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51.記憶喪失の原因
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病院に着いたのは空も赤みがかってきた六時前。電車の中でも美波さんは沈んだ様子で記憶喪失の理由について話をできるような状態ではなかった。病院の受付で話をすると、通された病室はいつもと同じ場所だった。
「真壁君も来てくれたんだね」
声だけはいつもと変わらない。いつもと変わらないベッドで横になっている。点滴と酸素マスクはあるものの、今夜が山だと言われたことが信じられないほどだ。
「どうしたんですか……急に……」
「急じゃないよ」
俺の問いかけに美波さんのお父さんは悟ったように答えた。
「去年よりあたりからいつこうなってもおかしくなかったんだ。聖奈に電話がいったすぐ後くらいまで気を失っててね。今日が最後になるかもしれない。本当にそう思うよ」
「そんな……そんな悲しいこと……」
「悲しんでくれるんだね。本当に君が聖奈の友達で良かった」
そう言って美波さんのお父さんはまた微笑む。その姿を見ただけでも辛くて言葉が出ない。俺の隣に立つ美波さんは今にも泣き出しそうな顔で床にばかり視線を向ける。先月までの記憶がない美波さんだが、だからこそ記憶があるこの二週間で最も多くの時間を共に過ごした相手なのだ。言うなれば人生の全てを共に歩いた相手。辛くないわけがない。
「とはいえ意識が戻った今だから分かるけど、最後に二人と話をする時間くらいは十分に持ちそうだと思う。聖奈に話しておきたいことも真壁君に話しておきたいこともある」
俺に話したいことというのはやはり懺悔のことなのだろう。美波さんに聞かれたくないことなのだろう。
「二人ともご飯は食べてないんだろう? 一階のレストランが開いているから行ってくるといい。一人三十分くらい交代で行ってくれれば二人それぞれに話したいことも話せる」
美波さんに話をするときは席を外そうとは思っていたが、こうして時間を作ってくれるとありがたい。俺も記憶喪失について気付いたことを聞く時間もできる。
「じゃあ、先に美波さんが行ってきて。俺が先に話すよ」
「……」
美波さんは話が耳に入っていないのか、リアクションもなく床に視線を落とし続けている。
「美波さん?」
俺が美波さんの肩を叩くと驚いた様子できょろきょろして答える。
「え、あ、はい。なんでしたっけ」
「俺とお父さんが話をしている間に一階のレストランで夕飯を済ませてきて。こっちの話が終わったら呼びに行くから」
「あ……はい……」
美波さんはそう言うと、心ここにあらずといった感じでトボトボと病室から出て行った。理解が追いつかないのだろう。仕方がないことだ。
「悪いね真壁君」
「いえ、俺もお父さんに聞きたいことがありましたので」
「……やはり、君なら遅かれ早かれ何かに気付くと思っていたよ」
「気付くようにヒントを出していたのでしょう」
奥さんの病気、奥さんの記憶喪失、自分の特殊能力の覚醒時期。隠すつもりなら、気付かれないようにするつもりならそんな情報を俺に伝えるはずがない。
「さて、まずは真壁君が聞きたいことというのから答えようか」
美波さんのお父さんは仰向けの楽な姿勢でそう言うと俺の言葉を待つ。聞きたいことというよりは、俺の推理の答え合わせと今後どうするべきかの相談になる。つまり、初めに言うことは……
「美波さんの記憶喪失はお父さんの特殊能力による影響で間違いないですね?」
「真壁君も来てくれたんだね」
声だけはいつもと変わらない。いつもと変わらないベッドで横になっている。点滴と酸素マスクはあるものの、今夜が山だと言われたことが信じられないほどだ。
「どうしたんですか……急に……」
「急じゃないよ」
俺の問いかけに美波さんのお父さんは悟ったように答えた。
「去年よりあたりからいつこうなってもおかしくなかったんだ。聖奈に電話がいったすぐ後くらいまで気を失っててね。今日が最後になるかもしれない。本当にそう思うよ」
「そんな……そんな悲しいこと……」
「悲しんでくれるんだね。本当に君が聖奈の友達で良かった」
そう言って美波さんのお父さんはまた微笑む。その姿を見ただけでも辛くて言葉が出ない。俺の隣に立つ美波さんは今にも泣き出しそうな顔で床にばかり視線を向ける。先月までの記憶がない美波さんだが、だからこそ記憶があるこの二週間で最も多くの時間を共に過ごした相手なのだ。言うなれば人生の全てを共に歩いた相手。辛くないわけがない。
「とはいえ意識が戻った今だから分かるけど、最後に二人と話をする時間くらいは十分に持ちそうだと思う。聖奈に話しておきたいことも真壁君に話しておきたいこともある」
俺に話したいことというのはやはり懺悔のことなのだろう。美波さんに聞かれたくないことなのだろう。
「二人ともご飯は食べてないんだろう? 一階のレストランが開いているから行ってくるといい。一人三十分くらい交代で行ってくれれば二人それぞれに話したいことも話せる」
美波さんに話をするときは席を外そうとは思っていたが、こうして時間を作ってくれるとありがたい。俺も記憶喪失について気付いたことを聞く時間もできる。
「じゃあ、先に美波さんが行ってきて。俺が先に話すよ」
「……」
美波さんは話が耳に入っていないのか、リアクションもなく床に視線を落とし続けている。
「美波さん?」
俺が美波さんの肩を叩くと驚いた様子できょろきょろして答える。
「え、あ、はい。なんでしたっけ」
「俺とお父さんが話をしている間に一階のレストランで夕飯を済ませてきて。こっちの話が終わったら呼びに行くから」
「あ……はい……」
美波さんはそう言うと、心ここにあらずといった感じでトボトボと病室から出て行った。理解が追いつかないのだろう。仕方がないことだ。
「悪いね真壁君」
「いえ、俺もお父さんに聞きたいことがありましたので」
「……やはり、君なら遅かれ早かれ何かに気付くと思っていたよ」
「気付くようにヒントを出していたのでしょう」
奥さんの病気、奥さんの記憶喪失、自分の特殊能力の覚醒時期。隠すつもりなら、気付かれないようにするつもりならそんな情報を俺に伝えるはずがない。
「さて、まずは真壁君が聞きたいことというのから答えようか」
美波さんのお父さんは仰向けの楽な姿勢でそう言うと俺の言葉を待つ。聞きたいことというよりは、俺の推理の答え合わせと今後どうするべきかの相談になる。つまり、初めに言うことは……
「美波さんの記憶喪失はお父さんの特殊能力による影響で間違いないですね?」
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