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34.誤解
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テルはそう言うと俺が頼まれた机運びを手伝い始めた。言動は面倒くさいけれど案外いいやつなのかもしれない。そこで俺の隣に並んで作業をするテルは美波さんに聞こえないような小さな声で囁いた。
「ところで真壁殿。例の聖書の件。気に入っていただけたみたいで何よりですな」
「は? なんで?」
「そりゃ、ほら」
テルはそう言うと顎で美波さんのことを指した。なるほど。俺がテルに渡されたエロ漫画がきっかけでロリコンになり、幼い容姿の美波さんを気に入って仲良くしている……そう言いたいのだな。いい奴かもしれないと思った前言は撤回だ。
「んなわけないだろ。同じ未確定能力者同士だから話すようになっただけだ。それよりこれ。読まないから返す」
「な、な、な、なんですと!」
テルは信じられないといった感じで俺からエロ本を受け取る。袋に入っているので中身は見えていないが、その袋もテルのものなので中を見なくても分かるのだろう。
「そんな……拙者の布教活動が実らなかった……だと?」
「残念ながらテルとは趣味が合わなかったみたいだな」
「くっ……全力で諦めないですぞ」
テルはそう言うと全速力で机を運び去って行った。それにしても是非とも全力で諦めていただきたいものだ。ひとまず手元に置いておきたくないエロ本が無くなったことで安心した俺はふと振り返った。するとそこにはきょとんと不思議そうな顔をして固まる美波さんの姿が。
「美波さん、どうかした?」
「いえ、あの、今の袋は例の本が入っていた袋ですよね? 趣味が合わないとか返すとか聞こえた気がするんですが……」
「ああ、あいつに押し付けられただけだ。言い忘れていたけど、あの本は俺のじゃない」
「え、ということは、真壁君のタイプが幼い感じの見た目の女の子っていうわけじゃ……」
「ああ、違うな」
俺の返事を聞いたところで美波さんは大きく口を開けて硬直した。水揚げされた魚のようだ。
「美波さーん。聞こえてますかー? おーい」
そう言って目の前で手を振ると美波さんはようやく動き出した。そして慌てた様子で俺の服の胸元を掴むと早口で話し始めた。
「お願いですから! 見た目がタイプじゃなくても見捨てないでください! 女の子としての魅力はないかもしれませんが頑張りますので! 頑張りますのでどうかお願いします! 私を一人にしないでください! なんでもしますから!」
とても必死だった。美波さんの中で俺は見た目にほだされてホイホイお願いを聞いているちょろい奴だったのだろうか。それはそれで心外だな。ある意味で酷いやつかもしれない。
「とりあえず変な誤解されそうだから静かにして」
「静かにしたら捨てないでくれますか?」
「だから静かにしてってば。じゃあ、えーっと。椅子運ぶの手伝ってくれたらいいよ」
「全力で頑張らせていただきます!」
そう言ってテキパキ働き始めた美波さんだった。仕事が減るのは良いことだけど、何だか今後もっと面倒くさいことになりそうな気がしてきた。あわよくば周囲から変な印象だけは持たれないように祈るしかない。俺は普通の学校生活を送りたいんだ。初日から躓くどころか大事故を起こしたくはない。今日のところは早めに美波さんと別れて寮の部屋に引きこもろう。俺はそう決意したのだった。
「ところで真壁殿。例の聖書の件。気に入っていただけたみたいで何よりですな」
「は? なんで?」
「そりゃ、ほら」
テルはそう言うと顎で美波さんのことを指した。なるほど。俺がテルに渡されたエロ漫画がきっかけでロリコンになり、幼い容姿の美波さんを気に入って仲良くしている……そう言いたいのだな。いい奴かもしれないと思った前言は撤回だ。
「んなわけないだろ。同じ未確定能力者同士だから話すようになっただけだ。それよりこれ。読まないから返す」
「な、な、な、なんですと!」
テルは信じられないといった感じで俺からエロ本を受け取る。袋に入っているので中身は見えていないが、その袋もテルのものなので中を見なくても分かるのだろう。
「そんな……拙者の布教活動が実らなかった……だと?」
「残念ながらテルとは趣味が合わなかったみたいだな」
「くっ……全力で諦めないですぞ」
テルはそう言うと全速力で机を運び去って行った。それにしても是非とも全力で諦めていただきたいものだ。ひとまず手元に置いておきたくないエロ本が無くなったことで安心した俺はふと振り返った。するとそこにはきょとんと不思議そうな顔をして固まる美波さんの姿が。
「美波さん、どうかした?」
「いえ、あの、今の袋は例の本が入っていた袋ですよね? 趣味が合わないとか返すとか聞こえた気がするんですが……」
「ああ、あいつに押し付けられただけだ。言い忘れていたけど、あの本は俺のじゃない」
「え、ということは、真壁君のタイプが幼い感じの見た目の女の子っていうわけじゃ……」
「ああ、違うな」
俺の返事を聞いたところで美波さんは大きく口を開けて硬直した。水揚げされた魚のようだ。
「美波さーん。聞こえてますかー? おーい」
そう言って目の前で手を振ると美波さんはようやく動き出した。そして慌てた様子で俺の服の胸元を掴むと早口で話し始めた。
「お願いですから! 見た目がタイプじゃなくても見捨てないでください! 女の子としての魅力はないかもしれませんが頑張りますので! 頑張りますのでどうかお願いします! 私を一人にしないでください! なんでもしますから!」
とても必死だった。美波さんの中で俺は見た目にほだされてホイホイお願いを聞いているちょろい奴だったのだろうか。それはそれで心外だな。ある意味で酷いやつかもしれない。
「とりあえず変な誤解されそうだから静かにして」
「静かにしたら捨てないでくれますか?」
「だから静かにしてってば。じゃあ、えーっと。椅子運ぶの手伝ってくれたらいいよ」
「全力で頑張らせていただきます!」
そう言ってテキパキ働き始めた美波さんだった。仕事が減るのは良いことだけど、何だか今後もっと面倒くさいことになりそうな気がしてきた。あわよくば周囲から変な印象だけは持たれないように祈るしかない。俺は普通の学校生活を送りたいんだ。初日から躓くどころか大事故を起こしたくはない。今日のところは早めに美波さんと別れて寮の部屋に引きこもろう。俺はそう決意したのだった。
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