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8.脅し
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遅刻してきたから食堂で朝食をとっていないのか。地図もあるし案内無しでも迷うことはないだろうけれど、どうせ行先は同じだし断るというのもおかしな話だ。
「別にいいけど」
登校初日から女の子と二人で校内を歩くというのはやはり俺の中では普通とは違う行動なので少し抵抗があると言えばある。
「ありがとうございます」
しかし、美波さんの無邪気な笑顔を見るとその小さな抵抗も気にする必要は無いかと思わされた。
「じゃ、行くぞ」
「あ、待ってください」
美波さんは一歩踏み出した俺を制止するべく慌てた様子で俺の鞄を掴んだ。軽く手に持っていただけというのが悪かったのかもしれない。小西先生から渡されたプリントをしまってからファスナーを閉め忘れていたのが悪かったのかもしれない。美波さんが掴んだ鞄は俺の手から離れて中身を盛大にぶちまけた。
「すみません! すぐに拾います!」
「待って! いいから! 俺が拾うから!」
急いで散乱した鞄の中身を拾おうとしたが時すでに遅し。美波さんは一冊の本を手に取って固まっていた。その本は一説によると聖なる書物らしい。しかし、世間一般的に見るとその本は間違いなく性なる書物と言えよう。そう。ホームルームが終わった時に宮城から渡された十八禁の漫画本だった。
美波さんは一瞬固まっていたものの、無言でページをぺらぺらとめくる。そして冷や汗と共に他の散らばった道具を鞄に入れている俺に手渡した。
「真壁君」
「な、なんだね? 美波君」
俺は美波さんと目を合わせることなく本を手に取ると鞄の一番奥にしまい込む。
「ちょっとお願いしたいことがあるんですけど協力してくれますか?」
美波さんはそれ以上何かを言ったわけではないけれど、俺はその言葉を明確な脅しだと捉えた。俺の普通の高校生活……それを守り抜くためにはここはどうか穏便に済ませるしかない。そのためには――
「はい。私にできることであれば」
即断即決で承諾する他なかった。
「別にいいけど」
登校初日から女の子と二人で校内を歩くというのはやはり俺の中では普通とは違う行動なので少し抵抗があると言えばある。
「ありがとうございます」
しかし、美波さんの無邪気な笑顔を見るとその小さな抵抗も気にする必要は無いかと思わされた。
「じゃ、行くぞ」
「あ、待ってください」
美波さんは一歩踏み出した俺を制止するべく慌てた様子で俺の鞄を掴んだ。軽く手に持っていただけというのが悪かったのかもしれない。小西先生から渡されたプリントをしまってからファスナーを閉め忘れていたのが悪かったのかもしれない。美波さんが掴んだ鞄は俺の手から離れて中身を盛大にぶちまけた。
「すみません! すぐに拾います!」
「待って! いいから! 俺が拾うから!」
急いで散乱した鞄の中身を拾おうとしたが時すでに遅し。美波さんは一冊の本を手に取って固まっていた。その本は一説によると聖なる書物らしい。しかし、世間一般的に見るとその本は間違いなく性なる書物と言えよう。そう。ホームルームが終わった時に宮城から渡された十八禁の漫画本だった。
美波さんは一瞬固まっていたものの、無言でページをぺらぺらとめくる。そして冷や汗と共に他の散らばった道具を鞄に入れている俺に手渡した。
「真壁君」
「な、なんだね? 美波君」
俺は美波さんと目を合わせることなく本を手に取ると鞄の一番奥にしまい込む。
「ちょっとお願いしたいことがあるんですけど協力してくれますか?」
美波さんはそれ以上何かを言ったわけではないけれど、俺はその言葉を明確な脅しだと捉えた。俺の普通の高校生活……それを守り抜くためにはここはどうか穏便に済ませるしかない。そのためには――
「はい。私にできることであれば」
即断即決で承諾する他なかった。
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