羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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黄金都市編

黄金都市編その15

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 あの戦いから一週間。予想通りというべきか、僕の身体は反動で使い物にならなくなり、深手を負った女騎士さんも暫く療養せざるをえない状態だった。

 そんな僕らは今はちゃんとした療養施設に入っている。
 何故かというと、ふふふ・・・。ファイトマネーと秘密のお小遣いで小金持ちになったからであーる!ちゃーんと二人分の市民権も獲得したよ。お金かかったけどね。

「ストラクチャー&バニラ、大勝利を収める・・・か。ぐふっ、ぐふふふふ。」

「気持ち悪い声で笑うな。」
 ベッドで上半身を起こして新聞を読む僕の隣でバニラさんこと女騎士さんが呆れた様子で言う。女騎士さんは能力を一切見せなかったことが”無能力バニラ”と判断されたみたいだ。僕の方は言わずもがな。あれだけ叫べばなぁ。と言っても僕の能力は土を操る能力?とか、構造物を操る能力か?と分析されているみたいだ。

「なあ剣士君。ちゃんとしたところで療養出来るのはありがたいがお金は大丈夫なのか?しかも二人部屋個室なんて・・・」

「大丈夫!大丈夫!副業で稼いだから~。」
 女騎士さんと二人でゆっくり出来るように奮発したんですよ。ただ二人ともベッドに磔で動けないんですけどね!

「副業なんていつしたんだ?」

「ナ・イ・ショ。」

「お前と言う奴は・・・ちゃっかりしているな。まぁ、今回は助かったよ。」

「でしょう?僕もやるときはやるんですから!」

「こんにちは~。」
 ひょこっと病室に顔を出したのはカルディアさん。いつも見舞いついでに差し入れを持ってきてくれるのだ。

「マスターが持て行けって。」

「おお!ありがたい!マスターの料理を食べてると、ここの病人食は物足りなくてな。」
 女騎士さんが目を輝かせてバスケットを受け取る。

「いっぱいありますから沢山食べてください!」
 ええ子や~。隣の金魚の糞が居なければ完璧じゃった。

「お客様。病室にペットを持ち込むのは如何かと~。衛生面的に~。」

「え?毎日一緒に水浴びして綺麗にしてるんですけど・・・ダメ・・・ですか?」

「え?いや・・・あの・・・」
  冗談のつもりで言ったのに本気に取られて、非常に申し訳なさそうな顔をするカルディアさん。僕も調子狂ってしどろもどろになる。隣に居た犬コロが

「今日こそクズがくたばったか確認しに来てるんだよ。お祝いの葬式パーティーの準備をしなくちゃいけないからな。」
 犬コロが口角をあげてのたまう。

「クソ犬があああ!掛かってこいやボケェ!!!」

「上等だ!今日こそやってやんよ!!」

「こらぁ!二人ともやめなさい!女騎士さん食べてないで止めてください!」

「じゃれ合ってるだけさ。仲が良くてほほえましいじゃないか!」
 二人して取っ組み合いを始め、オロオロしながら止めに入るカルディアさんにマイペースに食事を楽しむ女騎士さん。いつもの光景だったが、今日はここに珍客が現れることになったんだ。

 ドタドタドタドタドタ!!!!

 ものすごい勢いで気配も消さず、病室に近寄ってくる。ここを訪れるのは僕らの関係者くらいなものなのに・・・。もし放浪者さんならあんな足音はさせない!僕も流石にじゃれ合いをやめ警戒態勢に入る。病室の4人に緊張が走った。

 ドタドタドタドタドタ・・・バン!

「なんてことしてくれるのよおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 勢いよく入ってきたのは先日の対戦者のアイスエイジ。殺意は無く、鼻水を垂らしながら涙目という情けない顔をさらしていた。

「アンタたち人間なの!?鬼!悪魔!人でなし!私これからどうしたらいいのよおおおお!!」

 座り込んでわんわん泣き叫ぶ。

「いったいどうしたんですか?」
 女騎士さんが声をかけると、

「どーしたもこーしたもないわよ!これ!あんたたちでしょ!?」

 アイスエイジが見せてきたのはこの街で発行されてる週刊誌。そこには白目を向き、おもらしの染みパン丸見えで泡拭いて気絶しているアイスエイジの姿が・・・。

「おまけにこれ!!!闇市で出回って!」
 見せてきたのはさっきの姿をカラーで様々な角度とポーズで撮ったお宝写s・・・ゲフンゲフン。もとい、あられもない姿の写真だった。因みに力作は染みパン犬神家だ。

