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サブストーリー1【いじめはいじめられる方が悪い】
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高校二年の頃。俺と真白は以前より一緒にいるようになり、もはやお互いにお互いのことを「親友」だと思うようになっていた。
中学生を過ぎたとは言うものの、俺たちは未だ子供だった。そして子供がする話で特に定番だったのが、いわゆる「コイバナ」だった。
『真白は誰か、好きな人いるのか?』
当時できた彼女の話から、俺は真白にそんなキラーパスを寄越した。真白は明らかにしどろもどろになって、顔を赤くさせて黙り込んでしまった。
『マジかよ、いるのか! 一体誰なんだよ!』
俺がそう尋ねると、真白は物凄い小声で、『清水……B組の……』と呟いた。
その瞬間、俺たちは大盛り上がり――とはならず、むしろ、一気に『ああ……』と、気まずい雰囲気が漂うことになった。
『いやぁ……アレは無理だよ、河野じゃあ』
『住む世界が違い過ぎるって言うか』
『なんて言うか……元気出せ……』
俺の仲間たちは、真白に対して口々にそう言った。真白は仲間の言葉を聞き、『まあ……だよね……』と、しょんぼりと項垂れてしまった。
俺は何となく、真白が可哀想に思えてしまった。だから、真白に、とんでもない提案をしてしまった。
『まあ、でも、告るのくらいはアリだろ』
俺がそう言うと、仲間たちも、真白も、『え?』と言う表情で俺の方を見つめて来た。
『いや、だってさ。ほら、よく言うじゃん。やらない後悔よりやる後悔って』
『いやいや、いくらなんでも無理だろ。振られるのってかなりきついぞ』
『わかんねーじゃん。てか真白って、なんで清水のこと好きなの? かわいいから?』
俺が尋ねると、真白は『えっと、』と、しどろもどろになって答えてくれた。
『実は……その、清水とは…………小さい頃から知り合いで……それで、なんて言うか…………いつの間にか、と言うか……』
『うっそ、幼馴染なのお前ら?』
『う…………うん…………』
『少女漫画じゃんか。はぁ、いいな、そういうの。青春だな』
仲間が真白にそう言ったのを横目に聴きながら、俺は真白に、『なあ、真白』と迫った。
『それならワンチャンあるかもだぞ? 昔から一緒なら、何かあるかもしれないじゃん。1回、行ってみろよ』
俺がニヤニヤしながら言うと、仲間たちは『いやいや、』『やめとけって、マジで』とヘラヘラ言った。だけど真白は、ものすごく恥ずかしそうに顔を赤くしながら、俺に向かって、『うん……』と呟いた。
きっと、真白もそうしたかったのだろう。人は自分に都合の良い結論を信じやすいが、俺の言葉、真白にとって、まさに鶴の一声だったのだ。
その後、仲間たちの反対を押し切って、真白は清水に告白をした。そして俺は、それをきっかけに、軽はずみに言った真白への言葉を後悔することになる。
真白はそれから、別のクラスの人間から笑われるようになった。通りかかる度に横目でアイツを見て、『プッ、』と笑われたり、『おお、アイツじゃん』と話題に晒されるようになった。
何が理由かは明白だった。清水が真白に告白された後、それをみんなに言いふらして、笑いの種にしやがったのだ。
真白のクラスの人間は、最初こそからかいはしたが、真白の反応を見て徐々にやめるようになった。アイツは結構、この事を、本気で気にしていたからだ。
真白のことを知っている人間は、真白に対して同情的な目線を向けるようになっていた。コイツはコミュ障ではあったが、いわゆる無害な陰キャと言う物で、クラスメイトからはあまり悪く思われていなかったからだ。
それに、真白は良い奴だった。基本的にクラスメイトの頼みは快く受け答えてくれるような、そんな奴だった。だからこそ、案外とみんなから信頼されている人間でもあったのだ。
そんな真白が、知らない奴らから小馬鹿にされているのは腹が立った。だって、アイツらは、真白のことを何も知らないのに、勝手なイメージだけで好き放題言いやがったからだ。
だけど、何よりも思ったのは、コイツをそう言う嘲笑の地獄に突き落としたのは、誰でもない俺だった、と言う事だ。
俺が余計なことを言わなければ。そうしたら、きっと、真白は、あんな惨めな思いをしなくて済んだだろう。俺は軽はずみな自分の言動を激しく後悔した。
真白が周りから悪意を向けられるのは、まるで自分のことのように苦しかった。そして俺は、そんな経験をして、ようやく理解した。
人間社会で、最も辛いことは、周囲から悪意を向けられる事だ。
よくよく、嫌いの反対は無関心……なんていう言葉があるが。俺は、そうじゃないと思う。
嫌いの反対はやっぱり『好き』であり、そして『嫌い』と言うのは、相手に対して悪意や憎悪を向ける事なのだ。
イタズラ心の悪意とは違う、もっとどす黒くて、禍々しい悪意。『コイツはいじめても良いんだ』と言う、身勝手で意地の悪い悪意。
真白がそれを向けられる度、俺は強く思った。『どうしてコイツらは、わざわざ悪意を向けるんだ』と。
