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塔内編
塔内編その12
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「あの・・・どこまで行くんですか?」
あたしは先を行くブリッツラインさんに尋ねる。彼女が宿を尋ねてきて、私は色々聞き出そうと思ったんだけど、彼女が『落ち着ける場所に移動しましょ。』と言うことでこうして移動している。しかし、すでに私達が寝泊まりしている宿からはかなり離れていた。
周りの景色は私達が活動していた場所とは随分違って、何だか高そうなお屋敷が立ち並んでいる。今歩いている道幅も広く、景観の為かあちらこちらにわざわざ樹木を植樹していた。所謂高級住宅街というものなんだろうか?歩いている人も私たち以外居ない。そんな状況がよりあたしを不安にさせた。
(やっぱり一人で来るんじゃなかった・・・。)
「だーいじょうぶ、大丈夫。もうちょっとで着くから♪」
本当に大丈夫なんだろうか・・・?チェイサーさんの彼女って聞いていたから大人しそうな人を想像していたけど実際のブリッツラインさんはと言うと、フリルをあしらったブラウスに下着が見えそうなくらいのミニスカート。歩きづらそうな厚底のブーツ。長いツインテールにマスクで顔は大きく隠れていたが、唯一見えている目元には派手なアイシャドーを施していた。
(いや、そもそも本当に彼女がブリッツラインさんなんだろうか?まずお店に寄って貰えばよかった。そうすればミナモさんも居たし・・・。ああ、もう!馬鹿だな、あたし!)
「ほーら!着いたよー。ここ!」
考え事をしている間にいつの間にか目的地に着いたみたい。目の前には大きな洋館が建っている。・・・けど
「あ、あの・・・ここってブリッツラインさんのお宅・・・じゃないですよね?お店にも見えないんですけど・・・。」
「いいからいいから!」
彼女は強引にあたしの手を取ってグイグイ引っ張り門を開けて洋館の中へ入ろうとする。あたしは嫌な予感を感じて無理矢理彼女の手を振りほどいた。
「あ、あの!やっぱりあたし・・・。」
「は?何それ?今更何言ってんの。」
今までニコニコとしていた彼女の目つきが厳しくなる。
「ご、ごめんなさい!」
あたしは背を向け遮二無二逃げ出した。背中側から彼女の呟きが風に乗って聞こえる。
「はあ~・・・着替えさせたり準備が面倒なんだけど、仕方ないか。」
呟きと共に凄まじい速さで何かがあたしの脇を掠めたと思ったら、あたしのずっと後方に居たはずの彼女がキスできそうなくらいの距離に立っている。
「ごめんね~。ちょっとビリッとするから♪」
笑顔でそう言うとあたしの鳩尾に手をやると、全身に電気のようなものが走り、体がマヒする。次第に意識が遠のいてゆく。
(こわい・・・こわい・・・。やっぱり一人で来るんじゃなかった!あたしのばか・・・)
「大丈夫、大丈夫!ちょっとキ・・・い奴と一晩・・・だけ・・・から。」
彼女が何か言うが、もう何を言っているのかもよく解らない。あたしの最後に見たものは薄ら笑いを浮かべるブリッツラインさんの嫌らしい笑い顔だった。
_______________________________
「それで女騎士さん。結局あなたの方でもアドミラルさんとアイスエイジは見つかっていないんですか?」
「ああ、私が気付いたときにはカルディアさんと二人きりだった。それより剣士君、その・・・。」
女騎士さんが僕の背中に困惑の視線を向ける。
「言わないでください・・・僕も不本意なんですから・・・」
「あら?わたくしだって不本意ですわ。でもこんな街中であんな大型の子を呼ぶわけにも行かないでしょう?愚民は常識が無いのかしら?」
「常識があるなら僕の背中から下りて走ってくださいまし、お嬢様!」
「嫌ですわ。そんな汗水たらして走るだなんて、わたくしのような高貴な者がやることではありませんわ。一時でもわたくしの馬になれる栄誉を誇りなさい。」
僕らは女騎士さんの働いているお店の店長の地図で街を全力疾走していた。ただ、実際走っているのは僕と女騎士さんだけど・・・。急がないといけないのにお嬢様は走ろうとしないので、仕方なく僕はお嬢様を背に乗せる栄誉ある専属白馬のお役目を賜りましたとさ、ヒヒーン。
「あー・・・シャークさんと合流すればよかった・・・。僕にはお嬢様の執事は無理だわー。」
「そう言えば急いでいるとはいえ、そのシャドウシャークさん?と、あの桃色髪の女性は置いてきて良かったのか?」
「シャークとリペアペイメントにはもう連絡を送っています。その内に来ますわよ?」
「いや~、今来て欲しいっすね。猛烈に。」
「あなた!わたくしの馬の何が不満なんですの!?それにあなた!さっきから背中に汗かいてきてますわよ!わたくしの服に移るじゃありませんの!この愚民!」
「こんな重いもの担いで走ってるんだから汗かいて当然でしょ!?」
「お、おも、重いですって~~~~!!」
「だー!ちょっ!やめてください!落としちゃいますって!」
背中のめんどくさい人が激しく暴れ出す。最近出会うクソ女率どうなってんだよ!?ここに来た当初の女騎士さんやヘッドシューターさんで女運使い果たしたか!?
