Revenge 仕返し屋―復讐の代理人―

オニオン太郎

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第11話

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◇――第2木曜日 PM4時40分――◇

 琴寄奏はイライラした調子で、2階への階段を駆け上がっていた。地団駄を踏むように、歩いて、歩いて、歩いた先は。
 新聞部部室。校舎の中でも特に人目に付かない端っこの場所。奏はその部室の扉をガラガラと、勢いよく横へ動かした。

「水野!」

 大声で叫ぶと、机とパソコンや印刷機が置いてあるだけの狭い部屋で座っている水野が「はいっ!?」と返事をした。奏は怒りの顔を隠せないまま、彼の目の前に大きな胸を張って立ち。

「コレ、なんなのよ!」

 1枚の写真と紙を見せつけた。今朝掲示板に貼ってあったモノだ。未来が頭を下げているその写真を、水野(みずの)雄(ゆう)は「あっ!」と言って受け取った。

「こ、これは……」
「現像写真に“秒”まで付いている。このカメラは学校じゃあなたしか持っていないはずよ」

 奏は息を荒くして聞く。その様相に雄は怯えて、「あ、あああ……」と目を回した後、頭を大きく下げた。

「ごめんなさい先輩! ぼ、僕がミスをやらかして……」
「つまり、あなたが貼ったわけじゃないのはやっぱり確かなのね」

 雄はその言葉に「え?」と顔を上げた。奏が「早く答える!」と叫ぶと、雄は「は、はい! そうです!」と声を出し。

「……うん、これで確信した。やっぱりあんたは貼っていない」

 奏の言葉を聞いて、混乱したように目をぱちくりとさせた。

「え、先輩……疑ってるんじゃ……」
「ええ、疑った。だから、聞いた。でもこれは、小さな疑問を晴らすため。あんたがこんなことするわけないって確信が欲しかっただけ」
「ちょ、なんで……」
「理由は2つ」

 奏はそう言うと指を2本立て。

「1つ。記事じゃなかった。一目見てわかったわ、こんなのは私たちのじゃない。これは、現場に居合わせた……竹内、加奈? とかいう子も指摘していたわ」
「た、竹内さんが……」
「2つ目。あなたが、こんなことするわけがない。ゴシップ記事書くだけでも死ぬほど嫌がるあなたがこんなことをするわけがない」

 雄はそれを聞いて、少し驚いたように奏を見つめて。

「……信頼、されてるんですね」

 そう、呟いた。

「当然よ、あなたは優秀な唯一の部員。信頼しないわけがないじゃない」
「ありがとうございます。僕も奏先輩を信頼してますんで」

 奏はそれを聞いて雄に背を向け壁に頭を打ち付けた。顔が赤くなる、体がプルプル震える。と、雄がそんな彼女を案じて近寄ってくる。

「だ、大丈夫ですか先輩?」
「うるさい! あっちいけバカァ!」

 手をブンブン振って雄を遠ざける。しばらくふぅふぅと深呼吸を繰り返して、少し落ち着いてから話の続きをし始める。

「それで、その写真で気になったことがあったの」
「……気になったこと?」
「ええ。写ってる男の子の方、後藤竜輝よね?」

 それを聞いて雄は「はい」と頷いた。と、奏は顎に手を当てて。

「となると、これ、あっちから告白した線が強そうね」

 そうキッパリ断言した。

「な、なんでそんなことがわかったんですか?」
「私も彼に告白を受けたことがあるから。ちょうど3週間前」
「え、えー!?」

 雄が驚いてのけぞった。

「そ、それでどうしたんですか!」
「呼ばれたとこ行って、目の前でラブレタービリビリに引き裂いて帰った」
「む、むごい……」
「まあ、そんな事があったから言ってるだけの経験則よ。憶測に過ぎないけど、あなたの反応を見る限りじゃ間違っていないようね」

 と、奏は雄を見つめてキリッと表情を正した。

「あなたの考えを聞かせて、水野」

 問うた奏に対し、雄は。表情を苦々しく歪めて、視線を合わせず何も言わなかった。しばらく時間が流れて、奏が口を開こうとした途端。
 雄がハッとしたように、顔を向けてきた。

