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黄金都市編
黄金都市編その19
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「さて・・・これでおしまい・・・っと」
「いってぇ!」
手当てをしてくれたアイスエイジが終わりと言わんばかりに傷に平手打ちをする。昔、保健先生でもこういう人居たけどあれ何なの?あの傷口ビンタは意味無いよね?
僕の治療は終わったが・・・襲ってきた男を見ると男たちは微かにうめき声を上げているような状態だった。
「それで?こいつら、どうするの?このままだと死ぬだろ?」
「衛兵に連絡して・・・その後は知らないわよ。」
「おいおい。そんなんで間に合うのか?死ぬんじゃないのか?」
「あのねぇ、知らないわよ、そんなの。さっきまで殺し合いしていたのよ!?敵の事なんて・・・知らないわ・・・。」
「でも・・・。」
「た、たのむ・・・。」
呻いていたインファイトから声がした。
「家まで・・・家まで連れていってくれ・・・俺はもう助からない・・・だから家族の元で死なせてくれ・・・。」
「分かった。場所はどこだ。」
「ちょっと!やめなさい!」
僕は駆け寄り男を起き上がらせて話を聞くが、その行為にアイスエイジは不満の声を上げた。
「すぐ近くなんだ・・・頼む・・・」
「なあ・・・こいつの最後だろ?叶えてやれないか?」
「私は・・・嫌よ。絶対に行きたくない!」
「わかった・・・じゃあお前はここで待っててくれないか?」
「ああ、もう!あんた甘すぎるわ。どうしてこういう時だけクズになれないのよ・・・。お願いだから・・・ね?やめよう?」
まるで懇願するかのようなアイスエイジの顔は泣きそうで・・・。それでも僕は・・・
「ごめん・・・。」
「ああもう!わかったわよ・・・。・・・おい、お前変な動きしたらすぐ殺すからね?」
僕は男を担ぎ、アイスエイジは男に対して警戒を解かず忠告をした。男は忠告に小さく頷き、男の指示に従って貧民街の裏路地を歩く。男は信じられないほど軽く、そして冷たかった。
少し歩いた所にある長屋。ドアを開け入ると殆ど家財なんてない部屋。奥にベッドがあり横たわっている女性と小さい子。僕の背から降りた男がよろよろと歩きベッドに近づき、倒れこむように体を預ける。
「帰ったよ・・・ごめんなぁ・・・今日も何も無くて。でも・・・明日は必ずパンを手に入れてくるから・・・それも白い・・・ふわっふわのパンだ。絶対だ。だからごめんなぁ、もうちょっと・・・もうちょっとだけ我慢・・・して・・・く・・・れ・・・。」
男が二人の枯れ枝の様な手を握りながら、その独白と共に目から光が消えた・・・。
「なんだよ・・・これ・・・。」
「だから来たくなかったのよ・・・。」
「なんで・・・?こんな・・・こんなことって・・・どうして!!」
この街は何もしないんだ!?その言葉は『はっ』となり飲み込んだ。知っていたはずじゃないか!僕は・・・。だが目の前の光景につい言わずには居られなかったんだ。
「なんで?ですって?・・・アンタ・・・何寝ぼけてんのよ・・・。この街の事、この世界の事、何もわかっていない!!元居た世界、日本みたいに保障が当り前だと思ってるの?ここは異世界よ・・・ここじゃこれが現実で当たり前なのよ・・・力無い者はお金を得られない、生きれない。あの二人程度の実力と能力じゃ私とアンタをどうこうなんて出来っこ無かったわ。それぐらいはあの戦いを見ていたら分かるはずよ。それでも・・・それでもやらなきゃならなかったんでしょう・・・。」
怒気を孕んだ彼女の言葉に何も反論できない。コイツの言っていることは全部正論だ。でも、だからって・・・この悔しさが紛れるわけじゃなかった。
息絶えた3人を見る。何かしてやることも出来なくなった3人を・・・。いや・・・僕はまた甘いことを考えている。何かしてやるだって!?自分の面倒だって満足に見れもしない癖に・・・くそくそくそ!行き場のない苛立ちが募る。そんな時ふと疑問がよぎった。
「なぁ・・・どうしてこんな小さい子が狭間世界に居るんだ!?こんな・・・。」
「恐らく・・・ここで産んだんでしょうね・・・。」
「産んだ!?こんな世界で妊娠したって事か!?」
「ええ・・・私も拠点に居た時に見たことがあるから・・・。でもね、妊娠しても堕ろすのが普通よ。生まれてきた子は能力も恩恵も何も無しで、おまけに年を取っていくわ。只の普通の子なのよ。
何も与えられていない普通の子にこの世界は・・・厳しすぎる・・・。ここで生まれた子が上手くいったケースを知らないわ。子のことを思うなら出来ないように、産まないようにするのが普通だわ・・・。この人達だって当初はそう思っていたと思う。でも・・・いざ出来てしまうとそんな考えも変わってしまう人が結構いるのよ・・・。だけど・・・その心変わりを非難できないわ・・・親になったことが無い私達には・・・。」
まともな国家も社会も形成されていないこんな世界にただの人として生まれる。産む方も生まれる方も、いったいどんな気持ちなのだろう・・・その気持ちを理解する資格はきっと僕には無いのだろう。アイスエイジの話を聞きながら、ただジッと彼らの亡骸を見つめていた・・・。
「いってぇ!」
手当てをしてくれたアイスエイジが終わりと言わんばかりに傷に平手打ちをする。昔、保健先生でもこういう人居たけどあれ何なの?あの傷口ビンタは意味無いよね?
