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第16話
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◇――第4金曜日 PM4時45分――◇
よくわからない緊迫感が身を包む。肌がピリピリと痛む。長い髪を後頭部で団子状にまとめ、前髪をピンで止めデコを出した未来は、目の前に座る啓吾に向かって、頭を下げた。
「お願いです、もう一度戦わせてください!」
啓吾が違う所を向いて、ぼーっと何かの本を読む。隣に立つ怜斗が「おい、啓吾!」と呼びかける。でも、未来は。
「大丈夫。これは私の役よ」
そう言って怜斗の手を借りなかった。未来はまた、頭を下げて「お願いします!」と声を出す。
「私、部屋に閉じこもって現実見てませんでした。逃げても時間は過ぎていくのに、ジッと目の前から目を逸らしてました。そうしている間に、私を支えてくれた怜斗くんや秋元くん、竹内さんまでクラスで立つ瀬がなくなって。どうしても、あいつらを許せないんです。どうか、どうかもう一度――」
「あなたさぁ。さっきから何を頼んでるんです?」
啓吾はハァ、とため息をつくとそう言って、未来の顔をじっと睨んだ。
「あのね、僕はあなたと契約を切った覚えはないよ。まだまだ有効、君はそもそも頼まなくても良い立場。わかります?」
「え……じゃ、じゃあ!」
「はい。だいたい、今回のことはこちらにも大きく非があった。だから、最後にあなたの気持ちを確認するまで調査は継続しようと思っていたのです。でないと僕こそ立つ瀬がない。
――覚悟は、できてるんですね? 人に一矢報いる、その覚悟が」
啓吾の目は、ひどく真剣だった。「中途半端では終わらせない」、その意気が感じられた。未来はキッと目を鋭くさせて、力を込めて。
「はい!」
そう頭を下げた。
啓吾はそれを聞いて、ニヤリと笑った。
「――いいでしょう。さて、そろそろですかね?」
啓吾が意味深にそう言ったのを聞いて、未来は首をかしげた。と、怜斗は笑い、未来の顔を見つめて。
「ここしばらくの間、みんなだっていろいろしてたんだぜ。お前が立ち上がった時、反撃をしようって結束してよ」
未来は怜斗の言葉に「そう、みんなが……」笑ってこぼした。と、事務所の中にジリリリとベルが鳴り響く。
「来ました!」
啓吾がポケットから携帯をとって、「もしもし?」と言う。
「涼子さん、突き止めましたか?
……ありがとうございます。これでかなり、王手をかけられます。
――え? 何かがおかしい……?」
啓吾はそう言って目を大きくして。
「投稿者に、知らない名前があがった? 奴らじゃない?
名前は――」
そして、耳に入った言葉を、復唱するように。
「イイズミ、ウタエ?」
その言葉は、事務所にドスンと大きな混乱を残した。
◇――第4土曜日 AM10時13分――◇
昨日。怜斗はクラスのグループチャットを使って伊泉詩恵の連絡先を探り、そして≪明日、遊びに行かないか?≫とメッセージを送った。既読が付いた後、しばらく悩むように間が空いた後、詩恵は≪いいよ≫と返信してくれた。
そして、今。怜斗は未来、誠治、加奈、そして雄に連絡をして、勢ぞろいで詩恵の家の前にいた。
ただの住宅街。コンクリートの道の周りに家が建ち並ぶだけの、平凡な様相。詩恵の家は少し高い位置にあり、怜斗たちはコンクリートの階段を上って玄関に立ち。
ピンポンと、チャイムが鳴る。しばらくドタドタと音がすると、引き戸がガラガラと開いて。
「おはよう、怜斗くん。どこに遊びに、い……」
詩恵の顔が、現れた。少し陰のあるような笑みは、怜斗の後ろに立つ人たちを見て一気に冷えていく。
「えっと、この人たちは……?」
「俺の友達だ。……そんなことより、ウッちゃん。説明してほしい」
怜斗は真剣な顔で詩恵に言う。詩恵は「……どうか、した?」と呟いて、ひとまずの笑みをにわかに浮かべて。怜斗は唇を噛んで、そして口を開いた。
