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双新星編
本編9 僕らのターニングポイント
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放浪者さんは病み上がりの僕でも10分ほど走れば、といった場所まで運んでくれたようで、見慣れた拠点まではすぐだった。
すぐさま隊長はエルダーエルクの宝珠角を持って一番上層にある事務所に行く。
「ねぇ!これを組織に収めるわ!」
「すごいですね・・・・これ。こんなの見たことないです。かなりのポイントになるんじゃないですか?」
受付の事務員の言葉に顔を綻ばせる隊長。
「また”来月は”トップですね!」
ニッコリと言う事務員に笑顔が消えていく隊長。
来・・・・月・・・・・?
それで僕らはようやく机の上に置いてあるカレンダーを見た。
月が・・・変わっている・・・・。
隊長は『はっ!』と、なり事務所にかけてあるモニターを見る。
組織内部1位
【弱肉強食】ベルセルク
愕然として膝をつく隊長。
声をかけようとも思ったが、
僕は二人の安否を確かめに、へたり込む隊長を置いて事務所の外に出る。
その時、僕らが初めてこの拠点に降り立った一番最下層の広間から下卑た声が聞こえる。
「皆さーん!1位を取ったベルセルクでーす!皆、俺のことは知ってるよなぁ!!」
大勢の人が螺旋階段に出てきて、上からその様子を見ている。
隊長もその声が聞こえたのか僕の隣に来て、下を覗き込んでいる。
「今日は今まで俺の応援をしてくれたファンのためにファンサービスしちゃうぞー。」
そう言うと一部の奴から歓声が上がった。
「なーんと!ここに御座すは先日ここにやってきた聖女ちゃんでーす。今から俺様がこの聖女ちゃんの初めての膜を破っちゃうぞー。特等席で見たい奴は下まで早く降りて来いよ~。」
ベルセルクの前に突き出される聖女様。
俯いていてその表情はわからない。
そこに聞きなれた声が響く。
「やめろ!!!!!」
女騎士さんだった。
女騎士さんはベルセルクの部下に押さえつけられていた。
「あーん?」
『なんだ?その口の利き方は?』と言わんばかりのトーンで答えるベルセルク。
「・・・・・お願いします。やめてください・・・・」
唇を嚙みながら悔しそうに呟く女騎士さん。
「そうは言っても?今まで俺を応援してくれた、可愛いファンたちにサービスしなきゃいけないしな~」
わざとらしく困ったような口ぶりで喋る。
「では・・・・わ・・・・」
「わ~?」
「私を・・・抱け・・・・」
「え~?でも~お前みたいなゴリラ相手に俺様のが立つかな~?」
と、言いながら自分の股間を見るベルセルク。周りからゲラゲラと下品な笑い声が飛び交う。
ベルセルクは「おい」と言って女騎士さんを拘束している部下を下がらせる。
女騎士さんはベルセルクと聖女様の間に立って、
目をぎゅっと瞑り、裾をたくし上げた。
「ねーちゃん舐めてんのか~。」
「そんなんじゃ聖女ちゃんヤられちゃぞー。」
「ベルセルクはバックが好きだぞー。」
「四つん這いになれ四つん這い。」
周囲から下劣なヤジが飛び交う中、女騎士さんは顔を真っ赤にしてパンツを脱ぎ、ベルセルクにお尻を向けて四つん這いになる。一部の人は見てられない、と顔を背ける者もいるが止めに入るものは誰もいなかった。それほどベルセルクは実力者なのだろう。
女騎士さんの醜態をベルセルクがつまらなそうに見つめる。
「ばーか!ケツ振って誘うんだよ。ゴリラでもそれぐらいできるだろ~」
注文をかけるようにヤジが飛ぶ。
それはプライドの高い女騎士さんに取って耐えがたいものだったはずだ。
しかし・・・
「もう・・・もう・・・やめてください。女騎士さん。私のために傷つかないで。」
涙ながらに身を差し出そうとする聖女様。その姿に決心がついたのか、女騎士さんは煽情的にお尻を振り出した。
「べ、ベルセルク様どうか・・・ここに・・・ここにお情けを・・・」
顔を赤くし、屈辱に必死に耐えながら掠れた声で不本意な懇願をする。