僕の治療は終わったが・・・襲ってきた男を見ると男たちは微かにうめき声を上げているような状態だった。
「それで?こいつら、どうするの?このままだと死ぬだろ?」
「衛兵に連絡して・・・その後は知らないわよ。」
「おいおい。そんなんで間に合うのか?死ぬんじゃないのか?」
「あのねぇ、知らないわよ、そんなの。さっきまで殺し合いしていたのよ!?敵の事なんて・・・知らないわ・・・。」
「でも・・・。」
「た、たのむ・・・。」
呻いていたインファイトから声がした。
「家まで・・・家まで連れていってくれ・・・俺はもう助からない・・・だから家族の元で死なせてくれ・・・。」
「分かった。場所はどこだ。」
「ちょっと!やめなさい!」
僕は駆け寄り男を起き上がらせて話を聞くが、その行為にアイスエイジは不満の声を上げた。
「すぐ近くなんだ・・・頼む・・・」
「なあ・・・こいつの最後だろ?叶えてやれないか?」
「私は・・・嫌よ。絶対に行きたくない!」
「わかった・・・じゃあお前はここで待っててくれないか?」
「ああ、もう!あんた甘すぎるわ。どうしてこういう時だけクズになれないのよ・・・。お願いだから・・・ね?やめよう?」
まるで懇願するかのようなアイスエイジの顔は泣きそうで・・・。それでも僕は・・・
「ごめん・・・。」
「ああもう!わかったわよ・・・。・・・おい、お前変な動きしたらすぐ殺すからね?」
僕は男を担ぎ、アイスエイジは男に対して警戒を解かず忠告をした。男は忠告に小さく頷き、男の指示に従って貧民街の裏路地を歩く。男は信じられないほど軽く、そして冷たかった。
少し歩いた所にある長屋。ドアを開け入ると殆ど家財なんてない部屋。奥にベッドがあり横たわっている女性と小さい子。僕の背から降りた男がよろよろと歩きベッドに近づき、倒れこむように体を預ける。
「帰ったよ・・・ごめんなぁ・・・今日も何も無くて。でも・・・明日は必ずパンを手に入れてくるから・・・それも白い・・・ふわっふわのパンだ。絶対だ。だからごめんなぁ、もうちょっと・・・もうちょっとだけ我慢・・・して・・・く・・・れ・・・。」
男が二人の枯れ枝の様な手を握りながら、その独白と共に目から光が消えた・・・。
「なんだよ・・・これ・・・。」
「だから来たくなかったのよ・・・。」
「なんで・・・?こんな・・・こんなことって・・・どうして!!」
この街は何もしないんだ!?その言葉は『はっ』となり飲み込んだ。知っていたはずじゃないか!僕は・・・。だが目の前の光景につい言わずには居られなかったんだ。
「なんで?ですって?・・・アンタ・・・何寝ぼけてんのよ・・・。この街の事、この世界の事、何もわかっていない!!元居た世界、日本みたいに保障が当り前だと思ってるの?ここは異世界よ・・・ここじゃこれが現実で当たり前なのよ・・・力無い者はお金を得られない、生きれない。あの二人程度の実力と能力じゃ私とアンタをどうこうなんて出来っこ無かったわ。それぐらいはあの戦いを見ていたら分かるはずよ。それでも・・・それでもやらなきゃならなかったんでしょう・・・。」
怒気を孕んだ彼女の言葉に何も反論できない。コイツの言っていることは全部正論だ。でも、だからって・・・この悔しさが紛れるわけじゃなかった。
息絶えた3人を見る。何かしてやることも出来なくなった3人を・・・。いや・・・僕はまた甘いことを考えている。何かしてやるだって!?自分の面倒だって満足に見れもしない癖に・・・くそくそくそ!行き場のない苛立ちが募る。そんな時ふと疑問がよぎった。
「なぁ・・・どうしてこんな小さい子が狭間世界に居るんだ!?こんな・・・。」
「恐らく・・・ここで産んだんでしょうね・・・。」
「産んだ!?こんな世界で妊娠したって事か!?」
「ええ・・・私も拠点に居た時に見たことがあるから・・・。でもね、妊娠しても堕ろすのが普通よ。生まれてきた子は能力も恩恵も何も無しで、おまけに年を取っていくわ。只の普通の子なのよ。
何も与えられていない普通の子にこの世界は・・・厳しすぎる・・・。ここで生まれた子が上手くいったケースを知らないわ。子のことを思うなら出来ないように、産まないようにするのが普通だわ・・・。この人達だって当初はそう思っていたと思う。でも・・・いざ出来てしまうとそんな考えも変わってしまう人が結構いるのよ・・・。だけど・・・その心変わりを非難できないわ・・・親になったことが無い私達には・・・。」
まともな国家も社会も形成されていないこんな世界にただの人として生まれる。産む方も生まれる方も、いったいどんな気持ちなのだろう・・・その気持ちを理解する資格はきっと僕には無いのだろう。アイスエイジの話を聞きながら、ただジッと彼らの亡骸を見つめていた・・・。
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