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3.生徒指導室
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「嘘だろ……」
俺のつぶやきはチャイムの音にかき消された。しかし後ろの席にいた宮城は俺の様子を見ていたらしく、背中をつつくと小さな声でこう言った。
「入学早々呼び出しとか主人公感あって憧レベルマックスですな。是非お友達になっていただきたいと心から願うばかりですな」
「ははは。ありがと」
俺は宮城のノリが分からないので愛想笑いしかできない。しかし宮城は俺の反応に満足してくれた様子だった。
「親愛の証にこれ。拙者が布教しようと思って持ってきた聖書をお渡ししとくので寮に戻ったら読んで欲しいですな」
「ははは。ありがと」
宮城はそう言って俺のカバンに無理矢理ビニール袋に入った聖書とやらを入れてくる。宗教に興味はないから受け取るだけ受け取ってどこかに放置することになるだろう。
その後、終業の礼は出席番号が後ろから九番目の錦戸がかけてホームルームが終わる。学級委員長が決まるまではということだったが、クラスの中で最も真面目な雰囲気のある彼女がそのまま学級委員長になるのではないかと誰しもが思ったことだろう。
昼休みに入り各々が自己紹介をきっかけに話をし始めたりする中、俺は鞄を持つと教室を後にする小西先生を急いで追いかけた。まだ教室の配置などは分からないので先生に付いていくしかない。
「そんなに急がなくてもちゃんと待っててやるぞ」
教室を出てすぐ。走って教室を出た俺を小西先生はそう言って引き止める。扉の前で腕を組んで待っていてくれていた小西先生を俺は二、三歩通り過ぎたあたりで止まった。俺は驚いて小西先生の顔を見るが、小さな溜息をつかれる。
「生徒指導室の場所も分からないだろう。ついて来なさい。ところで……なんで鞄持ってきてるんだ?」
「財布も携帯も鞄の中に入れてるので」
「用心深いのは良いことだ」
そのやり取りをした後、俺は姿勢よく歩く小西先生の背中を追って歩いた。小西先生は俺より少し身長が低いというのに大股で堂々と歩くため風を切っているかのような速さだ。コツコツと低いヒールがリズミカルな音を立てるのが耳に心地いい。
「あの……」
「どうした?」
俺が隣に並んで声をかけると小西先生は少し歩く速度を緩めて小さく首を傾げる。
「未確定能力者とかで生徒指導室に呼ばれたのって俺だけなんですか?」
一学年に三クラスの合計約百人の生徒がいるこの学校で俺だけとなると流石にきついものがある。普通の学校生活を送るためにも能力が分かっていないこと自体が特におかしいことではないという安心感が欲しい。十人くらいはいて欲しい。
「いや、もう一人いる」
「たった一人……」
「これでも例年に比べたら多い方なんだぞ?」
「例年は一人もいないってことですか?」
「ああ、そうだな」
小西先生は淡々とそう答えるだけだった。俺の不安は一切拭えず、頭を抱えるだけ。でももう一人……例年ならたった一人だけになるはずだったのに今年なら一人は仲間がいる。それならどうにか変わり者として扱われることは避けられるのではないか。
「そのもう一人って他のクラスですか? それとも……」
家庭の事情で遅刻というもう一人のクラスメイトですか? そう続けようとしたが、小西先生は話を被せるようにして答えた。
「今日家庭の事情で遅刻してくる生徒だ。私たちより先に生徒指導室に来ているかもしれないし、まだ来ていないかもしれない」
俺は小西先生の言葉を聞いて小さくガッツポーズをした。仲間がいる。それも同じクラスに。それだけで安心感が得られる。小西先生は俺のガッツポーズをちらりと視線だけで確認すると歩く速度を戻した。
「もし先に来ていたら待たせて不安にさせてしまうかもしれないから少し急ごう」
「は、はい」
