魔王の娘がこちらを見ている〜人間に手違いで召喚された俺は、魔王たちと仲良くやります〜

オニオン太郎

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低俗vs高尚

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 ラキアは吹き飛ばされ、ステージの上を転がった。痛みに顔を歪ませながら、ゆっくりと立ち上がり、ラキアは楽しそうに笑うエリーナを睨む。

「おやおや、第一撃は失敗に終わったようですわね」

 ラキアは歯を食いしばる。試合開始の合図と同時、自分はエリーナに向かって駆け出した。瞬間、エリーナは爆破の魔法を使い、ラキアを吹き飛ばしたのだ。

 共鳴の数。それはすなわち、借りてこられるマナの量を表し、単純な威力と同義と言える。エリーナは、ラキアの倍の威力はあろう魔術を容易く放つことができるということだ。

「では、わたくしはガンガン攻めていきますが――どうか、簡単には鳴かないでくださいませ?」

 瞬間、エリーナがラキアに手をかざした。ラキアは目視する、途端にエリーナの手から紅蓮の柱が放たれた。
 ラキアはそれを避け、エリーナに駆ける。近寄り、近寄り、ラキアはエリーナの目前にまで来ると、彼女に手をかざし、そして眩い光を生み出した。

 エリーナが「きゃあ!」と目を背けた。瞬間、ラキアは腰を回し、そしてエリーナの顎に渾身のフックを打ち付けた。

 エリーナはよろめき、そしてラキアを見る。ラキアは既に迫り、さらなる追撃を与えようと拳を突き出していた。

 顔に打撃が当たる、ストレート、フック、アッパー。コンビネーションを適格に決められたエリーナは瞬間、「舐めないでですわ!」と叫び、ラキアの手を払い、取り、同時に前蹴りを浴びせた。

「がっ……!」

 ラキアはその衝撃に後ろへ飛ぶ。地面に倒れ、空を仰ぐ。刹那、彼女の見ている空に、氷の柱が生み出された。

「死ね!」

 エリーナが叫ぶ、直後に氷の柱はラキアに向けて落下した。ラキアは転がり避け、即座に立ち上がり息を深く吐く。

「たあぁ!」

 カマイタチ、ラキアはそれをエリーナに放つ。エリーナはそれを横に跳ね避け、そして地に手を付き、土の魔術を放つ。

 ステージを割りながら、土の柱がラキアに突撃する。ラキアは炎と水の属性を混ぜた水蒸気爆発で、その攻撃を破壊した。

「あらあら、案外とやるじゃないですの」
「当たり前よ、アレほど練習したのだから」
「では、少し本気を出しますかね!」

 エリーナが飛ぶようにラキアに近寄る。ラキアは一歩後ろへ下がり、殴り掛かるエリーナの攻撃を避けた。直後、エリーナがしゃがみこみながらラキアの懐に潜り込み、膝を伸ばしながら強烈なアッパーを食らわせる。

 ラキアはわずかに空中へ浮いた。瞬間、エリーナは笑いながら魔術を放つ。旋風が巻き上がり、ラキアはそれに飲まれ空へと飛ばされてしまう。

 旋風が消え、ラキアは地に落ちる。痛みが、痛みが全身を叩きつけてくる。ラキアは震えながら、なお立ち上がった。

 瞬間、ラキアの視界の端に火柱が見えた。ラキアは前に飛び、それをかろうじて避ける。
 転がり、そして立ち上がる。エリーナの猛攻は止まらない、瞬間、ラキアの足元から石の柱が現れ、それはラキアの腹部を強く打ち付けた。

「がはっ……!」

 宙に浮くラキア。また背中から地面に落ち、想像以上のダメージが体を痛めつける。

 一度、二度、立とうとするも立ち上がれない。やっとこさ体を起きあげ、息を深く吐きながら、ラキアはエリーナを、睨んだ。

「あらあら、限界のようですわね」
「は、はは……そんなわけ、ないじゃん。私だってね……意地って物が、あるんだよ!」

 瞬間、ラキアは地面に両手を付いた。ステージの周囲の芝生が突然うねり始める、ラキアは操った芝生を伸ばし、それをエリーナの足に巻き付けた。

「しまった!」

 エリーナが刮目する、ラキアは瞬間ニヤリと笑い、空気と共鳴し、体内のマナを炎属性の魔術に変換する。

「行っけぇ!」

 ラキアが放ったのは、燃えるような竜巻。吹き荒れる熱がエリーナに迫り、エリーナはそれに体を吹き飛ばされてしまった。

 観客が「おお」と声をあげる。ラキアは得意気に笑った。

 エリーナが身をわずかに焦がし、地面に叩きつけられる。頭を振りながら、エリーナは怒り狂うような目をラキアに向け、

「あなた、わたくしに……わたくしに傷をつけましたわね!」

 叫び、構えた。

「許しませんわ!」

 直後、エリーナは自身の後方に爆発を起こし、ラキアに急接近する。音と衝撃に惑うラキア、瞬間、ラキアの腹部にエリーナのタックルが決まった。

 ラキアは口から唾液を出し、そして後ろに吹き飛ぶ。転がり、転がり、全身が擦り傷だらけになる。ラキアは震えながら、ゆっくりと、立ち上がり。

「ラキアさん……」

 目の前に立つエリーナを、見た。

「ええ、ええ、舐めていましたわ。あなたがまさかここまでやるとは。しかし――あなたがわたくしをここまで傷つけるなど、あってはなりません!
 これからは、本気でお相手しましょう。もはや慈悲はありません、わたくしを怒らせた罪は――重たいと思ってください!」

 歯を食いしばり、ラキアはエリーナを睨む。直後、エリーナはラキアの懐に潜り込み、強く顎を蹴り上げた。

◇ ◇ ◇ ◇

 脇腹が痛む。足が、足がもつれていく。俺は学校への道を走っていた。

 もっと運動をしておくべきだった。俺がまず抱いた後悔は、それだ。高校を卒業してから2年、俺は運動とは無縁の生活をしており、体力も見事に無くなっていた。
 だが、この足を一瞬であっても止めるわけには行かない。俺には、ラキアの行く末を見守る使命がある。

 歩けば20分はかかる道も、走れば半分以下に収まるだろう。つまり俺は、10分程かかる距離を全速力で突っ走らなければならないことになる。そんな所まで考えていなかった俺は、当然、ペース配分なぞできず、息を切らし、汗をダラダラと流しながら走っていた。

「う……うげぇ」

 胃から沸き上がったものを吐き出してしまう。俺は汚くなった口元を、仕方なく袖で拭い、そして頭を大きく振った。

「あいつが、待ってる……俺は、俺は行かなきゃならねーんだ……!」

 足は既に限界を迎えている。だが、知ったことか。俺はなお、走るのをやめなかった。
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