その彼女に対して、
「新しいトレーニングか何かか?」
「これがゴリラの求愛ポーズか~」
と、周りはゲラゲラ笑いたてる。
ベルセルクはその様子を眺めながら顎に手をあて、大げさに悩むようなポーズ取り、
「う~ん。全然ダメ~。0点ー。女としての価値無し!」
おどけながら彼女を侮辱した。
それに同調して周りの男どもがさらに笑いたてる。
女騎士さんは四つん這いのまま呆然として静かに涙を流していた。
ベルセルクは「どけ!」と女騎士さんを足蹴にして、聖女様に手をかけようとする。
その様子に僕はもう、我慢の限界だった。
その光景から視線を外さず、怖いくらい見つめていた。
「隊長・・・いえ、姉さん。あとの事はお願いします。」
いつの間にか隣に来て様子を見守っていたヘッドシューターさんに伝える。
「あんた・・・何言ってんの!?や・・・やめなさい!!!!!」
僕の表情から、これから何をするのか悟った姉さんが青い顔で僕を制止する。
しかし、あのような事を見せられて、僕はもう限界だった。
「ライブラ!!!コンサルティング!!!!」
「駄目よ!!!!!!!!!」
姉さんが力ずくで止めようと手を伸ばす。
世界の色が消え、停止する。
『いや~。ここで使わなかったらアンタぶっ飛ばしてたけどさ。そこまでつまらない奴じゃなかったみたいね~。』
「神様・・・お願いします。」
『如何程に?』
「あの屑野郎をぶっ飛ばせるくらいに!!!!」
『んふふ~。いい・・・いいでしょう!!!調整はもう済ませてあります。後は知らないけどね~。』
「締結の言葉お願いします。」
『やる気満々じゃん~それじゃ~』
『報酬には』
「対価を」
『選択には』
「犠牲を」
『借りものには』
「返済を」
『共に締結の言葉を』
『「レバレッジ」』
世界に色が戻ると同時に僕は螺旋階段の手すりに足をかけ最下層までジャンプする。
止めようとした姉さんの手は僕の元居た場所で空を切る。
下には今にも聖女様を手にかけようとしているベルセルクのクズ野郎が見える。
僕は空中でフォーチュンさんから頂いた剣を抜剣し・・・・
ヒュン!
上空からの縦の一閃。手を伸ばしていたクズの右手を二分割にした。
「お、俺の腕があああああああああああああああああ!!!!」
肘から先の無い腕を挙げ叫ぶクズ。
切り口からおびただしい出血が起きる。
「このクソガキ!!!!!」
青筋を浮かべ、残った左手で能力を発動し、拳撃を繰り出すベルセルク。
僕はそれを正面から剣で受け止めようとする。
「馬鹿が!そんな細い剣で俺様の強化した肉体が切れるわけがねぇ!!!そのまま剣ごとミンチにしてやる!!!!」
勝利を確信したベルセルクの顔、
僕はそのベルセルクの拳を、
正面から叩き切った。
左手の拳から腕にかけての半分がスパっと無くなり、口をパクパクするベルセルク。
そのまま、横なぎの体勢に入る僕。
それに感づいたベルセルクは能力を使い大きくバックステップする。
(遠い!!!)
「武器効果範囲倍化を追加!」
神様を介さず能力を追加する。剣にオーラの様なものが纏い、刀身が倍加する。
しかし斬撃はベルセルクの胴には届かず、その両足を分断した。
「あああああああああああああ足がああああああああああ!!!!!!!!」
両手両足の無くなったベルセルクがじたばたする。
遅れて上から姉さんが降りてくる。
「アンタたちすぐ逃げないと、もうここには・・・」
姉さんがそう言ったときだった。
「そいつらを捕らえろ!!!殺すな!!!いいか!!!絶対殺すなよ!!!!!生きて捕らえたものは、なんでも褒美を取らせる!!!」
上層から代表が目を血走らせながら全員に指示を出す。
その表情は狂気じみていて、まるで何十年も探し求めた宝物を発見したような顔だった。
それを聞いた姉さんがポーチから袋を取り出し投げて寄越す。
その中身は魔力結晶だった。
「その通路の奥にあんたたちが最初にいた闘技場につながってるポータルがある。それで足りるはずだから起動させてそこから逃げなさい。」