「奏先輩、さっき竹内加奈さんがどうたらって……」
「ああ、言ったわね。彼女よ、この写真が新聞部のじゃないって言ったのは。それがどうか……」
「竹内加奈さんは、秋元誠治くんと付き合ってます。そして誠治くんは、彼とパイプがある……!」
「ちょ、彼って誰よ?」

 直後、雄は携帯を取り出して、画面を操作し始めた。奏は1人で何かをしようとしている彼を見て訝しみ、

「私を置いてけぼりにしないでよ……!」

 そう言って画面を覗こうとした。途端、雄は「ダメです!」と声をあげ。

「奏さんは、今は関わらないでください!」

 そう声色を震わせた。奏はそれが、自分を心配しての言葉だとすぐにわかって。
 なんだか無性に、腹が立った。

「バカ言ってんじゃないわよ! 新聞部の掲示板が利用された時点で私も関わってんのよ! だいたい、あんた私を信頼してるんでしょ?
 だったら、私も協力させなさいよ! 何があったか、何をするのか、全部全部話しなさいよ! それが先輩の役割って奴でしょう!」

 責めるように怒鳴った。雄はそれを聞くと奏をしばらくぼうっと見つめ、そして。

「……わかりました。では、先輩。僕の指示を聞いてください」

 そう、真剣に顔を向けた。

「いいわよ、なんでもいいなさい」
「まず、写真に写ってる女の子と、竜輝くんについて調べてください。関係している人、繋がり、全部洗いざらい。僕は誠治くんを通じてある人とパイプを繋げます」
「わかったわ。……でも、ある人って誰よ?」

 奏がそう尋ねた瞬間。雄の携帯がぴろりん、と鳴り出した。奏は覗き込むようにその画面を見る。雄が画面を操作すると、そこには。
 「若山怜斗」という名前の、TIESのアカウントが映っていた。雄はニヤリと笑うと、奏を見つめ。

「僕のカメラを託した、1人の男の子です……!」

 そう言って、部屋からダンッと飛び出した。

◇――第2木曜日 PM4時40分――◇

 カンカン晴れが夕日に変わり落ちていく放課後。未来はこの日、少し気分良く過ごしていた。
 怜斗の友達である加奈。彼女が自分を守ってくれたのだ。今日だけでも彼女は嫌がらせを受けたが、それでも未来の前で笑ってくれていた。しかし仕返し屋の事についても理解があり、何か大きな動きがありそうな時はあえて未来を守ろうとせず、何かをつかもうとしていた。
 他の人から見れば「いざとなれば助けない人」と思われるだろう。しかし、未来にとってはその気遣いは嬉しかった。

 1日を思い出しながら、リュックに荷物を詰めていく。そうしていると、加奈が白雪の隣から声をかけてきた。

「しーらゆーきさん。かーえろ」
「え、待っててくれたの?」
「だって、私も帰宅部だし。誠治が部活終わるの待つこともあるけど、今日はそんな気分じゃないし」
「き、気分……秋元くん、怒らないの?」
「そんな程度で怒るような奴なら彼氏にしてないよ。私と誠治は一心同体でありながら異体同心でもあるんだよ」

 誇らしげに胸を張る。未来はそれを聞いて、「あはは」と笑った。

「竹内さんは、秋元くんのこと大好きなんだね」
「当然、あいつは最高なんだから! ああ、今でも胸がときめくわ。中学の頃からこの関係だけど、あの情熱は今でも……」
「あ、あー……わかったよ、うん」
「あ、ごめんね。熱くなりすぎた。……でも、白雪さん。恋って良いものだよ~。すごくドキドキして、相手のことしか考えられなくなるあの感覚。体が火照ってね……」
「ごめん竹内さん、そろそろ帰ろう」

 これ以上聞くと百年でも千年でも語りそうな加奈を抑止して、未来はリュックを背負う。加奈は「あ、待ってよ!」と言いながら未来の背中についていった。
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