人に悪意を向けられる位なら、いっそ無視された方が何倍も気持ちが楽だ。相手にされなければ、相手にしなくても良いから、俺のペースで人付き合いを選ぶことができる。けれど、わざわざ嫌がらせを受けたり、嘲笑されるのなら、対応しなければならないし、気持ちも荒む。
人にわざわざ悪意を向けると言うのは、それだけ罪深いことだ。俺は高校二年生にして、ようやくそれを察した。
――そう。だからこそ。だからこそ、俺は、きっと、許されるべきじゃあ無かったのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
吉田航平は、ショッピングモールのファッションコーナーにて、服を物色するフリをしながら、とある人物たちを尾行していた。
吉田の視線の先にいるのは、青山四郎と、その恋人である琴月優花里だ。もっとも、優花里の方は吉田にとって予期せぬ人物であったのだが。
食堂で四郎を横目に見つけた吉田は、彼へのかつての恨みを思い出し、どうにか復讐が出来ないかと考えていた。
そうして吉田が思いついたのは、インターネットに彼の姿を晒すことであった。
過去に自分をいじめていた男を、そうと言ってネットに晒す。そうすることで、ネットの陰キャたちの誹謗中傷を誘発させようと考えていたのだ。
インターネットには、自分のような日陰者が多い。いじめにあっていた人間も多いだろうし、何より、そうした人物は、四郎のような「陽」の世界にいる人間を敵視する傾向がある。
ましてや過去に壮絶ないじめを行っていたとなれば、いわゆる「スカッと」を求めて、総叩きをするだろう――吉田はこの計画を思いついた自分を、もしかしたら天才なのではないか、と感じていた。
無論、そううまく行くはずは無い。いじめられた過去があると言っても、もう十年も前の事だ。
年月ではないと言えばそれまでだが、吉田の場合は元来の性根の悪さがあり、ネットでは度々議論()を巻き起こしており、過去を漁ればいくらでもボロが出て来る。加えて見た目も典型的な陰キャデブであり、むしろネットの民の標的にされそうな人間である。
そんな者が、例えネットに過去のいじめを告発したところで、どこまで行っても賛否両論程度である。むしろこうした性格の悪さを指摘されて、「だから陰キャなんだよ」と煽られるのがオチであろう。
とは言え、インターネットに個人情報を載せると言うのは、特にこうした背景がある場合、ともすれば厄介な事になりかねない。ネットの海は世界と言っても過言ではなく、インターネットの世界には、吉田以上にヤバい人物がゴロゴロといる。そのうちの誰か一人にでも標的にされれば、最悪命の危険が及ぶ。
無論吉田はそうしたところまで考えてはいない。計画性が無いままに、感情を爆発させて、よくわからない内によくわからないことをしているだけだ。
吉田はスマホのカメラを起動させ、四郎たちに向けそれを向ける。そして無音で写真を撮ることのできるアプリを用いて、四郎たちの姿を被写体に収める。
と、その時、
「ねえ、」
吉田の肩を、何者かが掴み、
「何やってるの、吉田君」
吉田はハッと、話しかけて来た人物へと目を向ける。
そこにいたのは、キッチリとしたスーツを身に纏った、河野真白だった。
中学生を過ぎたとは言うものの、俺たちは未だ子供だった。そして子供がする話で特に定番だったのが、いわゆる「コイバナ」だった。
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『いやぁ……アレは無理だよ、河野じゃあ』
『住む世界が違い過ぎるって言うか』
『なんて言うか……元気出せ……』
俺の仲間たちは、真白に対して口々にそう言った。真白は仲間の言葉を聞き、『まあ……だよね……』と、しょんぼりと項垂れてしまった。
俺は何となく、真白が可哀想に思えてしまった。だから、真白に、とんでもない提案をしてしまった。
『まあ、でも、告るのくらいはアリだろ』
俺がそう言うと、仲間たちも、真白も、『え?』と言う表情で俺の方を見つめて来た。
『いや、だってさ。ほら、よく言うじゃん。やらない後悔よりやる後悔って』
『いやいや、いくらなんでも無理だろ。振られるのってかなりきついぞ』
『わかんねーじゃん。てか真白って、なんで清水のこと好きなの? かわいいから?』
俺が尋ねると、真白は『えっと、』と、しどろもどろになって答えてくれた。
『実は……その、清水とは…………小さい頃から知り合いで……それで、なんて言うか…………いつの間にか、と言うか……』
『うっそ、幼馴染なのお前ら?』
『う…………うん…………』
『少女漫画じゃんか。はぁ、いいな、そういうの。青春だな』
仲間が真白にそう言ったのを横目に聴きながら、俺は真白に、『なあ、真白』と迫った。
『それならワンチャンあるかもだぞ? 昔から一緒なら、何かあるかもしれないじゃん。1回、行ってみろよ』
俺がニヤニヤしながら言うと、仲間たちは『いやいや、』『やめとけって、マジで』とヘラヘラ言った。だけど真白は、ものすごく恥ずかしそうに顔を赤くしながら、俺に向かって、『うん……』と呟いた。
