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第4話 押し寄せる後悔(SIDE:ニコラルド)
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「離縁して下さい」
「……な、にをいっているんだ?」
オリーヴが起き上がれるまでに回復したと使用人から聞き、安堵した。
だがその彼女が、突然執務室に現れて離縁したいと言ってきた。
「三年の契約は満了しておりませんが、私は流産した影響で今後子供を望む事は難しいと医師に言われました」
「え!? そ、そんな話は聞いていない…っ」
「私が医師に口止めしました。身体が回復するまで時間が欲しかったので」
「……っ」
不妊になった事を理由に、早々に追い出されると思ったのか。
それほどまでに、薄情な男と思われていたとは…
当たり前だ。
一度も見舞いに行かなかったのだから。
僕は彼女に合わせる顔がなく、見舞い行く勇気がなかった……
「ですので、これで本当に子供ができない事が離婚事由になります。お義父様もご納得されると思いますので、離縁して下さい」
「…し、しかし…離縁して…その後君はどうするのだ? 実家に戻るのか? 何かできる事は…」
「私の事をお気になさる必要は、全くございません。あと私の有責になりますのが、当初予定していた手切れ金で相殺して頂ければ助かるのですが」
あの実家に彼女の居場所がない事は知っている。
僕で何か力になれればと思ったが、彼女からはっきり拒絶された。
「…いや、君の有責にはしないし、手切れ金は当初の予定通り支払う」
「では、私の銀行口座に振り込みをお願い致します」
「わかった…」
金で済む問題ではないけれど、せめてそれぐらいはしなければならないと思った。
「こちらは私の署名は済んでおります。旦那様がご署名された後、提出をお願い致します。あと、荷物がまとまり次第、今日中に屋敷を出ますので。では、これで失礼致します」
彼女は事務的に話し終えると、離縁承諾書をテーブルの上に置いた。
立ち上がるとお辞儀をし、部屋を出ようとした時、僕は彼女を呼び止めた。
「え、ま…今日、屋敷を出るつもりか…?」
「え? はい、私が出ればすぐにジルドーラ様を本邸にお迎えできますわ」
彼女は、さも当たり前と言わんばかりに答えた。
「……ああ…」
僕は言葉を探したが、それしか浮かばなかった。
「ご安心して下さい」
「え?」
「あとになって何かを要求する事はありません。手切れ金だけで結構です。これで旦那様も愛する方と添い遂げる事ができますし、私も肩の荷が下りました。短い間でしたがお世話になりました」
オリーヴは入口でもう一度お辞儀をして退出した。
彼女は終始、感情を失くした人形のように事務的だった。
そうしてしまったのは他でもない…僕だ。
「肩の荷が下りた…」
僕はこの結婚が決まった当初、受けた父も承諾した彼女の事も憎んでいた。
貴族同士の結婚だ。
そもそも彼女が承諾したわけじゃない、彼女の父親が受けたのだ。
なのに僕は、ジルドーラとの間に割り込んだ悪女のように彼女を扱ってしまった。
彼女がこの結婚を望んだわけではなかったのに…
なのに僕は、『白い結婚』を望み彼女を蔑ろにしたにもかかわらず、衝動的に彼女を抱いた。
彼女を抱かなければ妊娠する事もなく流産する事もなかったはずだ。
そして子が生せない身体にはならなかったかもしれない……
彼女に魅かれている気持ちに、気づかないふりをした。
だがそのせいで、夜会で彼女が僕以外の男といる事に嫉妬し、酔いも相俟って醜い独占欲が爆発して彼女を無理矢理抱いた。
…自分の欲望の為に……
ジルドーラを愛していると言いながら、彼女に魅かれ、その気持ちを否定しながらも、彼女を自分の物にしたいという欲が生まれたせいでどれだけ彼女を傷つけたことか…
「僕は…どこまでも最低な人間だ…」
今更どれだけ後悔しても、もう取り返しがつかない――――…
皮肉な事に彼女と離縁した翌日、ジルドーラから妊娠した事を聞かされた。