「ウッちゃん。……未来の写真を、この家のパソコンからばら撒いたか?」
詩恵は「えっ……」と黙り込む。怜斗の後ろをジッと見つめているようだ。やがて彼女は愛想笑いを浮かべて、
「なんの、こと? わたし、ミライ? さんの写真なんて、知らないけど……」
答えた。怜斗は彼女から視線を逸らす。
「ウッちゃん。実は、な。
この家のパソコンから、未来の……裸の、写真が流出している」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ、おかしいよそんなの」
「警察にも知られている。俺の知り合いが警察に調べさせたんだ」
知り合いとはもちろん、涼子のことだ。彼女は通報した後、「大企業の会長」という肩書きから生まれたコネで未来のことを優先的に調べさせた。
詩恵は「え、でも、そんなの」と言いながら腕をさすった。嫌な空気に耐えかねて、怜斗は。
「悪い、ウッちゃん。この家のパソコン、調べさせてくれ」
そう言って強引に、家の中へ入った。詩恵が「ちょ……」と困っている間にも、水が流れ込むように未来や誠治たちがぞろぞろ入っていく。そして、全員が入った時。
「ま、待ってよ!」
詩恵が震えるように、叫んだ。
全員の流れが止まる。怜斗たちは、詩恵のフルフルとした姿を見つめた。
と、詩恵は。
「――わたしの部屋に、パソコンがある」
そう言って、怜斗たちを誘導するように歩きだし。2階への階段を、ゆっくりあがっていった。
詩恵の部屋は、本棚と家具があるだけの割りかし着飾っていない内装だった。ただ、机にはノートパソコンと、見慣れない白いタブレットとタッチペンがあった。本棚には、漫画がこれでもかというほどに並んでいる。
と、詩恵は緊張した面持ちで、パソコンの電源をオンにした。
「……よく、わかんないけど。わたしはなにも、してないよ」
「俺だって、そう信じたいよ」
そして、詩恵は自分のパソコンをカチカチと操作する。パスワードはかかっていないようだ、スムーズにメイン画面まで映り込む。
「えっと、どう、したらいいかな?」
「ひとまず、フォルダを表示してくれ」
詩恵は震えながら、カチカチとマウスを使いクリックし。フォルダを画面に表示させた。
と、詩恵は。
「……あれ? なに、この画像……?」
最近更新したデータ、という欄に謎の画像を見つけた。カチカチとそれを、開いてみると。
画面いっぱいに、未来の裸が映し出された。
直後にざわめく一同。未来が目を見開いて、誠治や加奈は目を逸らして、雄はあたふたしていて。
怜斗は顔を歪めてうつむいた。
「え、こ、これって……!」
詩恵が声を出す。と、その瞬間。未来が詩恵に、詰め寄った。
「詩恵さん、だっけ? なんでよ、なんでこんな……!」
「ご、誤解だよ! お、おかしい! おかしいよ、こんなの!」
詩恵の声が響く。だが、誠治と加奈、雄は彼女に疑いの目を向け続ける。
と、詩恵が怜斗の方を向いた。
「れ、怜斗くん! 信じて、わたしこんなことしてないよ!」
怜斗は息をふぅ、ふぅと吐いて。頭の中が歪んでいく、左側に何かが響く。怜斗は、歯を食いしばって、食いしばって、食いしばって。
そして、ふと。パソコンの横に置いてある、手紙を見つめた。
――アレ? 何かが、何かが。
腹から何かが湧き上がる。頭が突然冴えだして、1つ、何か重要な1つを掴もうと、稼動し始めた。
そして、言葉が、つながった。
『先週の火曜日に、わたし告白されて』
そうだ、その後ウッちゃんは。
『呼び出されてね』
呼び出された、呼び出されたと言っていた。怜斗は思わず、パソコンの横の手紙を手に取って。
中身を、読み出した。そして。
「――ウッちゃん」
詩恵の顔を、ジッと見つめた。
「初めてできた彼氏って……後藤竜輝、のことなのか?」
その言葉に空間が大きく揺れた。全員が、詩恵の次の言葉に集中する。すると彼女は、少し照れたように。
