言霊の魔造師~低ランクパーティさえ追放された劣等の僕が、オリジナルの魔術で英雄になるまでの話~

オニオン太郎

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第22話『リネアとの訓練』

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『さて、と。行くわよ、リネア!』


 ここは果たして現実なのか。フィオナは言葉に表せない浮遊感の中、目の前に立つ少女――青髪の剣士、リネアと相対した。


『うん! かかってこい、フィオナ!』


 フィオナは木製の剣を構え、リネアに突撃する。リネアも木製の剣を構えて、迫るフィオナを受けようと膝を軽く曲げた。

 剣と剣がぶつかり、押し合いとなる。しばらくの間膠着状態が続くと、途端、フィオナはリネアを押し飛ばした。

 リネアのバランスが崩れる。フィオナはその瞬間を狙い、彼女の剣を弾き飛ばそうと踏み込んだ。


『今っ……!』


 フィオナが最後の一閃とばかりに剣を振る。しかし瞬間、リネアがこちらを睨んだかと思うと。

 リネアは、自身の剣に風の力を付与していた。


『あっ――きゃあっ!』


 フィオナは突風に煽られ、飛ばされる。その拍子に剣が手から離れ、そしてフィオナは地面を転がった。

 体が土埃で汚れる。フィオナはなんとか立ち上がろうと腕をつき、体を持ち上げ四つん這いになる。

 と。


 フィオナの額に、木製の剣の先端が、ピタリと付いた。


『今日も私の勝ちね、フィオナ。――これで、100戦中10分け、私の90勝目ね』


 リネアが勝ち誇ったように笑う。フィオナは悔しそうに顔を歪め、『くそ~!』と悶えた。


 懐かしく、そして微笑ましい記憶だった。フィオナにとって、リネアとこうして戦うことは楽しい事だった。最初は互いに引き分けることばかりだったが、徐々に負け越すようになり、もはや今は届かなくなってしまった。しかしフィオナは、リネアがそうして遠い存在になってもなお、楽しかったのだ。

 親友と切磋琢磨できることが。リネアが自分と真剣に向き合ってくれていたことが。しかし、そんな日々も長くは続かなかった。


 除籍を言い渡されたその日から。フィオナはリネアに対して、合わせる顔が無いと思うようになっていたのだ。

 約束をしたあの日から。彼女は大きく成長し、自分はしかし、低い位置からいつまでも登ることができない。その圧倒的な実力差が、彼女に対する罪悪感を膨れあがらせていた。

 このままじゃ、ダメだ。フィオナはそう決意すると、途端に体が浮き上がっていく感覚を覚え、やがて彼女の意識は、空の光の中へと吸い込まれていった。


◇ ◇ ◇ ◇


「んっ――」


 フィオナは自室で目を覚ますと、ベッドから体をゆっくりと起こした。


「――ああ、あの頃の夢か」


 フィオナはボソリと呟いて。やがてベッドから下りると、体をゆっくりと伸ばした。


「……リネア」


 そしてフィオナは、ぽつりと呟いた。


「私ようやく、アンタを目指せるよ」


 自分がようやく魔術を扱えたのだと、先日の記憶を思い出す。胸の中に、確かな達成感が宿る。


「――よしっ!」


 やがてフィオナは両の拳を握り締め、パッとにこやかに笑った。


「今日はエルさんとクエストの日だ! ようやく実戦! こっから私の快進撃が始まるのよ! 見てなさいよリネア、そしてクソッタレな世界共! フッフッフッフッフ……!」


 途端、隣の部屋から「うるさいよ、今何時だと思ってんだい!」と年配の女性の声が響いた。フィオナは「あ、ごご、ごめんなさい!」と言いながら、壁に向かって頭を下げた。

◇ ◇ ◇ ◇

(お知らせ)
今回文字数少ないのでPM7時にもう1話更新します
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