肝胆相照のティーシポネー

人の心無いんか?

文字の大きさ
30 / 35
キリちゃん視点

本編7 足手まといの協力者 その2

しおりを挟む
「さぁ!遠慮しないで沢山食べて!」
 目の前には沢山の料理が並べられている。私はアーカイブにそう言われ無警戒に料理に手を伸ばすカルディアの手を叩いた。悲しそうな顔をするが、私は首を横に振り、カルディアを睨んで、「(毒でも入ってたらどうするのよ!)」と目で訴える。あの子が分かっているかどうかが微妙なんだけど・・・

「・・・まず、アンタが全部食べなさい。」
 私は女に毒見をさせることにした。

「信用されてないわね。まぁ仕方ないか。それと名乗るのが遅くなったけど私は”アーカイブ”ね。さっきの奴らが呼んでいたので知ってるとおもうけど・・・」
 そう言って改めて名乗ったアーカイブは並んだ料理を一口づつ自分の皿に取り、食べていく。
 それを確認してから私は料理に手を付け始める。カルディアも私の様子を見て目を輝かせて料理をパクつきだした。
(私はどうせ味がしないし、なるべくあの子に食べさせてあげよう。)

「それで、何が聞きたいの。」
 付き合い程度に料理を口に運びながら本題を切り出す。
 
「自己紹介もしてくれないの?」
 アーカイブがやれやれという風にため息を付きながら言う。
 言う訳ないでしょ?まだ信用していないのに。

「名乗る価値がアンタにあれば名乗るわ。」

「聞きたいのは一つよ。あなた達、神に会えるの?」

 会ってどうするつもりなんだ?こいつも復讐か?あの糞神なら十二分にありうる話だが。

「会えるとしたら?あなたは何がしたいの?」

「神と取引をする。」

「何を?」

「この世界の脱出方法。」

「ハッ。」 
 私はアーカイブを嘲笑した。
 バカなんじゃないのか?こいつ?そんな優しい奴に見えるのか!アイツが!ここが異世界じゃなければ眼科、いや精神科でも紹介したところだ。

「なにかおかしい?」
 ニコニコと微笑みを崩さないアーカイブ。腹に何か抱えたような嫌な笑いだ。こいつとは仲良くなれないだろう。

「あいつが取引なんてするわけがない。」
 なんでこんな当り前のことを言って聞かせなければならないのか・・・

「あなたが神でも無いのだからそんな事心配しなくていいわ。会えるか?会えないのか?それを知りたいのよ。」
 アーカイブはニコニコとした顔を崩さずにそう言った。

(こいつ・・・誰に向かって言ってんだ!ボケェ!!お前もみじん切りにしてやろうか!?)

「仮に会えるとして、あなたを神の元に連れていく私のメリットは何?」
 イライラしながらアーカイブに聞き返す。

「あなた達の事は何も知らないから、私に何が提供できるのか、それは分からないわ。ただ、私は何かと”便利”よ。」

「どういうこと?」

「私は一度見た能力をコピーできる。ただし、劣化コピーね。強力な奴は再現が殆ど出来ないけどね。」

「自分の能力をよくペラペラと言えるわね。・・・で?私の能力はどうだったかしら?」
 イライラとしていた頭が瞬時に冷える。私はなるべく動揺を隠しながらそう聞いた。

(こいつ・・・危険な能力だ。それに本人にも相当問題がある。つまりこいつは相手の能力を知って、その情報を他者に売ってやがったんだ。殺されかけて当然のクズの所業だ。私も返答次第ではここでこいつを殺す。)

「・・・分からない・・・見えなかったのよ。だからあなたの能力は不明だわ。」
 私はアーカイブを射貫くようにジッと見つめる。

「そう・・・」
(嘘は・・・言ってなさそうだな。)
「あたしたちはあの中央の塔に招待されてる。天秤の神にね。」

「天秤の神に!?・・・最高の相手だわ!」
 アーカイブの瞳に力が籠る。続けて
「話してくれたってことは信用してくれたのかしら?」

「アンタのことは気に入らないし、最低限よ。あんたの能力は気を許すには難しいわ。」
 私は不満をぶちまけるようにそう言った。正直、こんな奴と組みたくはない。だがそう言うと・・・
 私はチラッと横目で料理を頬張るカルディアを見る。
(カルディアが「可哀想だよ!キリちゃん。」とか言って、ごねそうなのよね~。頭が痛いわ・・・)
 こいつが役立つかどうかは未知数だが、一先ず神への復讐が終わるまでは共闘してやるが、その後は・・・

「じゃあ、いい加減名乗ってほしいなぁ~。」

「やだ。」

「そっちの彼女は?」
 急にカルディアに話を振るアーカイブ。

「あ、あたしはカルディアです。お外に居るガルムはてっちゃんって言います。」
 口に入れていた料理を飲み込んで、カルディアが名乗る。

(ちょいちょいちょいちょいちょーーーーーい!!!)

「ちょっと!なんで名乗るの!?もう!」
 なんでこの子はこうも警戒心が無いの!?私、心配だわ!
 
「ええ!?だって・・・別に変な人じゃなさそうだし・・・」
 たはは・・・と苦笑いするカルディア。

(充分変だし、こいつの本質は糞みたいなやつよ!?分かってないの!?この子は・・・)

「もう・・・ちょっとは警戒しなさいよ。」
 私は呆れ顔でカルディアに忠告した。

「ごめんね・・・キリちゃん・・・」
 カルディアが『しゅん』として私の名を呼ぶ。
(だ~か~ら~!この子は~~~~~~!!!ほんっとうに!!!もうもうもう!!!!)