「――うん」
怜斗の言葉を、肯定した。
よくわからない緊迫感が身を包む。肌がピリピリと痛む。長い髪を後頭部で団子状にまとめ、前髪をピンで止めデコを出した未来は、目の前に座る啓吾に向かって、頭を下げた。
「お願いです、もう一度戦わせてください!」
啓吾が違う所を向いて、ぼーっと何かの本を読む。隣に立つ怜斗が「おい、啓吾!」と呼びかける。でも、未来は。
「大丈夫。これは私の役よ」
そう言って怜斗の手を借りなかった。未来はまた、頭を下げて「お願いします!」と声を出す。
「私、部屋に閉じこもって現実見てませんでした。逃げても時間は過ぎていくのに、ジッと目の前から目を逸らしてました。そうしている間に、私を支えてくれた怜斗くんや秋元くん、竹内さんまでクラスで立つ瀬がなくなって。どうしても、あいつらを許せないんです。どうか、どうかもう一度――」
「あなたさぁ。さっきから何を頼んでるんです?」
啓吾はハァ、とため息をつくとそう言って、未来の顔をじっと睨んだ。
「あのね、僕はあなたと契約を切った覚えはないよ。まだまだ有効、君はそもそも頼まなくても良い立場。わかります?」
「え……じゃ、じゃあ!」
「はい。だいたい、今回のことはこちらにも大きく非があった。だから、最後にあなたの気持ちを確認するまで調査は継続しようと思っていたのです。でないと僕こそ立つ瀬がない。
――覚悟は、できてるんですね? 人に一矢報いる、その覚悟が」
啓吾の目は、ひどく真剣だった。「中途半端では終わらせない」、その意気が感じられた。未来はキッと目を鋭くさせて、力を込めて。
「はい!」
そう頭を下げた。
啓吾はそれを聞いて、ニヤリと笑った。
「――いいでしょう。さて、そろそろですかね?」
啓吾が意味深にそう言ったのを聞いて、未来は首をかしげた。と、怜斗は笑い、未来の顔を見つめて。
「ここしばらくの間、みんなだっていろいろしてたんだぜ。お前が立ち上がった時、反撃をしようって結束してよ」
未来は怜斗の言葉に「そう、みんなが……」笑ってこぼした。と、事務所の中にジリリリとベルが鳴り響く。
「来ました!」
啓吾がポケットから携帯をとって、「もしもし?」と言う。
「涼子さん、突き止めましたか?
……ありがとうございます。これでかなり、王手をかけられます。
――え? 何かがおかしい……?」
啓吾はそう言って目を大きくして。
「投稿者に、知らない名前があがった? 奴らじゃない?
名前は――」
そして、耳に入った言葉を、復唱するように。
「イイズミ、ウタエ?」
その言葉は、事務所にドスンと大きな混乱を残した。
◇――第4土曜日 AM10時13分――◇
昨日。怜斗はクラスのグループチャットを使って伊泉詩恵の連絡先を探り、そして≪明日、遊びに行かないか?≫とメッセージを送った。既読が付いた後、しばらく悩むように間が空いた後、詩恵は≪いいよ≫と返信してくれた。
そして、今。怜斗は未来、誠治、加奈、そして雄に連絡をして、勢ぞろいで詩恵の家の前にいた。
ただの住宅街。コンクリートの道の周りに家が建ち並ぶだけの、平凡な様相。詩恵の家は少し高い位置にあり、怜斗たちはコンクリートの階段を上って玄関に立ち。
ピンポンと、チャイムが鳴る。しばらくドタドタと音がすると、引き戸がガラガラと開いて。
「おはよう、怜斗くん。どこに遊びに、い……」
詩恵の顔が、現れた。少し陰のあるような笑みは、怜斗の後ろに立つ人たちを見て一気に冷えていく。
「えっと、この人たちは……?」
「俺の友達だ。……そんなことより、ウッちゃん。説明してほしい」
怜斗は真剣な顔で詩恵に言う。詩恵は「……どうか、した?」と呟いて、ひとまずの笑みをにわかに浮かべて。怜斗は唇を噛んで、そして口を開いた。
「ウッちゃん。……未来の写真を、この家のパソコンからばら撒いたか?」
