愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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サブストーリー1【いじめはいじめられる方が悪い】

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 脂ぎった少年、吉田航平は、小学校の体育館裏で、わいわいと騒ぐ少年達に辺りを取り囲まれていた。

 少年たちはげらげらと笑い、航平は地面に尻もちを着いている。航平の体は土や埃で汚れており、彼は静かに涙を流していた。


『なに座ってんだよ! 立てよ!』


 航平の目の前にいる黒髪の少年が、航平にそうと煽り立てる。取り巻きの少年2人がそれに応えるように、航平の体を背中から掴み、大根を引っこ抜くように彼を立たせる。


『お前さぁ、太ってんだから、座ってたらダメだろ。ちゃんと立って、ダイエットしろっての!』


 少年はそう言って航平の腹を殴る。航平は『うぅ、』と呻き、痛みと吐き気にまた地面にうずくまる。


『また倒れた! どんだけザコなんだよお前!』

『ザーコ! ザーコ!』


 航平は呻きながら、『やめて』と周りに訴える。しかし、うずくまる航平を見下す面々は、誰も彼の声など聞いてはいなかった。


『ザーコ! デブ! うんこ男!』

『マジでクセェから、お前さっさと死ねよ! 公害なんだよ!』


 少年たちは無慈悲に笑う。航平は、言い返したいことも、やり返したいことも、たくさんあったが、そのどれもが、自分には出来ないと悟っており。


 ――世の中は、理不尽だ。倒れた航平は、自分を見下す面々を睨みながら、そう思った。

 この世は理不尽だ。正しい人が損をして、間違っている人が得をする。

 いじめられている僕なんかよりも、みんな、このいじめてる奴らの方が好きなんだ。

 誰も僕の味方をしてくれない。手を出さなくても、遠くで見ているか、みんなで小さく笑っている。

 僕が太っていて、気持ち悪いから。顔が良くないから。臭いから。だけど、そんな理由で、人をいじめて良いわけがない。

 この世は理不尽だ。人はみんな、善いか悪いかではなく、キモいかキモくないかで人を選んでいる。

 とどのつまり、人生とは、生まれつきが全てだ。生まれつき顔がキモい人間は、どう足掻いたって幸せにはなれない。


 吉田航平は、自分の人生、境遇に対して、投げやりになっていた。


◇ ◇ ◇ ◇


 私こと姫川詩子は、デパートのトイレを出て、急ぎ足で歩いていた。

 3月の上旬。この時期になると、大学生と言うのは就活だのなんだので忙しくなり、私自身も、この目まぐるしい日々に辟易していた。

 そうなると、付き合っている真白とも会える機会が減っていく。とは言えやっぱり会って遊びに行きたい気持ちもある訳で、今日はうまく時間が出来たので、彼と共にデパートへとやって来た次第だ。