静かに最下層のドアを指し示す姉さんは・・・目が据わり、死を覚悟していた。
「な、なに・・・しているんです。姉さん・・・。やめてください。」
「行きなさい・・・あなたが彼女たちを選んだように・・・私があなたを選ぶのよ・・・行きなさい。行って、生きなさい!!!」
その場面に木こりが太い丸太を振り回しながら有象無象の野次馬ををかき分けて僕たちのもとにやってくる。
「そいつを引きずってでも、つれて行きなさい!!!」
姉さんは僕以外の3人に号令をかける。女騎士さんと木こりが僕を抱え引きずって行く。
「なんでだよ!待ってくれ!嫌だ!あなたを置いていけない!!!離して、離してくれ!!姉さん!!!姉さーーーーーん!!!!」
能力の反動でうまく力が入らない。
姉さんの姿がどんどん遠くなる。
姉さんの姿が涙でどんどんぼやける。
こんなの・・・こんなのって無いよ。
最後に見た彼女の姿は勇ましく敵を迎え撃つヘッドシューターとしての彼女だった。
通路奥にあるポータルの部屋に入るなり、木こりは持っていた丸太を能力で分厚い扉型の一枚板に変形させ、扉を補強する。
すぐさま聖女様がポータルに魔力結晶を撒くように乗せる。
「これは・・・」
聖女様は何かを拾い上げ袋にしまう。
ポータルに魔力を吸わせるが、すぐには起動しない。
扉の向こうから男たちの怒号がして扉を破ろうとしている。
木こりは自身の身体を扉に預け、打ち破ろうとしている奴らを抑える。
ポータルに乗せている魔力結晶が消え、ポータルの準備が完了する。
「木こり!!お前も来い!!!」
「駄目だ!!!!・・・転移先では人同士での戦闘は出来ないが、誰かがここで時間を作らないと捕らえられたり、後をつけられる。だから行け!」
「どうして!?お前がそこまでする義理は・・・」
木こりと過ごした時間なんて僅かだ。そんな彼が命を張ってくれる。
「お前たちのためじゃない。俺自身のためにするんだ。男は馬鹿だからな。幼稚で格好つけで、好きな女には褒められたい。そんな馬鹿な生き物だよ・・・」
「なに・・・言って・・・」
「だから!!・・・先に逝ったアイツに顔向けできる自分でありたいんだ・・・」
「お前・・・もしかして初日に・・・」
「幸せになれよ。行け!!!」
「行こう。彼の意思を汲もう。」
女騎士に促され、僕たちは3人でポータルに乗る。
転移する瞬間、彼は満足そうに笑った。
すぐさま隊長はエルダーエルクの宝珠角を持って一番上層にある事務所に行く。
「ねぇ!これを組織に収めるわ!」
「すごいですね・・・・これ。こんなの見たことないです。かなりのポイントになるんじゃないですか?」
受付の事務員の言葉に顔を綻ばせる隊長。
「また”来月は”トップですね!」
ニッコリと言う事務員に笑顔が消えていく隊長。
来・・・・月・・・・・?
それで僕らはようやく机の上に置いてあるカレンダーを見た。
月が・・・変わっている・・・・。
隊長は『はっ!』と、なり事務所にかけてあるモニターを見る。
組織内部1位
【弱肉強食】ベルセルク
愕然として膝をつく隊長。
声をかけようとも思ったが、
僕は二人の安否を確かめに、へたり込む隊長を置いて事務所の外に出る。
その時、僕らが初めてこの拠点に降り立った一番最下層の広間から下卑た声が聞こえる。
「皆さーん!1位を取ったベルセルクでーす!皆、俺のことは知ってるよなぁ!!」
大勢の人が螺旋階段に出てきて、上からその様子を見ている。
隊長もその声が聞こえたのか僕の隣に来て、下を覗き込んでいる。
「今日は今まで俺の応援をしてくれたファンのためにファンサービスしちゃうぞー。」
そう言うと一部の奴から歓声が上がった。
「なーんと!ここに御座すは先日ここにやってきた聖女ちゃんでーす。今から俺様がこの聖女ちゃんの初めての膜を破っちゃうぞー。特等席で見たい奴は下まで早く降りて来いよ~。」
ベルセルクの前に突き出される聖女様。
俯いていてその表情はわからない。
そこに聞きなれた声が響く。
「やめろ!!!!!」
女騎士さんだった。
女騎士さんはベルセルクの部下に押さえつけられていた。
