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50.容態悪化
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突然で意図のわからない質問だったのだろう。園長先生はそう聞き返しながらも記憶を探るように視線を斜め上へと向ける。
「何か変わったことがあるのならお父さんのときも同じような感じで奇跡を起こせないかと思って。まあ、何もないですよね」
この質問の答え次第では俺の推測が確かなものになる。記憶喪失と病気の完治。それが繋がるのだとすれば……。さらに言えばもう一つ。美波さんのお父さんが言っていた懺悔。そしてお父さんの特殊能力が覚醒した時期……。確か十二年前だと言っていた。それは美波さんのお母さんの記憶喪失と病気の完治時期と重なる。
「そういえば病気が治って園に来られたとき……。まるで私と初対面かのように振る舞われて驚いた記憶があるわ。そのくらいかしら」
「やっぱり……」
俺の呟きを聞いて美波さんは小さな声で問いかけてきた。
「やっぱりってどういうことですか? 何か気付いたことでもあるんですか?」
「後で話すよ」
園長先生の話で確信した。美波さんの記憶喪失。その原因となったのが何なのか。しかし流石に園長先生の前で話をするわけにはいかない。
「色々聞かせていただいてありがとうございました。この後少し二人で園内を見てまわっても良いですか?」
早く二人きりになって美波さんに話をしたい。そう思っての提案だった。
「ええ。でも延長保育が十八時までだから、それよりは早く帰るようにしてね」
「はい。ありがとうございます」
俺はそう言って立ち上がると会釈をした。美波さんも俺に倣って会釈をする。そして事務所から出たところで美波さんは俺に先ほどの話の続きを促した。
「さっきやっぱりって言ってたのは何だったのですか?」
「美波さんがなぜ記憶を失ったのか。その理由が分かった」
「え、本当ですか? ならもしかしたらそこから記憶を取り戻せるかもしれないですね」
「そう……だな……」
正直言って記憶を取り戻すことはできないのではないかと思っている。俺が思っている理由なのだとしたら、美波さんのお母さんが記憶を取り戻していない時点で美波さん自身の記憶も……。
「それで、私の記憶が失くなってしまった理由というのは何なのでしょう」
事務所の外階段をゆっくりと降りながら美波さんは聞いてくる。俺の後ろを歩く美波さんの表情は分からないけれど、おそらく興味津々に目を輝かせているのではないだろうか。
「それは」
「あ、ちょっと待ってください」
俺が説明をしようとした瞬間。背後でスマートフォンの着信音と共に美波さんが立ち止まった。振り返ると美波さんは電話に出ていた。
「あ、はい。こちらこそお世話になってます。はい。はい……。え……? はい。急いで向かいます。はい。はい……。こちらこそ失礼します」
美波さんは困ったような驚いたような複雑な表情をしながら通話をしていたかと思うと、電話を切って真剣な顔になった。
「病院からでした。父親の衰弱が激しく、今から病院に来て欲しいとのことです」
あの日と同じ金木犀の香りがする。どうしようもない現実を突きつけられたような気がした。
「何か変わったことがあるのならお父さんのときも同じような感じで奇跡を起こせないかと思って。まあ、何もないですよね」
この質問の答え次第では俺の推測が確かなものになる。記憶喪失と病気の完治。それが繋がるのだとすれば……。さらに言えばもう一つ。美波さんのお父さんが言っていた懺悔。そしてお父さんの特殊能力が覚醒した時期……。確か十二年前だと言っていた。それは美波さんのお母さんの記憶喪失と病気の完治時期と重なる。
「そういえば病気が治って園に来られたとき……。まるで私と初対面かのように振る舞われて驚いた記憶があるわ。そのくらいかしら」
「やっぱり……」
俺の呟きを聞いて美波さんは小さな声で問いかけてきた。
「やっぱりってどういうことですか? 何か気付いたことでもあるんですか?」
「後で話すよ」
園長先生の話で確信した。美波さんの記憶喪失。その原因となったのが何なのか。しかし流石に園長先生の前で話をするわけにはいかない。
「色々聞かせていただいてありがとうございました。この後少し二人で園内を見てまわっても良いですか?」
早く二人きりになって美波さんに話をしたい。そう思っての提案だった。
「ええ。でも延長保育が十八時までだから、それよりは早く帰るようにしてね」
「はい。ありがとうございます」
俺はそう言って立ち上がると会釈をした。美波さんも俺に倣って会釈をする。そして事務所から出たところで美波さんは俺に先ほどの話の続きを促した。
「さっきやっぱりって言ってたのは何だったのですか?」
「美波さんがなぜ記憶を失ったのか。その理由が分かった」
「え、本当ですか? ならもしかしたらそこから記憶を取り戻せるかもしれないですね」
「そう……だな……」
正直言って記憶を取り戻すことはできないのではないかと思っている。俺が思っている理由なのだとしたら、美波さんのお母さんが記憶を取り戻していない時点で美波さん自身の記憶も……。
「それで、私の記憶が失くなってしまった理由というのは何なのでしょう」
事務所の外階段をゆっくりと降りながら美波さんは聞いてくる。俺の後ろを歩く美波さんの表情は分からないけれど、おそらく興味津々に目を輝かせているのではないだろうか。
「それは」
「あ、ちょっと待ってください」
俺が説明をしようとした瞬間。背後でスマートフォンの着信音と共に美波さんが立ち止まった。振り返ると美波さんは電話に出ていた。
「あ、はい。こちらこそお世話になってます。はい。はい……。え……? はい。急いで向かいます。はい。はい……。こちらこそ失礼します」
美波さんは困ったような驚いたような複雑な表情をしながら通話をしていたかと思うと、電話を切って真剣な顔になった。
「病院からでした。父親の衰弱が激しく、今から病院に来て欲しいとのことです」
あの日と同じ金木犀の香りがする。どうしようもない現実を突きつけられたような気がした。
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