サイコミステリー

色部耀

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2.自己紹介

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 ごく普通の学校に通い、ごく普通の会社に勤め、三十歳くらいで普通に結婚して二人くらいの子供と大きな波乱の無いごくごく普通の人生を歩む……。そんな俺の計画はこの特殊能力支援校に入ることが決まった時点で破綻してしまっていたのかもしれない。
 東京と大阪に二校しか存在しない特殊能力支援校。毎年約二百人程度しか存在しないサイコゲノムを持つ人間が入学する高等学校。そんな学校に入学して普通の生活をおくることができるはずもない。

「はぁー……」

 入学式が終わり、ホームルームのために教室に着いた俺は大きな溜息を吐く。周りを見れば皆一様に緊張した面持ちで、全国から集められた見ず知らずの少年少女として当たり前の人見知り具合を発揮していた。かく言う俺も誰に声をかけるでもなくホームルームが始まるのを待っていた。ホームルームで自己紹介をし、そこから徐々に仲良くなっていく計画。それが普通だ。ここはいっそのこと開き直ってサイコゲノムを持つ人たちの中での普通になることを目指すことにしよう。そうしよう。

「えー。ではホームルームを始める。まずは自己紹介から」

 若い女の先生。若いとは言っても隠し切れない厳格そうな雰囲気が全身から溢れている。この人には逆らってはいけないと本能に訴えかけてくるようだ。しかし元より普通の学校生活を送ろうと考えている俺には逆らうという選択肢はないのだから。

「今日は四月九日だから出席番号九番から」

 男子十五人女子十七人に通し番号で振られた出席番号。その九番は不運にも俺だった。授業で日にちを使って当てることは良くあるが、初めの自己紹介でそのパターンが使われるとは思っていなかった。しかし先生に逆らったりしない普通の生徒になるべく、俺は素直に困った表情をしながらもゆっくり立ち上がって自己紹介を始めた。

「えっと……。真壁鏡平です。千葉県市川市から来ました。えーっと……。中学ではバスケ部でしたが弱かったです。どんな特殊能力が使えるようになるかは分かりませんが、高校ではそれ次第で部活も決めるつもりです。えっと……以上です」

「はいみんな拍手」

 歯切れの悪い自己紹介になったけれど、先生の言葉でクラス全員から拍手をもらった。下手に受けを狙って滑ったりもせず、かと言ってカッコつけた自己紹介にもなっていない至って普通な自己紹介。我ながら悪くなかったのではないかと思う。しかし続く自己紹介で明らかに俺と違う内容が話されることによって徐々に自信を無くしていくことになった。

「宮城輝樹十五才。八王子出身。漫画とアニメのことなら拙者に何でも聞いて欲しいですな。特殊能力はシャイニングボール。おっとこれだと分かりませんかね。闇の魔王ですら恐れる光の玉を出すことができること。ちなみに好きな四字熟語は粉塵爆発。以上」

 ……

「橘寧々……です……。猫とおしゃべりができます……。以上です。へへ……」

 ……

「錦戸麻理です。僕は人や物の動きを止めることができる特殊能力を持っています。あまり近付かれるのは好きじゃないので近付いて来ようとすると能力を使っちゃうかもしれないのでよろしくお願いします」

 ……

「華谷海。実家は花屋で俺自身の特殊能力も花を咲かせること! みんなも欲しい花があったらいつでも言ってね! 種さえあれば何だってすぐに花を咲かせてみせるぜ!」

 ……

 俺より後に自己紹介をしたクラスメイトは全員特殊能力について話をしたのだ。俺より後に自己紹介をした人全員……つまりこのクラスで俺以外全員がすでになんらかの特殊能力を使えるということだった。特殊能力を使える遺伝子を持っている人間で特殊能力が使えない……俺は逆にこの学校では普通じゃない存在になってしまっている可能性を感じてしまったのだった。

「えー、最後に先生の自己紹介もいるかな。一年三組の担任を務めさせてもらう小西菜子だ。特殊能力は空中浮遊。自分の身体だけじゃなく他人も物も大きさや重さも関係なく宙に浮かせることができる。悪さをする奴は宇宙までぶっ飛ばしてやるから安心して学校生活を送ってくれ」

 物騒な自己紹介に教室が静まり返るが、小西先生はお構いなしに話を続ける。このリアクションにも慣れているのかもしれない。

「今日家庭の事情で一人遅刻してくるが、そいつには午後のガイダンス前に自己紹介をしてもらう。てことで今日のホームルームは以上。この後は十二時半から一時二十分まで昼休みだ。昼食は寮の食堂だけど場所が分からないやつはいないな? なお未確定能力者の真壁は先に個人面談があるからこの後生徒指導室に来るように。以上」
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