サイコミステリー

色部耀

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45.既視感

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 降車駅は実家から二番目に近い駅だが初めて立ち寄った。二番目に近いからこそ立ち寄ったことがないというのが正しいかもしれない。なにせ、この駅の近くに用事があるならば自転車で十分事足りるのだから。

「目的の幼稚園はここから北に十五分ほど歩いたら着きます。……きょろきょろしてどうしましたか? 何か珍しいものでもあります?」

「いや……」

 知り合いがいないかどうか周囲を確認しただけだ。しかし美波さんと歩いているところを見られたくないなんて言ったら、また面倒くさいネガティブな思考をされても困る。

「一応探しものをしてるんだし、美波さんが見て何か思い出せそうな特徴的なものが無いかと」

 百パーセントの嘘ではない。相手を騙すには真実を混ぜると言うからこれで良いだろう。苦し紛れな自分への言い訳だが。

「そう……ですよね。私ももっと真剣に色々なものを観察しないといけませんね。頑張ります!」

 美波さんはそう言って鼻息荒く目を見開いて周囲に視線を飛ばす。美波さんは単純でとても助かった。先導して歩き始めた美波さんの背中を見ながら俺もゆっくりと足を動かす。見慣れたとまでは言わないが見覚えのある景色。駅を出てすぐにある商店街。夕方ともなれば人通りも多い。人にぶつからないように美波さんのそばに寄って歩くと、美波さんの小柄な体がとても弱々しく見える。守ってあげないといけない。そう思わせてくる華奢な体だ。
 商店街を抜けるとベッドタウンと言っても過言ではない住宅街が広がる。このあたりには来たことはないが街並みは実家のそばと似ている。家のそばと似ている為か懐かしい気もする。

「もうそろそろ着きますよ」

 美波さんはそう言って隣を歩く俺を見上げる。もうそろそろ着く。そう言われて俺は何かが頭に引っかかるような感じを得た。何か、何か思い出せそうで思い出せない感じ。美波さんの記憶を探しているのに、俺の方が何かを思い出しそうというのもおかしな話ではある。しかしそれでも間違いなく何かを思い出しそうなのだ。来たことがないはずの街並みのはずなのに……

「ここです」

 美波さんはそう言うと少し駆け出して指を差す。そこで美波さんが指差した先の幼稚園に、俺は既視感を覚えた。いや、既視感という曖昧なものではない。

「俺は……ここに来たことがある……?」
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