羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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双新星編

サブストーリー5 残酷な壁

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 私は聖女様の手を引き下の階へ移動し、外へ出た。
 周りは炎に包まれ、戦場と化していた。
 激しい怒号と悲鳴がそこら中から上がる。

 その時、側面から斬りかかってくる男。
 あの聖女様を糾弾したノッポの男だった。

「聖女様!私の後ろへ!!」

「は、はい!」

 聖女様を庇い、ノッポと対峙する。
 ノッポが斬りかかってきて、それを受け止め激しい鍔迫り合いになる。
 一瞬の隙をつき蹴りを入れて、ノッポを斬り伏せた。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ!聖女様!ご無事ですか!?」

 後ろを振り向くと、そこに聖女様の姿はない。

「な、なんてことだ・・・・聖女様!!聖女様ーーー!!!」

 私は襲い来る住民をいなしつつ、叫びながら戦場を駆け巡る。

「お、女・・・・騎士・・・さ・・・ん。」

 かすかに声が聞こえる。
 声の聞こえる方向を注視すると、シスターが切られて倒れていた。

「シスター!!!しっかり!!!」
 抱き起こすが、傷が深い。すぐに診てもらえば助かる可能性も・・・しかしこの状況では・・・
 考えを逡巡させていると、

「む・・・こう・・・聖・・・女さ・・・・ん・・・危・・・ない。」
 辛いだろうに必死で腕を上げ指をさす。

「し、しかし・・・」
 私は迷ってしまった。ここでシスターを置いて行けば、確実にシスターは・・・

「は・・・やく・・・・行っ・・・て。」
 そう言って私を引き離そうと最後の力をふり絞り、押し返すシスター。

「シスター・・・長らくお世話になりました。ありがとう。」
 私は感謝を伝え、シスターの指さした方へ走っていく。


 その先には、


 聖女様に伸し掛かる若い侍風の男が居た。



「貴様ーーー!!!!」


 その男に横薙ぎ一閃を仕掛ける。
 しかし、ひらりと男はそれを難なく躱した。


「貴様・・・その動き。森であった奴だな。それにその顔!お前、転移者の侍!」

「なんだよ・・・お前!俺とサクラの邪魔をするなああああああ!!!!」
 目を血走らせ刀で切りかかってくる侍。
 剣で受けるが後ろに弾き飛ばされる。

「くそ!・・・」
 嫌になる。貴族の家に生まれたが、女らしいことは捨てて、生涯を剣術に捧げてきた。
 なのに・・・
 出鱈目な動きの転移者に力でもスピードでも負け苦戦する。
 素人のような動きなのに、ポテンシャルが違いすぎる。
 自分の努力や人生が否定されているみたいで、対峙するだけで嫌になる。

「こここここのアマテラス様の力と、あああああああ天の羽々斬があれば俺は無敵なんだぁ!!!」
 完全に目が逝っている。
 こんな狂人相手に私の剣がどれだけ通用するのか・・・
 私は剣を構え直し、相手を見据える。

「いいいいいくぞ!!炎撃十字斬んんんんん!!!!!!!」
 刀が炎を纏う。これは・・・二段切りを狙っているのか!?
 初撃を足さばきで躱し、二撃目を剣で受けた。

「イヒヒヒヒ・・・やるな!こここれはどうだ!!!煉獄車輪斬んんんん!!!」
 大振りの水平切り、下がりながら剣で受ける。
(隙の大きい動きでも、身体能力が高すぎて隙をつけない!それと何なんだ!さっきからいちいち叫んでいるのは!!!)

「おまえに勝つには・・・まともな方法じゃダメだろうな。」

「なななな何を言ってるぅぅぅぅ!!ここここれで終わりだああああ!!日輪断罪けーーーーーーーん!!!」
 大きい縦振りの一撃。
 ああ・・・待っていたよ、その一撃。
 私は左腕でその一撃を受け、左に僅かに逸らし、侍男を刺した。
 男はずるりと倒れ、私は致命傷は避けたが左腕を失い激しく出血する。

「あ・・・・・・・・嘘だろ・・・・俺・・・・い゛、い゛たい゛ーーーーーーー!!!なんで・・・俺は最強なのに・・・最強の力を太陽神アマテラス様に与えられて、最強の刀、天の羽々斬も貰って・・・なのに・・・なんで、なんで・・・い゛たい゛・・・」

 喚く男に私は手首をねじりこみ、止めを刺した。

「やった・・・・。・・・・聖女様は!?」
 私はすぐさま倒れている聖女様に近寄る。


 聖女様は



 背中を切られ



 服を破られ



 大事なその秘部からは赤い血と汚らわしい男の体液が流れ出ていた。



「そ・・・・んな。」

 呆然と立ち尽くす。

「すまない・・・・すまない!剣士君・・・聖女様!」

 私は涙を流す。

 そこに剣士君がやってきた。

 なんて・・・なんて詫びたらいいんだ。

 託されたのに・・・何も守れなかった。

 聖女様の命も・・・その尊厳も。

 私は・・・・私の剣と努力は・・・この世界ではなんて無力で無価値なんだ。

 涙が流れると共に、

 私のこれまでの鍛錬で培ってきた自信も流れ出ていくようだった。
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