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__走れ!! ___走れ!! _____走れ!!! 遅れる!!
「はぁはぁはぁはぁ…!」 人がいない大きな道の真ん中で膝を曲げ、荒い息をあげる私、小崎春瑠(こざき・はる)
どうしよう。もうダメだよ。と諦めモードで泣きそうになる自分を本当に情けなく思う。
今日は大事で大切な大行事、入学式だというのに。これは最高にやばい。
額を伝う汗を拭い時計を見ると、 時刻は午前の8時20分。 そして入学式が始まるのはその10分後。まだ始まってはいないが、無駄に敷地の広いこの学校を眺めていると入り口までは、まだほど遠いと思わされた。
確実に遅れる。
ここでマックススピードで走っても、空飛ぶじゅうたんを使ってもその事実は変わらない。
諦めた私はこのまま「すみません!遅れましたぁぁあ!!」みたいな感じのドジでおっちょっこちょいの女の子を演じようかと考える。私はバリバリ転入生だから、遅れたらきっと皆んなに冷たい視線を送られるんだろうなぁ、と呑気にそんな事を考え、深い、深いため息をついた。
今の私の雰囲気とは正反対な真っ青な空を見上げる。
一面を覆っている真っ白な雲は一見動いていないように見えるが、じっと見れば、少しずつ移動しているのが分かるのだ。そんなマイペースでのんびり屋さんの雲は今の私にはとても羨ましく思えた。
満開に咲き乱れる桜の木は暖かい日差しに照らされ淡い桜色はヒラヒラ風に靡いてゆく。
桜並木。
辺りに広がる春の景色を眺めていると、今日は一年で一回の”入学式”なんだと再確認させられた。
そしてそれと同時にまた襲ってくるどうしようもない”焦り” 。
よし、走ろう…!!と助走をつけた瞬間、背後からバタバタという足音とさっきまでの自分のような荒い息遣いが聞こえてきた。お風呂場にいるような感じで耳に響いくる。一瞬、辺りのすべての音が私の中でシャットアウトされた。
「ねぇ」 少し鼻声気味な低い声にシャットダウンされていた聴覚がまた動き始めた。それに驚いた私は肩をピクッと揺ラス。反射的に声の主の方に目を走らせると、そこには自分と同じぐらいの男の子が立っていた。 目より下はマスクをつけていたが彼の瞳だけで大体の予測がついた。
「…君も…遅れて…きたの?」 途中途中で「はぁはぁ」と言っている彼の表情を見ただけで、どれだけ長い間ここまで走ってきたのかこれまた分かりやすく物語っていた。
私以外にも遅れてきた人…いたんだ。
似た状況にいるからか、彼に謎の親近感が湧いてくる。
「…私も実は遅れてきちゃったんだ。君は新しい子?」
「うん」
私がそう問うと、彼はそう言って眉を下げた。ああ、さっきの自分と同じ事思ってるんだな、とすぐ分かる。
「なんで遅れてきたの?」
「…電車乗り過ごしちゃって」
「あ、同じだ」
これまた偶然。
なんだか嬉しくて、自然と笑みがこぼれた。
そんな私と彼の間には約一メートルの隙間が空いている。
その微妙な間を見えない風が通り過ぎた。
時刻は8時30分。
「はぁはぁはぁはぁ…!」 人がいない大きな道の真ん中で膝を曲げ、荒い息をあげる私、小崎春瑠(こざき・はる)
どうしよう。もうダメだよ。と諦めモードで泣きそうになる自分を本当に情けなく思う。
今日は大事で大切な大行事、入学式だというのに。これは最高にやばい。
額を伝う汗を拭い時計を見ると、 時刻は午前の8時20分。 そして入学式が始まるのはその10分後。まだ始まってはいないが、無駄に敷地の広いこの学校を眺めていると入り口までは、まだほど遠いと思わされた。
確実に遅れる。
ここでマックススピードで走っても、空飛ぶじゅうたんを使ってもその事実は変わらない。
諦めた私はこのまま「すみません!遅れましたぁぁあ!!」みたいな感じのドジでおっちょっこちょいの女の子を演じようかと考える。私はバリバリ転入生だから、遅れたらきっと皆んなに冷たい視線を送られるんだろうなぁ、と呑気にそんな事を考え、深い、深いため息をついた。
今の私の雰囲気とは正反対な真っ青な空を見上げる。
一面を覆っている真っ白な雲は一見動いていないように見えるが、じっと見れば、少しずつ移動しているのが分かるのだ。そんなマイペースでのんびり屋さんの雲は今の私にはとても羨ましく思えた。
満開に咲き乱れる桜の木は暖かい日差しに照らされ淡い桜色はヒラヒラ風に靡いてゆく。
桜並木。
辺りに広がる春の景色を眺めていると、今日は一年で一回の”入学式”なんだと再確認させられた。
そしてそれと同時にまた襲ってくるどうしようもない”焦り” 。
よし、走ろう…!!と助走をつけた瞬間、背後からバタバタという足音とさっきまでの自分のような荒い息遣いが聞こえてきた。お風呂場にいるような感じで耳に響いくる。一瞬、辺りのすべての音が私の中でシャットアウトされた。
「ねぇ」 少し鼻声気味な低い声にシャットダウンされていた聴覚がまた動き始めた。それに驚いた私は肩をピクッと揺ラス。反射的に声の主の方に目を走らせると、そこには自分と同じぐらいの男の子が立っていた。 目より下はマスクをつけていたが彼の瞳だけで大体の予測がついた。
「…君も…遅れて…きたの?」 途中途中で「はぁはぁ」と言っている彼の表情を見ただけで、どれだけ長い間ここまで走ってきたのかこれまた分かりやすく物語っていた。
私以外にも遅れてきた人…いたんだ。
似た状況にいるからか、彼に謎の親近感が湧いてくる。
「…私も実は遅れてきちゃったんだ。君は新しい子?」
「うん」
私がそう問うと、彼はそう言って眉を下げた。ああ、さっきの自分と同じ事思ってるんだな、とすぐ分かる。
「なんで遅れてきたの?」
「…電車乗り過ごしちゃって」
「あ、同じだ」
これまた偶然。
なんだか嬉しくて、自然と笑みがこぼれた。
そんな私と彼の間には約一メートルの隙間が空いている。
その微妙な間を見えない風が通り過ぎた。
時刻は8時30分。
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