「二人ともそこまでだ!もう着くぞ!」
見えてきたのは大きな豪邸の洋館。僕達は門の前に立ち洋館を見上げる。女騎士さんが静かに剣を引き抜く。すると彼女は目を見開き不思議そうな顔をした。
「!?」
「どうかしました?」
「い、いや・・・剣士君。今なにも言っていないよな?」
「え?ええ・・・」
「そうだよな。すまない・・・。」
「その剣、どこかで・・・。」
ヴェスパ様が女騎士さんの剣を見て何やら呟く。
「この剣がどうかしましたか?」
「いえ・・・何でもありません。さあ行きましょう。」
ヴェスパ様が優雅に日傘を広げて堂々と門を開けてスタスタと正面から進んでゆく。
「あの~・・・僕達、侵入者なんだけど、あんなに堂々といいのかな?」
「ひ、一先ず警備兵とかは無さそうだな・・・。」
女騎士さんも顔を掻いてヴェスパ様を追う。僕もその背中を追った。
あたしは先を行くブリッツラインさんに尋ねる。彼女が宿を尋ねてきて、私は色々聞き出そうと思ったんだけど、彼女が『落ち着ける場所に移動しましょ。』と言うことでこうして移動している。しかし、すでに私達が寝泊まりしている宿からはかなり離れていた。
周りの景色は私達が活動していた場所とは随分違って、何だか高そうなお屋敷が立ち並んでいる。今歩いている道幅も広く、景観の為かあちらこちらにわざわざ樹木を植樹していた。所謂高級住宅街というものなんだろうか?歩いている人も私たち以外居ない。そんな状況がよりあたしを不安にさせた。
(やっぱり一人で来るんじゃなかった・・・。)
「だーいじょうぶ、大丈夫。もうちょっとで着くから♪」
本当に大丈夫なんだろうか・・・?チェイサーさんの彼女って聞いていたから大人しそうな人を想像していたけど実際のブリッツラインさんはと言うと、フリルをあしらったブラウスに下着が見えそうなくらいのミニスカート。歩きづらそうな厚底のブーツ。長いツインテールにマスクで顔は大きく隠れていたが、唯一見えている目元には派手なアイシャドーを施していた。
(いや、そもそも本当に彼女がブリッツラインさんなんだろうか?まずお店に寄って貰えばよかった。そうすればミナモさんも居たし・・・。ああ、もう!馬鹿だな、あたし!)