「「「うわぁ・・・」」」
 一同が若干引き気味に写真を覗いている。

「これのせいで予定されてたライブは中止!事務所契約終了。さらに、お前らに負けたせいで借金は残るし!」

「へー。場末のアイドルじゃなかったんだなー。」

「何言ってるのよ!このキュートなルックス!」
 お?華麗なるアイドルポージングその1

「おまけに魔法少女で」
 ポージングその2

「金輪際現れない完璧で究極のアイドル!」
 ポージングその3!そして・・・

「そんな私が借金無職生活だなんてええええええええ!!!どおしてくれるのよおおおおお!!!!アイスエイジ、生きていけないよおおおおおおお!!!!」
 泣き叫び地団駄を踏むポンコツの舞い!こいつ意外とファンキーなキャラしてるな・・・。

「アイスエイジ48歳、ファンなし、仕事なし、金なし。」
 
「変なナレーション入れるな!!!あと誰が48歳じゃ!ピチピチの永遠の17歳よ!」

「いや、ピチピチとか言っちゃう辺りおばちゃん臭が・・・。えーと・・・教義的17歳教な意味での17歳ってことか?」

「きーーーーー!!!とにかく!お前のせいでこっちはどん底よ!どうしてくれんのよ!」

「いやぁ・・・そんなこと言われても勝負の世界だし~・・・写真に関しては僕がやったっていう証拠あるの?」

「ぐっ・・・それは・・・。」
 涙目のまま黙りこくるアイスエイジ。

「な?言いがかりはよせって!」
 ふっ・・・勝ったな。

「そういえば、剣士君。副業って・・・。ここの入院費も・・・」

 ギクッ!

「な、ナンノコトデショー?」
 女騎士さんの呟きにすっとぼける。

「お前!」

「証拠!証拠出して!!証拠しょーこショコショコショーコ!」

「こいつ・・・!お前は悪魔か。」
 頭を抱え、呆れて物も言えないという風の女騎士さん。

「いや・・・クズだろ?」
 うっさいわ!犬コロ。
 あ・・・カルディアさんの目が冷たい。

「剣士さん・・・私に写真の現像出来るところ聞きましたよね?そして行ってましたよね?体ボロボロで調子悪いのに?そんなに急いで何を現像してきたんですか?あの時、女騎士さんの介抱を私にさせて、会場に残って何してたんです?」

「えーと、えーと・・・あはは・・・。」
 笑って許して~スマイルスマイル♪だが皆の視線は氷のように冷たい。

「い、」

「い?」

「いいじゃん!レイプとか殺人とか当たり前のこの世界で、この程度は可愛いもんでしょ!」

「最低です・・・人の心とか無いんですか?」
 ぐふっ・・・カルディアさんの好感度がマイナスまで下がってそう。

「や・・・」

「や?」
 俯いていたアイスエイジがプルプルと震えだし、

「やっぱりあんたじゃないのよおおおお!!!!!!どうしてくれんの!ねぇ?どおしてくれんのよ!責任取ってよ、責任取りなさいよおおおお!!」
 アイスエイジがベッドの上で上半身だけ起こしてる僕に跨り、泣きながら僕の胸ぐら掴みガクガクと揺さぶる。
 いつの間にか病室の開きっぱなしのドアの向こうには人だかりが出来ていて・・・

「おい?聞いたか?責任だってよ?」
「あれ、アイスエイジじゃん。事務所クビになったのってまさか妊娠?」
「相手の男が認知しないみたいだな。」
「まじかよ・・・俺ファンやめるわ・・・。」

 とんでもない誤解が発生しつつあった・・・。

「ち、ちが、違うからね?みんな?」
 慌てて顔を作って取り繕おうとするが、

「めちゃくちゃ距離近いじゃん。」
「ああ・・・やっぱあいつが父親・・・。」
「この間の勝負は痴情のもつれか!?」
「てか、あれ今も挿ってない?」
「幻滅した、俺ファンやめるわ。」

 あー・・・今の状態、見る人から見たら対面座位の状態だもんね!・・・これもう修正不可能じゃね?
 僕は青ざめるアイスエイジの肩を優しく叩く。

「何よ!!!」
 振り返り、気丈に睨みつけるアイスエイジに僕は・・・

「あー・・・お気の毒ですがぼうけんの書は消えてしまいました?」
 追い打ちをかけていくスタ~イル。

「ふ・・・」

「ふ?」

「ふざけんじゃないわよおおおおおおお!!!!」
 ついにプッツンして能力でレイピアを出し襲いかかってくるアイスエイジ。

「おい!いくらなんでも殺人はやべえって!」
「取り押さえろ!取り押さえろ!」
「これは曾根崎心中か・・・いいや、失楽園か!?」
「落ち着いてください!アイスエイジさん!」
「頭がフットーしちゃったよおっっ!」
「失望した。俺、ファンやめるわ。」

 野次馬含めたその場の全員で取り押さえる。病室にはいつまでもアイスエイジの嘆きの絶唱がいつまでも響いていた。
 あー・・・なんだ・・・。中止になったライブが出来て良かったね♪
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