それから俺と小西先生は二階から一つ階段を下りて一階にある生徒指導室まで歩いた。
俺のつぶやきはチャイムの音にかき消された。しかし後ろの席にいた宮城は俺の様子を見ていたらしく、背中をつつくと小さな声でこう言った。
「入学早々呼び出しとか主人公感あって憧レベルマックスですな。是非お友達になっていただきたいと心から願うばかりですな」
「ははは。ありがと」
俺は宮城のノリが分からないので愛想笑いしかできない。しかし宮城は俺の反応に満足してくれた様子だった。
「親愛の証にこれ。拙者が布教しようと思って持ってきた聖書をお渡ししとくので寮に戻ったら読んで欲しいですな」
「ははは。ありがと」
宮城はそう言って俺のカバンに無理矢理ビニール袋に入った聖書とやらを入れてくる。宗教に興味はないから受け取るだけ受け取ってどこかに放置することになるだろう。
その後、終業の礼は出席番号が後ろから九番目の錦戸がかけてホームルームが終わる。学級委員長が決まるまではということだったが、クラスの中で最も真面目な雰囲気のある彼女がそのまま学級委員長になるのではないかと誰しもが思ったことだろう。
昼休みに入り各々が自己紹介をきっかけに話をし始めたりする中、俺は鞄を持つと教室を後にする小西先生を急いで追いかけた。まだ教室の配置などは分からないので先生に付いていくしかない。
「そんなに急がなくてもちゃんと待っててやるぞ」
教室を出てすぐ。走って教室を出た俺を小西先生はそう言って引き止める。扉の前で腕を組んで待っていてくれていた小西先生を俺は二、三歩通り過ぎたあたりで止まった。俺は驚いて小西先生の顔を見るが、小さな溜息をつかれる。
「生徒指導室の場所も分からないだろう。ついて来なさい。ところで……なんで鞄持ってきてるんだ?」
「財布も携帯も鞄の中に入れてるので」
「用心深いのは良いことだ」
そのやり取りをした後、俺は姿勢よく歩く小西先生の背中を追って歩いた。小西先生は俺より少し身長が低いというのに大股で堂々と歩くため風を切っているかのような速さだ。コツコツと低いヒールがリズミカルな音を立てるのが耳に心地いい。
「あの……」
「どうした?」
俺が隣に並んで声をかけると小西先生は少し歩く速度を緩めて小さく首を傾げる。
「未確定能力者とかで生徒指導室に呼ばれたのって俺だけなんですか?」
一学年に三クラスの合計約百人の生徒がいるこの学校で俺だけとなると流石にきついものがある。普通の学校生活を送るためにも能力が分かっていないこと自体が特におかしいことではないという安心感が欲しい。十人くらいはいて欲しい。
「いや、もう一人いる」
「たった一人……」
「これでも例年に比べたら多い方なんだぞ?」
「例年は一人もいないってことですか?」
「ああ、そうだな」
小西先生は淡々とそう答えるだけだった。俺の不安は一切拭えず、頭を抱えるだけ。でももう一人……例年ならたった一人だけになるはずだったのに今年なら一人は仲間がいる。それならどうにか変わり者として扱われることは避けられるのではないか。
「そのもう一人って他のクラスですか? それとも……」
家庭の事情で遅刻というもう一人のクラスメイトですか? そう続けようとしたが、小西先生は話を被せるようにして答えた。
「今日家庭の事情で遅刻してくる生徒だ。私たちより先に生徒指導室に来ているかもしれないし、まだ来ていないかもしれない」
俺は小西先生の言葉を聞いて小さくガッツポーズをした。仲間がいる。それも同じクラスに。それだけで安心感が得られる。小西先生は俺のガッツポーズをちらりと視線だけで確認すると歩く速度を戻した。
「もし先に来ていたら待たせて不安にさせてしまうかもしれないから少し急ごう」
「は、はい」
それから俺と小西先生は二階から一つ階段を下りて一階にある生徒指導室まで歩いた。
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