愛と友情は紙一重!~オタサーの姫と非モテ童貞陰キャオタクがパコパコするまでの物語~

オニオン太郎

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恋愛編

第二部最終話「特別な人と、特別な関係で、特別でない日々を」②

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「……うーん……」


 僕は家の中で、1人、スマートフォンと睨めっこをしながら唸っていた。

 昨日、僕と姫川は晴れて恋人になった。僕は心の底から嬉しくて、ずっと表情が緩んでいた気がする。

 そんな晴れやかな出来事があったのに、どうしてこうも悩ましいのか。なぜなら、今日はクリスマスイブだからだ。


「……どうしようかなぁ」


 クリスマス。おおよそのカップルは、この日を今か今かと楽しみにしているだろう。

 なにせ、おそらく、一年の中で最もロマンチックな日だからだ。

 街に飾られたイルミネーション、光が反射したかのようにキラキラと輝く雪、寒さを紛らわすため握り合う手。この一日を題材にするだけで、安易な恋愛小説がひとつ作れる。

 おおよそのカップルは、この日のために色々な準備をする。どこのイルミネーションが綺麗だとか、どこでご飯を食べると美味しいだとか。しかし、僕の方はと言うと、この準備が圧倒的な不足している。

 そも、昨日今日でデートプランを練り込めと言うのは無理がある。何より、僕は童貞だ。正直、姫川と付き合い始めたと言うこの事実にさえ、未だ実感がない。

 ……どうしようか。僕は「うぅん」と唸り頭を搔いた。


「……相談相手がいればなぁ」


 僕は天井に向けて、ため息を吐くように呟く。

 とは言え、相談自体はとっくにしている。恋愛絡みの話はおおよそ四郎にしていて、彼に1度、恥を忍んで電話をかけた。

 しかし、四郎はしばらく考えたあと、僕にこう言った。


『悪いな。俺、これに関してはアドバイスできねーわ。強いて言うなら、下手に考えない方がいいぞってだけ』


 なんともまあ、曖昧というか、歯切れの悪い回答だった。僕は四郎の言葉を聞いて、納得出来ないながらも「わかったよ」と言い、電話を切った。

 ――下手に考えない方がいい、というのは、僕の恋愛経験では、下手なことをするより、王道的なことをした方が良い、と言うことだろうか。

 小説の素人が下手にオリジナリティを出すくらいなら、何も考えずにテンプレをなぞった方が面白くなる。そう言うことなのだろうか。僕はガリガリと頭を搔いて、「うぅん」とまた唸った。

 頭の中に、清水からの言葉が浮かんだ。


『本当はこういうの、男の子の役目なんだからね』

「……なんというか、」


 僕は机に突っ伏し、はぁ、と大きなため息を吐いた。


「男って言うのは、つくづく、面倒臭いな」


 正直、何も考えなくていいのならこれ以上考えたくない。

 大体、僕はあまり外に出るのが好きじゃない。人混みは何だかざわざわして、鬱陶しいのだ。
 楽しい施設や遊園地、こう言ったものを遊んでいる時、そりゃあ楽しいが、それは僕が完全に一人きりの世界に入り込んでいるからだ。だがデートとなれば、姫川にも、周りの人にも気を使うわけで。


「………………。どうしようっかなあ」


 僕は答えの出ない問いかけを何度も繰り返した。


「――まあ、でも、」


 そして僕は、手に持ったスマートフォンを操作して、とある人物に電話をかける。


「それが1番、確実だよな」


 僕は呟いてから、スマホを耳に押し当てた。


◇ ◇ ◇ ◇


 家で1人、呑気にソシャゲの周回をしていたところ。私のスマートフォンに、ある男からの電話が来た。

 河野真白だ。昨日晴れて付き合うことになった、私のピッピ。


「おっ、」


 私はそう声を出して、周回を止め、河野の電話に出た。


「もしもし、河野?」

『ああ、姫川。えっと、ちょっと、いいかな?』 


 私は首を傾げて、「いいよ、なに?」と尋ねる。

 すると河野は、少し迷うような声を出してから、私に言った。


『……クリスマスイブだけど。その、どこか、行きたいところとかあるかい?』


 私はそれを聞き、「あっ、」と目を大きくした。

 ――そうだ、そうだよ。今日、クリスマスじゃん。私は「ああー」と納得して声を出した。

 いや、忘れていたわけじゃない。ただ、なんと言うか、『まあ、そりゃそうだよな』と思わされただけだ。

 クリスマス。カップルがロマンチックと性を堪能する日。ならば少なくとも、デートなりなんなり、そういったカップルっぽいことを意識してしまう日なわけで。

 ――そりゃ、河野だって、色々思うよな。私は誰もいないのに、頷いていた。

 ……とは言え。私は内心で「うーん」と呟いてから、河野に自分の想いを伝えた。


「……なんかさ。クリスマスにイルミネーションデートってさ、めんどくない? 河野はどう思う?」

『……まあ、ぶっちゃけ、わかる』

「だよね。……あー、ならさ。
 私の家来て、一緒にゲームしない? そっちのが絶対楽しいよ」

『……いいのかい?』

「別に、もう付き合ってんだし、いいよ。家くらい。入ったことあるんだし」

『ん、まあ』

「じゃあ、そうしよう。あ、でも、待って。後でケーキ買いに行きたい。あとピザ頼む」

『ご飯だけはクリスマス、ってことね』

「特別な日なんだし、それ口実にカロリー貪るのは必要よ」

『そうだね。何もかも普通じゃあ、味気ないし』

「そゆこと」

『じゃあ、今からそっち向かうよ』

「ん、オケオケ。そんじゃあ」


 私は軽い会話をして、電話を切った。

 ――さて。私はそして、部屋を見回し、口角を吊り上げる。

 河野が綺麗にしてくれたとは言え、なんだかんだ、散らかしてしまっている。足の踏み場もないというほどではないが、衣服が散乱してて、ペットボトルの類がまたもや机を占領している。


「……流石に、片付けよ」


 アイツに嫌われたくないし。私は意気込んで、部屋の掃除を始めた。
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