「ほーら!着いたよー。ここ!」
考え事をしている間にいつの間にか目的地に着いたみたい。目の前には大きな洋館が建っている。・・・けど
「あ、あの・・・ここってブリッツラインさんのお宅・・・じゃないですよね?お店にも見えないんですけど・・・。」
「いいからいいから!」
彼女は強引にあたしの手を取ってグイグイ引っ張り門を開けて洋館の中へ入ろうとする。あたしは嫌な予感を感じて無理矢理彼女の手を振りほどいた。
「あ、あの!やっぱりあたし・・・。」
「は?何それ?今更何言ってんの。」
今までニコニコとしていた彼女の目つきが厳しくなる。
「ご、ごめんなさい!」
あたしは背を向け遮二無二逃げ出した。背中側から彼女の呟きが風に乗って聞こえる。
「はあ~・・・着替えさせたり準備が面倒なんだけど、仕方ないか。」
呟きと共に凄まじい速さで何かがあたしの脇を掠めたと思ったら、あたしのずっと後方に居たはずの彼女がキスできそうなくらいの距離に立っている。
「ごめんね~。ちょっとビリッとするから♪」
笑顔でそう言うとあたしの鳩尾に手をやると、全身に電気のようなものが走り、体がマヒする。次第に意識が遠のいてゆく。
(こわい・・・こわい・・・。やっぱり一人で来るんじゃなかった!あたしのばか・・・)
「大丈夫、大丈夫!ちょっとキ・・・い奴と一晩・・・だけ・・・から。」
彼女が何か言うが、もう何を言っているのかもよく解らない。あたしの最後に見たものは薄ら笑いを浮かべるブリッツラインさんの嫌らしい笑い顔だった。
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「それで女騎士さん。結局あなたの方でもアドミラルさんとアイスエイジは見つかっていないんですか?」
「ああ、私が気付いたときにはカルディアさんと二人きりだった。それより剣士君、その・・・。」
女騎士さんが僕の背中に困惑の視線を向ける。
「言わないでください・・・僕も不本意なんですから・・・」
「あら?わたくしだって不本意ですわ。でもこんな街中であんな大型の子を呼ぶわけにも行かないでしょう?愚民は常識が無いのかしら?」
「常識があるなら僕の背中から下りて走ってくださいまし、お嬢様!」
「嫌ですわ。そんな汗水たらして走るだなんて、わたくしのような高貴な者がやることではありませんわ。一時でもわたくしの馬になれる栄誉を誇りなさい。」
僕らは女騎士さんの働いているお店の店長の地図で街を全力疾走していた。ただ、実際走っているのは僕と女騎士さんだけど・・・。急がないといけないのにお嬢様は走ろうとしないので、仕方なく僕はお嬢様を背に乗せる栄誉ある専属白馬のお役目を賜りましたとさ、ヒヒーン。
「あー・・・シャークさんと合流すればよかった・・・。僕にはお嬢様の執事は無理だわー。」
「そう言えば急いでいるとはいえ、そのシャドウシャークさん?と、あの桃色髪の女性は置いてきて良かったのか?」
「シャークとリペアペイメントにはもう連絡を送っています。その内に来ますわよ?」
「いや~、今来て欲しいっすね。猛烈に。」
「あなた!わたくしの馬の何が不満なんですの!?それにあなた!さっきから背中に汗かいてきてますわよ!わたくしの服に移るじゃありませんの!この愚民!」
「こんな重いもの担いで走ってるんだから汗かいて当然でしょ!?」
「お、おも、重いですって~~~~!!」
「だー!ちょっ!やめてください!落としちゃいますって!」
背中のめんどくさい人が激しく暴れ出す。最近出会うクソ女率どうなってんだよ!?ここに来た当初の女騎士さんやヘッドシューターさんで女運使い果たしたか!?
「二人ともそこまでだ!もう着くぞ!」
見えてきたのは大きな豪邸の洋館。僕達は門の前に立ち洋館を見上げる。女騎士さんが静かに剣を引き抜く。すると彼女は目を見開き不思議そうな顔をした。
「!?」
「どうかしました?」
「い、いや・・・剣士君。今なにも言っていないよな?」
「え?ええ・・・」
「そうだよな。すまない・・・。」
「その剣、どこかで・・・。」
ヴェスパ様が女騎士さんの剣を見て何やら呟く。
「この剣がどうかしましたか?」
「いえ・・・何でもありません。さあ行きましょう。」
ヴェスパ様が優雅に日傘を広げて堂々と門を開けてスタスタと正面から進んでゆく。
「あの~・・・僕達、侵入者なんだけど、あんなに堂々といいのかな?」
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