「よろしくね~。キ~リ~ちゃん♪」
 アーカイブがニヤけながらそう言ってくる。

「今度そう言ったら殺すぞ、雑魚。」
 今度その顔して名前読んだら顔面が変形するくらいボコボコにしてやる!!!



 飲食店から出て並んで歩く。目的地は勿論中央の神の塔だ。
 横を歩くカルディアがてっちゃんに干し肉を与えていて、二人とも見てるこっちが嬉しくなるくらいの笑顔だった。

(まるで、良き飼い主と愛情たっぷりで育った飼い犬ね。・・・私はてっちゃんに酷いことをしたから嫌われてるでしょうけど・・・)
 やはりというか、時間が経つにつれて、私は統合したんだという思いが強くなっている。それだけにもう一人の私がどれだけカルディアとてっちゃんを大切にしていたのかが理解できた。

(この二人は必ず守らないと・・・そしてこの私の復讐劇が終わったら、カルディアを帰還させる。私が必ず・・・)

「料理美味しかったね~。キリちゃん。」
 私の心の中の決意とは裏腹に能天気なカルディア。この子は・・・もうもうもう!!人の気も知らないで。
 それに私はエクレア以外味がしないのよ!・・・て、言ったことあったかな???

「そうでしょ~。ここらじゃ一番の料理屋よ~。特にあの肉料理!あの甘酸っぱいソースとの相性が抜群なのよね~。」
 アーカイブがカルディアに話しかける。お前は別に死んでもいいからな。事後の手間が省ける。
 
「あれ!すごく美味しかったです~。」

「そうでしょ、そうでしょ!」

 嬉しそうに語らう二人。
 む~!別に~!羨ましくなんて無いし~!

「ちょっと!何を和んでんのよ!ここには神の奴をぶっ殺しにきたのよ?ご飯食べに来たんじゃないわ!」
 少しイラっとして語調が強くなる。

「ご、ごめん・・・」

「あら~?お友達取られて焼きもち~?」
 
 しゅんとするカルディアにニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべたアーカイブ。
 ああ!もう!カルディアを落ち込ませるつもりは無かったのに!
 あとクソ女は死ね!

「違います!!」
 私は子供みたいにそっぽを向いた。

「そう言えば、あなたはどうして神に会うの?あなたも神を殺すため?」
 アーカイブがカルディアに理由を振った。

「え・・・う~ん。どうしてだろう?いつの間にかこうなっていました?」
 たはは・・・と苦笑いして答えるカルディア。私のせいなんだけどね・・・ごめんね。引っ張りまわして・・・

「ふーん・・・もしかしたら偶然ではなく必然・・・なのかもね。」
 アーカイブが無表情でカルディアを『ジッ』と見つめる。何か見抜こうとするような・・・奥底を探るような・・・そんな目だ。

(そんな探るような目でカルディアを見るんじゃねえ!殺すぞ!!彼女は巻き込まれただけの無関係よ!!!)
 
 私はアーカイブを視線で牽制しながら、
「ただの荷物持ちよ。」
 と短く告げた。




 塔を目指して歩みを進めているとカルディアがモジモジそわそわと訊ね辛そうに
「ねぇ・・・キリちゃん。どうして天秤の神様を探して・・・その・・・殺そうだなんて思ったの。帰還のためじゃないよ・・・ね?」
 私に復讐の理由を聞いてきた。
 恐らくカルディアも理由には予想がついているだろう。それでも私の口から聞きたかったのかな・・・
 
「あいつは・・・あいつは私の命と同等の・・・いや、それ以上のものを奪った。だから殺す。」
 私はポツリポツリと語りだす。

「それってもしかして・・・キリちゃんのお兄・・・さん?」
 カルディアは私の様子に気を使いながら恐る恐る聞いてきた。

「私の身体は病気に犯されていた。目に映るものに色は無く、味覚もなかった。ただ死を待つだけだった。そんな私の命をあの神は救ってくれたわ。五感は回復し、学校にもまた通えるようになった。でも・・・大切なものを奪っていった。その時、私は生きながら死んだのよ。ただ呼吸して、食べて、糞して、寝てるだけの日々だわ。また私の五感は徐々におかしくなっていった。映るものは色が薄くなり徐々に灰色になっていった。美しい音色はだんだん雑音へと変化していった、香るものは異臭に。食む物は砂へとなっていった。生きちゃいない。私は死んだままだ。取り戻すか・・・あるいは報いを受けさせるか・・・それをしない限り、私は始まらない。私は止まったままだ!私は息を吹き返さない!!」

 改めて言葉にすると怒りと憎しみの感情が身体の奥底から沸々と湧いてくる。その感情に身を委ねるとどこまでも冷たく、冷酷になれるかのようだった。まるで私自身が相手を殺す武器になるかのような・・・いや、アイツを葬り去るならそれくらいにならなければならないのだろう。

 冷たい感情に支配されたまま私は塔を睨みつける。
 太陽は高く登り、塔に至るまでを明るく照らしている。
 本来ならばこんな日は気持ちが良いのだろう。
 だが、私は・・・私だけは灰色だ。
 それもあと僅かだろう。

(もう少し・・・あと少しだ。)

(それで私は息を吹き返す。やっと人として始まるんだ!)

(殺してやる・・・)

(今度こそ殺してやる!)

(天秤の神!!!)

 私は太陽に照らされ輝く塔を見据えて力強く歩んでいった。

 後ろに佇む彼女がどんな想いで居るかも知らずに・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...