詩恵は「えっ……」と黙り込む。怜斗の後ろをジッと見つめているようだ。やがて彼女は愛想笑いを浮かべて、
「なんの、こと? わたし、ミライ? さんの写真なんて、知らないけど……」
答えた。怜斗は彼女から視線を逸らす。
「ウッちゃん。実は、な。
この家のパソコンから、未来の……裸の、写真が流出している」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ、おかしいよそんなの」
「警察にも知られている。俺の知り合いが警察に調べさせたんだ」
知り合いとはもちろん、涼子のことだ。彼女は通報した後、「大企業の会長」という肩書きから生まれたコネで未来のことを優先的に調べさせた。
詩恵は「え、でも、そんなの」と言いながら腕をさすった。嫌な空気に耐えかねて、怜斗は。
「悪い、ウッちゃん。この家のパソコン、調べさせてくれ」
そう言って強引に、家の中へ入った。詩恵が「ちょ……」と困っている間にも、水が流れ込むように未来や誠治たちがぞろぞろ入っていく。そして、全員が入った時。
「ま、待ってよ!」
詩恵が震えるように、叫んだ。
全員の流れが止まる。怜斗たちは、詩恵のフルフルとした姿を見つめた。
と、詩恵は。
「――わたしの部屋に、パソコンがある」
そう言って、怜斗たちを誘導するように歩きだし。2階への階段を、ゆっくりあがっていった。
詩恵の部屋は、本棚と家具があるだけの割りかし着飾っていない内装だった。ただ、机にはノートパソコンと、見慣れない白いタブレットとタッチペンがあった。本棚には、漫画がこれでもかというほどに並んでいる。
と、詩恵は緊張した面持ちで、パソコンの電源をオンにした。
「……よく、わかんないけど。わたしはなにも、してないよ」
「俺だって、そう信じたいよ」
そして、詩恵は自分のパソコンをカチカチと操作する。パスワードはかかっていないようだ、スムーズにメイン画面まで映り込む。
「えっと、どう、したらいいかな?」
「ひとまず、フォルダを表示してくれ」
詩恵は震えながら、カチカチとマウスを使いクリックし。フォルダを画面に表示させた。
と、詩恵は。
「……あれ? なに、この画像……?」
最近更新したデータ、という欄に謎の画像を見つけた。カチカチとそれを、開いてみると。
画面いっぱいに、未来の裸が映し出された。
直後にざわめく一同。未来が目を見開いて、誠治や加奈は目を逸らして、雄はあたふたしていて。
怜斗は顔を歪めてうつむいた。
「え、こ、これって……!」
詩恵が声を出す。と、その瞬間。未来が詩恵に、詰め寄った。
「詩恵さん、だっけ? なんでよ、なんでこんな……!」
「ご、誤解だよ! お、おかしい! おかしいよ、こんなの!」
詩恵の声が響く。だが、誠治と加奈、雄は彼女に疑いの目を向け続ける。
と、詩恵が怜斗の方を向いた。
「れ、怜斗くん! 信じて、わたしこんなことしてないよ!」
怜斗は息をふぅ、ふぅと吐いて。頭の中が歪んでいく、左側に何かが響く。怜斗は、歯を食いしばって、食いしばって、食いしばって。
そして、ふと。パソコンの横に置いてある、手紙を見つめた。
――アレ? 何かが、何かが。
腹から何かが湧き上がる。頭が突然冴えだして、1つ、何か重要な1つを掴もうと、稼動し始めた。
そして、言葉が、つながった。
『先週の火曜日に、わたし告白されて』
そうだ、その後ウッちゃんは。
『呼び出されてね』
呼び出された、呼び出されたと言っていた。怜斗は思わず、パソコンの横の手紙を手に取って。
中身を、読み出した。そして。
「――ウッちゃん」
詩恵の顔を、ジッと見つめた。
「初めてできた彼氏って……後藤竜輝、のことなのか?」
その言葉に空間が大きく揺れた。全員が、詩恵の次の言葉に集中する。すると彼女は、少し照れたように。
「――うん」
怜斗の言葉を、肯定した。
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