 しかし、昼食を食べた後、私は便意を催し、真白にそれを伝えて事を致してきた訳だが。このトイレの時間と言うのが、今の私には正直惜しいと思わされてしまうわけで。


「せっかく遊びに来てんのに、クソで時間取られるとかマジでクソじゃねぇか」


 誰にも聞こえないように私は呟く。せっかくの好きぴとの時間をこんなことで削られちゃあ、たまったもんじゃない。

 そうして、真白が待っている、ゲーセン近くのフードコートのベンチに赴くと。


 真白は、小さい女の子と一緒に、ベンチに座っていた。


 表情を見ると、何やら困っているようだ。私は2人に近づき、首を傾げながら話しかけた。


「誘拐?」

「あ、詩子。いや、そんなわけないだろ。流石にその冗談はまずいよ」

「ごめんって。……で、その子、なに?」


 私は女の子を見る。

 黒い髪の毛をツインテールにしている。幼稚園か、小学生か。とりあえず、一人でこんな所をうろついても良い年齢ではない。

 よくよく見ると、女の子は目を泣き腫らしていた。私は何となく事情を察しながらも、女の子に優しく話しかける。


「どうしたの? なにか怖いことあった?」

「…………ママとはぐれた……」


 女の子はうるうるとさせながら、私にそう言った。

 やっぱりか。デパートで、小さい女の子が迷子――まあ、よくあるシチュエーションだ。

 とはいえ、子供にとってデパートはもはや要塞だ。大人でも歩くのにそこそこ疲れるこの場所を、子供が1人でとなったら、たまったもんじゃない。

 怖いだろうし、何より、親御さんは気が気じゃないだろう。私は「うーん」と唸り、悩ましくしかめつらをした。


「どうする、真白。親御さん、探してあげる?」

「そうしたいのはやまやまだけど。どこでお母さんとはぐれたのか、聞いてもわからないんだよ。この子自身が忘れていてね」

「……なるほど。あー、となると、迷子センター行くしかないかぁ」


 私は女の子に改めて視線を合わせ、できるだけ優しく話しかける。


「君、名前はなんて言うの?」

「…………あやか……」

「そっか。あやかちゃん、それじゃあ、お姉ちゃん達と一緒に、迷子センターまで行こっか。そこでなら、お母さんを呼んでもらえると思うよ」


 私が言うと、あやかちゃんは「うん……」と頷いた。私は笑いながら、あやかちゃんの頭を撫でた。


「じゃあ、真白。迷子センター、行こっか」

「うん。……助かるよ。僕一人でこの子を連れ回していたら、流石にちょっと……」

「男の世知辛い所ね……」


 私はたはは、と苦笑する。すると真白が、あやかちゃんに向けて、神妙な面持ちで言った。


「じゃあ、行きましょう、えっと……あやか、さん?」


 なんで敬語やねん。私は真白の言葉に、思わず吹き出した。


◇ ◇ ◇ ◇


 迷子センターに行くと、そこの職員さんが、あやかちゃんのお母さんを呼び付けてくれた。私と真白はあやかちゃんを不安にさせないようしばらく一緒に過ごして、やって来たお母さんに、彼女を引き渡した。

 私と真白は互いに並び、お礼を言ったお母さんと共に去っていくあやかちゃんを見送る。

 あやかちゃんは私たちを振り返ったかと思えば、明るい笑顔で、「バイバイ、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」と手を振った。私は子供らしくかわいい彼女に思わず笑顔をこぼした。


「何も無くてよかったね」

「ん、本当に」


 私が真白に言うと、真白も微笑みながら、私にそう返した。


「ごめんね、詩子」

「ん? 何が?」

「だって、せっかくの休みなのに、君を付き合わせたからさ」

「いや、これは仕方ないっしょ。あの子放っておく方がやべぇし」


 私が言うと、真白は「うん……まあ、そうだけど」と、頬を掻きながら呟いた。

 真白は、こと自分に対してはネガティヴな所がある。自分を卑下して周りの空気を悪くさせる感じではないが、自分の非や、他人に何か迷惑をかけていないかと言うのを常々気にしている。

 そのためか、こういう仕方が無い時でも、彼はすぐに謝る。もっとも、これは、彼の美点でもあるのだが。

 その割に、真白は信念が強い。今回あの子を助けたのも、コイツの優しさと信念故なのだろう、と、なんとなく私は感じていた。

 デパートで、女の子が迷子になっていたとして、声をかける人は意外と少ない。特にすぐにセクハラだのロリコンだのが疑われる現代社会において、男が小さな女の子に声をかけると言うのは、女が同じことをするのに比べてハードルが高い。

 なのに真白は、私がいないのにも関わらず、あの女の子に声をかけて、一緒に過ごしてあげていたのだ。正直、並々ならなぬメンタルが無いと無理だと思う(少なくとも私は一人だったら声をかけられなかった)。


「……なんか、中学生の頃を思い出したよ」


 と、真白は微笑みながら、突然そう口火を切った。


「中学の頃?」

「うん。……昔、こんな感じのことがあってさ。……思えば、あれが四郎と関わるきっかけだった」

「へぇ」


 私と青山たちとの関係性は、真白にも伝わっている。青山とはあれから会ってはいないが、なんだかんだ、優花里や真白から話は聞き及んでいる。


「……なんて言うか、ガキの頃から、アンタはアンタなんだね」

「ん……ん? どう言うこと、それ?」

「いや。やっぱし、私、アンタを好きになって良かったわってこと」


 私は真白の肩にポンと手を置いてから、真白に先んじて、足を1歩、1歩と前に出す。

 ――あれ。待って。私、今なんかスッゲークサイこと言ったな。私は真白に背を向けたまま、途端に顔が赤くなった。


「……いや、真白。今のは、別に……」


 私は真白の方を振り返りながら、とりあえずで声を出す。

 真白は、少しだけ顔を赤くさせて、視線をやや落としていた。


「……詩子。その、今のはちょっと、ずるいよ……」

「アァー! 無し無し! 今の無し! ちょっと、やめてそんなガチな反応! 恥ずいから!」


 私は手をブンブンと振りながら、真白に突っかかった。
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