そして両親は渋々、僕とジルドーラの結婚を認めた。
今になって………
「……な、にをいっているんだ?」
オリーヴが起き上がれるまでに回復したと使用人から聞き、安堵した。
だがその彼女が、突然執務室に現れて離縁したいと言ってきた。
「三年の契約は満了しておりませんが、私は流産した影響で今後子供を望む事は難しいと医師に言われました」
「え!? そ、そんな話は聞いていない…っ」
「私が医師に口止めしました。身体が回復するまで時間が欲しかったので」
「……っ」
不妊になった事を理由に、早々に追い出されると思ったのか。
それほどまでに、薄情な男と思われていたとは…
当たり前だ。
一度も見舞いに行かなかったのだから。
僕は彼女に合わせる顔がなく、見舞い行く勇気がなかった……
「ですので、これで本当に子供ができない事が離婚事由になります。お義父様もご納得されると思いますので、離縁して下さい」
「…し、しかし…離縁して…その後君はどうするのだ? 実家に戻るのか? 何かできる事は…」
「私の事をお気になさる必要は、全くございません。あと私の有責になりますのが、当初予定していた手切れ金で相殺して頂ければ助かるのですが」
あの実家に彼女の居場所がない事は知っている。
僕で何か力になれればと思ったが、彼女からはっきり拒絶された。
「…いや、君の有責にはしないし、手切れ金は当初の予定通り支払う」
「では、私の銀行口座に振り込みをお願い致します」
「わかった…」
金で済む問題ではないけれど、せめてそれぐらいはしなければならないと思った。
「こちらは私の署名は済んでおります。旦那様がご署名された後、提出をお願い致します。あと、荷物がまとまり次第、今日中に屋敷を出ますので。では、これで失礼致します」
彼女は事務的に話し終えると、離縁承諾書をテーブルの上に置いた。
立ち上がるとお辞儀をし、部屋を出ようとした時、僕は彼女を呼び止めた。
「え、ま…今日、屋敷を出るつもりか…?」
「え? はい、私が出ればすぐにジルドーラ様を本邸にお迎えできますわ」
彼女は、さも当たり前と言わんばかりに答えた。
「……ああ…」
僕は言葉を探したが、それしか浮かばなかった。
「ご安心して下さい」
「え?」
「あとになって何かを要求する事はありません。手切れ金だけで結構です。これで旦那様も愛する方と添い遂げる事ができますし、私も肩の荷が下りました。短い間でしたがお世話になりました」
オリーヴは入口でもう一度お辞儀をして退出した。
彼女は終始、感情を失くした人形のように事務的だった。
そうしてしまったのは他でもない…僕だ。
「肩の荷が下りた…」
僕はこの結婚が決まった当初、受けた父も承諾した彼女の事も憎んでいた。
貴族同士の結婚だ。
そもそも彼女が承諾したわけじゃない、彼女の父親が受けたのだ。
なのに僕は、ジルドーラとの間に割り込んだ悪女のように彼女を扱ってしまった。
彼女がこの結婚を望んだわけではなかったのに…
なのに僕は、『白い結婚』を望み彼女を蔑ろにしたにもかかわらず、衝動的に彼女を抱いた。
彼女を抱かなければ妊娠する事もなく流産する事もなかったはずだ。
そして子が生せない身体にはならなかったかもしれない……
彼女に魅かれている気持ちに、気づかないふりをした。
だがそのせいで、夜会で彼女が僕以外の男といる事に嫉妬し、酔いも相俟って醜い独占欲が爆発して彼女を無理矢理抱いた。
…自分の欲望の為に……
ジルドーラを愛していると言いながら、彼女に魅かれ、その気持ちを否定しながらも、彼女を自分の物にしたいという欲が生まれたせいでどれだけ彼女を傷つけたことか…
「僕は…どこまでも最低な人間だ…」
今更どれだけ後悔しても、もう取り返しがつかない――――…
皮肉な事に彼女と離縁した翌日、ジルドーラから妊娠した事を聞かされた。
そして両親は渋々、僕とジルドーラの結婚を認めた。
今になって………
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