「あーん?」
『なんだ?その口の利き方は?』と言わんばかりのトーンで答えるベルセルク。
「・・・・・お願いします。やめてください・・・・」
唇を嚙みながら悔しそうに呟く女騎士さん。
「そうは言っても?今まで俺を応援してくれた、可愛いファンたちにサービスしなきゃいけないしな~」
わざとらしく困ったような口ぶりで喋る。
「では・・・・わ・・・・」
「わ~?」
「私を・・・抱け・・・・」
「え~?でも~お前みたいなゴリラ相手に俺様のが立つかな~?」
と、言いながら自分の股間を見るベルセルク。周りからゲラゲラと下品な笑い声が飛び交う。
ベルセルクは「おい」と言って女騎士さんを拘束している部下を下がらせる。
女騎士さんはベルセルクと聖女様の間に立って、
目をぎゅっと瞑り、裾をたくし上げた。
「ねーちゃん舐めてんのか~。」
「そんなんじゃ聖女ちゃんヤられちゃぞー。」
「ベルセルクはバックが好きだぞー。」
「四つん這いになれ四つん這い。」
周囲から下劣なヤジが飛び交う中、女騎士さんは顔を真っ赤にしてパンツを脱ぎ、ベルセルクにお尻を向けて四つん這いになる。一部の人は見てられない、と顔を背ける者もいるが止めに入るものは誰もいなかった。それほどベルセルクは実力者なのだろう。
女騎士さんの醜態をベルセルクがつまらなそうに見つめる。
「ばーか!ケツ振って誘うんだよ。ゴリラでもそれぐらいできるだろ~」
注文をかけるようにヤジが飛ぶ。
それはプライドの高い女騎士さんに取って耐えがたいものだったはずだ。
しかし・・・
「もう・・・もう・・・やめてください。女騎士さん。私のために傷つかないで。」
涙ながらに身を差し出そうとする聖女様。その姿に決心がついたのか、女騎士さんは煽情的にお尻を振り出した。
「べ、ベルセルク様どうか・・・ここに・・・ここにお情けを・・・」
顔を赤くし、屈辱に必死に耐えながら掠れた声で不本意な懇願をする。
その彼女に対して、
「新しいトレーニングか何かか?」
「これがゴリラの求愛ポーズか~」
と、周りはゲラゲラ笑いたてる。
ベルセルクはその様子を眺めながら顎に手をあて、大げさに悩むようなポーズ取り、
「う~ん。全然ダメ~。0点ー。女としての価値無し!」
おどけながら彼女を侮辱した。
それに同調して周りの男どもがさらに笑いたてる。
女騎士さんは四つん這いのまま呆然として静かに涙を流していた。
ベルセルクは「どけ!」と女騎士さんを足蹴にして、聖女様に手をかけようとする。
その様子に僕はもう、我慢の限界だった。
その光景から視線を外さず、怖いくらい見つめていた。
「隊長・・・いえ、姉さん。あとの事はお願いします。」
いつの間にか隣に来て様子を見守っていたヘッドシューターさんに伝える。
「あんた・・・何言ってんの!?や・・・やめなさい!!!!!」
僕の表情から、これから何をするのか悟った姉さんが青い顔で僕を制止する。
しかし、あのような事を見せられて、僕はもう限界だった。
「ライブラ!!!コンサルティング!!!!」
「駄目よ!!!!!!!!!」
姉さんが力ずくで止めようと手を伸ばす。
世界の色が消え、停止する。
『いや~。ここで使わなかったらアンタぶっ飛ばしてたけどさ。そこまでつまらない奴じゃなかったみたいね~。』
「神様・・・お願いします。」
『如何程に?』
「あの屑野郎をぶっ飛ばせるくらいに!!!!」
『んふふ~。いい・・・いいでしょう!!!調整はもう済ませてあります。後は知らないけどね~。』
「締結の言葉お願いします。」
『やる気満々じゃん~それじゃ~』
『報酬には』
「対価を」
『選択には』
「犠牲を」
『借りものには』
「返済を」
『共に締結の言葉を』
『「レバレッジ」』
世界に色が戻ると同時に僕は螺旋階段の手すりに足をかけ最下層までジャンプする。
止めようとした姉さんの手は僕の元居た場所で空を切る。
下には今にも聖女様を手にかけようとしているベルセルクのクズ野郎が見える。
僕は空中でフォーチュンさんから頂いた剣を抜剣し・・・・
ヒュン!
