22 / 50
第22話『リネアとの訓練』
しおりを挟む
『さて、と。行くわよ、リネア!』
ここは果たして現実なのか。フィオナは言葉に表せない浮遊感の中、目の前に立つ少女――青髪の剣士、リネアと相対した。
『うん! かかってこい、フィオナ!』
フィオナは木製の剣を構え、リネアに突撃する。リネアも木製の剣を構えて、迫るフィオナを受けようと膝を軽く曲げた。
剣と剣がぶつかり、押し合いとなる。しばらくの間膠着状態が続くと、途端、フィオナはリネアを押し飛ばした。
リネアのバランスが崩れる。フィオナはその瞬間を狙い、彼女の剣を弾き飛ばそうと踏み込んだ。
『今っ……!』
フィオナが最後の一閃とばかりに剣を振る。しかし瞬間、リネアがこちらを睨んだかと思うと。
リネアは、自身の剣に風の力を付与していた。
『あっ――きゃあっ!』
フィオナは突風に煽られ、飛ばされる。その拍子に剣が手から離れ、そしてフィオナは地面を転がった。
体が土埃で汚れる。フィオナはなんとか立ち上がろうと腕をつき、体を持ち上げ四つん這いになる。
と。
フィオナの額に、木製の剣の先端が、ピタリと付いた。
『今日も私の勝ちね、フィオナ。――これで、100戦中10分け、私の90勝目ね』
リネアが勝ち誇ったように笑う。フィオナは悔しそうに顔を歪め、『くそ~!』と悶えた。
懐かしく、そして微笑ましい記憶だった。フィオナにとって、リネアとこうして戦うことは楽しい事だった。最初は互いに引き分けることばかりだったが、徐々に負け越すようになり、もはや今は届かなくなってしまった。しかしフィオナは、リネアがそうして遠い存在になってもなお、楽しかったのだ。
親友と切磋琢磨できることが。リネアが自分と真剣に向き合ってくれていたことが。しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
除籍を言い渡されたその日から。フィオナはリネアに対して、合わせる顔が無いと思うようになっていたのだ。
約束をしたあの日から。彼女は大きく成長し、自分はしかし、低い位置からいつまでも登ることができない。その圧倒的な実力差が、彼女に対する罪悪感を膨れあがらせていた。
このままじゃ、ダメだ。フィオナはそう決意すると、途端に体が浮き上がっていく感覚を覚え、やがて彼女の意識は、空の光の中へと吸い込まれていった。
◇ ◇ ◇ ◇
「んっ――」
フィオナは自室で目を覚ますと、ベッドから体をゆっくりと起こした。
「――ああ、あの頃の夢か」
フィオナはボソリと呟いて。やがてベッドから下りると、体をゆっくりと伸ばした。
「……リネア」
そしてフィオナは、ぽつりと呟いた。
「私ようやく、アンタを目指せるよ」
自分がようやく魔術を扱えたのだと、先日の記憶を思い出す。胸の中に、確かな達成感が宿る。
「――よしっ!」
やがてフィオナは両の拳を握り締め、パッとにこやかに笑った。
「今日はエルさんとクエストの日だ! ようやく実戦! こっから私の快進撃が始まるのよ! 見てなさいよリネア、そしてクソッタレな世界共! フッフッフッフッフ……!」
途端、隣の部屋から「うるさいよ、今何時だと思ってんだい!」と年配の女性の声が響いた。フィオナは「あ、ごご、ごめんなさい!」と言いながら、壁に向かって頭を下げた。
◇ ◇ ◇ ◇
(お知らせ)
今回文字数少ないのでPM7時にもう1話更新します
ここは果たして現実なのか。フィオナは言葉に表せない浮遊感の中、目の前に立つ少女――青髪の剣士、リネアと相対した。
『うん! かかってこい、フィオナ!』
フィオナは木製の剣を構え、リネアに突撃する。リネアも木製の剣を構えて、迫るフィオナを受けようと膝を軽く曲げた。
剣と剣がぶつかり、押し合いとなる。しばらくの間膠着状態が続くと、途端、フィオナはリネアを押し飛ばした。
リネアのバランスが崩れる。フィオナはその瞬間を狙い、彼女の剣を弾き飛ばそうと踏み込んだ。
『今っ……!』
フィオナが最後の一閃とばかりに剣を振る。しかし瞬間、リネアがこちらを睨んだかと思うと。
リネアは、自身の剣に風の力を付与していた。
『あっ――きゃあっ!』
フィオナは突風に煽られ、飛ばされる。その拍子に剣が手から離れ、そしてフィオナは地面を転がった。
体が土埃で汚れる。フィオナはなんとか立ち上がろうと腕をつき、体を持ち上げ四つん這いになる。
と。
フィオナの額に、木製の剣の先端が、ピタリと付いた。
『今日も私の勝ちね、フィオナ。――これで、100戦中10分け、私の90勝目ね』
リネアが勝ち誇ったように笑う。フィオナは悔しそうに顔を歪め、『くそ~!』と悶えた。
懐かしく、そして微笑ましい記憶だった。フィオナにとって、リネアとこうして戦うことは楽しい事だった。最初は互いに引き分けることばかりだったが、徐々に負け越すようになり、もはや今は届かなくなってしまった。しかしフィオナは、リネアがそうして遠い存在になってもなお、楽しかったのだ。
親友と切磋琢磨できることが。リネアが自分と真剣に向き合ってくれていたことが。しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
除籍を言い渡されたその日から。フィオナはリネアに対して、合わせる顔が無いと思うようになっていたのだ。
約束をしたあの日から。彼女は大きく成長し、自分はしかし、低い位置からいつまでも登ることができない。その圧倒的な実力差が、彼女に対する罪悪感を膨れあがらせていた。
このままじゃ、ダメだ。フィオナはそう決意すると、途端に体が浮き上がっていく感覚を覚え、やがて彼女の意識は、空の光の中へと吸い込まれていった。
◇ ◇ ◇ ◇
「んっ――」
フィオナは自室で目を覚ますと、ベッドから体をゆっくりと起こした。
「――ああ、あの頃の夢か」
フィオナはボソリと呟いて。やがてベッドから下りると、体をゆっくりと伸ばした。
「……リネア」
そしてフィオナは、ぽつりと呟いた。
「私ようやく、アンタを目指せるよ」
自分がようやく魔術を扱えたのだと、先日の記憶を思い出す。胸の中に、確かな達成感が宿る。
「――よしっ!」
やがてフィオナは両の拳を握り締め、パッとにこやかに笑った。
「今日はエルさんとクエストの日だ! ようやく実戦! こっから私の快進撃が始まるのよ! 見てなさいよリネア、そしてクソッタレな世界共! フッフッフッフッフ……!」
途端、隣の部屋から「うるさいよ、今何時だと思ってんだい!」と年配の女性の声が響いた。フィオナは「あ、ごご、ごめんなさい!」と言いながら、壁に向かって頭を下げた。
◇ ◇ ◇ ◇
(お知らせ)
今回文字数少ないのでPM7時にもう1話更新します
0
あなたにおすすめの小説
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる