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鴻鵠の番(こうこくのつがい)
全1話
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「私はあなたの“鴻鵠の番”です」
「こ、こう…こく…の番…? ――――――――は?」
俺はテーブルを挟んで目の前に座っている女の言葉が、一瞬理解できなかった。
口に含んだ紅茶を吹き出しそうになるところを耐え、飲み込む。
「もう一杯、いかがですか?」
「あ、ああ」
女は置いてあるティーポットを持つと、俺のティーカップに紅茶を注いだ。落ち着く為に、もう一口。
俺はロースペルナ侯爵家の嫡男ヴィストム。
向かいに座っている女はクラリア伯爵家のエデル……だったかな?
“どうしても話さなければならない、大事な話があります。あなたの人生に関わる事です”という仰々しい内容の手紙を受け取り、このカフェに来た。
二階のテラス席に案内され、そこで待っていたのがこの女だ。
手紙に記載されていた名前に心当たりはない。
会ってみたが、全く面識はない。
その女が、予想もしない言葉を口にした。
『鴻鵠の番』……?
そういえば……子供の頃、侍女が寝物語に聞かせてくれた事があるような……
遥か遠い昔、我がオルーロ帝国は、獣人族が建国したらしい。
動物の習性からか獣人同士には、運命の相手が存在する。
それが『鴻鵠の番』
鴻鵠とは白鳥の別名で、白鳥は一夫一婦制の鳥。
相手が死ぬまで添い遂げる。
『鴻鵠の番』はそこからつけられた名称だ。
そして、これは獣人族にのみ現れる。
しかし、外地から人族がオルーロ帝国に流れるようになり獣人族と共存し始めると、オルーロ帝国は人族と獣人族との異種族婚を認可した。
その後、異種族婚が増えて行った事により獣人族の血脈が薄まっていき、『鴻鵠の番』という現象も現れなくなっていく。
だがごく稀に、その『番』というのに出会う事があるらしい。
しかしそれは天文学的な確率であり、出会えば家門繁栄を齎す瑞兆とも言われている―――――……
―――――と、いう話を聞いた事がある……が!!
建国者が獣人だったとか、鴻鵠の番とか、そんなの昔々の……ただの伝承だろう!? 結局、作り話だろうがっ
今の時代、俺の周りでそんな話をまともに取り合うヤツなどいやしない!
なのに、今目の前にいるこの女は俺が『鴻鵠の番』だという。
バカも休み休み言ってくれ!
というかこの女、そんな昔話をさも真実のように語って侯爵家次期当主である俺の気を引こうって魂胆じゃないのか? まっ、その肩書のおかげでいい思いはしているけどな。ふっ。
俺は女を凝視した。
長い黒髪は耳のあたりから上部を後ろにまとめ、目には縁の太い色付きレンズの眼鏡をかけ、俯き加減に話している。スタイルは中肉中背。一言で表すと……華もなくただの地味な女。
金髪に碧眼の俺とは真逆だな。
この陰気臭い女の浅知恵で、『鴻鵠の番』とかなんとか持ち出して俺に近づいて来ただけだろう? 新手の手法だな。
面倒臭ぇな……
どうせ誘ってくるなら、もっといい女だったら良かったのに。
俺は大きく溜息をついて、目の前の女に言った。
「俺はそもそも“鴻鵠の番”など夢物語のような話は全く信じていないし、万が一本当だったとしてもお前のような女はごめんだ!
俺の好みは金髪美人で、出るとこは出て、ウエストはきゅっと引き締まっているスタイル抜群の女なんだよ。つまり、お前とは正反対で真逆! 鏡を見て出直してこい!」
我ながらはっきり言ったもんだ。
けど、興味のない女に気遣う必要はない。
だが、当の本人は意に介しておらず、話を続けた。
「……『鴻鵠の番』を感じられるのは獣人族の血がより強い側だと言われています。そういう意味で私は、遠き祖先である獣人族の血を濃く受け継いだようです。
人族の文化に『番』という概念はありませんでしたから。
ですから『鴻鵠の番』を感じられない貴方は人族の血が強いようですね」
女は俯きながら、淡々と説明する。
この女……マジで『鴻鵠の番』の話を信じているのか?
ヤバくないか?
「だからあなたが私の番と分かってから、ずっと注視してきました。生涯寄り添える相手かどうか。けれど……私もあなたのようなクズ男はごめんです」
「ク、クズ男!? 俺に言ってんのか!!」
「ご自覚がないとは手に負えない馬鹿ですね。
女性をただの性処理としてしか思っておらず、次から次へと遊び歩く。
妊娠した女性は無理矢理堕胎させ、家門には口止め料としてお金を支払う。しかも相手は下位貴族や使用人などの平民ばかり。
万が一訴えられても、侯爵家相手では全て不起訴となってしまう。被害を受けた女性もその家族も泣き寝入りするしかない。
本当に……貴方のような人間が番と分かった時の私の絶望……お判りにならないでしょうね」
そう言いながら、女は初めて俺を見た。
色付きレンズせいで、女の瞳がよく見えない。
けれど俺は、その瞳に何か違和感を感じた。
いや、今は人の瞳の事などどうでもいい!
問題はこの女が、俺を付け回していたって事だ!
「はあ!? 俺の事を調べていたのか! この性悪女が!!」
「下衆の極みとはあなたの事をいうのね。けれど…こんな男でも“鴻鵠の番”という制約が私を苦しめる。どんなにクズな人間でも、私の心は貴方を求めてしまう……」
そう言いながら、女はまた俯いた。
小さな肩が微かに震えている。
「……! はっは―――ん。なんだ、結局は俺の事が好きって事なんだろ? まぁ、好みじゃないけど、暇つぶしに相手をしてやってもい……ぐあ!!」
そういいながら女の顔に触れようとした瞬間、胸に強い痛みが走った!
息が出来ない! 景色が回る!!
何だ、これは!!
ガタンッッ
俺はテーブルの上に突っ伏した。
「た、たすけ……っ 苦し……っ」
俺は震える手を伸ばし、助けを求めた。
けれど女は、俺を見据えたまま話し続ける。
「だから、消えてもらう事にしました」
き…える……?
何を…言って……
「『鴻鵠の番』は相手が死ぬまで添い遂げる唯一無二の存在。逆に、相手が死ねばまた新たに番を探す事ができるのです。けど、『鴻鵠の番』と出会う確率は奇跡に近い。あなたがいなくなれば、もう出会う事はないでしょう。これでやっと、普通の恋愛ができるわ」
そういうと女はカップの紅茶を床に零す。
紅茶……?
そうだ、ティーカップに紅茶を注いだのはこの女だ!
「検査には引っかからない薬物です。闇ギルドからわざわざ調達したんですよ、あなたのために。お若いのに心筋梗塞でお亡くなりになるなんてかわいそう……」
ニヤリと笑った女は……
「キャ―――ッ! だ、誰か来て――――!! と、突然彼が倒れてっ!」
女の叫び声に、人が集まってくる。
「大丈夫か!」
「しっかりしろ!」
俺の傍に駆け寄って来た人たちが代わる代わる声を掛けるが、俺はもう声を出す事ができなくなっていた。
とある夫人が、彼女に寄り添っている。
女は眼鏡を外し、ハンカチを目元に当てていた。
その隙間から女が俺を見ている。
金色の瞳は瞳孔が開き、その真ん中には細くなった黒い目が…
それはまさに獣の瞳だった。
本当に……獣人族は存在したのか………?
俺たちは、『鴻鵠の番』だったのか?
そしてそれが……俺が最期に見た光景―――――…
【終】
「こ、こう…こく…の番…? ――――――――は?」
俺はテーブルを挟んで目の前に座っている女の言葉が、一瞬理解できなかった。
口に含んだ紅茶を吹き出しそうになるところを耐え、飲み込む。
「もう一杯、いかがですか?」
「あ、ああ」
女は置いてあるティーポットを持つと、俺のティーカップに紅茶を注いだ。落ち着く為に、もう一口。
俺はロースペルナ侯爵家の嫡男ヴィストム。
向かいに座っている女はクラリア伯爵家のエデル……だったかな?
“どうしても話さなければならない、大事な話があります。あなたの人生に関わる事です”という仰々しい内容の手紙を受け取り、このカフェに来た。
二階のテラス席に案内され、そこで待っていたのがこの女だ。
手紙に記載されていた名前に心当たりはない。
会ってみたが、全く面識はない。
その女が、予想もしない言葉を口にした。
『鴻鵠の番』……?
そういえば……子供の頃、侍女が寝物語に聞かせてくれた事があるような……
遥か遠い昔、我がオルーロ帝国は、獣人族が建国したらしい。
動物の習性からか獣人同士には、運命の相手が存在する。
それが『鴻鵠の番』
鴻鵠とは白鳥の別名で、白鳥は一夫一婦制の鳥。
相手が死ぬまで添い遂げる。
『鴻鵠の番』はそこからつけられた名称だ。
そして、これは獣人族にのみ現れる。
しかし、外地から人族がオルーロ帝国に流れるようになり獣人族と共存し始めると、オルーロ帝国は人族と獣人族との異種族婚を認可した。
その後、異種族婚が増えて行った事により獣人族の血脈が薄まっていき、『鴻鵠の番』という現象も現れなくなっていく。
だがごく稀に、その『番』というのに出会う事があるらしい。
しかしそれは天文学的な確率であり、出会えば家門繁栄を齎す瑞兆とも言われている―――――……
―――――と、いう話を聞いた事がある……が!!
建国者が獣人だったとか、鴻鵠の番とか、そんなの昔々の……ただの伝承だろう!? 結局、作り話だろうがっ
今の時代、俺の周りでそんな話をまともに取り合うヤツなどいやしない!
なのに、今目の前にいるこの女は俺が『鴻鵠の番』だという。
バカも休み休み言ってくれ!
というかこの女、そんな昔話をさも真実のように語って侯爵家次期当主である俺の気を引こうって魂胆じゃないのか? まっ、その肩書のおかげでいい思いはしているけどな。ふっ。
俺は女を凝視した。
長い黒髪は耳のあたりから上部を後ろにまとめ、目には縁の太い色付きレンズの眼鏡をかけ、俯き加減に話している。スタイルは中肉中背。一言で表すと……華もなくただの地味な女。
金髪に碧眼の俺とは真逆だな。
この陰気臭い女の浅知恵で、『鴻鵠の番』とかなんとか持ち出して俺に近づいて来ただけだろう? 新手の手法だな。
面倒臭ぇな……
どうせ誘ってくるなら、もっといい女だったら良かったのに。
俺は大きく溜息をついて、目の前の女に言った。
「俺はそもそも“鴻鵠の番”など夢物語のような話は全く信じていないし、万が一本当だったとしてもお前のような女はごめんだ!
俺の好みは金髪美人で、出るとこは出て、ウエストはきゅっと引き締まっているスタイル抜群の女なんだよ。つまり、お前とは正反対で真逆! 鏡を見て出直してこい!」
我ながらはっきり言ったもんだ。
けど、興味のない女に気遣う必要はない。
だが、当の本人は意に介しておらず、話を続けた。
「……『鴻鵠の番』を感じられるのは獣人族の血がより強い側だと言われています。そういう意味で私は、遠き祖先である獣人族の血を濃く受け継いだようです。
人族の文化に『番』という概念はありませんでしたから。
ですから『鴻鵠の番』を感じられない貴方は人族の血が強いようですね」
女は俯きながら、淡々と説明する。
この女……マジで『鴻鵠の番』の話を信じているのか?
ヤバくないか?
「だからあなたが私の番と分かってから、ずっと注視してきました。生涯寄り添える相手かどうか。けれど……私もあなたのようなクズ男はごめんです」
「ク、クズ男!? 俺に言ってんのか!!」
「ご自覚がないとは手に負えない馬鹿ですね。
女性をただの性処理としてしか思っておらず、次から次へと遊び歩く。
妊娠した女性は無理矢理堕胎させ、家門には口止め料としてお金を支払う。しかも相手は下位貴族や使用人などの平民ばかり。
万が一訴えられても、侯爵家相手では全て不起訴となってしまう。被害を受けた女性もその家族も泣き寝入りするしかない。
本当に……貴方のような人間が番と分かった時の私の絶望……お判りにならないでしょうね」
そう言いながら、女は初めて俺を見た。
色付きレンズせいで、女の瞳がよく見えない。
けれど俺は、その瞳に何か違和感を感じた。
いや、今は人の瞳の事などどうでもいい!
問題はこの女が、俺を付け回していたって事だ!
「はあ!? 俺の事を調べていたのか! この性悪女が!!」
「下衆の極みとはあなたの事をいうのね。けれど…こんな男でも“鴻鵠の番”という制約が私を苦しめる。どんなにクズな人間でも、私の心は貴方を求めてしまう……」
そう言いながら、女はまた俯いた。
小さな肩が微かに震えている。
「……! はっは―――ん。なんだ、結局は俺の事が好きって事なんだろ? まぁ、好みじゃないけど、暇つぶしに相手をしてやってもい……ぐあ!!」
そういいながら女の顔に触れようとした瞬間、胸に強い痛みが走った!
息が出来ない! 景色が回る!!
何だ、これは!!
ガタンッッ
俺はテーブルの上に突っ伏した。
「た、たすけ……っ 苦し……っ」
俺は震える手を伸ばし、助けを求めた。
けれど女は、俺を見据えたまま話し続ける。
「だから、消えてもらう事にしました」
き…える……?
何を…言って……
「『鴻鵠の番』は相手が死ぬまで添い遂げる唯一無二の存在。逆に、相手が死ねばまた新たに番を探す事ができるのです。けど、『鴻鵠の番』と出会う確率は奇跡に近い。あなたがいなくなれば、もう出会う事はないでしょう。これでやっと、普通の恋愛ができるわ」
そういうと女はカップの紅茶を床に零す。
紅茶……?
そうだ、ティーカップに紅茶を注いだのはこの女だ!
「検査には引っかからない薬物です。闇ギルドからわざわざ調達したんですよ、あなたのために。お若いのに心筋梗塞でお亡くなりになるなんてかわいそう……」
ニヤリと笑った女は……
「キャ―――ッ! だ、誰か来て――――!! と、突然彼が倒れてっ!」
女の叫び声に、人が集まってくる。
「大丈夫か!」
「しっかりしろ!」
俺の傍に駆け寄って来た人たちが代わる代わる声を掛けるが、俺はもう声を出す事ができなくなっていた。
とある夫人が、彼女に寄り添っている。
女は眼鏡を外し、ハンカチを目元に当てていた。
その隙間から女が俺を見ている。
金色の瞳は瞳孔が開き、その真ん中には細くなった黒い目が…
それはまさに獣の瞳だった。
本当に……獣人族は存在したのか………?
俺たちは、『鴻鵠の番』だったのか?
そしてそれが……俺が最期に見た光景―――――…
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