上空からの縦の一閃。手を伸ばしていたクズの右手を二分割にした。
「お、俺の腕があああああああああああああああああ!!!!」
肘から先の無い腕を挙げ叫ぶクズ。
切り口からおびただしい出血が起きる。
「このクソガキ!!!!!」
青筋を浮かべ、残った左手で能力を発動し、拳撃を繰り出すベルセルク。
僕はそれを正面から剣で受け止めようとする。
「馬鹿が!そんな細い剣で俺様の強化した肉体が切れるわけがねぇ!!!そのまま剣ごとミンチにしてやる!!!!」
勝利を確信したベルセルクの顔、
僕はそのベルセルクの拳を、
正面から叩き切った。
左手の拳から腕にかけての半分がスパっと無くなり、口をパクパクするベルセルク。
そのまま、横なぎの体勢に入る僕。
それに感づいたベルセルクは能力を使い大きくバックステップする。
(遠い!!!)
「武器効果範囲倍化を追加!」
神様を介さず能力を追加する。剣にオーラの様なものが纏い、刀身が倍加する。
しかし斬撃はベルセルクの胴には届かず、その両足を分断した。
「あああああああああああああ足がああああああああああ!!!!!!!!」
両手両足の無くなったベルセルクがじたばたする。
遅れて上から姉さんが降りてくる。
「アンタたちすぐ逃げないと、もうここには・・・」
姉さんがそう言ったときだった。
「そいつらを捕らえろ!!!殺すな!!!いいか!!!絶対殺すなよ!!!!!生きて捕らえたものは、なんでも褒美を取らせる!!!」
上層から代表が目を血走らせながら全員に指示を出す。
その表情は狂気じみていて、まるで何十年も探し求めた宝物を発見したような顔だった。
それを聞いた姉さんがポーチから袋を取り出し投げて寄越す。
その中身は魔力結晶だった。
「その通路の奥にあんたたちが最初にいた闘技場につながってるポータルがある。それで足りるはずだから起動させてそこから逃げなさい。」
静かに最下層のドアを指し示す姉さんは・・・目が据わり、死を覚悟していた。
「な、なに・・・しているんです。姉さん・・・。やめてください。」
「行きなさい・・・あなたが彼女たちを選んだように・・・私があなたを選ぶのよ・・・行きなさい。行って、生きなさい!!!」
その場面に木こりが太い丸太を振り回しながら有象無象の野次馬ををかき分けて僕たちのもとにやってくる。
「そいつを引きずってでも、つれて行きなさい!!!」
姉さんは僕以外の3人に号令をかける。女騎士さんと木こりが僕を抱え引きずって行く。
「なんでだよ!待ってくれ!嫌だ!あなたを置いていけない!!!離して、離してくれ!!姉さん!!!姉さーーーーーん!!!!」
能力の反動でうまく力が入らない。
姉さんの姿がどんどん遠くなる。
姉さんの姿が涙でどんどんぼやける。
こんなの・・・こんなのって無いよ。
最後に見た彼女の姿は勇ましく敵を迎え撃つヘッドシューターとしての彼女だった。
通路奥にあるポータルの部屋に入るなり、木こりは持っていた丸太を能力で分厚い扉型の一枚板に変形させ、扉を補強する。
すぐさま聖女様がポータルに魔力結晶を撒くように乗せる。
「これは・・・」
聖女様は何かを拾い上げ袋にしまう。
ポータルに魔力を吸わせるが、すぐには起動しない。
扉の向こうから男たちの怒号がして扉を破ろうとしている。
木こりは自身の身体を扉に預け、打ち破ろうとしている奴らを抑える。
ポータルに乗せている魔力結晶が消え、ポータルの準備が完了する。
「木こり!!お前も来い!!!」
「駄目だ!!!!・・・転移先では人同士での戦闘は出来ないが、誰かがここで時間を作らないと捕らえられたり、後をつけられる。だから行け!」
「どうして!?お前がそこまでする義理は・・・」
木こりと過ごした時間なんて僅かだ。そんな彼が命を張ってくれる。
「お前たちのためじゃない。俺自身のためにするんだ。男は馬鹿だからな。幼稚で格好つけで、好きな女には褒められたい。そんな馬鹿な生き物だよ・・・」
「なに・・・言って・・・」
「だから!!・・・先に逝ったアイツに顔向けできる自分でありたいんだ・・・」
「お前・・・もしかして初日に・・・」
「幸せになれよ。行け!!!」
「行こう。彼の意思を汲もう。」
女騎士に促され、僕たちは3人でポータルに乗る。
転移する瞬間、彼は満足そうに笑った。
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