、清水心春。心春で良いよ、よろしく」

「……えっと、清水さん? は、河野とは知り合って長いの?」

「下の名前で呼んでくれないかあ。まあ、そりゃそうか」


 清水、とやらはそう言って「たはは~」とでも言うように笑った。


「それで、河野とは知り合って長いの?」

「ん、幼馴染。幼稚園の頃から知ってるよ?」

「へぇ~」


 ……クソ、なんかモヤモヤするな。私は目の前の女にバレないよう、ぐっと奥歯を噛み締めた。

 ――と。清水はしばらく、私を見詰めて。するとやがて、私のことを真顔で見つめたまま、河野へと話しかけた。


「……ねえ河野。アンタ、ちょっとここ離れてくれない?」

「え? ……なんで?」

「なんでも。今ちょっと、この人と話したいの。2人で」

「……なんというか、その……大丈夫か?」

「いいから。お願い」


 清水が声に少しトゲを含ませた。河野はどうもそれにたじろいだようで、「わかったよ」と言いながら、首を傾げて店の外へと出た。

 ――なるほど。ここから、ということか。私はそうして、目の前の女を見詰める。


「それで、えっと……名前、なんだっけ?」


 清水が私に問いかける。私は彼女を見詰めたまま、「姫川。姫川詩子」と返す。


「よろしくね、詩子さん」

「いきなり下の名前なのね」

「ん、いいじゃん。同性なんだし」

「まあ、いいけどさ」


 腹の底から感情が沸き上がってくる。それがやけに奇妙な緊張感を作る。

 私はそして、こちらを透かして見るような清水と向かい合った。
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