きっと、真白もそうしたかったのだろう。人は自分に都合の良い結論を信じやすいが、俺の言葉、真白にとって、まさに鶴の一声だったのだ。
その後、仲間たちの反対を押し切って、真白は清水に告白をした。そして俺は、それをきっかけに、軽はずみに言った真白への言葉を後悔することになる。
真白はそれから、別のクラスの人間から笑われるようになった。通りかかる度に横目でアイツを見て、『プッ、』と笑われたり、『おお、アイツじゃん』と話題に晒されるようになった。
何が理由かは明白だった。清水が真白に告白された後、それをみんなに言いふらして、笑いの種にしやがったのだ。
真白のクラスの人間は、最初こそからかいはしたが、真白の反応を見て徐々にやめるようになった。アイツは結構、この事を、本気で気にしていたからだ。
真白のことを知っている人間は、真白に対して同情的な目線を向けるようになっていた。コイツはコミュ障ではあったが、いわゆる無害な陰キャと言う物で、クラスメイトからはあまり悪く思われていなかったからだ。
それに、真白は良い奴だった。基本的にクラスメイトの頼みは快く受け答えてくれるような、そんな奴だった。だからこそ、案外とみんなから信頼されている人間でもあったのだ。
そんな真白が、知らない奴らから小馬鹿にされているのは腹が立った。だって、アイツらは、真白のことを何も知らないのに、勝手なイメージだけで好き放題言いやがったからだ。
だけど、何よりも思ったのは、コイツをそう言う嘲笑の地獄に突き落としたのは、誰でもない俺だった、と言う事だ。
俺が余計なことを言わなければ。そうしたら、きっと、真白は、あんな惨めな思いをしなくて済んだだろう。俺は軽はずみな自分の言動を激しく後悔した。
真白が周りから悪意を向けられるのは、まるで自分のことのように苦しかった。そして俺は、そんな経験をして、ようやく理解した。
人間社会で、最も辛いことは、周囲から悪意を向けられる事だ。
よくよく、嫌いの反対は無関心……なんていう言葉があるが。俺は、そうじゃないと思う。
嫌いの反対はやっぱり『好き』であり、そして『嫌い』と言うのは、相手に対して悪意や憎悪を向ける事なのだ。
イタズラ心の悪意とは違う、もっとどす黒くて、禍々しい悪意。『コイツはいじめても良いんだ』と言う、身勝手で意地の悪い悪意。
真白がそれを向けられる度、俺は強く思った。『どうしてコイツらは、わざわざ悪意を向けるんだ』と。
人に悪意を向けられる位なら、いっそ無視された方が何倍も気持ちが楽だ。相手にされなければ、相手にしなくても良いから、俺のペースで人付き合いを選ぶことができる。けれど、わざわざ嫌がらせを受けたり、嘲笑されるのなら、対応しなければならないし、気持ちも荒む。
人にわざわざ悪意を向けると言うのは、それだけ罪深いことだ。俺は高校二年生にして、ようやくそれを察した。
――そう。だからこそ。だからこそ、俺は、きっと、許されるべきじゃあ無かったのだろう。
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そうして吉田が思いついたのは、インターネットに彼の姿を晒すことであった。
過去に自分をいじめていた男を、そうと言ってネットに晒す。そうすることで、ネットの陰キャたちの誹謗中傷を誘発させようと考えていたのだ。
インターネットには、自分のような日陰者が多い。いじめにあっていた人間も多いだろうし、何より、そうした人物は、四郎のような「陽」の世界にいる人間を敵視する傾向がある。
ましてや過去に壮絶ないじめを行っていたとなれば、いわゆる「スカッと」を求めて、総叩きをするだろう――吉田はこの計画を思いついた自分を、もしかしたら天才なのではないか、と感じていた。
無論、そううまく行くはずは無い。いじめられた過去があると言っても、もう十年も前の事だ。
年月ではないと言えばそれまでだが、吉田の場合は元来の性根の悪さがあり、ネットでは度々議論()を巻き起こしており、過去を漁ればいくらでもボロが出て来る。加えて見た目も典型的な陰キャデブであり、むしろネットの民の標的にされそうな人間である。
そんな者が、例えネットに過去のいじめを告発したところで、どこまで行っても賛否両論程度である。むしろこうした性格の悪さを指摘されて、「だから陰キャなんだよ」と煽られるのがオチであろう。
とは言え、インターネットに個人情報を載せると言うのは、特にこうした背景がある場合、ともすれば厄介な事になりかねない。ネットの海は世界と言っても過言ではなく、インターネットの世界には、吉田以上にヤバい人物がゴロゴロといる。そのうちの誰か一人にでも標的にされれば、最悪命の危険が及ぶ。
無論吉田はそうしたところまで考えてはいない。計画性が無いままに、感情を爆発させて、よくわからない内によくわからないことをしているだけだ。
吉田はスマホのカメラを起動させ、四郎たちに向けそれを向ける。そして無音で写真を撮ることのできるアプリを用いて、四郎たちの姿を被写体に収める。
と、その時、
「ねえ、」
吉田の肩を、何者かが掴み、
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