羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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双新星編

本編5 ブラック企業は入院して初めて休暇になる その4

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 一日空いて、次の日。僕は聖女様と女騎士さんをモールに誘って出かけることにした。
 入院中お世話になったからね!お礼に誘ったのだ。
 拠点では食堂やお風呂といった生活するための最低限の施設利用は無料だが、その他嗜好品は貢献度のポイントを使ってやり取りする。
 因みに甘味やお菓子は嗜好品扱いだ。ポイントが無い奴は食堂に菓子パンがあるのでそれをかじって甘味代わりにしている。何はともあれ物欲を満たすには働きましょうってことさ。

 ポイントに関しては入院中に隊長に改めてどういう仕組みか聞いてみた。
 何でもルーキーたちは初月を過ぎるとカードが貰え、そこに貢献度ポイントが振り込まれるそうだ。
 その貢献度ポイントはどう決まるのか?聞いてみたら、
 やはり前にメイドさんが言っていたように、神様が決めているそうだ。そのポイントは戦闘関連が大きい、と言うより、各陣営の組織への貢献に関するものが大きいみたいで、より意思統一に近くなる働きをしたものがポイントがデカいんだとか。場合によっては前の狩りなんかも、希少価値の高い素材を手に入れられたらポイントは大きいらしい。何をすれば何ポイントとかは未だ手探りらしいが…


 さて、僕らが生活するために必要な各施設は上層と中層の間に第一施設と呼ばれる施設群と中層と下層の間にある第二施設と呼ばれる施設群がある。
 ベテランたちは上層に居るので第一施設は高級施設。新人や中堅が居る近くは第二で庶民向け施設だ。因みに隊長は何故か第二施設でよく見かける。あの人、超稼いでそうなのにな。

 でだ、初月のルーキーたちは貢献度のポイントなんぞ無い。ということで、なんと組織から初月は金券が頂けるのだ!
 その額は所属できた部隊によって違う。私はウォッホン!栄えある第一連隊ゆえ、金券が沢山あるのだ。しかも、どっかのペチャパイに鬼のようにこき使われて出撃と病室ばっかで使う間が無くて余ってるときた!せいぜい初日の日用品や簡単な着替え買ったのと、あとは同室のおデブちゃんに『金券貸してくれ!』と言われてちょっと貸したぐらいだ。

 フッ・・・なので、じゃじゃーん!!!
 今日待ち合わせしているのは、ななななんと第一モールなのだよ。
 ブルジョワジー共の巣窟。でも大丈夫!僕自身そういう人達の部隊で働いてるわけだから。
 もちろんそれに見合った額が支給されてるはずだ!

「勇者様~」
「剣士君」

 二人が姉妹のように手をつないで歩いてくる。ああ~↑癒される~↑

「お待たせしました。待ちましたか?」
 上目使いでそう言ってくる聖女様。

「ううん。今来たとこー」
 『ニヘラ~』と顔を緩ませてデレッデレで返す。
 くぅぅ!!童貞が夢見るシチュエーショントップ3に入るであろう待ち合わせのこのやり取り!
 素晴らしい!記念日にせねば!!デュフッデュフフフ・・・。

 女騎士には「あの・・・気持ち悪いのでその顔やめてください。」と言われた。

 しゅんましぇん。


 3人でモールを見て回る。

 聖女様は子供のように『わあ~』と目を輝かせてショーウインドウに張り付いたりしている。
 女騎士さんも僕らの世界の雑貨や服、アクセサリーをそわそわしながら見ている。

(たぶん聖女様みたいにはしゃぎたいんだろうけど我慢しているんだろうな)

 身体は我慢しているが、顔は正直で目が潤み頬は緩んでしまっている。

(可愛いなー二人とも。さっそく”アレ”の出番だ!)

 僕はあらかじめ用意していたカメラを二人に向けて撮る。

 女騎士さんが気づいたみたいで、「それは何でしょうか?」と聞いてきたが、
 口に人差し指をあて「まだ内緒」と誤魔化しておいた。カメラを知らない二人にサプライズするの。
 道すがら沢山撮ろう。この日々がいつまで続くか分からないから・・・

「あ、あれ綺麗ですね~」
 聖女様がアクセサリーショップのウインドウに這いつく。
 ふっふっふ~。どれどれ?この第一連隊級のお給料のおじちゃんに、まかせんしゃいいいいいいいい!!!!???
 財布に手をかけたまま固まる僕。
 予想よりだいぶ0が多かった。ここは異世界の銀座かな?

「み、見ているだけで楽しいですから。」
 と聖女様にフォローされた。

 すると女騎士さんが、
「聖女様。聖女様。あっちのお店はどうですか?行ってみませんか?」
 そう言って随分カジュアルなお店につれていく。
 女騎士さんが聖女様の肩を抱き、僕の方に振り返りながらウインクする。
 ううううう・・・アンタ、剣持ってなくてもクッソイケメンだよ・・・でも聖女様堕とさないでね。
 百合NTRとかやだよ?僕。



 僕も遅れて付いて行くと割とリーズナブルな10代半ばの子が喜びそうな雑貨ショップだった。
 聖女様ははしゃぎながらお店を見て回り、
 その中でピンク色のイミテーションの石が使われたネックレスを手に取り、
「可愛いー・・・」と呆けながら目を輝かせた。
(あれなら買えるぞ。ぼったくりみたいな値段しているけど)

「すみませーん。彼女が持っているネックレス買います。」
 店員さんを呼んで伝える。

「わ、悪いですよ!勇者様。」

「あれだけお世話になって、貰ってくれないと申し訳なくて僕が可愛い聖女様のお顔を見ることが出来ないんですよ。」
 申し訳なさそうに断ろうとする聖女様に対してクッソ歯が浮くセリフをぶちかます。ご覧になりましたか?明日死ぬかもしれない童貞は無敵なんですよ。

 聖女様は顔を赤くして「可愛いだなんて・・・」とモジモジしている。

 商品を包んで持ってきてくれた店員の目が、
(きんもー)という白い目をしていた。うるさいな、お前に言ってないんだよ。

 さて、聖女様へのお礼は買えたけど、女騎士さんはどうしてるかな?あたりを見渡すと、
 『わあ~』と、わんぱく小僧のようなキラキラした顔をして何やらキーホルダーを熱心に見ていた。
 どれどれ~、何が気に入ったのかな~?と覗いてみると、
 剣に龍が巻きついている、日本の男子小学生が修学旅行で買っちゃうような、あのキーホルダーだった。
 なんでよりにもよって、めっ!他のにしなさい!他のに!
 というか、なんでこのお店にこんなものがあるの?どういうコンセプトなの?

 結局その後、色々お店の中で「これどうですか?」とか誘導してみたものの。あのキーホルダーへの執着はすさまじく、どれを勧めても心ここにあらずなので、あのキーホルダーをプレゼントした。

 店員さんに(え?お前こんな美人にこれプレゼントするの?頭大丈夫?)って目で見られた。
 僕じゃないんですぅ~。僕だって不本意なんですぅ~。てか君の店で売ってる商品だからね!これ。
 でもプレゼントされた女騎士さんがいたく喜んで「一生大事にいたします。」と満面の笑みで喜ぶので(まぁ、いっか)と思える様になりました。
 やっぱり相手に喜んでもらえるものが一番いいよね。

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