肝胆相照のティーシポネー

人の心無いんか?

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キリちゃん視点

本編6 統合 その1

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 私はベッドから身体を起こし、のそのそと動き出す。
 寝ぼけ眼で辺りを見回す。いつもと変わらない、色の薄いモノクロの世界だ・・・しかし、
 お兄ちゃんはどこにもいない。その代わり以前とは違う、ある変化があった。

「なんで・・・なんでこんな奴に色が付いているんだ・・・」
 
 不満を漏らすかのようにボソッと呟く。私の隣のベッドだけ鮮やかな色が付いている。その寝顔を見ているだけで心がざわめいた。

(なんで・・・なんで!こいつのことが気になるの!!私にはお兄ちゃんだけ居ればいいのに・・・!)
 私はおかしくなってしまった!こいつのせいで狂ってしまったんだ!そうに決まっている!

「そうだ。”やっちゃおう”。今までもそうしてきたじゃない。」
 自分に言い聞かせるように呟く。
 色の付いた雑魚を見つめ、能力を発動させようとする。しかし・・・

「なん・・・で?」

 能力は発動しないし、心のざわめきは大きくなるばかりだった。
 私はイライラを隠せなかった。心がムカムカとしたまま荷物を纏め身支度をしてゆく。その時、部屋に備えつけられている全身鏡に自分の姿が映る。そこには悲痛な顔をしたロリータ服を着た私が映っている。その姿を視認した私は気持ちが激しく苛立った。
 私はロリータ服を脱ぎ捨て、現代でも着ていた制服に着替え、脱いだ服を敢えて使ってハルバードを磨いてゆく。
 ロリ服を使って拭く度に頭がチカチカ、心がチリチリする。頭の中で誰かが泣き叫んでいるようだった。

(うるさい・・・うるさい・・・うるさい・・・!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!)

 心がチリチリする度、ゴシゴシと嫌味のように強く拭いてやる。

(捨てないと!何もかもを!お兄ちゃん以外はみんな捨てなきゃ!!!)

 そう言い聞かせながらハルバードを拭いていく。次第に頭の中の雑音は気にならなくなっていった。

「よし・・・」

 集中して拭いている間に色の付いた雑魚が起きていたようだ。私はハルバードを壁に立てかけ、”雑巾”を雑魚に投げ捨てた。

「おい、雑魚。後のは不要物だから捨てておいて頂戴。」

 雑魚は投げ捨てた”雑巾”を愕然としてじっと見つめ固まり、次第に涙を流し始めた。その様子を見ると・・・
(まただ・・・!またチリつく!!何なんだ!こいつは!)
 私は自分の気持ちが上手くコントロール出来ず、イライラが募っていった。

「ちっ・・・何泣いてるのよ、雑魚。早く言われた事しなさい。それが終わったら、お前には外まで荷物を運んでもらうんだから。」
 私は雑魚にイライラをぶつけるかのように命令をしたが、

「・・・あたしはあなたの召使じゃない・・・」

「・・・何?」
 思いがけない、雑魚の反抗。こいつ今まで気弱そうにしていたのに!!

「あたしは!!あんたの奴隷でも!!召使でも無いのよ!!!」
 私を真っすぐ見据え視線を逸らさずに言い放ってくる。

「なんですって!雑魚!もう一回言ってみなさい!」
 自分より遥かに格下の雑魚に怒鳴られて頭に血が上る。 

「何度でも言ってやる!あたしは・・・」
 言葉の途中で雑魚を締め上げた。

「あ・・・たしは・・・奴・・・隷じゃ・・・ない。あたしは・・・キリちゃんの・・・ともだ・・・ちになり・・・たかった。」

「友達ですって?私に友達は要らない!お兄ちゃんさえ居ればいいのよ!!!」

「その・・・お兄ちゃ・・・んは・・・どこに・・・居るの・・・よ。」
 お兄ちゃんの事を言われた瞬間怒りが限界を突破する。

「こいつ!!!!」
 私は雑魚を目いっぱい睨みつけ、能力を発動させようとするが、一瞬たりとも能力が発現しない。

「なれ・・・たと・・・思ったのに・・・友・・・達に。」
 雑魚がポロポロと涙し、頬を伝って首を締める私の手にかかる。

「違う!アンタなんか・・・友達じゃない。」

「じゃあ・・・殺せ・・・ば?・・・いつも・・・そう・・・してきたじゃない。」

「そうするわよ!ええ!!言われなくても・・・・そうするわよ!!!」
 私は言葉ではそう言うが、能力は発動する気配が無かった。それどころか頭と心が酷くざわつき、ただただ痛かった。雑魚を見据えていると、何故か私が経験したことが無い想い出がフラッシュバックする。そのフラッシュバックが起きるたび胸が苦しくなった。

「くそ!なんでよ!どうして!!」
 気づけば私はポロポロ涙していた。どうしてしまったんだ!私は!もう以前の私じゃない。別れていた私が混じり、統合されつつある、それしか考えられなかった。

 もはやこれ以上締め上げるのは不可能だった。私には出来なかった・・・。
 解放された雑魚が咳き込んでいる。
 私は力なくベッドに腰かけ項垂れていた。
 私は次第に認めていっていた・・・。認めたくないものを、徐々に理解させられていっていたのだ。
 見えていたお兄ちゃんが消えてしまった事・・・もう二度と見ることが無い事。
 そしてこの色の付いた雑魚・・・、いや違う。色の付いた、この”カルディア”を頼りにしていることを・・・。
 私は時間が経てば経つほど、その身に感じていた。

「カルディア・・・」
 私は力なく呼びかける。
「・・・・悪かったわ、カルディア。お願い・・・手伝って頂戴。」

「キリちゃん・・・エクレアさんでもいいよ。」
 カルディアが微笑みながらそう言う。
 
 それはダメだ。エクレアはお兄ちゃんとの幸せな想い出の絆なのだ。私が唯一幸せだった頃に浸れる起点なのだ。それは一種のドラッグとも言えるかもしれない・・・私にだけ作用するドラッグ・・・。逃げ・・・なのかもしれない。でも私はその想い出が無ければ耐えられない。私の拠り所の象徴・・・だから、
「それはダメよ。私にとって”エクレア”は特別なの。だから”そう”は呼ばない。」
 それだけは譲らなかった。

 私の言葉を聞いたカルディアが懐かしむ顔をしてポロポロと涙する。
 それはもう会うことが出来ない大切な人を想って祈りを捧げているようにも見えた。
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