羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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黄金都市編

黄金都市編その16

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「皆さーん!元気にしてましたか~って、けが人でしたね。あっはっはっは・・・って、なんです、この空気?・・・おや?」

「・・・私の人生返して・・・私の人生返して・・・私の人生返して・・・」

 底抜けに明るく登場したのは放浪者さん。僕と女騎士さん、それについてくるといったカルディアさんの登塔許可を取りに行ってくれていたのだ。
 帰ってきた放浪者さんは部屋に漂う空気と僕のベッドの脇にいる体育座りをした元アイドルのダウナー系無職を見て困惑している。

「えーと・・・剣士君、地縛霊飼い始めました?」

「なにその怖すぎるペット。飼いませんよ。そんなの。」

「ま、まさか・・・私だけ見えてる!?」

「いえ全員見えてます。」

「なんで放置?」

「「「・・・」」」
 全員を見回す放浪者さん。しかし全員が目を合わせようとしない。

「あー・・・えーと・・・お嬢さ・・・ん?確かアイスエイジさんですよね?」
 放浪者さんが何かを察して仕方なく話しかけると、

「あああああ!!!うあああああうああああああああ!!!」
 話しかけられたアイスゾンビが起動して放浪者さんに襲いかかる。

「ちょっ!こわっ!圧っ!圧がすごい。目が逝ってるし!ええい!当て身。」
 手刀の一撃でゾンビを気絶させる。

「さすが放浪者さん、一撃で仕留めましたね!そのまま捨ててきてくださいよ。」

「いやいやいや!何があったんです?」
 放浪者さんがそう言うと全員が僕の顔をジト目で見る。

「またあなたですか。わかってましたが・・・。」

「ちょ!またって何ですか!?またって。まるで僕が問題児みたいじゃないですか?」

「「え?」」
 女騎士さんと放浪者さんが『自覚無かったんか、お前』という顔をしている。

 カルディアさんも僕らから目を逸らしながら、
「あー・・・私もだいたいわかってきました。」

「で?何しでかしんたんです?」

「実はですね。放浪者殿。かくかくしかじかでして・・・。」
 女騎士さんが放浪者さんに経緯を説明する。

「剣士君・・・最低ですね。人の心とか無いんですか?」
 ドン引きの様子を見せる放浪者さん。

「いや!アンタには言われたくないわ!」

「まぁ・・・冗談はさておき。うーん・・・バックレたらいいんじゃないでしょうか?どうせ塔に入るんだし。」
 いや、ブーメランでしょ?人の心無いんか?

「「「うわぁ・・・」」」

「え?皆さん、何です?その目。」

「逃がすわけないでしょう!!!!」

「おわ!復活してる!」
 いつの間にか復活していたアイスエイジに話を聞かれていたみたいだ。いや・・・まてよ?

「なぁ?アイスエイジ?」

「なによ!!!」

「まぁ落ち着けって。お前も塔に入ったらいいんじゃね?塔内部にはお前の染みパン丸出し犬神家を知ってる奴居ないんだし。結構な人数が入塔してるっていうし、コミュニティも形成されてると思う。そこで改めてアイドルすればいいんじゃないか?」

「そっか・・・そうよね!その手があったわね!」
 おお・・・持った湯飲みをバッタと落としそうな顔してやがる。こいつが馬鹿でよかった~。

「じゃあ、私が塔でもう一度アイドルに返り咲くまでよろしくね!」

「うんうん・・・え?」

「え?だって、私、お金ないし・・・むしろ借金抱えてるし?今日のご飯にもありつけないし?てか、お腹空いた~。マネージャー、ごはーん!」

「誰がマネージャーじゃい!」

「あ・ん・た・が。よろしくね♪」
 何ぶりっ子でウインクしとんじゃい!か、可愛いじゃねぇか・・・
 しかし、やっちまったかもしれない。助けを求めるように女騎士さんを見ると

「よかったなぁ!私みたいにゴリラじゃない可愛い連れが出来て!嬉しいだろ?なあ!?」
 笑顔で青筋が立っている。違うって・・・そんなつもりじゃないんやって。

「剣士君。」
 ポンポンと僕の肩を叩く放浪者さん。凄く優しい目をして・・・まさか・・・!?やっぱりなんだかんだで頼りになる人だ。ありがとう・・・ありがとう!!

「放浪者さん・・・たすけてくれr・・・」

「頑張ってね!」
 全部言い切る前に半笑いで見放される。

「この糞禿げ・・・!」
 殴ってやろうと拳を振り上げた瞬間、猛スピードで動き、すでに部屋に居ない放浪者さん。察知が速すぎる・・・Gかよ、あの人。

「ねーえ!マネージャー!お腹空いたって言ってるんですけどー。ねーってばー。」
 アイスエイジは場の空気お構いなしに僕の体を揺さぶり、飯の催促をする。

「あのー・・・カルディア様~・・・。」
 助けを求めるように遠慮がちにカルディアさんを見ると・・・

 ジーーーーー・・・プイッ!

 真顔のまま見つめられそっぽを向かれる。傍で丸まっているクソ犬はいい気味だと笑ってやがる。

 誰も僕と目を合わせようとせず、まるで僕が居ないように扱われ、唯一話しかけてくるのはピーピー鳴く生活能力の無くなった青ニート。腕を引っ張られ揺さぶられながら、そっと視界の滲む天井を見るのだった。
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